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甦れ! 達也の股間の記憶よ!

また全面超真面目回です

そうです。サブタイトル詐欺です


あらたにブックマークしていただいた皆様

評価をしていただいた皆様

読んでいただいた皆様


本当にありがとうございます!


作者は皆様の応援に支えられております!


これからも応援のほど、よろしくお願いいたします!

「――はぁ」


 今日、何度目のため息だろうか。

 アリスの過去について、百合さんに教えてもらった翌日。

 俺は心ここにあらずな時間を過ごしていた。

 

 学校はいつの間にか終わり、今はバイトの休憩時間。

 ここまでバイトの時間も、まったく集中できていない。

 バイトでは食べ物やお金を取り扱ったり、熱くなった鉄板や油を使用する。

 しかも、今日も桐生さんの教育日だ。

 考えごとをしながらなんてもってのほかとわかりつつ、どうしても思考がほかのことで支配される。


 当然、アリスのことだ。


 俺の家族仲は良好だ。

 そりゃ、たまに両親と喧嘩になることもあるけど、どちらかから謝って終わりになる。

 子どもが親に愛されること。

 当たり前のことのように感じてしまうけれど、けっしてそんなことはない。

 アリスのような家も、少なからず存在するのだ。


「……相馬さん。なにかお悩みですか?」

「――えっ? って、どうわぁあ!?」

「あ、ご、ごめんなさい! 驚かせてしまいました!?」

「あはは。大丈夫」

 

 気がつくと、眼前にとても可愛い女の子の顔。

 桐生さんが、心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。

 危ない危ない。びっくりしすぎて、椅子から転げ落ちそうになってしまった。

 ほんと俺、かっこ悪いな。


 今日も俺と桐生さんは、入りも帰りも同じ時間。

 こういう場合、教育担当と新人は、できるだけ休憩時間も合わせるのだ。

 ということで、今は二人で休憩中。


「あの、それで。悩みごとでもあるんでしょうか?」

「あー。……うん。ごめん。わかっちゃうよね」

「はい。今日の相馬さん、ずっとボーっとしてますし、ため息も多いですから。ため息の数だけ、幸せは逃げるらしいですよ?」

「幸せに逃げられるのは、困るなあ」


 恥ずかしさをごまかすように、後頭部を少しかく仕草。

 年下の後輩の女の子。しかもバイトの教育担当の子に心配させるとか。

 ほんと、呆れるほどかっこ悪いな。俺。


「……もしよければ、わたしに話してみませんか?」

「えっ!?」

「あ、あの。わたし、少しでも相馬さんのお力になれればと……。あ、いえ、その。わたしなんかじゃ、なにも解決できないと思いますけど。でも、誰かに話すだけでも気持ちが楽になったりしますから」


 俺は視線を、下に落とす。

 気持ちが楽に……か。

 

 俺には修復不可能な域にまで達した親子の絆を修復させる方法を、どうしても思いつくことができなかった。

 というか百合さんに聞いた限り、とんでもなくろくでもない親だ。

 ぶっちゃけ、べつに修復する必要なんてない気もする。

 むしろ俺がそれを目指して動いたら、アリスをますます傷つけることになるかもしれない。

 わずか十歳にして、すでに心を粉々に砕かれるほどに傷つき続けた大好きな女の子を。


 でも、やっぱり俺は願ってしまうんだ。

 できるならば、アリスにとって家が落ち着ける場所であってほしいと。

 家族と挨拶をし、一緒にご飯を食べ、談笑できる。

 そんな空間になってほしいと。

 当然、家がそういう場所になりさえすれば、ハーレムゲームにもいい影響が出てくるはず。

 そういう打算も、ほんの少しだけあるけどな。


 だけど親とそんな状態になりかけたことすらない俺は、どうすればいいかなんて皆目見当かいもくけんとうもつかなかった。

 だから、いちおう達也に聞いたのだ。「親と、縁切りそうなほどの大喧嘩したことあるか?」と。

 でもあいつの答えは、「そんな状況になる百歩手前で親父にげんこつされて、俺が土下座で謝って終わりだよ」だった。


 さっき桐生さんに、『気持ちが楽になる』と言われたとき。

 正直、『俺は楽になりたいんじゃない! どうやったら、アリスを助けられるのかを知りたいんだ!』と思ってしまった。

 でも達也に聞いてる時点で、俺は少しでも楽になりたい。このモヤモヤを軽くしたい。

 そんなふうに、無意識に思ってたんじゃないだろうか?

 小林家の両親なら子供とそんなことにならないだろうってことは、よく知ってるんだから。


 視線を正面に戻す。

 桐生さんが前のめり気味に、真剣な眼差しを向けてくれている。

 心から本気で心配してくれていることがわかる顔。

 彼女の芯の強さを、感じさせる双眸。

 

 年下の女の子に、自分の心理を気づかされるとはな。

 彼女は俺なんかより、よっぽど強い人間なのかもしれない。


「じゃあ、ちょっと聞いてもいいかな?」

「はい。遠慮なさらず、ぜひ」


 桐生さんは心配そうな表情を崩さないまま、こくりと頷く。

 直接的な解決方法に辿り着かないとしても、会話の中で気づかされることもある。

 きっと悩みを相談できるような相手がいるなら、たくさん話してみるべきなんだ。

 そんな相手をたくさん作ることが、人生においてとても大事なことなのかもしれない。


「……桐生さんって、家族と仲は良い?」

「そうですね。仲は良いと思います」

「だよねえ。こんないい子に育ってるんだもん」

「そ、そんな。恥ずかしいです」

「てことは、家族と大喧嘩なんてないよね?」

「お父さんとたまに……。ちょっと遅くなったりすると、過剰に心配してくるんです。それが発端になって」


 照れくささと気まずさが入り混じったような表情。

 こんな可愛い娘さんなら、心配するお父さんの気持ちもわかる。


「じゃあ、たぶん想像もつかないと思うけどさ。家族との壊れてしまった信頼関係とか縁って、どうやったら直せると思う? ……ちょっと、それで悩んでる友達が――?」


 桐生さんの表情が、哀しそうに少しだけ歪む。

 前のめりだった体のポジションも、ゆっくりと戻す。

 視線を落とし、表情もなんだか暗い。


「……桐生さん?」

「……そのお友達は、壊れてしまった相手と、二度と会えないんですか?」

「……いや、会えるよ。会おうと思えば」

「じゃあ、会うべきです。会って話すべきです。会える時に、言うべきことを言っておくべきです」

「桐生さん?」

「人って、いつまでも会える場所にいると思ったら、大間違いですよ」


 顔を上げた彼女は、笑顔だった。

 こんな痛々しい笑顔、今まで見たことあっただろうか。


「き、桐生さんごめん! 俺、なんか――」

「き、気にしないでください! わたしは、ほんと大丈夫ですから」


 手を振って、元気アピールする。

 その健気な姿が、俺の罪悪感を増幅させた。


「でも、話せるうちに話したほうがいいのは本当です! その機会を逃し続けたら、絶対に後悔します。それで関係が直るかはわからないけど、気持ちに区切りはつけられると思います」

「……その相手が最低で、……友達のことをなんとも思ってなくても? いやそれどころか、忌み嫌っているかもしれない」

「……家族なのに、なんとも思っていないなんてことはない。まして、嫌いな感情だけの家族なんて……。そんなこと、ないと信じたいです。わたしは」


 桐生さんは、天井を見上げる。

 きっと今彼女は、誰かのことを考えている。

 彼女も、なにかを抱えて生きているんだ。


「嫌いなだけの感情の家族なんていない、か」

「はい。きっとそうです! どこかに愛情だったり、友情だったり、そういったものがあるはずです!」


 桐生さんは、グッと両手のこぶしを握る。

 自分も哀しい気持ちになっていそうなのに、俺を勇気づけてくれようとしている。

 本当にいい子だな。


 ……桐生さんの言うとおりかもしれない。

 家族なのに、親なのに、悪感情だけなんて俺も信じたくない。

 アリスにとっては百合さんも敵なんだろうけど、百合さんはアリスのことを心配していた。

 アリスのお母さんの真意だって、どうだかわからない。

 もっと百合さんに、お母さんのこといろいろ聞いたほうがいいかもな。

 ……今夜も、電話してみようか。


 やっぱり、桐生さんに話してみてよかった。


「ありがとう、桐生さん。なんか、元気出た。話すことは大事なんだって、気づかされたよ」

「相馬さんの力になれたなら、ほんと嬉しいです。……あっ! もう、休憩時間終わりですね」

「……そうだね」

「……どうしたんですか、相馬さん? 行かないんですか?」

「……ちょっとこのあとの教えるところ確認するから、先に行ってて」

「は、はぁ。わかりました! じゃあ、行ってますね」


 ……桐生さんが、悪いんだよ。

 

 前のめりになったり。

 体のポジションを戻したり。

 手を振ったり。

 両手のこぶしを握ったり。


 そういうことをするたびに、艶めかしくゆさゆさゆさゆさ揺れるんだもの。

 こんな真正面で真剣な顔を向けられたら、視線を外すわけにもいかないし。

 そうなると、どうしても視界に入るんだもの。

 君の二つの豊満な果実が。


 そう。

 俺が罪悪感を感じていたのは、君に辛いことを思い出させてしまったのかもと感じたからだけじゃない。

 そんな君を前にして、すぐに立ち上がれないほどに反応している下半身があったからだ。

 むしろ、こっちのほうが罪悪感的に大きいかもね。


 俺は早く桐生さんのおっぱいの残像を忘れるために、必死に達也の股間を思い出していたのだった。

読んでいただきまして、ありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです


次回もよろしくお願いいたします!

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