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ハーレムゲーム開戦!

あらたにブックマークしていただけた皆様

評価を付けていただいた皆様

感想を書いていただいた皆様

そして読んでいただいた皆様


本当にありがとうございます!


ぐんぐんモチベーション上がっております


これからも頑張りますので、応援のほどよろしくお願いたします!

 アリスと初めて会った日、ハーレムゲームの開始を宣言されてから一週間が経った。

 あの日以来、アリスとススズとしてネット上であまり変わらぬやり取りを続けていた。

 『あまり』の部分は、アリスのコメントの内容である。以前に比べて、性的に少々過激になったのだ。


『わたしこないだの身体測定で、おっぱい結構大きくなってたんだよ』

『小学生のわたしとエッチなことできるのは、今だけなんだよ? いつやるか!? 今でしょ!!』

『小学生のわたしも、中学生のわたしも、高校生のわたしも、大学生のわたしも堪能すればいいじゃん』

『ススズは小学生を好きになったのに、小学性は我慢できるとか本気で思ってるの?』


 こんなことを毎日のように、何回も何回も投稿されている。

 大前提だが、俺はアリスが大好きだ。こんなふうにずっと誘われたら、結構辛抱たまらんのだ。

 今の俺を思いとどまらせているのは、法律と『一線を越えたら即敗北』というハーレムゲームのルールで構築された鎖。

 その鎖を食いちぎらんと、アリスは攻勢を続けている。


 この数日で気づいたのだが、このハーレムゲームは最初予想していた以上に俺に不利だった。

 俺はチャラ男先輩の言葉で確信した。アリスの心を治せるとすれば、それは俺が直接会って、俺の存在でもって癒し続けるしかないと。

 

 いっぽうでアリスは、ネットでもさっき書いたようにいくらでも攻撃することができる。

 毎日、着実に俺の理性の鎖を腐食させているのだ。

 そして直接会ったときは、さらに強力な攻撃をすることができる。ずるい!

 会った時くらい、俺の攻撃だけのターンでいいじゃん!

 まるで超理不尽な、RPGのボス戦みたいな様相である。


 そして、今日。

 俺はアリスに誘われるままのこのこと、一週間前に降りた駅に再び降り立っていた。

 アリスと会ったカフェがある、彼女の地元の駅である。


 俺は、まだ今日何が待ち構えているのか知らない。

 アリスがかたくなに『秘密だよ』と、教えてくれなかった。

 でもこの一週間ネットでちまちま確実に削った俺の理性ポイントを、一気にゼロまで減らすつもりなのは間違いない。

 本格的なハーレムゲームの開幕戦。心してかからなければ。


 階段をおりて、待ち合わせ場所として指定された駅前のデジタル時計に向かう。

 すでにそこには、白いワンピース姿の美少女がちょこんと立っている。アリスだ。

 アリスの姿を見つけた俺は、少しだけ駆け足になる。

 そんな俺にアリスも気づいて、笑顔で手を振っている。可愛い!


「剣護さん! おはようございます!」

「おはよう。やっぱり、その白いワンピース似合ってるね」

「あ、ありがとうございます。先週と一緒なので、ちょっとどうしようか迷ったんですけど。でも剣護さんが、可愛いって褒めてくれたから。その時の嬉しい感覚が、どうしても忘れられなくて」

「ははっ。ずっとそのワンピースでもいいよ。そのくらい、本当に可愛いんだ」

「あ、ありがとうございます」

 

 アリスが頬を染めて、うつむく。超可愛い!

 てか、あれ? もしかして、先制攻撃決まったか!?

 べつに狙ったわけでもなく、用意してたわけでもない、普通にその場で出た感想だったんだけど。

 これが、いわゆるラッキーパンチというやつなのだろうか? 幸先いいじゃん。


「むぅ。ススズのくせに生意気です!」

「あ、アリス!?」

「さあ。早く行きますよ!」


 アリスはちょっとだけ頬を膨らませて、俺の腕へと飛びついてくる。

 恋人のような感じで腕を絡めてくると、目的地に誘導するように歩き出した。


「こ、このまま行くの!?」

「大丈夫です。このくらい、兄妹でもやってる人はいます。お巡りさんも、疑いませんよ」

「そ、そうかもしれないけど」

 

 駅前といえば、交番である。

 もしも職質されたら、どう答えればいいんだろう。


「小学生とハーレムゲームやってます!」

「おお、ハーレムゲームですか! 失礼しました。お気をつけて!」


 これが考えうる限り最高の展開だが、まず難しいだろうな。


「小学生とハーレムゲームやってます!」

「おお、ハーレムゲームですか! ちょっと交番まで来てください!」


 どう考えてもこっちが本線だ。

 なのでお巡りさんの目に留まらないか、正直ドキドキだ。


「ふふっ。わたしのおっぱい、少し大きくなったでしょ?」

「な、な、な、なに言ってんだよ!?」

「顔真っ赤にして、可愛い。さすが童貞ですね」


 そ、そもそも、もともとの大きさ知らないって――じゃなくて!

 た、たしかに、慎ましいながらもしっかりと柔らかい感触が――っじゃなくって!!


「お、お巡りさんに聞こえたらやばいって!」

「大丈夫ですよ! このくらいの会話、仲のいい兄妹ならどこにでもありふれてます!」

「それ二次元の世界の話だろ!? この世界にそんな最高の妹がありふれてたまるか!」

「……そういえば、ススズは妹キャラに惹かれることが多いですよね。もしかして、お兄ちゃんって呼んだほうが嬉しいですか?」

「……そ、そんなことない――」

「剣護お兄ちゃん。アリスにエッチなこと、……して?」

「ぐふぉあっ!?」

「やったー! 会心の一撃! ここぞで、使いますね」


 どっちかというと、痛恨の一撃だろ? この小悪魔め。

 というか余計な一言のせいで、とんでもない武器を与えてしまったんじゃ……。

 ラスボスをこれ以上強化して、どうすんだ俺!?

 ゲームバランス滅茶苦茶な、糞ゲーになっちまうぞ。


 歓喜の血反吐を吐いていると、いつの間にか繁華街に出ていた。

 有名チェーンの飲食店や、コンビニ、不動産などがずらっと並ぶ。

 日曜なだけあって、人通りも多い。

 子供連れの幸せそうな家族とか、カップルなどとよくすれ違う。

 俺とアリスは周りからどんなふうに見えているんだろうか?

 そんなことを思いながら、想い人をチラッと見やる。

 そこにいたのは、伏し目がちで元気のなさそうな美少女の姿だった。 


「アリス? 具合悪いのか?」

「……あっ!? だ、大丈夫です! ちょっと、考えごとをしていただけで」

「ほんとか!? 熱は……ないか」

「け、剣護さん!? は、恥ずかしいです」

「ははっ。べつに手ではかるくらい、いいじゃねえか。それとも、おでこではかったほうがよかったか?」

「も、もう知りません!」


 自分のおでこを指さして笑うと、アリスはぷいっと顔を背けてしまう。

 考えごとをしていただけってのは本当みたいだな。安心した。


「剣護さん、着きましたよ?」

「げえぇ!?」

「なに、カエルみたいな声出してるんですか?」

 

 しばらく歩いてアリスが立ち止まったのは、とある有名カラオケチェーン店の前だった。

 どうやら目の前にデンと鎮座する立派な建物が、全部このカラオケ店らしかった。俺が今まで行ったことあるカラオケなんて、雑居ビルの一角に入ってるような店だったので大きさの違いに驚く。

 

 いや、今は店の大きさなんかどうでもいい。

 小悪魔とこの状態でカラオケ店は、不味いよぉ。不味すぎるよぉ。


「きょ、今日はほかのところに行かないか? ほら、天気もいいし公園でも」

「なに言ってるんですか? 先週も言いましたよね。時間があったら、カラオケで密着したいって」

「せめて、今日だけは。いや、贅沢は言わん。あと二時間くらい待ってくれ!」

「二時間待ってもまた、『剣護お兄ちゃん、エッチなことしよ?』って言うから、そのたかぶりを鎮めてのカラオケは一生不可能ですよ?」

「この鬼があ!」


 俺は心で血涙を流す。

 本当ならロリコン上等と覚悟を決めた俺にとって、これからの時間は天国のはずだった。それがハーレムゲームによって、地獄めぐりへと顔を180度変えてしまう。

 酷い、酷すぎるぜ神様。これがロリコンへの天罰だってのかい? だとしたら、これはあまりにも重くないかい?


「ほらほら、さっさと入りますよ」

「いぃやぁだあああああああああ」


 俺はアリスに引きずられるように、『本日、改装中につき臨時休業』という紙が貼られた自動ドアを通過した。


「ちょ、ちょ、ちょ、アリス。今、臨時休業って目に入ったような……」

「大丈夫です。今日は特別ですから」

「特別ってどういう――っ!?」


 視線をアリスから店内に向けると、特別の意味の一端いったんを理解した。

 一般的に若いあんちゃんやお姉さんが出迎えてくれそうなカウンターに、ごつい黒服の方々が大勢並んでいるのだ。これはたしかに特別だ。悪い意味で。


「あ、アリス!? このカラオケ絶対やばいって! 店員の風貌的に、ぼったくり店にしか見えないぞ!」

「剣護さん。大丈夫ですよ。あの人たちは、ただのボディーガードです」

「ボディーガード? なんで、そんな人がぞろぞろと……?」

「おはようございます。アリス様。そして相馬様。京華様がお待ちしております。野中様、藤林様はすでにご到着されております。603号室にお向かいください」

「ありがとうございます」

「えっ? なんで俺の名前……」

「さっ、早く行きますよ!」


 なにがなんだかわからず頭の中『???』な俺の手を掴んで、アリスはエレベーターへ駆け出す。

 なんか聞いたことのない人の名前が、出てた気がするんだけど。今日は二人きりじゃないのだろうか?

 なにが起こってるのかはまったくわからないけど、だとしたら少しは戦えるかもしれない。

 暗く狭い密室で二人きりで迫られると思ってたから、それに比べたら全然いけそうな気がしてくる。

 まさかほかの人の目がある中で、アリスも大胆な行動はなかなかできないだろう。直接的にエロいことも言いづらいはずだ。


「さっき名前出てた三人って、友達?」

「はい。みんな同じクラスのお友達です」


 きたきたきたあああ。

 仮に全員女の子だったとしても、会ったこともない俺へのエロ攻撃を女子小学生が手伝うとは考えにくい。

 そこまで現代の小学生の性が乱れてるなんて、お兄さん信じたくないよ。


 きっとアリスは、俺に友達を紹介したかったんじゃないか?

 まだ付き合ってるわけじゃないけど、今日は記念すべき初デートみたいなもんだ。

 アリスもさすがに今日は、どこか甘酸っぱい素敵な思い出にしたかったんじゃないだろうか。

 密着したいとか言ってたけど、それもさっきの兄妹がギリやりそうなレベルってことなんだろ。

 今日は俺が攻勢に出られるかもしれない! 

 

 ごめんよアリス。遊ぶ場所がカラオケってだけで、疑ってしまって!

 むしろこんなことで、エロいことを妄想しまくってた俺のほうが最低ですよ。ロリコン死すべしって感じですよ。

 でもよかった。君が普通の恋する少女の心を持っていて、本当によかった。


「アリス様。お待ちしておりました」

「――うっわ!?」


 六階でエレベーターを降りて黒服の間を少し歩くと、落ち着いた声とともにわずかな風を体に感じる。

 刹那、さっきまでいなかった人が、目の前に立っている。

 男か女かもわからない中性的で綺麗な顔立ち。なにか、心を見透かされそうな瞳で見つめられる。


「初めまして。そちらは相馬様でございますね? わたしは京華様の御付きをしております、セバスチャンと申します」

「ど、どうも。相馬剣護です」


 丁寧なあいさつをしてくれたセバスチャンに、俺もぺこりと頭を下げる。

 そういえば、一階の黒服も『きょうか様がお待ちしております』と言っていた。つまりこのセバスチャンも、大勢の黒服の人たちも、全員その『きょうか様』に仕えているってことだろう。

 アリスの友達って、とんでもない金持ちじゃないのか?

 

 考えてみると、俺はアリスの実家のことも全然知らない。

 まさか年の差だけじゃなく、身分の差も激しい恋なのだろうか?

 そのくらいで諦めるつもりなんて毛頭ないけど、また壁が一つ増えてしまった気がする。

 いや、まだアリスが金持ちとは限らないけどね。

 

「田中さん、おはようございます」

「おはようございます。アリス様」


 た、田中? 外国の人じゃなかったの? ってことは、田中セバスチャン!? キラキラネーム!?


「結局、店舗全部を貸し切ってくれたんですね?」

「京華様がお歌いになるとのことなので、石橋を叩きに叩いてそうさせていただきました。このように、お部屋も最上階にご用意を」

「ふふっ。さすがに大袈裟じゃないですか?」

「一階の者にも、油断だけはするなと忠告しております。ご武運を」

 

 そっと、セバスチャンがアリスに何かを渡した。

 アリスは受け取りながら「ありがとう」と言って、その何かをポーチにしまう。


「それでは、わたしどもは京華様の命により、少し離れた場所に控えさせていただきます」

「な、なんかよくわかってないけど、ここを用意してくれたんですね? ありがとうございました。えーと、セバスチャンさん」

「――っう、……ぐっ、ぐふぅうううううう」

「な!? なに!? なんなの、どうしたの!?」


 一言お礼をして603号室に向かおうとしたところ、突然一人泣き崩れてしまう。

 

 セバスチャンだ。


「う、ううう。わたしをセバスチャンと呼んでくれる人、初めてなんですううう」

「ええ!? そうなんですか!?」

「西園寺さんが、『田中』で呼び出しますからね。なので、みんなも田中さんと呼んでます」

「ご主人様はじめ西園寺家の皆様も、わたしの同僚も、みんな田中、田中と。この仕事に就いたら、セバスチャンと呼んでもらうのが夢だったのにい」

「も、もしかして田中セバスチャンさんでは……?」

「違いますぅ。田中薫たなかかおるですぅ」

「田中さんの本名、初めて知りました。やっぱり、剣護さんはすごいです!」

「そ、そうなの!?」


 よほど嬉しかったのか、喜びの涙を流し続ける田中さん。

 そんな田中さんの肩にポンっと手を置き、笑いかける。


「こんなことくらいで喜んでもらえるなら、俺だけはこれからもセバスチャンさんって呼びますよ」

「……『さん』もいりません。セバスチャンとお呼びください」

「え? でもそれはさすがに……」

「セバスチャンと! ぜひ、セバスチャンと!!」

「えっと、……せ、セバスチャン?」

「ありがとうございますうううう」


 俺が肩に乗せたのと逆の手を両手で取って、ぶんぶん上下に振りながら喜ぶセバスチャン。

 まあ今日お世話になたみたいだし、少しはお礼になっただろうか。


「ま、まあそんなに期待されても、今後会えるかどうかもわからないですけど」

「絶対に会えます!」

「へっ?」

「会えるように、いろいろとわたしも工作……いえ、協力させていただきます!」

「こ、工作!?」


 この人は、なにをするつもりなんだ!?

 セバスチャン呼びがそんなに気持ちよかったのか、よだれまで垂らしちゃってるし。

 もしかして田中さんにとってセバスチャン呼びは、麻薬を大量に摂取させたようなものなんじゃないか?

 また俺は、浅慮なことをしでかしたんじゃ!?

 誰もセバスチャンって呼んでない時点で、なにか理由があると気づけよ俺!


「なーに、頭抱えてるんですか? さっ、そろそろ入りますよ」

「相馬様! わたしのためにも、生きて帰ってきてくださいねー!」


 アリスが俺の手を引っ張ると、背中に田中さんから不穏な言葉が投げかけられる。


「あ、アリス。さっきからセバスチャンは、何を言ってるんだ? ご武運だの、生きて帰れだの。まるで戦場にでも行くみたいじゃないか」

「ふふっ、戦場。言い得て妙ですね。たしかにこれから行き着く先は、戦場です。わたしと、ススズの。ハーレムゲームの開戦ですから」

「へっ!? きょ、今日はみんなでわいわい遊ぶんじゃ――っ!?」


 その瞬間。

 妖艶な微笑みを浮かべるアリスを見た瞬間、わかってしまった。

 俺の考えが甘すぎだったと。

 彼女は今日から全力で、ハーレムゲームを終わらせに来る気だと。

 中にいる三人の友達も、そのために使うつもりだと。

 自発的な協力者か、騙されて利用されるのかはわからないけれども。


 603号室の前で、ゴクリとつばを飲み込む。

 いったいこの中にどんな子が待っていて、これからどうなってしまうのか?

 緊張感で、冷汗がびっしょりなのを感じる。


「じゃあ、開けますね?」


 アリスがノブを回す。


「この子たちが、わたしのクラスのお友達です!」

「「「は、初めまして!!」」」


 中でお辞儀をしていたのは、可愛すぎる三人の天使だった。

 

 こうして最上級の天国にして同時に地獄な世界が、俺を迎えてくれたのだ。

ということでハーレムゲーム開戦です


次回はカラオケの中での出来事を書きます


ここまで読んでいただいて、ありがとうございました!


少しでも楽しんでいただけたなら幸いです


これからも、よろしくお願いいたします!

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