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仲間を増やそう!

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本当にありがとうございます!


まさかの総合評価1000ポイント達成


皆様の応援に支えられております


これからもよろしくお願いいたします!

「けっんごくーん!」

「達也。おまえの頭は、本当に毎日ご機嫌だな」

「おう! 今日はいつも以上にご機嫌だぜ」


 もう手遅れだこいつ。

 嫌味すら理解できないほど、脳みそが腐ってしまった。


「おまえには今度、防腐剤をやるよ。頭に貼っとけ」

「お? なんかよくわからんけど、もらえるもんはもらっとくぜ」


 かっかっかと馬鹿笑いする親友に、俺は諦観のまなざしを向ける。

 悩みごとのなさそうなこいつが、本気でうらやましい。

 

 世の中達也みたいなやつばかりだったら、きっと平和なんじゃないだろうか。

 そんな世界を一瞬妄想してしまったが、どう考えても牢屋が妹への性犯罪者で溢れる結末だった。

 牢屋が足りないせいで、なけなしの血税をはたいて増築。

 収容者が増えれば増えるほど、維持費用も増えていく。

 そんな妹馬鹿どもを養うために、俺たちの汗と涙の結晶が湯水のごとく使われるのだ。


 パンッ!


「ぶふぉっ!? な、なんでいきなり殴んだよ!?」

「いや、全国民の代表として殴っといた」

「理不尽じゃね!?」


 涙目で訴える達也に、左頬に叩きつけた右手をプラプラ振って答える。

 まあ、でもたしかにこいつの言う通り、俺の妄想世界の罪で殴るのはやりすぎだったか。

 ごめんな、達也。反省したわ。

 これからは、気をつけるよ。


 パンッ、パンッ、パンッ!!


「ばふぉおおっ!? な、なんでまた殴んだよ!? 三回も!?」

「いや、さっきのはたしかに理不尽だったからやり直した。今日も部屋を物色されたろう、彩音の代わりに殴ったぞ」

「も、もうさっき殴ったじゃねえか! なんで、三回もおかわりしなきゃいけねえんだよ!?」

「おまえが今まで物色した回数を数えろ」

「…………千物色につき、一発にしようぜ――って、剣護様ぁ!? だから110番はシャレにならねえって! せめて、117で許して」

「それ、ただの時報じゃねえか!」


 そう。こいつは今日も当然のごとく、朝のホームルーム開始直前に教室に滑り込んできたのだ。

 つまり今日も彩音は、知らぬ間にこのド変態に部屋を侵されたのだ。

 俺は兄と慕ってくれる彩音のためにも、そろそろ本気でこいつを更生させなきゃならん気がする。


「それに彩音は、俺のことを兄として少し見直してくれたんだ! 今の彩音が俺を殴るわけがない。かってにあいつの名前を借りて殴ったら、あいつの心を傷つけることになるぞ!?」

「へい、へい、へい。落ち着け相棒。興奮してるとこ悪いが、とりあえず一つ聞かせろ。彩音がおまえを見直したって?」

「そうだよ」

「彩音がおまえを殴らないって?」

「そうだよ! きっとこのまま順調にいけば、来週……いや明日にでも、『お兄ちゃん、大好き!』って抱き着いてくる彩音がいるに違いない。待ちきれないぜええええええ」


 それはありえないだろ。

 そんな彩音、たぶん平行世界のどこにもいないぞ。

 異世界に転生して、彩音そっくりの妹を探したほうが、まだ可能性あんじゃねえかなあ?

 その世界の彩音にも、速攻で嫌われるだろうけどな。


「……んで、その見直されたって根拠はなによ? 朝起きたら、そういう夢を見てたとかはやめろよ」

「ばっか。俺は現実しか見ない男だぜ。そんな、そこらへんの情けないやつらと一緒にするな」

「お、おう。いろいろ突っ込みたいが、キリなくなるから話進めてくれ」

「あのな。朝、俺が洗面台の前で歯磨きしてたらな、『おい、邪魔だからそこどいて!』って言ってくれたんだ」

「うん。それで?」

「それだけ」

「は?」


 なに言ってんだこいつ。

 それどう考えても、クソタツよりも悪化してるだろ。

 もしかして、もう脳みそドロドロなんじゃねえか?


「は? じゃねえよ! クソタツ、クソタツ呼んでた彩音が、おいって呼んでくれたんだぞ!? きっと俺の真摯な毎日に、あいつの凝り固まった心がほぐされたんだと思う。この感動、おまえにわかんねえのかよ?」

「異星人の感性なんて、俺には一ミクロンもわかんねえよ」


 だいたい真摯な毎日ってなんだよ?

 おのれの行動を振り返って、それでもそう言えんのか?

 それとも真摯に部屋への侵入や、洗濯物クンカクンカに取り組んでますってか?

 おまえにピッタリなのは、真摯じゃなくて紳士だろ! ド変態のほうな。


「まあ、童貞のおまえにはとうてい理解できんか」

「おまえも童貞だろうが! キスすらいかずにフラれてるくせに。俺は、『おい』呼びで喜ぶほど落ちぶれた童貞にはなってねえぞ」

「うっせえ。すでに俺の童貞は、夢の中で彩音に捧げてんだよ!」

「ついさっき、情けないやつと吐き捨てたすべての人に土下座でお詫びしろ」


 まさに目くそ鼻くそ。五十歩百歩。

 童貞同士の情けない言い争いが繰り広げられる。

 

 くっそ。俺はおっぱい揉んだことあるんだと表明できれば、この醜い勝負に蹴りをつけられるのに。

 相手が小五とか、口が裂けても絶対に言えねえ。

 国会議員さん……いや国会議員様。そろそろ少子化対策として、下は十歳から合法にしませんかね?

 そうすれば俺はおっぱいを揉んだ童貞として、堂々と君臨することができる。

 総理! 十六歳にこだわる理由は何があるんでしょうか? 十歳じゃだめなんでしょうか!?

 前田利家の妻まつは、十一歳で出産してるって記録が残ってるんですぜ?


「お兄ちゃん! きたよー」

「おお! 愛しの妹よ、遅かったじゃないか」


 こんな不毛な言い合いに決着をつけられる、唯一の救世主が現れる。

 その救世主たる彩音に、学習能力を失った馬鹿が飛びかかる。


「だから、わたしのお兄ちゃんは――」

「あ、彩っ――!?」


 ドッシーン!!


「ぐふぉあっ!?」

「あんたじゃないって何度も言ってるでしょ!? この、クソタツ!!」

「あ、彩音……。せめて、せめて朝みたいに、おいって……呼んで……」

「見事な投げっぱなしジャーマンだなー」


 迫る達也を華麗なステップでよけて背中に回り込むと、そのまま頭から投げ飛ばす。

 兄のほうはもう行き着くところまで行ってしまっているが、妹もどこに向かっているのやら。

 達也はどこか満足げな顔で、目を回している。

 きっと背中に、かすかな胸の感触でも感じたんだろう。


「へへー。ネットで動画を見ながら練習したの」

「偉いぞ、彩音。これからも世の平和のために、こういう変態はバンバン投げて捨てていこうな」

「うん! 彩音、頑張る」


 褒めてほしい光線を全身から放出して近づいてくる彩音の頭を、これでもかとなでてやる。

 朝も俺よりも早く教室で待ち構えてた彩音に、週明けってことでこれでもかとお兄ちゃんパワー充填したんだけどねえ。

 どれだけ成長しようとも、甘えん坊なのは出会った時から変わらない。


「そういえば、普通にクソタツって呼んでたな。なんか、朝は洗面台でおいって呼んだらしいけど」

「え? 全然記憶にない。今朝はお兄ちゃんに早く会うためにめちゃくちゃ急いでたから、あいつをなんて呼んだかなんて覚えてないよ」


 哀れ達也よ。

 妹はなにか心の機微があって、おまえを『おい』って呼んだわけじゃないみたいだぞ。

 たぶん『クソタツ』の四文字も煩わしいくらい、急いでたってだけなんだ。

 でも俺はよかったと思う。

 目の前で妹におい呼ばわりされて喜んでる達也を見たら、きっとクラスメイトはおまえになんて声かけていいかもわからなくなっちまったろうさ。

 だからおまえはクソタツでいいんだ。これまでも。そしてこれからも。


 しばらく頭をなでていると、クラスの喧騒の中からチラホラ彩音について話してる声が聞こえる。

 それも、好意的なものばかりだ。

 彩音は、いつでもどこででも人に好かれるんだなあ。

 幼馴染として、兄と慕われる身として、なんだか嬉しいし誇らしい。

 

 そういえば、彩音はたくさんの女子に同時に取り囲まれることもよくあるよな。

 きっとあしらい方も、熟練の技を持っているんじゃなかろうか。


「なあ、彩音」

「どうしたの、お兄ちゃん?」

「えーと。バイトの友達に相談されてんだけどさ、たくさんの女子に同時に迫られたときって、どうやってその場を収めたらいいんだ?」

「……それ、本当にバイトの人の話?」

「そ、そうだよ……」


 やべぇ。声ちょっと震えたかも。

 目は泳いでなかっただろうか?


 彩音は昔から嫉妬深かった。

 少しでも女子と仲良く話してると、機嫌が悪くなったり、俺にしがみついて離れなくなる。

 きっとお兄ちゃんを、ほかの人に取られるのが怖いんだろう。

 俺が消えたら、彩音の兄は達也しか残らなくなるからな。心配になる気持ちもわからんでもない。


 だから俺は、小林兄妹に全部黙っている。

 ネットでアリスと知り合った時も。

 アリスと仲良くなった時も。

 気になる存在になった時も。

 そして、告白が成功した時も。


 アリスが小学生と判明して、ハーレムゲームなんて勃発してしまった今となっては、べつの理由でますます言えなくなってしまっているけども。


 とにかく、この相談は俺自身のこととバレるわけにはいかない。

 彩音がもっと成長して、お兄ちゃん離れできるまでは。


「一人の女の子にすら迫られないこいつが、複数の女の子とかありえないだろ」

「……相変わらず、復活早いな」

「俺は、彩音からゴキブリ並みと褒められた生命力だからな」


 ふふんっと自慢げにきめたドヤ顔に、こぶしを入れてやりたくなるが今回は勘弁してやる。

 俺を馬鹿にしてるだけだろうけど、いちおうフォローされたような状況だからな。


「……そうかな。お兄ちゃん、結構モテるけど」

「ないない。俺ですら最近さっぱりなのに、こいつがモテるとかぜーったいにない! 顔見ればわかるだろ。完全にモブの顔じゃん」


 ……彼女いるモブキャラだって、腐るほどいるだろうが。

 とりあえず今度なんかあったら、絶対に殴る。


「んで、どんな女の子なのよ?」

「え?」

「だからギャルっぽいのか、清楚っぽいのか、はたまたエロそうなのか。年上なのか、年下なのかとか。どういう女の子がいるかによって、対応違ってくるだろ」

「ああ、そっか。おまえ、初めて役に立った気がするわ」

「俺はいつでも役に立ってるだろ! 先週だって、おまえのためにお宝を――むぐっ!?」

「わー! わー! わー!!」


 立ち上がって、とんでもないことを口走ろうとした馬鹿の口をふさぐ。

 こいつこんなクラスの中心で、しかも彩音の目の前で何言うつもりだ!?

 達也は、にやけた顔で、俺の手から必死に逃れようとする。

 こいつ、まださっきの続き言うつもりだな!?


「むぐー! むぐー! むぐー!!」

「黙れ。これ以上この件を蒸し返したら、部屋のことと洗濯物のこと全部ばらす。わかったか?」


 さっきまでニヤニヤしていた顔が、一瞬で青ざめる。

 無罪判決を確信してた被告人が、死刑判決を受けたらこんな感じになるんだろうか。

 俺の問いにゆっくりと一回首を縦に振ったので、解放してやる。


「で、あの、剣護様。どんな女の子なんでしょうか?」


 急に敬語とか露骨すぎんだろ。

 

「ええっと。俺も聞いただけだから、よくわからねえんだけど……小学生らしい。四人の」

「えっ?」

「だから、四人の女子小学生に迫れられてるらしい。そいつ」

「病院紹介してやれよ。それと尿検査な」

「幻覚じゃねえよ!?」


 もう敬語じゃなくなってるし。

 反省の時間が終わるのも早すぎるだろ。


「だってバイト先の友達ってことは、高校生以上だろ? そんなやつが四人の女子小学生に迫られてるとか、妄想にしても酷いじゃん」

「す、すごい真面目でいいやつなんだよ。だから嘘は言ってないはず」

「そんなこと言われてもねえ」


 達也は興味なしという態度で、話を放り出す。

 妄想の話と決めつけたようだ。

 まあ普通ならそう思っても仕方ないかもしれない。

 ロリコン童貞が、妄想と現実の区別がつかなくなったような内容だもんな。

 でもなんで変なとこだけ、リアリストなんだよこいつ。


「ねえ。迫られてるって、全員に好かれてるってこと?」

「えっ? い、いや、そういうんじゃないみたい」


 そんな話でも、彩音はやけに真剣に聞いてくれる。

 さすがは、こんな達也をまだ完全には見捨てていないだけある。

 彼女は、宇宙のように無限の心を持っているのだ。

 ……でもその視線、真剣すぎやしないかい?


「じゃあ。どういう感じなの?」

「えっと。そいつと小学生四人でゲームをやってて、負けたら罰ゲームがあって。それに勝とうと、四人がいろいろと仕掛けてくるみたいで」


 ところどころ嘘だけど、まあ説明はこんな感じでいいだろう。

 とにかく四人の攻撃にどう対処すればいいか。

 そのヒントさえ掴めればいいんだから。


「ふーん。あのさ、仲間を増やすのは駄目なの?」

「仲間……?」

「そう。一人で四人を相手にしたら大変だけど、仲間が一人増えただけでも、二人ずつ対応することができる。そしたら、かなり楽じゃないかな?」

「仲間か……」


 アリスたちが高校生以上だったなら、それもよかったかもしれない。

 でも小学生とのハーレムゲームに、仲間を増やすとか社会的に死ぬだけじゃなかろうか?


「おっす。達也。ハーレムゲームに協力してくれ」

「ハーレムゲーム? なんだよそれ?」

「俺が小学生と一線超えたら負けなゲームなんだけどさ。最近相手が仲間を増やして大変なんだよ」

「はっは。薬抜くのは大変らしいけど、俺が協力してやるよ。一緒に頑張ろうな」

「そんな協力要らねえよ!」


 まあ一生懸命説明しても、これが関の山だろう。

 仮に現実の話だと信じてくれても、警察への出頭について行ってやるみたいな結末じゃなかろうか。


「四人の誰かを、篭絡して引き抜いちまうなんてのもあるぞ?」

「篭絡?」


 俺が難しい顔をして頭を悩ませていると、いったん離脱した馬鹿面が俺と彩音の間に現れる。


「そうだよ。誰か引き抜いて仲間にしちまえばいいんだよ。戦国時代とかよくあるだろ。こっちの戦力を増やして、相手の戦力も削れる。最高じゃん」

「それだ!!」

「うっお!?」


 そうだ!

 昨日の様子を見た限りでは、ハーレムゲームに積極的に協力してるのは蛍だけに見えた。

 もしもあとの二人にうまく説明して協力してもらえれば、かなり有利に戦える。

 それに同学年との友達との触れ合いも、アリスの心にいい影響を与えてくれるかもしれない。

 一石何鳥かもわからないじゃないか。


「やるな、達也! でもおまえ、さっきまで興味なさそうだったのに」

「俺はゲームが大好きなんだよ。とくにシミュレーションとか、戦略ゲームがな。妄想だろうと、黙ってられなくなっちまった」

「これで、バイトのやつもきっと喜ぶ」

「ま、まあ、今日はよくやったんじゃん? お兄ちゃんの助けになったみたいだし。クソタツも、たまには役に立つね。……いつも、そうならいいのに」

「あ、あ、あ、彩音えええええええ」

「ちょ、ちょっと!? 調子乗んな!!」


 ゴギッ!


「いでええええええええ!!」

 

 感極まったのか我慢できずに襲い掛かる兄の腕を、容赦なく極める妹。

 

 そんな二人を眺めながら、俺は今後どう動くかを熟慮し始めたのだ。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたならなによりです


次回もよろしくお願いいたします!


次はアリスの学校回です


その次くらいでアリスの闇の理由に触れ始めると思います

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