表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢ってさぁ、持たなきゃいけないもんなの?  作者: 蒼柳洋
流されてただけの高校生まで
8/11

中学生4

俺の母が、俺の進路について話をするようになったのは、俺が中学3年生になった時だった。

それと同時に、親父が小さなクリニックを開業した。


開業と同時に、友達の間で親父のクリニックの話題がよくでるようになった。

話の内容は、俺のじいちゃんが、クリニックに通ってるぜ、だとか、そんなものだった。

けれども、最後に大体必ず、お前があそこを継ぐの?という質問があった。

俺の大嫌いな、俺を決めつけるセリフ。

再び同じクラスになった田中も、同じ質問を何回も繰り返した。

話のネタがなかったわけじゃない。

誰と誰が付き合い始めたとか、あのアイドルかわいいだとか、話すネタはたくさんあった。

けれども、中3の俺たちにとって、関心の大部分は受験に向いてしまっていた。

この時、家はバタバタしていて、家族はいつもピリピリしていた。

開業したばかりのクリニックで、両親が恐ろしく忙しかったせいもある。

 だが、家族の中で受験生が2人もいたからもあった。

1人は俺。もう1人は小学校6年生の妹だった。

俺の通っていた中学は、それほど荒れていなかったが、

それでもたびたび、たばこの吸い殻が見つかった、校舎に落書きをするやつがいた、とかで授業は中断した。

母はそういう話を聞くたびに顔をしかめていた。

 そして妹と弟に、中学は私立に行ってみない?とたびたび言うようになった。

俺はよほど信頼されていたのか、それともただ放置されていたのか、両親が進学先について何か言ってくることはなかった。

俺の書いた無難な志望校調査票についても、ちらっと見ただけだった。

俺も進学先について両親に何か言うことはなかった。

そもそも両親に何か相談するということ自体皆無だった。


 俺は相変わらず、どこの高校に行きたいという希望はなかった。

希望はないのに、塾と学校に行き、言われるままにひたすら勉強していた。

夏休み前だったか、春休み終わりだったか、俺の塾では先生と俺とでの二者面談があった。

 俺は中1での説明会参加以降、塾の先生にやんわりとだが、知葉高には行きたくないと伝えていた。

けれども、そうすると県内には同じレベルの私立が一校しかなかった。

少しレベルを下げると、私立で2校。

公立に行きたいなら、さらに下げないといけなかった。

 だが俺にはそれでよかった。両親が私立に行ってもいいと言うなら、私立を3校受ければいいと思っていた。

公立は受かったら絶対に行かなくてはならなかった。だから受ける気は全くなかった。

 両親は、妹を私立中学に行かせたいくらいなのだから、俺が私立に行くのを認めないわけはないと考えていた。

 塾の先生には、私立志望で、3つ受けます、と伝えるつもりで二者面談に臨んでいた。

けれども、俺の考えを先生に言う前に、俺の予想しない事態が起こった。


「清水君は、せっかくだから都内の高校を受けてみない?」

「…え?」


 都内に進学するなんてことは全く考えていなかった。周りにそんな奴はいなかったし、

 都内に行くなんて、大人くらいだと思っていた。

なぜわざわざ遠くに行くんだ?

面談中の俺は、何度も何度も、その疑問が頭を回っていた。


「県内だと、染谷幕張学園があるけれど、あそこは理系にそんなに強くないんだ。お医者さんになるなら、理系に強い学校がいいよ。

せっかく学力があるなら、都内を受けるのも選択肢の1つだと思うよ。」


 俺はそこで初めて理系という言葉を聞いたと思う。(ちなみに俺は医者が理系だということも知らなかった。)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ