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兄妹勇者の冒険記!  作者: 鳥山隼人
3/7

~第1章~  2・脅威


「兄さん」

会議が終わり、センラ・キルバスとシルク・キルバスは倉庫で戦いの準備をしていた。

「なんだ?」

センラは振り向いて答える。

「暗黒軍って、どれくらい強いんだろ?」

「……さあな……少なくとも見習いや通常モンスターよりかは強いと思うが……」

実は、センラも気になっていた。暗黒軍の一団と戦うのはこれが初めてであり、どれほど強いかなど、センラは知らないのだ。

……夢で見たくらいならば、シルクは…………

一瞬そんな考えが頭の中を通り過ぎたが、振り払う。

「ま、まあ心配ない!きっとそこまで強くはないさ!……ただ、万が一のことを考えてしっかり準備をしていくぞ!」

「……!そうだね……」

努めて明るい声でセンラが話す。

これから何が起きるか分からない……いや、何が起きてもおかしくない、ということを感じたのだろう。シルクはしっかりと頷く。

「……よし、行くか」

「うん」

二人はゆっくりとドアを開け、速足で広場へ向かう。



会議から二時間ほどたち、十一時を回った頃。

最上位~下位の兵士全員が広場に集まりきっちりと並んでいた。

そして……列の前に立っているのがセンラ達の姉……サクラ・キルバスだった。

「……集まったな。諸君、話は聞いているな?……私の推測では、暗黒軍の一団はあと小一時間ほどでこちらに着くと思われる。一匹一匹が強い殺気をはなっているあたり、戦闘からは逃れられないだろう」

サクラは淡々と続ける。

「だが、お前達はそんなもので諦めるのか?……いや!そんな貧弱な者はいないはずだ!お前たちは勇敢だ!戦士だ!英雄だ!この国は、お前達が守るべき母国だ!

気を引き締めていくぞ!」

『ハッ!この命、王国に尽くします!』

サクラが兵士達を鼓舞するとそれに応えるように(とき)の声を上げた。

「……いよいよだね、兄さん」

「そうだな。最善を尽くそう」

そんな会話を軽くしたのち再びサクラに向き直る。

「ではこれより、作戦会議を始める。まずは…………」

そうして作戦会議は始まった。



そして十分。作戦を手短に伝えたのち、サクラは早速城戦士達の配置にかかった。

……今思うと姉さんは本当にすごい。しみじみとそう感じる。

上空・地中・外壁の突破など、あらゆる事態を想定して様々な対策を練っている上、それを手早く短時間ですましてしまう。

……そりゃあ隊長に任命されるわな。

そんなことを考えているとサクラが歩いてくる。そして、

「ここにいたのかセンラ。……シルクはどこだ?」

「今は厠にいってい……ます」

思わずため口になるところだった。

「……そうか。……しっかり守れよ」

「おう、いや、はい」

センラの返事を聞いたサクラは「ん」とだけ言って踵を返し、歩いて行った。

と、再びあの疑問がセンラの頭の中をよぎった。

――なぜ俺が会議に呼ばれたのだろう。――

しかし、思い浮かぶ事はなかった。

「……だめだ。やめよう。今はとにかく戦闘に頭を持っていこう」

そうつぶやくと、センラは自分の剣を抜き磨き始めた。

……この剣は…………いや、この信念は、絶対に折らない。砕かせない。

あの日体験したおぞましい殺気。

……そうか。あの時も、俺は……何も出来なかったんだな。

かつて起きたあの事件。思い出したくない封印されし記憶。

ギリ……と歯ぎしりをする。

「……もうあんな事にならないように……俺がなんとかするしか……」

「兄さん? お~い」

「こぽおおおおおっっ!?……って、シルクか……びっくりした……」

「びっくりした、はこっちのセリフだっての!……緊張してるの?」

「…………まあそんなところだ」

「そっか」

そういってシルクがほほえむ。

この笑顔も、命も……そして家族も。

誰かが守ってやらなければならない。誰かが支えて助けなければならない。

まずはシルク、そして姉さんを。次に王国を。

必ず守って見せようと、センラは強く決心した。

「……シルク」

「何?」

「……何かあってもきっと俺が守るからな。だから、その……」

「……うん。ありがとう。私も気を付けるね」

「お、おう」


と、その時だった。


ズシリ  ズシリ  ズシリ  ズシリ  ……


「…!来たな!全員、配置に付け!」

サクラが命令を出すと戦士達は一斉に武器を抜いた。

「………………」

ふと足音がやみ、その場が静まり返る。しかし少しずつ何かの《呪文(おと)》が聞こえてくる。

次第に門の向こうから放たれる閃光。

「!?呪文だと!? 総員! 門から離れ―――」


ドコオオオオオオオオオオン!……


爆発。それは攻撃ではなく、あくまで門を壊すために調節しただけのものだった。

そして…………。

大きな音を立てて開く門。その奥に一人の男が立っていた。

今の呪文。あの殺気。……口元に浮かぶ笑み。

その男こそがこの国……いや、この大陸に恐怖をもたらす史上最悪の暗黒剣士だった。

「……たかが扉。簡単に壊せてしまうな……」

そう言いながらコツ……コツ……と歩く男。

……あの殺気は、下手したらゾト戦士長よりも。

「クックックッ……皆のもの! 良く聞け! この国の周りは私達が占領した! 命が惜しければ今すぐ武器を捨て、この国を私達に譲り渡せ!さもなくば……」

と、そこで下位の城槍兵が一斉に男に飛びかかった。

「バカッ……!」

だが。ほんの一瞬、奴の殺気が膨張した。そして何かを切った音。

その男はほんの一瞬で槍兵の体を切り刻んだのだ。

「雑魚が!この俺――コクガ・ゾドム様に斬りかかるとは!」

声を荒げて叫ぶ男。

「そっちがその気ならばこっちも……!」

そう言うと男は手を正面に突き出す。すると再び……今度はさっきよりも多数の足音が聞こえてくる。

そして次第に音が大きくなり……


「クロロロロロロロロオオン!」


現れたのは――――モンスター(かいぶつ)だった。

それもただのモンスターではなく、黒く、そして見ているものまで不快にさせる殺気を放つ者達――。

「あ、……あれが、《アサシン・モンスター》……」

その姿は巨大な蜘蛛。しかし骨で出来た黒い脚に鋭い爪を持ち、どこか笑っているような、泣いているような――人を不快にさせる表情をした漆黒の骸骨がそれらをつないでいる。

そしてその頭部からは緑色の炎が吹き出ている。高さは城戦士3人程だろうか。

「ククク……これもまだほんの一握りの怪物さ……行け!! 《暗黒の髑髏蜘蛛(ダークネススパイダー)》!! ゴミどもを掃除するのだ!」

「「「クロロロロロロロロオオン!」」」

コクガが叫ぶとダークネススパイダ―が門から2匹、外壁から6匹出てきた。

「う……!?戦闘開始!今すぐ最上位戦士はあの蜘蛛をけちらせ!!他は蜘蛛以外のモンスターに攻撃するのだ!」

『ハッ!』

「ああ、シルク!センラ!お前達も蜘蛛をやれ!」

「「了解!」」

こうして戦いの幕は上がったのである。


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