決意の旅立ち
暫く待っていると受付嬢が戻ってきた。
「大変お待たせいたしました。
ギルド長が直接話す事が有るそうなので、ギルド長室までご案内いたします。」
「はい、お願いします。」
俺は歩いて行く受付嬢の背後について行く。
受付嬢は一つのドアの前で止まり、ノックをしてから声をかける。
「失礼します。冒険者のヒロさんをお連れしました。」
「入りなさい。」
中からギルド長の声がして、中に入るように言われると、受付嬢はドアを開けて部屋に入っていく、俺もそれに続いて部屋の中に入る。
「君は職務に戻ってくれ。」
「はい、失礼します。」
ギルド長がそう行って受付嬢がお辞儀をしてから退出する。
「さて、こうやって話すのは初めてだね、ヒロさんで間違いないね?」
ギルド長の口調は以前の演説をしている時とは、かなり違っていて反応が遅れてしまった。
そしたらギルド長は俺の考えがわかっているかのように声をかけてくる。
「口調の事だったら今が素ですよ。
演説の時は口調がこれだと気合が入らないので態と変えるようにしてるんです。」
そういう事だったのか。
「そうだったんですね。以前受けた印象と違ったので混乱してしまいました。」
「では、改めて挨拶させていただきます。
アイリーン冒険者ギルド支部のギルド長をやっているラークと申します。」
「冒険者のヒロです。」
挨拶をした後にソファーに座るように促されて着席する。
「今回お呼びしたのは、この前の魔物の襲撃に関する事で話が有ったからです。」
「はい、俺も聞きたいと思ってました。」
「まず、魔物襲撃の情報を持ち帰ったのは冒険者のパーティでした。
その後直ぐ確認の為に冒険者パーティ3組を偵察に向わせ、数時間後に帰還、群の進んでいる方向から魔物襲撃が確定したので領主の所に職員に手紙を持たせて行かせたのと、冒険者を招集して事情説明をしました。
事情説明した後は僕自ら領主の館に行って騎士団の派遣を頼みました。
その後はヒロさんも知っていると思いますが戦闘が始まり、魔物に恐怖した騎士団は逃げ、魔物を操っていたと思われる人物をフレンドシップとヒロさんが倒して戦いは終結しました。これが今回の顛末です。」
「その後、騎士団はどうなったのですか?」
「指揮をとっていた騎士達は責任を取って死刑、逃げ出した騎士達は罪人として捕まり後日奴隷として売ります。
一つだけ知っておいて欲しいのは、領主は良い人です。今回の件も本当に申し訳なく思っており、責任を感じて逃げた騎士団員の処分は重いものにしました。」
「何故、その話を俺にしたんですか?」
「貴方には知る権利が有ると思ったからですよ。
魔物の襲撃はヒロさんとフレンドシップがいなければ最悪な結果に終わっていた可能性もある。
しかもフレンドシップの皆さんは戦死、ヒロさんは大切な仲間を失った。
そのため今回ヒロさんへの報酬はフレンドシップの分と領主から迷惑料が追加で支払われます。
それだけでは有りません、フレンドシップが倒した魔物の素材などの所有権をヒロさんに認める事になりました。
ヒロさん、今回の件は、この街の存在自体が危ぶまれるほどの物でした。
この街や住民達に変わってお礼を言わせてください。
本当にありがとうございます。
それと沢山の命を失った責任はギルド長の僕にある。
大変申し訳無い事をした、すまなかった。」
ギルド長は頭を深々と下げてお礼と謝罪をしている。
今更そんな事をされても皆は生き返らない。それに街やそこに住む人達を守ったフレンドシップの皆は謝られても嬉しくないだろう。
「もう終わった事なんです。頭を上げてください。」
「ありがとうございます。
それから後一つだけ言わなければならない事が有ります。
今回の件でヒロさんの冒険者ランクがCランクになりますので、よろしくお願いします。」
「一気にCランクですか?大丈夫なんですか?」
「なにも問題有りません。ヒロさんはそれほどの事をしたんです。本当ならAランクにしたかったのですが、Bランクになるのに試験があるので無理でした。
安心してください。ヒロさんの強さは、あと戦いで皆知っていますから、変なちょっかいはかけて来ないと思いますよ。」
「はぁ、そうですか。ならいいです。」
「ところでヒロさんは今後どうするのですか?」
「旅に出ようと思います。フレンドシップの皆の故郷を回る予定です。」
「そうですか、応援してますから、頑張ってきてください。
あと素材の受渡しが素材買取小屋、報酬の受渡しとランクアップは一階のカウンターでしますので後で寄ってください。」
「わかりました。では、失礼します。」
俺は部屋を出てギルドのカウンターに向かう。
受付嬢に声をかけて報酬を貰い、ギルドカードの更新をする。
その後素材買取小屋で魔物の素材を貰ってから屋敷に帰る。
先程受け取った魔玉を使ってゴーレム達に自我を持たせて俺との距離に影響しないように改造する。
今回貰った素材は今後一切売らないつもりだ。使い道が有れば今回の様に有効活用するが、例え使い道が無くとも手元に置いておく事にした。
この素材は皆の命と引き換えに手に入れた素材だからだ。
その後は屋敷の皆と、俺を送り出す為に作ってくれた少し豪勢な食事を食べて、風呂に入り、私室に行って寝る事にする。
次の日の朝、起床して旅の準備を整えて早速出発する事にした。
このままでは居心地が良くて旅立つ事が嫌になるのが嫌だったからだ。
必要な荷物は既にアイテムボックスに入っている。
何も迷う事はない。
「それでは、行ってきます。」
「お気をつけて、行ってらっしゃい。」
俺の見送りの為に集まった屋敷の人達に挨拶をすると代表してパールさんが返事を返す。
急な旅立ちだが、皆は理解してくれた。
俺は旅の目的を早く達成して帰って来ようと思う。
例え、遺族の人達に罵られようと自分自身が決めた事だ。
いくらキツかろうと必ず目的を達成してみせる。
ここから一番近いのはミーヤさんの故郷である、バブルキャニオンという村だ。
バブルキャニオンは大森林の中央付近にあり、高位魔物もいるような危険な場所にある。
俺は屋敷の人達の視線を背中に受けながら、決意して旅立つ、目指すはバブルキャニオン、妖精族の村だ。
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この話で第1章は終わりです。
次回の更新は風邪で体調が良くないので数日後からスタート予定です。




