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兄妹勇者の冒険記!  作者: 鳥山隼人
4/7

~第1章~  2・脅威(続き)

あの怪物。おぞましい殺気。そして聞こえる殺意の声。


殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!


モンスターの殺意は、たとえそのモンスターが喋っていようがいまいが関係なく、脳内に語りかけてくるように感じられる。

その悪夢のような体験に思わず身震いしてしまう。

そして、それは戦いに慣れているサクラやゾト戦士長でさえも同じだった。

暗黒軍との攻防が始まり、センラ達はダークネススパイダー達と戦っていたのだが、「くっそ! 全然刃が通らねえ!」とか「何でだよちくしょおおおお!」などという声が次々と上がっていた。

これが指すことは、つまり……

「駄目だ……押されている」

そう。見たところは張り合っているように見えるが、少しずつ……確実に押されていた。

そして目の前で潰され、引き裂かれ……次々と戦士達は倒れていった。

「クソッ……! 作戦変更!最上位剣士及び最上位槍兵士、そしてセンラ以外の戦士達は今すぐ砲台兵器を用意しろ!」

『……! ハッ!』

「な!? ね、姉さん! なんでっ」

「お前は上位剣士の中でもなかなか腕の立つ戦士だ! それにお前の剣は《魔銅製》だろ?」

「…………分かった。シルク、行け」

「う、うん。兄さん、気を付けて」

そう言ってそそくさと命令に従い戻っていくシルクの後ろ姿を見送りつつ、剣を構える。

目の前には……普通よりも一回り大きいダークネススパイダ―。


――これは勝てるのか……?――


そんな疑問を抱えつつも、センラはまっすぐ標的を見据えた。

……敵の足は8本。爪が生えているのは1番前2本。残り6本で歩いているようだ。

だが、そんなところを狙っていたら日が暮れる。刃を入れるとしたら1か所。

「クロロロロロロロロオオオオオ!」

対抗してくるダークネススパイダー。しかしセンラはその瞬間、ダークネススパイダーの前足を2本、関節部分で切り離した

「クロロロアアアアアアア!」

「うおっ……!」

斬り落とされた前足を見て、ダークネススパイダーは怒った。目のあたりから角が生え、目は赤色に光り、牙が鋭く、漆黒に輝いた。前足が繋がれ、こちらに突進してきた。

「グロロロロアアアアアア!」

再び前足で攻撃を仕掛けてくる。が、これをセンラは跳躍し、そして、

「知ってるか? 人でも何でも怒り狂った時が一番……」

頭と足の繋ぎ目を斬り離した。


ズドオオオオオン……


ダークネススパイダーは音を立て、倒れた。そんな姿を見て、センラは笑いながら、

「……隙が出来るもんなんだ」

剣をゆっくりと鞘にしまった。

「……さすがだ。良くやったセンラ。交代だ」

後ろを振り返ると、そこにはサクラの姿があった。

「姉さん……」

「前を見ろ」

サクラが指をさす方向を見ると口元に不敵な笑みを浮かべたあの男……コクガがいた。

「どうやら私も一太刀入れることになりそうだ」

「な!? で、でも姉さん! あんたが今ここを離れたら――」

「お前がいるだろ」

センラの言葉を遮るようにしてサクラはそう言った。

「へ? そ、それはどういう――」

「おっと! 来たみたいだ。じゃあ……後は、頼んだぞ」

それだけ言い残して、サクラは走って行った。

「ね、姉さん!」

センラが呼び止めるも、そこへモンスターが……ダークネススパイダーが入ってきて、弾き飛ばされる。

「クッ……駄目だッ…………ね、え……さん」

壁に頭を打ち付け、意識がもうろうとしていく。

だが。そこへ近寄るダークネススパイダーは憎悪に満ちた殺気を放ちながらゆっくりと、センラに近寄った。

――もう……駄目だ……――

そう思い目を閉じる。


その瞬間、目の前で()()()()()()()がした。


「おい、しっかりしなさい!」

「……? う?」

そこにいたのは白髪の男。よく透き通った緑色の目。

そう。そこにいたのは戦士長・ゾトだった。

「ほれ、掴まれ」

「……すみません」

何が起きたかイマイチ分からないものの、とりあえずセンラは立ち上がり、ゾト戦士長の肩につかまりながらその場を後にした。


戦闘開始後約3時間。未だに暗黒軍とカルバン軍に攻防は続いていた。

『砲台兵器』……最近発展した大砲を用意したものの、どこに撃つかなどの指令が出ておらず、結局押され続けている。

センラはと言うと、なんとか傷は魔法で回復したので再び戦場でダークネススパイダーの討伐に専念していた。

なにせ倒しても、ものの数分で復活してしまうので倒したものはすぐに燃やさなければいけなかった。

時にはセンラの妹・シルクも呪文を用いてサポートをし、戦っていた。

そんな中、戦場の中心に二人。

仲間からも恐れられるほどの力を持った最上位……いや、最々上位剣士が熱い火花を散らせていた。

名を、「サクラ・キルバス」と……「コクガ・ゾドム」。

約1時間もの間、ひたすらに戦っているにもかかわらず、二人とも疲れひとつ見せずに口元に笑みを浮かべていた。

剣と剣のぶつかる音。その速さこそ二人の実力を物語っていた。

いったん離れ、目線を合わせる二人。

「……なかなかやるな子娘よ」

「…………あなたもね。おそらくこの国では見ないほど強いわ」

「フン。正式には『この大陸で』、だがな」

「言って……くれるじゃない!」

先に飛びかかったのはサクラだった。

しかしコクガはそれを読み、上空へ跳躍する。

「クハハハ! 死ね! 《ポイズン・スラッシュ》!」

コクガは呪文を唱え、サクラに向けて放つ。

間一髪、サクラが交わし、コクガを流し斬った。

これをコクガは剣ではじき返す。が、逆に剣をはじかれてしまった。

「ぬうぅ……!」

剣をはじかれたコクガはとにかく剣の方へ走る。

(! 今がチャンス!)

それを読んだサクラは……コクガが剣を拾うギリギリのところでコクガの背中を流し斬った。

「フン……ククク……クハハハハハハ!」

なぜか高らかに笑うコクガ。

「何……!?」

その瞬間。突如サクラの体に激痛が走る。

サクラが自分の体を見ると……コクガの剣が貫通していた。だんだん血が滲み、服が暗赤色に染まっていく。

……約一時間ものの戦いの末、勝利をつかんだのはコクガだった。

コクガは《分身》と言う技を使い、後ろに回り込んでいたのだ。

「安心しな。軽い傷さ。……まあ麻酔薬は塗っておいたがなぁ……」

「クッ……このひきょう者めっ……!うっ……!」

秩序、サクラの体がしびれる。

「センラ、シルク、済まない。私はっ…………駄目だった、みたいだ……あ、とは、頼んだ、ぞ……」

「戯言はいいから寝ちまいな。……よし。こいつはいったん城へ持って帰ろう。使えるからな……暗黒軍に次ぐ! 皆一度城へ帰るぞ!ダークネススパイダーはここに残り、あとの者は帰還だ!」

この国のエースであるサクラを倒したコクガは満足げに言い放ち、そして霧のようにゆっくりと、姿を変え、高く笑いながら消えていった。


「終わった……のか?」


どこからかぽつりとそんな声が出た。

センラ達はちょうど最後のダークネススパイダーを倒し、炎に投げ込んだところだったので、その声を聞いて固まった。

と、そこから誰となく歓声が上がる。

センラもその声に便乗し、ゾト戦士長は口元に笑みを浮かべた。

「……あ!」

センラはハッ、とする。

「シルク! 姉さん! 大丈夫か!」

人混みを探すと、あの綺麗な青い服が見えた。

「! シルク!」

「兄さん!」

シルクとセンラは互いに安否を確認し、抱き合った。

……なぜここで俺はあんな質問をしてしまったのだろう。

そんな後悔をすることも知らず、センラは口に出してしまった。

「! そうだ、姉さんは?」

「……! それが……」

「? なんだ? 何があった?」

泣き崩れるシルク。そしてとうとうその口が開く。



―――「姉さんは、さらわれた」―――


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