盗賊退治と囚われた女性達
途中見張りを代わり、また寝て朝を迎えた。
テントを出ると見張りをしていたシールがこちらに気付く。
「ヒロ、おはよう。」
「あぁ、シールさん、おはようございます。」
「もう、みんなも起きてくるだろうから、朝食を作り始めようと思うんだか、手伝ってくれるか?」
「勿論いいですよ。」
鍋とおたまをアイテムボックスから出して魔法で水を入れ、火にかける。
持ってきた肉や野菜を切っておいて沸騰したら入れる事にする。
そこでみんなも起き始めたので、それぞれ朝の挨拶をして、テントを片付け始めた。
粗方の片付けを終えてみんなで焚き火を囲んで出来上がった朝食を食べる。
食後にサーガスさんが淹れてくれた紅茶を飲みながら今日の事を話す。
「皆さん、順調に行けば今日の昼過ぎには盗賊のアジト周辺に辿り着けると思います。
アジトの正確な位置までは報告されていませんので先ずはアジトの位置を探さなければいけません。
この中で偵察が得意な人はいますか?」
一応、俺は索敵や隠密スキルを持っているから手を挙げる。
「俺、偵察できますよ?」
「ではヒロさんに偵察をお願いします。
今日中に見つかった場合は夜襲をかけます。
ヒロさん以外は野営の準備と食事を作ってヒロさんを待ちましょう。」
まとめると、俺が偵察で、それ以外の人は野営や食事の準備、今日中にアジトが見つかれば夜のうちに攻め入るって事か。
「「「「了解です。」」」」
その後は片付けをして直ぐに出発した。
太陽が頭の上を過ぎて少し経った頃に森に到着する。
森の奥には山が見えていて青々とした木々がずっと続いていた。
戦闘のサーガスさんが口を開く。
「この森に盗賊のアジトが有ると報告を受けています。
昼食を食べた後から、ヒロさんは偵察を、それ以外は野営の準備をしましょう。」
その言葉を聞いてみんなが昼食の準備を始める。
今回は簡単な物で済ませて俺は早速森に入って索敵で人の反応がないか探していく。
しばらく森の奥を目指して進んでいると索敵の範囲に人らしき反応がしたので、反応があった方に音を立てないように進んで行くと、1人の薄汚れた革鎧を装備した男が木の実を採っていた。
見た目は盗賊っぽいけど、確信が持てないので気づかれないように尾行する。
男はその後、木の実を採ってから、森の奥の方へ進んで行った。
後を追いかけると崖の所にある洞窟へ入っていく。
その洞窟の外には、見張りらしき男が2人、話をしながら周りを見ている。
どうやらここが盗賊のアジトの様だ、俺は索敵で洞窟の中を探る。
そしたら32人の反応が有る。
近づくと危険なので偵察はそこまでにして俺はみんなが待つ野営地に戻ってその事を伝える。
「早速見つかりましたか、人数はわかりますか?」
「俺の索敵では、見張りを合わせて34人の反応が有りました。」
「かなり大規模ですね。
報告では20人程度なので恐らくは一般人を捕えているのでしょう。
予定通りに今夜攻め込みます。
まだ夕方なので、私とヒロさんはこれから仮眠します。
この砂時計が完全に落ちたら私達を起こしてください。
エーブさん、シールさん、テッドさんはそこから仮眠を取っていただきます。」
話が終わった後、俺とサーガスさんはテントに入って仮眠を始める。
これから人を殺すからか妙に目が冴えて眠る事が出来ない。
そしたらサーガスさんも起きていたみたいで話しかけてくる。
「眠れませんか?」
「…はい。」
「それは、緊張しますよね、これから人を殺すんですから。
でもね、ヒロさん、盗賊を殺さなければ罪の無い人達がその代わりに死ぬんですよ。
盗賊に殺される罪の無い人達は何の抵抗も出来ずにね。
男達は無惨に殺されて、女子供は違法奴隷にされたり、慰み者になります。
今回の盗賊も恐らく一般人を捕らえているでしょう。
その一般人達はどんな酷い目にあっているのでしょうか?貴方はそれが許せる残酷な人ですか?」
捕えてる人達はきっと辛い思いをしているだろう。
俺はそんな事をする奴を許せない。
覚悟を決めよう、殺す覚悟を。
「俺は、そんな事をする奴等を許せない。
覚悟を決めました、もう大丈夫です。」
「そうですか、それでは、お休みなさい。」
「お休みなさい。」
その後はすんなり眠る事が出来た。
起されて気がつくとエーブさんの姿が目の前にあった。
「起きたか、おはようヒロ。」
「起こしてくれてありがとうございます。
エーブさん、おはようございます。」
俺はテントから出て焚き火の前に行く。
サーガスさんは既に起きていて、紅茶を淹れている所だった。
辺りは暗くて日は完全に落ちていた。
「あぁ、ヒロさん、おはようございます。」
「サーガスさん、シールさん、テッドさん、おはようございます。」
「おはよう、ヒロも起きたし、俺たちは寝るわ。」
3人はテントの中に入っていった。
俺は3人に向かっておやすみの挨拶をする。
「はい、おやすみなさい。」
俺はサーガスさんから俺の為に淹れてくれた紅茶を受け取る。
「しっかりと眠れたようですね。」
「はい、サーガスさんのお陰で良く寝れました。」
「それはよかった。」
その後は雑談しながら、砂時計の砂が落ちきるまで待つ。
「もう少しで砂が最後まで落ちますね。」
俺はその言葉に砂時計を見る。
「あ、丁度終わりましたね。
じゃあ俺がみんなを起こしてきます。」
「よろしくお願いします。」
俺はテントに行って寝ている3人を起こしに行く。
テントの中に入ってエーブさんの肩を揺すって起こし他の2人も同じ様に起こした後、テントを出て焚き火の前で待つ。
しばらくすると3人はテントから出てきて装備の確認をする。
そしたらサーガスさんが口を開く。
「皆さん、装備の確認が終わったら盗賊のアジトに向かいます。
先頭はヒロさん、アジトまで案内をお願いします。
その背後にエーブさん、シールさん、テッドさん、殿は私がします。
アジトに到着したら、ヒロさんと私で見張りを殺します。
その後は私は囚われている人達を探し出して護衛をしますので、皆さんは洞窟に入って寝ている盗賊を順番に殺して、最後に脱出です。
もし、強くて敵わない盗賊がいたら皆さんは一旦逃げて下さい、私が殺します。」
強い盗賊か、その場合はサーガスさんが戦うらしいけど、サーガスさんて冒険者ランクはどのくらいなんだろう?
「あの失礼ですが、サーガスさんの冒険者ランクは幾つなんですか?」
「あぁ、言っていませんでしたね。
不安にさせてしまい、すいません。
私は一応元Aランクです。
今はギルド職員なので冒険者ランクは凍結されていますが、現役時代から腕は落ちてないと自負してますよ。」
元Aランクとは恐れ入った。
かなり強いのだろう、これなら強い盗賊が出ても安心だ。
「すいません、余計な心配だったみたいです。」
「いえ、心配して当然です。
私が自己紹介の時に入っていればよかった事なので気にしないでください。
それでは出発します。」
俺が先頭を歩き、森の中を進む1時間程で盗賊のアジトが見える所に着いて、皆んなで隠れながら様子を見る。
洞窟の外では2人の盗賊がゲラゲラ笑いながら適当に見張りをしている。
「この距離でお互いに向かい合っていると近づき難いですね。
予定を変更して、テッドさんとヒロさんに魔法で殺してもらいましょう。」
「いえ、ここは俺に任せて貰えませんか?魔法だと盗賊に当たった時の音で中の盗賊に気付かれるかもしれません。
投げナイフの投擲で殺します。」
「…わかりました。
もし失敗しても私達がフォローしますので安心してください。
私とテッドさんは右側にいる盗賊の背後で見つからない様に待機、エーブさん、シールさんは左側にいる盗賊の背後で同じく見つからない様に待機してください。
作戦開始は10分後です。
合図はヒロさんの投擲にしますので自由なタイミングで放ってください。
では、移動を開始します。」
皆んなが移動を始める。
俺も投擲しやすい所に移動する事にする。
盗賊の真正面で林の中に身を隠しながら盗賊の様子を見る。
2人の盗賊は俺たちに気付いた様子は無く、今だに笑いながら話している。
離れてはいるが、ここからだと話しの内容が聞こえてくる。
「おい、見張りが終わったら、またあの女で遊びに行こうぜ!」
「お前も飽きないなー、あんな死にかけの人形みたいな奴に良く反応するな、お前は女だったら誰でも良さそうだな、俺もだけど、ガハハ!」
「お前も反応はするんじゃねーか!それにあの人生に絶望してる感じが良いんじゃねーかよ!ガハハ!」
あの糞野郎共、絶対に殺してやる。
あの話を聞くまでは、まだ少し人を殺す事に不安を覚えていた。
でも、思い知った、世界にはどうしようもない屑もいる事を、サーガスさんが言っていた通り、盗賊を生かしておくと善良な人達が犠牲になる。
そろそろ10分経った頃だ、簡単に殺すのは残念だが、叫ばれると困るから一投で終わらせて貰うつもりだ。
俺は脇腹に装備している投げナイフを手に取り全力で投擲する。
シュンッ
投げナイフが風邪を切って進み盗賊の喉に突き刺さる。
「ガッ」
「グッ」
そのまま2人の盗賊が地面に倒れるのを見て、俺も林から出て洞窟に向かう。
直ぐに俺以外の仲間も出てきた。
皆声を出さずに真剣な表情で頷いて洞窟に入る。
サーガスさんは直ぐに奥に向かって行った。
俺たち4人は最初の部屋の様な空間で鼾をかきながら寝ている12人の盗賊達を次々に殺していく。
全員殺して、洞窟の奥へ向かう。
次の空間で寝ている5人目の盗賊を殺した時に物音がしてしまい1人の盗賊が起きる。
「なんだてめぇらは!」
その声で周りの盗賊も起きてしまい5人程の盗賊と戦闘になってしまう。
「てめぇら‼︎よくもやってくれたな!死んで詫びろや!」
盗賊達が一斉に斬りかかってくる。
俺の所に来たのはその内2人、俺は攻撃を避けながら右側の盗賊に指を突き出し目潰しをする。
「ギャァァァ‼︎目がぁぁぁ‼︎‼︎」
左側の盗賊がそれを見て怯んだ隙に右脇腹のホルスターに入っている投げナイフ抜いて喉を切りつけ、倒れた所に移動して今度は頭にナイフを突き刺す。
死んだ事を確認して目潰しした盗賊の頭にもナイフを突き刺してトドメを刺す。
エーブさん達の方を見るとまだ戦闘中だったので、手に持っていたナイフを後方で隙を伺っている盗賊の頭に投げて絶命させる。
そこからは2対3でエーブさん達が有利になり、直ぐに盗賊2人にトドメを刺した。
すると奥の方から盗賊の親玉が出てきて俺たちと死んだ手下を交互に見て怒鳴ってきた。
「何してくれてんだ‼︎殺してやる‼︎」
盗賊の親玉は剣を持って近くにいた俺に突っ込んでくる。
俺はまた攻撃を躱し続ける。
エーブさん達は俺と盗賊の親玉の距離が近くてフォローに入って来れないようだ。
「なんで当たらねぇんだ‼︎俺は元Cランク冒険者だぞ!」
「あんた、弱いんだな、それでCランクかよ、
あ、そっか弱いから冒険者稼業が上手くいかなくて盗賊になったのか。」
「糞!てめぇだけは絶対に殺す‼︎」
俺の挑発に乗って攻撃が単調に、なった所で武器を持った方の手首を掴んで強く下に捻って、へし折ってやる。
「グァァ‼︎クソ!死ねヤァァ‼︎」
折れてない方の手で腰のナイフを抜いて斬りつけてくるが俺は身を捻って避ける。
「さっきからクソクソうるせぇんだよ。
糞はお前だろ、糞野郎が!」
ナイフを持った手首を掴み肘を外側から蹴り抜いて腕の骨を折る。
「ガァァァ!なんで!なんで俺が!こんな目に!」
こいつは何を言っているんだ。
「お前、馬鹿だろ、お前が盗賊だからだよ、覚悟も無しに盗賊なんかなるからこんな事になる。
恨むなら心も実力も弱い自分自身を恨め。」
俺は腰の背後にある、短剣を抜いて盗賊の親玉である男の首をスッパリとぶった切る。
「まだ奥に盗賊がいるかもしれないから進みましょう。」
俺の言葉にエーブさんが反応する。
「あ、あぁ、ヒロって凄い強かったんだな。」
「本当だよ、ここまで強いなんて。」
「凄いね、攻撃を避けてる姿が格好良くて、僕見とれちゃったよ。」
最後のテッドさんの言葉はソッチの意味では無い事を祈ろう。
俺たちは洞窟の奥へ向かっていく。
すると突き当たりにドアが有り、その前にサーガスさんが待っていた。
「この先は囚われていた人達だけだよ。
お疲れ様、無事以来を達成出来たね。
これから部屋の中の人達に事情を説明してから街に帰りますよ。
最後に中の人達への説明は君達がしてください。
盗賊達が何をしたのか、盗賊達の罪がどれだけ重いのか知って次から盗賊を殺す時の糧にしてください。」
俺たちはドアを開けて中に入る。
部屋の中は空気が濁っている様で、嫌な臭いが部屋を埋め尽くしている。
中には女性が7人居る、皆が皆濁った目をしていて、壊れた人形の様な印象を与える。
エーブさん達は中の様子を見て呆然としているので、俺が話し始める。
「皆さん、盗賊は殺しましたので安心してください。
これからアイリーンの街に帰りますので貴女達も一緒に来てください。」
1人の女性が泣きながら言ってくる。
「私は殺してちょうだい。
生きていても何の意味もないわ。」
俺はその言葉に胸を締め付けられる。
俺は、この人達を助けたいけど、この人達は死にたいと言う。
こういう時になんて声をかければいいんだ。
よく見ると殺してと懇願してきた女性のお腹は大きく膨らんでいる。
おそらくは盗賊の子供を孕まされたのだろう。
死にたくなるのも仕方ないと思ってしまう。
でも、俺はこの人達を助けたいのだ、死んでなんか欲しくない。
「殺しません。
生きてください、貴女達はこれから楽しい事が待っているはずです。」
「あんたなんかに何がわかるのよ!盗賊に捕まる前は楽しく生活してたわよ!でもね!好きな人は私の目の前で殺されて!私は盗賊の慰み者になって!終いにはあんな奴らの子を妊娠したわ!もう最悪なのよ!こんな薄汚れた私なんか生きている価値なんか無いの‼︎だから殺して‼︎」
そこでエーブさんが声を荒げる。
「甘ったれた事抜かしてんじゃねぇよ!殺してだと⁉︎それこそ盗賊共の思う壺だろうが!悔しくないのかよ⁉︎あんな奴らに人生狂わされてそのまま死ぬなんてよ‼︎悔しくないのか⁉︎
俺の小さい頃からの友達はな!母親が盗賊に犯されて出来た子だ!でもな!その母親はしっかり息子を育て上げたぞ!辛い事もあっただろう!死にたくなる様な事だってあっただろう‼︎でもその母親は子供に罪は無いからって愛情を注いで育てた!そいつは魔物に襲われた人の為に自分の身を犠牲にして死んだよ!立派な死に様だった‼︎
わかるか⁉︎盗賊の子供だってな!しっかり愛情注いでやれば立派な人になるんだよ‼︎あんたが今死ねば罪の無い子供までしぬんだぞ‼︎俺はそんなの認めねぇ!絶対に認めてなんかやるか‼︎
だから生きろ!生きてる意味が無いなら俺が何とかしてやるからよ‼︎
生きてくれよ!頼むよ!俺の親友まで産まれなきゃ良かったみたいに言うなよ!生きてりゃいい事あるって!無いなら俺が楽しい事を一緒に探してやるから!
頼むよ……」
俺はエーブさんの様子に驚いた。
今まで何時も笑っていた顔が今は苦痛に歪んでいる様だった。
「私を必要としてくれるの?」
「あぁ!あぁ!必要だ!俺にはあんたが必要なんだ!一緒に街に帰ろう!」
「でもこんな大人数で生活なんて出来るお金なんか無いわよ!
どうせご飯が食べれなくて直ぐに死ぬのよ!」
その言葉にエーブさんは言葉を詰まらせる。
「それなら御心配無く、こう見えても俺、金持ちなんで、魔物の倒しすぎて余ってて困ってるんで折角なら人の為に使いたいんで生活費は俺が出しますよ。
だから安心して暮らしてください。」
「さすがヒロだぜ!な!あんたもこれで死ななくて済むぞ!当然、俺たちも偶には顔を出すからよ!元気出せ!」
そこでシールさんとテッドさんが声を上げる。
「俺も顔は出すぞ!そもそもエーブだけの親友じゃねえ!俺たちの親友だったんだ!」
「そうそう!まだ生活費は出せるだけ稼げ無いけど、顔を出して様子を見るくらいなら出来るからね!それくらいはしないと無責任者ってあいつに馬鹿にされちゃうよ!」
「わ、私、生きても、いいのね。」
「「「「当然‼︎」」」」
俺達が声を揃えて言う。
今の会話で他の女性も生気を取り戻したようだ、これなら自殺なんかしないだろう。
どうやら上手く事が進みそうだ。
「さぁ先ずは此処から出ましょう!外に出て美味しいご飯を食べてしっかり休んだら街に向けて出発ですよ!」
俺たちはゾロゾロと洞窟の外に出て、用意していた野営地まで戻る。
既に朝だが男共で料理を始める。
「女性の方達は体力がかなり減っているでしょうから、簡単な食事にしましょう。」
サーガスさんが提案する。
「それ以外にも体力を取り戻す方法は無いのですか?」
俺は一応聞いておく事にする。
「高位の魔物の肉なら体力は直ぐに戻ります。
なぜか肉は重くて食が進まないはずなのに高位の魔物の肉だけは大丈夫なんですよ。
まぁ高価なので貴族とかしか食べませんがね。」
あれ?俺、プラチナウルフの肉なら持ってるじゃん。
「あ、それなら俺、プラチナウルフの肉有りますよ。」
「なんですって⁉︎まさか貴方がこの間下位冒険者でプラチナウルフを2頭も狩った人ですか⁉︎」
サーガスさんが凄く驚いている。
そこでエーブさん達も俺に声をかけてくる。
「な、なぁヒロ!その肉売ってくれ!それくらいなら俺たちにも出来る!金はいつか返すから頼む‼︎女達に元気になって欲しいんだ!金なら幾らでも出すからよ!一気には払え無いが毎月ちゃんと返すから!」
エーブさん達が皆土下座しながら頼み込んでくる。
俺は慌ててそれを止める。
「や、止めてください!プラチナウルフの肉ならあげますよ!俺も女性達には早く元気になって欲しいですから!
それに生活費を出すのは俺です!これもその生活費に含まれてると思ってますから!
だから今すぐに頭を上げてください!じゃ無いとあげませんよ!」
3人はシュバッと立ち上がる。
息が合っていて少し面白かった。
その様子を見て女性達が笑っている。
その笑顔は先程までが嘘の様に楽しげだった。
「そうか!助かるよ!ありがとう!」
俺はプラチナウルフの肉を出して捌いたり焼くのを皆に任せると女性達の所に向かう。
盗賊に囚われていたからか、俺が近づくにつれて女性達の顔が深刻な雰囲気になる。
「安心してくださいね、手は出しませんから。
皆さんには、これからお風呂に入ってもらいます。
俺が魔法で浴場と洗い場を作りますから。
あ、当然壁もね。
風呂に入って綺麗になったら俺が用意した新しい服を着てください。
それじゃあ行きますよ!」
俺は壁と浴場と洗い場をイメージして俺を中心に土魔法で作り上げた後に水魔法と火魔法でお湯を出して湯船を満たしていく。
初めてにしては中々の出来だと思う。
周りから女性達のオォーと言う声が聞こえる。
それからあらかじめ買っておいた布を使って防具作成魔法で服を用意する。
上着、ズボン、下着を作製して、女性達に渡す。
「下着は女性物に詳しくないので上手く出来ているかわかりませんので、何が問題が有ったら言ってください。
新しく作製しますので。」
それから靴を作製する。
様々な革も買ってあるのでそれを使って簡単な靴を作製して女性に渡していく。
ちなみに壁を俺の周りに作ったのでサーガスさんやエーブさん達には見え無い所で防具作成魔法を使っている。
後はアイテムボックスからタオルや石鹸を出して渡したら俺は外に出て調理場所に戻る。
「何ですか?あれは。」
サーガスさんから質問が飛んできた。
「あれはお風呂です。
女性達も汚れたままは嫌だと思ったので作りました。」
「ひ、ヒロさんは高位の魔法使いなのですね。
私もあんな魔法見た事ありませんよ。」
ありゃりゃ、またやってしまったか?
まぁ今回は女性達の為だからいいかと思い気にしない事にした。
その後、風呂から出てきた女性達と食事をして、もう朝になっていたが俺たちのテントを使ってもらって女性達に寝てもらう。
俺たちは順番に外で寝て残りは見張りだ。
丸一日休んで翌日の朝に街に向けて出発する。
歩き出して直ぐに最初に話した妊婦の人がフラフラしてるのを見て、どうにかできないかと考える。
昔、子供の頃に蜘蛛のロボットみたいなのに乗って戦うアニメが有ったのを思い出して、ゴーレムで出来ないか試してみる。
試したら思いの外上手く出来たのでゴーレムの上に妊娠した女性を乗せて、揺らさないように俺の隣を進めと指示してまた歩き始める。
他の女性達の足取りも心なしかしっかりした様に感じるのでリハビリの為に自分で歩いてもらう事にする。
そういえば向こうは俺たちを名前で呼ぶが、俺は未だに女性達の名前を知らない事に気付いて妊娠している女性に聞いてみた。
「すいません、名前をまだ伺って無いのですが、貴女達をなんと呼べば良いですか?」
「あら私とした事がごめんなさい。
私はパールよ、これからよろしくね。
あの赤い髪の娘はルビル、緑の髪の娘はエメラダ、白い髪の娘がダイアン、青い髪の娘がサーファ、紫色の髪の娘がアメシス、黄色い髪の娘がシトリーよ。」
「ありがとうございます。」
なんか宝石みたいな名前だな、覚えやすくて助かる。
俺は一番後ろを歩いてるから女性達の頭しか見えないが、街に着いたらちゃんと顔も覚えよう。
それよりも早く家を買おう、宿暮らしだと直ぐにお金が尽きてしまう。
俺はこれからどうしようか考えながらも、皆についていくのだった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
次回は9/12の21時更新予定です。




