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夢ってさぁ、持たなきゃいけないもんなの?  作者: 蒼柳洋
流されてただけの高校生まで
6/11

中学生2

今でも覚えている、あの高校のぼろさ、暑くてたまらなったこと。

そもそも、行かなきゃよかったんだ。興味がなかったんだから。


その高校は快速が止まらない駅の、小高い山の上にあった。

地元の駅から4駅北上すればいいだけだったけれども、

各駅停車の電車を選んで乗らなくてはならないのが面倒だった。

特に、朝ならほとんどが快速電車で、1時間に6本ある電車は

そのうちの2本しか各駅停車はなかった。

俺は、一緒に行ったことを相当後悔した。

まず1つめが、小高い山を登ったことで汗だくになったこと。

もう1つは絶望的なほど、校舎がぼろかったことだった。

約三十年前くらいの記憶だから、もしかしたらちょっと大げさに言ってる可能性もある。

けれども、そうだとしても、俺はこの高校に行くのは嫌だと思わせるには

十分ぼろかったというのは確かだった。

俺たちは講堂と呼ばれる市民ホールみたいな、布張りの椅子がステージに向かって並んでいるところで話を聞いた。

その時、ちょっと冷房が効いていた。(外にいるよりはましだと思えるくらいちょっと!)

講堂はほぼ満席で、百人くらいだったか…こんなにいるとは思わなかった俺はびっくりした。

一緒に行った田中は、キラキラした目で先生方や在学生からのアドバイスを聞いていた。

説明会には保護者もいて、田中と同様に真剣に話を聞いていた。

俺はほとんど話に集中していなかった。話自体は全員合わせても90分にも満たなかったと思う。最初から集中していなかった。

周りにいる奴らも、田中と同様に真剣に聞いていることが不思議でしょうがなかった。

一体この高校のどこに魅力があるのか、俺にはさっぱり理解できなかった。

(今でもよくはわからない、県内トップ高校に入ることが一種のステータスってことか?)


「りん、説明会、よかっただろ?」

「え?あー、うん。参考になったわ。すっげー人が来てたな。」

「そりゃ、そうだろ。」


説明会の最後に、俺たちは校内を見学した。その時の田中は、やっぱりキラキラした目だった。

午後2時の一番暑い時間帯の中、俺たちはほとんど冷房の効いていない教室をあちこち回った。

田中は大汗を掻きつつも、楽しそうだった。始終、ここに入学したらやっぱりサッカー部に入ろうだとか、

勉強についていくのは厳しいかなーとか、ぶつぶつ言っていた。俺は適当に相槌を打っていたと思う。

俺の記憶の中で、その時見学した校舎はすべて灰色にしか残っていない。

周りのやつらの熱意というか、情熱に圧倒されていた。


その日、家に帰ってから両親に、田中と一緒に知葉高校の説明会に行ったことを話した。

なんて両親が答えたか、俺は忘れた。

頭いいやつは、県内トップのところに行かなきゃいけないのか?

そんなことを考えていたけどさ、結局、他に何にも思いつかなかったから、結論は先延ばしにした。

だって、まだその時中1だったし。

先の先を考えるなんて、俺には無理だってことを痛感した。

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