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第2話 世界終環

ウィーン…


「いらっしゃいませ」

「バーデン=ヴュルテング社のイブキと申します、本日、管理部のシュルレ様と面談の予定があり、御伺いさせて頂きました」


受付の女性はいわゆるビジネススマイルの後、丁寧に会釈してくれた。

俺はなかなか要領がよく、こういった形式な外面というのは得意だった。


「奥のソファでお待ち下さいませ。」

「はい、有難うございます。」


受付の女性と話している間に、新米の彼女がすでにソファに腰掛けていた。

ここまでの道中、少しはコミュニケーションを取ろうとしたが、彼女の反応は薄く、発した言葉といえば「えぇ」「言う必要ないわ」「黙ってくれる」「…」最終的にはシカトだった。


今日一日我慢すれば、問題ない、と心に言い聞かせ、本音は閉まっていた。

まぁこちらから話題を振らなければ、うるさく話してくるわけではないので、楽といえば楽なのだが、指導員という言葉が俺をこうさせているのだろう。


しかし隣に座る彼女をあらためて近くで見ると、まつげは長いし、綺麗な蒼い瞳は見ているだけで飽きない、白い肌はきめ細かく、美少女と言われる特権はすべて持っているだろう。


俺の視線を察したのか、こちらに顔を振り返った。


「なに」

「いや、その…」

「なんでウチの会社に入ったのかなと思って」


「別にあなたには関係ないじゃない」


カチン


「そんな言い方ないだろ、一応俺は先輩なんだからな」


「先輩?一つだけ教えてあげるは、わたしは元ワルシャワ社の電力管理部室長よ」

「一介の社員風情がえらそうな口を叩かないでくれる」


「え?ボスはそんな事言ってなかった…」


彼女の突拍子もない爆弾発言に俺の思考は一時停止したが、一般社会における転職する理由を考えるとすぐに合点がいった。

そして初めて彼女が自分のことを話して、優越感に浸るこの状況を逆転する内容だ。


「さては…クビだな」


この発言に彼女がビクついたのが、見えた。

ここまで我慢していた、感情が塞き止められたダムが決壊したかのような勢いで言葉に出てきてしまった。


「どうせなんかヘマをやらかしてクビになったんだろ、それで肩書を隠して、ウチにきたんだな」

「昔の栄光にすがったところで、新入社員なんだから、入ったばかりでそんな態度はないだろ」

「そもそもそんなに自信があるなら、引き抜きとかされるんじゃないの?普通に入社はしないでしょ」

「もうちょっと一般常識っていうのを覚えないとまたクビに…」


そこまで話して、我に返りあまりにもひどいことを言っていた自分に気づき、口を噤んだ。


隣に座る彼女を見ると、頬を赤らめて、下を向いていた。



場に静寂が広がった。


「いいすぎたよ、悪かった」


彼女は何も言わず、反対を向いていた。


ピピッピピ…


俺ら二人になんともいえない空気が流れている中、速報の音が流れた。


独特な電子音に引かれ、大きなビジョンに目をやる。


そこには軍服を身に纏い、体格の良いスキンヘッドの強面が壇上に立っている。

壇上の下には人影が整列しているようだった顔までは暗くてよく見えないが皆微動だにしていない。


軍服男の後ろには大きなテペンストリーが飾られており、西洋風な男女が描かれていた。女性が何かを手にして男性に手渡している様子だ。


「ズキン」

「いつっ!…なんだ…」


一瞬、脳裏に微電流が走ったような感覚に苛まれたが、スッと消え去った。

ほどなくしてスキンヘッドの男が口を開いた。


「アー…ア…」

「われはバーヴィロン連邦、総督冷忍である」


バーヴィロン連邦とは世界一の国土を持つ、大帝国だ。

この国についての情報は近隣の国でも、遮断されており、自国のみですべて完結している、完全独立国家ということだ。そのため、多くは謎に包まれている。


唯一この国について知っていることがあるとすれば、バーデン=ヴュルテング社とシェアを二分しているワルシャワ社がエネルギー供給を仕切っており、この国のおかげで、現在の地位を確立したということだけだった。


フロアを見渡すと、初めて見るバーヴィロン連邦のトップに皆、「なんだ、なんだ」ざわつき、この異様な光景のビジョンに釘付けになっているようだった。


横に目をやると、彼女もじっと目を凝らして見ているようだった。

ただ他のギャラリーとは違い、その真剣な眼差しは内容を聞き漏らすまいという雰囲気が伝わってきた。


「…我々は絶大なエネルギー”恒星”の開発に成功した」


発せられたエネルギーという言葉に反応して再度、ビジョンに目を移した。

よそ見していたせいで、前出の言葉は聞き取れなかった。


「我がバーヴィロン連邦は人類史、初の世界統治を成すべく宣戦布告を宣言する」


「ヴィミラニエ」


不敵な笑みを浮かべて、演説は幕を閉じた。



……


宣戦布告の翌日、各国へ声明文が送られた。


*******************************************************************************

我、バーヴィロン連邦は人類史、初の世界統治を成すべく宣誓を発表した。

これにより世界10ヵ国はバーヴィロン連邦の支配下になることを命令する。

以後、バーヴィロン連邦【総督】冷忍レーニンの名の元に選出された我が国の任命者に覇権を譲渡して頂く。


名称については以下に変更する


第一帝国アジン

第二帝国ドゥバァ

第三帝国トゥリー

第四帝国チィトゥィリ

第五帝国ピャーチ

第六帝国シャスチ

第七帝国スェーミ

第八帝国ヴォースィミ

第九帝国ジェーヴィチ

第十帝国ジェーシチ


名称の振り分けについては、本通達より降伏文書の届いた順とする。


本日より7日以内に降伏文書の送付を命ずる。

当該日までに未達の国については、武力征服を厭わない。


バーヴィロン連邦 総督 冷忍レーニン

*******************************************************************************


声明文到達後、世界10カ国はこの戦争に応戦したが、バーヴィロン連邦の2大近未来兵器により、為す術もなく1国、また1国と敗戦していった。


近未来兵器のひとつは人間と同じように動く人型兵器【アンドロイド】であった、圧倒的な数という力を行使することにより各国は押し込まれていった。

戦争という事柄において一番の敗戦要素に人間的な感情部分の関与が大きい、それは情報であったり、恐怖に臆すことであったり、心変わりというものだ。

この【アンドロイド】というものは感情がない、恐怖がないので稼働しなくなるまで忠実に破壊行動を繰り返す、殲滅するという目的に一番適した、兵器であろう。


そしてもう一つが【ヴァイス】と呼ばれる、人エネルギーから発せられる波動を具現化する装置である。

”十帝”と呼ばれるバーヴィロン連邦の統治者が武装しており、ある帝は火を形どった鳥を繰り出し、またある帝は思いのままにサイクロンを繰り出した。


世界の国々は2つの未知なる力に防衛策がとれず、人ならざる力に、屈した。


今まで築き上げてきた歴史や文明が、たった7日間で終焉した。


この戦争を人々は皮肉まじりに『世界終環ヴィミラニエ』と呼ぶ。


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