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小林兄妹と過ごす俺の日常

親友と妹ポジ登場です

作者は主人公の親友の妹が可愛いくてしかも懐いている設定が大好物です。


ブックマーク登録してくださった皆様、評価をしてくださった皆様。

本当に心からありがとうございます!

モチベーションが上がります!

これからもよろしくお願い申し上げます。

 ホームルームが終わり、一時間目の開始を前に教室がつかの間の喧騒に包まれる。

 そこかしこで、ホームルームで強制中断となった会話が再開される。

 週末こんなことがあっただの、話題のこんなところに遊びに行っただのと盛り上がっていた。

 

 そんないずれの会話の輪の中にも参加せず、俺は机に突っ伏して昨日のことを考えていた。

 もうあれから何度思い返しては悩んで、そして答えは出ないのループを続けているんだろうか。 

 

 クラス替えがあってから、一週間が経過した。

 もう新しいクラスでの仲良しグループとか、序列とか、役どころなんかがだいたい決まってくる。もちろんベースとなるのは一年のころに築き上げた人間関係や評判であり、春休みの間によほどの大変身でも遂げていなければ、地位は上にも下にもあまり動くことはない。

 クラスが変わっても人気者は人気者、空気なやつは空気のままということだ。

 

 俺も一年のころと変わらずに、たいていの人とソツなく付き合って友達くらいにはなるが、親友とか彼女とかにまでは発展しない。そういうクラスの中心ではないけれど、鼻つまみ者でもない。そんな場所に立っていた。


「なーに、朝から神妙な顔で考えにふけってんだよ!」


 そんな俺にとってこの学校で唯一の親友と紹介してもいいかもしれない腐れ縁な男が、背中を無遠慮にバンバンと叩いてくる。

 

 この悩みという言葉と縁遠いところにいそうなお調子者は、小林達也こばやしたつや。自称コバタツ。(こいつをコバタツと呼んでいる人に、俺はいまだに遭遇したことはない。惜しい呼び方をしてくれる人なら知ってるんだけど)

 顔は結構イケメン。身長も高くスタイルもいい。このように社交性も高く誰とでもすぐに仲良くなれる。運動神経もいいほうだ。部活には入ってないが、体育の時間は大活躍する。

 でも、今ではまったくモテなくなってしまった。最後の希望は達也の本性を知らない新入生がたくさん補充されたことだが、どうなるだろうか。

 残念ながら、達也は馬鹿なのだ。けっして勉強ができないわけではないが、頭が悪い。

 こいつの近くにいると、テストの点数と頭の良さは必ずしもリンクしないと思い知らされる。


 達也と俺の付き合いは小学校一年の時からだ。

 時間の長さを考えたら、幼馴染とも呼べるかもしれない。

 俺たちはクラスメイトとして出会い、ウマが合ったのかなんだかんだよくつるむようになった。

 それに加えてでかかったのが、俺たちのクラスメイト確率だ。その割合、なんと驚愕の100%!

 小学校一年から高校二年の今年まで、じつに十一年連続で同じクラスに席を並べているのだ。

 ぶっちゃけ、なにかが裏で暗躍してる気がしないでならない。ちょっと怖い。

 でもこんなに一緒になっても互いに嫌気がさしてないってことは、やっぱり俺たちは親友なんだと思う。

  

「俺にだっていろいろあんだよ。そういうおまえは、今日も頭空っぽそうでうらやましいよ」

「馬鹿言うな。俺は毎日のように選択と決断の日々を生きてんだぜ」

「へいへい、さいでっか。てか、おまえまーた遅刻ギリだったな。てことは、今日も……」

「当然! 彩音あやねのルームチェックは、毎朝の日課だからな。あいつが家出たあとと同時にスタートだから、どうしてもこうなっちまう」

「まったく、日本の警察はなにやってんだよ。いつまでも、こんな性犯罪者を野放しにしやがって」

「俺をそんな蔑むような目で見るな! 妹が過激な下着を買ってないかチェックするのは、兄の大事な勤め――って、剣護様!? 110番は、ほんとシャレにならないからやめて!」

 

 彩音とは達也の妹のことだ。

 俺たちの一つ下で――と、噂をすればまたやってきた。


「お兄ちゃん! またきたよー」

「おお!? 愛しの妹よ! また会いに来てくれたんだな!!」

「おまえは、近づくな! この世で彩音にとってのお兄ちゃんは、剣護お兄ちゃんだけ。いい加減覚えてよ! おまえはクソタツだから!」

「よかったな、達也。おまえの自称で呼んでくれる人なんて、彩音くらいだぞ? 優しい妹を持てて、俺はおまえがうらやましいぞ」

「俺はクソタツじゃねえ! コバタツだ! 俺の名前は小林達也であって、糞林達也くそばやしたつやじゃねえんだよ! 優しい妹なのは、全面同意だけどな」


 長い年月の中で彩音の俺への呼び方は、剣護お兄ちゃん→お兄ちゃんに変わった。いっぽうで達也への呼び方は、お兄ちゃん→達也お兄ちゃん→元お兄ちゃん→達也→達と変わっていき、今年高校入学を機についにはクソタツとなってしまった。

 でもこの兄妹のことをずっと見続けた俺からすると、完全に達也の自業自得だった。


「お兄ちゃん。優しいって言ってくれたのは嬉しいけど、こいつの妹っていうのだけはやめて。彩音はお兄ちゃんの妹なんだから」

「彩音ぇ。せめて、……せめて元お兄ちゃんって呼んでくれえ」

「絶対に嫌!」

「おまえ、元でいいのかよ……」


 彩音は達也の妹なだけあって、普通に美形だ。兄と同様身長も高い。胸はそこまで大きくはないが、スレンダーなモデル体型をしている。ショートカットが似合うボーイッシュな性格だ。

 兄と大きく違うところといえば、とにかくモテる。男子はもちろん、女子にも告白されたりする。

 中学時代から一つ上の学年でも話題に出るほど、よく告白され、そして振り続けていた。

 彩音曰く、「大事な約束があるから誰とも付き合わない」とのことだった。


「でも、彩音。朝も言ったけど、もう一週間経ったしそろそろここに来る回数減らしたらどうだ? せめて、こういう短い休み時間くらい」

「剣護! 俺と彩音の仲を引き裂こうたって、そうはいかねえぞ!!」

「いいから、おまえは黙ってろ!!」


 高校に入学したばかりの彩音が、寂しかったり不安な気持ちから、俺たちのクラスに来てしまう気持ちはなんとなく理解できる。

 去年も俺たちのクラスに、同じ中学出身のやつが他のクラスからよく来ていた。まあ俺たちというよりも、達也に会いにというほうが事実に近いだろうけど。理由としては、「おな中出身のやつがいない!」とのことだった。

 

 でも彩音は、あまりにも頻度が多すぎる。

 まず朝登校してきたら、自分のクラスへ鞄を置きに寄りもせずここに来る。授業間にある十分の時間も、ほとんどいる。当然、昼飯も一緒に食べている。彩音は部活に入っているが、放課後もここに一度寄ってから部室に行く始末だ。一日一回くらい出没しない休憩時間もあるが、きっとトイレにでも行ってるのだろう。

 そんなレベルで、毎日この教室に入り浸ってるのだ。


「……お兄ちゃん。やっぱり、彩音が来ると迷惑?」

「剣護ぉ! 俺の彩音を迷惑とか、とりあえず教室出ろ!」

「一人で出てろ! ……あのな、彩音。俺がおまえのことを、迷惑だなんて思うわけがないだろ」

「……ほんと?」

「もちろん。彩音が俺を頼ってここに来てくれることも、普通に嬉しい。だけどこんなこと繰り返してたら、いつまでたってもクラスに友達できないんじゃないかと。俺はそれが心配なんだよ。いちおう、彩音のお兄ちゃんだからな」


 この気持ちに嘘偽りはない。

 俺は一人っ子だから、彩音に兄のように慕われるのは嬉しかった。

 初めて会った小学一年の日のことは、今でも鮮明に覚えている。

 くりくりした目を向けられて、「剣護、お兄ちゃん?」と呼ばれ、小さいながら全身に電撃が走ったのだ。

 だから兄として、彩音には心から幸せになってもらいたい。ずっと、そう願っている。


「お兄ちゃんが心配してくれるのは嬉しいけど、ほんとそのことは大丈夫だから! もう最低限必要な人間関係は作ったし、彩音はお兄ちゃんのほうに全力投球したいの! だってお兄ちゃんと楽しい高校生活を送るためだけに、この高校に入学したんだから」

「彩音ぇ、俺はぁ……?」

「な、なに泣いてんの!? ほんとうっざい」

「彩音ぇ……」

「もう。……い、いちおう三人で! 三人で過ごせたらと思ってるよ。勘違いしないでよ? あくまであんたは、おまけもおまけだからね!」

「あ、彩音ええええええ」


 達也は妹のその一言に、ついには号泣し出してしまう。

 彩音は本気で気恥ずかしそうに、ぷんと顔をそむけた。

 

 彩音はなんだかんだ、達也にも優しい。こんな兄貴といまだに絶縁しないなんて、聖母のような広く深い心を持っているに違いない。

 でもさすがに毎日部屋に侵入されてると知ったら、どうなるかはわからないけどな。さすがにそれがばれたら達也が絶望してしまう結末が簡単に予想できて、俺も彩音になかなか教えることができずにいた。


「わかった。彩音の言うことを信じるよ」

「お、お兄ちゃん。じゃあ」

「いくらでもここに来てよし!」

「やったー!」

「あ、彩音えええええ! そんなバンザイしてまで喜んで! あんなこと言ってたけど、やっぱりじつはお兄ちゃんに会いに来てくれてたんだね!! このツンデレさんめえ」

「調子に乗んなクソタツ!」


 パンッ!


「彩音に近づくなって言ったよね!?」


 ゴキッ!!


「い、痛たたたたたたたたあああああああぁ!!」


 じつに見事な、ビンタから手首の関節を極める技へのコンビネーションだった。


「彩音の連続技は、本当にいつも鮮やかだなあ。何回見ても、ほれぼれするよ」

「このくらいは鍛えてないと、あっという間にこいつに犯されちゃいそうだからね。でもお兄ちゃんに喜んでもらえるんで、もっともっといろんな技覚えるね」

「ばっか、彩音。俺が、おまえにそんなことするわけないだろ!? 剣護ぉ。おまえも、なに笑顔で拍手なんかしてんだよ!? さっさと止めるよう説得してくれ!!」

「わかった。なあ、彩音。達也、さっきから密かに腕で胸の感触楽しんでるぞ?」

「う、裏切りやがったな剣護ぉおおおおおおおおおおおおお」

「えっ!? …………きゃあああああああああああ!? し、死ねこのド変態!!!!!!!!!!」


 ガキッ、ゴリッ、バボキィ!!

 聞きなれてない人なら身震いしてしまいそうな音が教室中に響き、達也は悶絶。


「痛っええええええ!? は、外れた、絶対やばい勢いで外れたあああああああ」

「よかったな達也。おまえの要望通りに、フィニッシュ技をもって止まったぞ」

「……こんな止めかた、頼んでねえ」

「でも、おまえどこか嬉しそうじゃん? さすがの俺でもドン引きだわ」

「えーん。お兄ちゃああああん」

「よしよし。彩音、怖かったね。蚊にでも刺されたと思って、早く忘れな」


 俺の胸に飛び込んでえんえん泣きじゃくる彩音の頭を、俺はよしよしとなでて慰める。

 足元には腕を手で抑えながら、どこか満足そうな表情で涙を流す達也。

 その様子を見ると腕が痛くて抑えてるのか、残った胸の感触を楽しんでるのかがわからなくなる。


 ちなみにもうわかってると思うが念のため伝えておくと、達也が属する馬鹿のグループは妹だ。

 達也は究極的な妹馬鹿なのだ。

 その外見含めたスペックに騙されて彼女ができるが、彼女と話す話題は全部妹。それだけならまだましかもしれないが、達也にとって理想の頂点が彩音なのが大問題だ。

 たとえば自分では彼女のことをほめてるつもりらしいが、どう考えても妹と比較してけなしているようにしか聞こえない。そんなことが日常茶飯事なのだ。結果、すぐに振られる。

 そんなことが数回繰り返されると、誰も達也と付き合おうとはしなくなっていた。

 友達としては最高! でも恋人としては最低! 女子たちの距離感はそんな感じになった。


 そんな哀れな達也を眺めていると、まもなく先生が教室に現れて、彩音は後ろ髪を引かれながらも自分の教室へ。達也は保健室へと消えていった。(ちなみに達也はケロッとした表情で、三十分後には戻っていた。彩音の技がすごいのか、こいつの回復力が人間離れしているのかはいまだにわからない)


 俺はというと、授業が始まったと同時にまた昨日のことを思い返す。

 もちろん、考えているのはアリスのことだ。


 また一日、授業が頭に残らないことはすでに確信できていた。

次はカフェでアリスとどんな話をしたのかを思い返します。

また、すぐ書き始めます。

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