『みんな仲良くなろう! マスの指示には絶対服従だよ剣護さん? すごろく』 後編
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俺が意気消沈してる中、みんなが一回目のサイコロを振る。
藤林さんは『1』、西園寺さんは『4』、蛍は『5』。
それぞれ、赤、黄、緑のおはじきを『大当たり! 今すぐこの場で全員とセックス!!』のマスに止める。つまり、なにもなし!
そりゃそうだ。奇跡的に『7』でも出さない限り、絶対止まるもの。
……まさか、七マス以降もこの指示じゃないだろうな。
「はい。剣護君の番だよ?」
「あ、うん。ありがとう」
一抹の不安を感じながら、蛍から受け取ったサイコロを振る。
出た目は『4』。
そこそこ、サイコロ運はいいんだよなあ。
青のおはじきを四マス移動させて、紙をつまむ。
まともな指示でありますように。まともな指示でありますように。まともな指示でありますように。
三回神頼みをして、ゆっくりと慎重にはがす。
『中当たり! 右に二つ隣の人のおっぱいを一分間揉んでいいよ。揉む対象が男だった場合、股間を揉んでね』
「ふう。おっぱい揉むだけでいいのか。楽勝だな」
「……えっ? も、もしかして二つ隣って……萌えええ!?」
「中当たりなんて、とんでもないですわ! これは、間違いなく大当たりマスですわ!!」
なにやら興奮気味の金髪美少女は気にせずに、両手をわきわきと動かしながら、狼狽している巨乳少女に近づく。
藤林さんはすでに、恥ずかしさで泣きだしそうになっている。
俺が、泣かせそうになってるんだ。
……やっぱり、これよくないよな。
5Pに比べればなんてことないけど、泣きそうな女子小学生のおっぱいを揉むとか。
一揉み間違えれば傷つけてしまう。
「……なあ。アリス、やっぱり――」
「願い事一回追加されますけど、いいんですか?」
「で、でもさっき救済措置って……」
「それは、剣護さん以外の人が止まったマスの指示についてです。剣護さんが止まったマスは、絶対服従です。相手のことを想って棄権してもいいですよ? 願い事の回数が、どんどん増えていきますけど」
「そ、相馬さん。……萌大丈夫だから」
「で、でも……」
「一分間なら、我慢できるよ?」
「……わかった。……ごめんな、藤林さん。……いくよ?」
「はうぅっ!?」
うっはー!! やわらけー!! この間の時も思ったけど、このおっぱいは最高級品だろ。柔らかいんだけど、それだけじゃない。服の上からなのに、この指を押し返す弾力。超気持ちええ。そしてこのまだ熟れきったわけじゃないことを示す、早摘みの果実のようなちょっとした硬さ。まだまだこのおっぱいが成長途上であると確信させてくれる。このたわわの素晴らしい未来を、楽しみにさせてくれる! ああ、いつまでも揉んでいたい。いつまでも、放したくない!! 来るな!! まだ一分経つな!! 時間よ止まれ!!
「……藤林さん。終わったよ? よく頑張ったね」
「も、萌。なんかふわふわしてるの」
「大丈夫? 少し休みな」
「……剣護君。キリッとした顔作っても、揉んでる間の顔めちゃくちゃだらしなかったからね。今さら取り繕っても、完全に手遅れだよ」
「はい。わたしもばっちり、録画させてもらいました」
「蛍、アリス。その映像の処遇については、あとでゆっくり話そう」
また一つ、弱みを握られてしまった。
でも、なんでだろう。今は、そんなことどうでもいい気がする。
やっぱり俺の予想どおり、おっぱいは平和の象徴なんだ。
一回揉めば、たいていの悩みは解決する。
「さて、次はわたしですね」
アリスの振ったサイコロは『4』。
そこに書かれていた指示は――
『バナナを一本食べろ』
ああー。アニメオタクからしたら、あるあるネタですね。
俺はこのあとの展開に備えて、心の無心化をはかる。
それでなくとも、現状藤林さんのおっぱいで反応気味なのだ。
そんな俺をよそに、アリスは静かに立ち上がると机まで歩く。
一番底の深い引き出しを開け取り出したのは、すでに何本かもがれた状態のバナナだった。
……どこに、しまってんだよ。
「じゃあ、剣護さん。これから、食べますね?」
「さ、さっさと食べなよ」
「――ピチャッ。ジュルジュルッ、ペレペロ。はぁむ。ジュッポ、ジュルジュル、はぁあ。あぁむ。ングッ」
なまめかしい表情で俺を見上げるようにして、大きいバナナをほおばるアリス。
くぅう。藤林さんのおっぱいの余韻が残ってるのに、これはまずいって。
というか、これ絶対練習しまくってただろ。
すでに何本かもがれてたのも、机にあったのもそれで説明がつく。
「――ッグ、はぁっ、はあ。……剣護さんのバナナ、美味しい」
「俺は水。俺は山。俺は空。俺は火。俺は風」
無心。無心。無心。無心。無心。
はやくこの地獄、終わってくれええ!!
結局、アリスはたっぷり五分かけてバナナを完食し、俺の股間をちらりと確認して満足そうに微笑んだ。
ちくしょう。こんなん、完全鎮火とか無理ゲーだよ。
次の藤林さんが出した目は『1』。二連続の『1』。
つまり止まったのは、『大当たり! 今すぐこの場で全員とセックス!!』ということになる。
「はうぅ」
「さすがに二回連続で何もないというのは、つまらないですね。……うん。藤林さん。次の番まで、おっぱい揺らしといてください」
「ふえええぇ!?」
「大丈夫です。西園寺さんも野中さんも、おっぱい揺らす可能性ありますから」
「うう」
なにが大丈夫なのか、よくわからん理論だ。
だいたい、蛍に揺らす胸なんてないぞ?
「……剣護君。わたしの胸見てどうしたの?」
「……気のせいじゃないかな? 俺は蛍の可愛い顔を見てただけだよ。はははっ」
「それでは、私の番ですわね!」
藤林さんが一生懸命果実を揺らす横で、金髪のご令嬢が一段と気合を入れる。
そんな西園寺さんを、左耳を思いきり引っ張られながら眺める。
というか蛍さん。マジで痛いです。
「5! 5! 5! 5! 5! 5! 5! 5! 5!」
願掛けをするように、両手でサイコロを包み込んで念じる。
そこまでして彼女が止まりたいマスは、『中当たり! 右に二つ隣の人のおっぱいを一分間揉んでいいよ。揉む対象が男だった場合、股間を揉んでね』だ。
……どういうことなの?
そんなにまで、俺の股間を揉みたいの?
これも、プロレスと何か勘違いしてるの!?
というか、なんかまた記憶の扉が開きそうな気が……。
……やっぱりだめだ。どうしても黒い三角地帯が邪魔をする。
「5ぉっ!!」
ひときわ大きな声で、サイコロを高く振り上げる。
跳ねて、すごろく上から飛び出したサイコロ。
出た目は、なんと――
「神は、私を見捨てましたわああああああ」
『6』だった。
指示は当然、『バナナを一本食べろ』だ。
金髪のご令嬢は魂が抜けたかのように脱力している。
バナナを持たされた手は、ピクリとも動く気配がない。
デデーン! 西園寺京華、アウト!
アリスは西園寺さんの復活を諦めたのか軽くため息をついて、目で蛍にサイコロを振るようにと促す。
泣きぼくろの美少女がさらっとした動作で振ると、『2』の目が天井を向いている。
ギリギリ『大当たり! 今すぐこの場で全員とセックス!!』ゾーンを抜け、揺れない胸を無理やり揺らすピンチを脱出した。
『右隣の人とポッキンゲーム!』
蛍が紙をはがすと、そんな文字列が出現する。
『ポッキン』とは、細長いスティック状の焼き菓子に、チョコレートをコーティングしたものである。
これを二人で両端から同時に食べ進め、最後まで折れなければキスをすることになる。これが『ポッキンゲーム』だ。
今回は蛍と右隣の人――つまり、俺がやることになる。
アリスはきっと、これみたいに隣となにかをする内容の割合を多くしたのだろう。
だから俺を蛍とアリスで挟んだ。
これで隣の人とやれという指示では、チャンスが二倍になる。
右隣の人なら蛍が止まれば俺と、俺が止まればアリスと。
左隣の人ならアリスが止まれば俺と、俺が止まれば蛍と。
俺を西園寺さんと藤林さんで挟んだうえで、二つ隣の人の指示を増やしても同じことはできる。
でも、これだと確実に隣の人よりも印象に残る。
圧倒的に、隣の人とやるほうが楽だから。
二つ隣とか、移動が結構面倒なのだ。
それをみんなわかってるから、隣が多くても当然だと思える。
ということで俺はおそらく籠の中の鳥で、こっからもバンバン隣の人指定のマスに止まることになるはずだ。
「じゃあ、剣護君。行くよ?」
「お、おう」
蛍がチョココーテイング側、俺がコーティングされてない側を咥える。
俺はゆっくりゆっくり進めるが、蛍がどんどん積極的に食べ進める。
蛍の可愛い顔がどんどん迫る。
息遣いも近づいてくる。
おい、おい、おい。このままだと、マジでくちびる触れるぞ!?
「はい。ここまでです!」
「――っ!?」
残り数ミリでファーストキスしてしまいそうな刹那、背後から肩を掴んで思いきり後ろに倒される。
見上げると、アリスの美しい顔がある。
……あれ? 笑顔ではあるけど、少しひきつってる気が。
「あ、危なかったですね。二人とも、大事なファーストキスでしょうし」
「わたしは、べつに剣護君とならよかったけど」
蛍はそう答えると、ポッキンの俺が咥えてた部分を口に入れる。
少しだけ、幸せそうにはにかんだ。
「………………なにか、言いましたか?」
「――っ。あ、……アリス……ちゃん?」
「……アリス」
そんな彼女が、アリスの一言で完全に一変した。
アリスのつららのように冷たく鋭い声色が、蛍の顔を青く染め全身を震わせる。
気づけば、アリスの虹彩から光が完全に失われている。
初めて会った時に遭遇した、病んでる状態のアリスだ。
蛍はきっと、この豹変ぶりは初めて見たんだろう。
歯をカチカチ鳴らし、言葉を失っている。
「なにか、言いましたか? と、聞いたんです」
「――ご、ごめんアリスちゃん。わ、わた、わたし。……そ、そうだったよね。初めては……」
「思い出してくれたなら、いいんですよ」
顔は笑っているけど、目は笑っていない。
いまだに双眸に、光も戻らない。
蛍の震えも、止まっていなかった。
「ほーら。せっかくのすごろくなんだから、楽しもうぜ? アリスも安心しろよ。俺のファーストキスは、おまえからもらうから。ハーレムゲームに勝った時に、祝福代わりにな!」
「ふふっ。剣護さんはボーっとしてること多いですから、誰かに奪われてしまうんじゃないかと心配です。もしそんなことになったら、死刑ですよ?」
「おおっ。怖い怖い」
にこやかに笑いながら語りかけると、ようやくいつものアリスが戻ってくる。
返す刀で、体の震えが止まらない蛍に向かう。
頭を軽くなでながら、「もう大丈夫だから」とささやくと、なんとか落ち着きを取り戻してくれた。
正直病んでる状態のアリスには、いまだに俺も少しビビってしまう。
でも今回は、嬉しい気持ちのほうが圧倒していた。
自分で『ポッキンゲーム』を書いといて、『プッチンゲーム』になるのは理不尽な気もした。
でもそれほどまでに、俺のファーストキスにこだわってくれてるということだ。
蛍もそのこだわりは聞かされてたみたいだし、病んでるモードも仕方なかったのかもしれない。
ハーレム志願者だけど、俺の初めては譲らないっていう独占欲。
アリスのそんな一面がわかって、男冥利に尽きるし感激もしてしまった。
可愛いと思ったし、ますます好きになった。
まあその後もいろいろあったけど、ダイジェストでじゅうぶんな感じだ。
俺とアリスが、缶ジュースで間接キスしたり。
藤林さんが、四ターン連続でおっぱいを揺らすことになったり。
セバスチャンが西園寺さんの代わりに、下品な音を立ててバナナを食べたり。
俺と蛍が三分間抱き合ったり。
俺がアリスに壁ドンすることになったり。
西園寺さんの代わりにサイコロを振ったセバスチャンが、亀甲縛りで絶頂したり。
西園寺さんの代わりにサイコロを振ったセバスチャンが、一日十回は自慰行為することを暴露させられたり。
なんだかんだ楽しかったけど、やっぱり俺に願い事の約束を取り付けるためだったんだろうな。
そう思っていた。
全員がゴールするまでは。
一番最初にゴールした俺は、ほかのマス同様そこに貼られてる紙をはがそうとしたが止められる。
もちろん、アリスだ。
「全員ゴールしたら、みんなではがしましょう!」
とのことだったので、ひたすら待った。
具体的に言うと、藤林さんを。
『1』と『2』ばっか出し続けた彼女は、ほかの人が続々ゴールする中取り残されてしまった。
藤林さんの隣はアリスと、リタイアした西園寺さんの代わりのセバスチャン。
多くの指示が隣の人となので、この二人はかなり多く付き合わされた。
セバスチャンは心底楽しそうだったけど、アリスは心底辟易としていた。自分で作ったすごろくなのに。
こうして多くの苦難を乗り越えて藤林さんがゴールした時は、誰からともなく拍手が鳴った。
藤林さんとアリスが疲れ切った顔をして、西園寺さんは最後まで魂が戻らなかった。(……どんだけ、俺の股間に執着してるんだろうか)
そしてアリスの指定どおり、ゴールを果たした五人で最後の紙をつまむ。
「それじゃあ、いきますよ。せーのっ!」
アリスの掛け声とともに、一気にはがす――
『この場で、全員連絡先交換! これで、みんな仲良くなろう!』
こう、カラフルな文字で書いてあった。
ほかは全部黒文字だったのに。
その時のアリスの可憐な微笑みを見たら、どっちが一番の目的なのかわからなくなった。
願い事か。連絡先交換か。もしかしたら、どっちも一番だったかもしれないけど。
結局どちらも、ハーレムゲームのためなんだろうけどなあ。
こうして俺と美少女小学生四人は、ロインで新しいグループを作ることになった。
当然、アリスとは個人ロインを続けるけどね。
ちなみに、グループへかなり入る気満々だったセバスチャン。最初は排除したのだが、数日後いつの間にやら加わっていた。
ということで不本意ながら、そのグループの参加者は六人となるのだが、この時の俺はまだ知らない。
眠いんで、とりあえず寝ます