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夢ってさぁ、持たなきゃいけないもんなの?  作者: 蒼柳洋
流されてただけの高校生まで
9/11

中学生5

 衝撃的な提案に、俺はなんて答えたか覚えていない。

びっくりした。それに、医者になるんだろ?って決めつけられたことに苛立った。

(蛙の子は蛙っていうのと同じで、医者の子は大体医者になるって思うのかね。

当事者だから、そのあたりわからないけど。)


 二者面談が終わると、いつの間にか俺は塔京の学校を受けることになっていた。

都内の高校なんてまったく知らない俺と両親は、塾の先生の提案にうなづくだけだった。

両親の意向だったのか知らないが、先生は理系に強い高校を3つほど俺に提案した。

全部男子校だったが、男子校が嫌だということも俺にはなかった。


 俺の住んでいた地域は、快速に乗れば一時間で、乗り換えなしで塔京駅に着く。

いわゆるベットタウンで、通勤通学に90分くらいかかるのは普通だった。

中学校まで徒歩5分、電車で30分くらいの知葉駅に行くのも、三か月に一回くらいの俺にとって、

いきなり通学に90分以上かかるというのはハードルが高かった。

めんどくさいなぁ、そう思っていた。

けれども、塾の先生も両親もそれくらいの通学は問題ないという考えだった。

それに妹も都内の中学を受験すると決めていた。

拒む理由はなかった。

嫌だと言ったとしても、じゃあどうしたい?と問われると代替案なんてなかった。

行きたい高校なんてなかった。むしろ進学なんてせずに、中学生活がずっと続けばいいと思っていた。

 一番、俺と同じように驚いた反応をしてくれた(と思っていた)のが、中3の時の担任だった。

その担任の先生は、はきはきした女性で、英語を教えていた。

同級生の間では教え方がうまいと評判で、人気があった。

進路相談を定期的にする先生で、俺も受験までに4回くらい先生と一対一で話をした。

俺は都内の高校を受けます、と言った時の先生の驚いた顔をはっきり覚えている。

通うのは大変じゃない?と言って眉をひそめた表情もはっきり覚えている。

俺はその時に、塾の先生のこと、両親の考えを先生に話した。そうすると先生は何も言わなかった。眉間には皺が寄っていたけども。

 けれども、その先生は俺に知葉高の推薦は受けない?とか、私立の推薦はどう?とか色々提案してくれた。

 結局俺は、都内の高校に進学することになったのだが、高校の入学式にわざわざその高校にお祝いの電報を送ってくれた。

周りは知らないやつばかりで心細かった入学式。祝辞の紹介で、佐田市立千川中学校と聞こえた時、すっげぇうれしかった。

 でも俺はその先生にその時のお礼を言ったことがない。家から歩いて5分なんだから、お礼を言いに行けばよかった。


 先生が何も言わなかったのは、なんでだろうな…

やっぱり、医者の息子は違うわね、とか思ったのかなー。

家族の間で時折、俺の通っていた地元の中学の話がでるが、

母はいつも、あなた以外に都内に進学した学生はいないのよって言う。

母にとって、都内の高校にわざわざ通うことが、一種のステータスだったんだろうか?


 わざわざ遠距離通学、お疲れ様です!って感じじゃない?




次回更新2015年3月15日ごろ予定

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