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夢ってさぁ、持たなきゃいけないもんなの?  作者: 蒼柳洋
流されてただけの高校生まで
3/11

小学生2

小学校時代、女子の間で流行っていたものがあった。

名前は…プロフィール帳だったか…多分。

名前、住所、生年月日、趣味などの様々な個人情報をかわいいキャラクターが

描かれている紙に書いていくものだった。

クラスの女子のほぼ全員から、このプロフィール帳を渡され、

しかも1枚1枚結構な情報を書かなくてはいけなかったのは、非常にめんどくさかった。

男子の何人かは、めんどうだから嫌だと言って、突き返しているやつもいた。

俺も非常にめんどくさかった。だが、持ち前の真面目さできちんと書いていた。

そしてそのプロフィール帳のお決まりの質問の1つに、将来の夢ってものがあった。

ああ、勿論俺は困った。けれど、他の質問にきちんと答えているのに、ここだけ空欄は嫌だった。

けれど、作文で書くような嘘の夢を書きたくなかった。それにふざけて何を書いても、笑われるだけで、大したことはないと思った。

結局、俺は「大人」と書いていた。

なにせ十数枚ものプロフィール帳に書き込んだから、この記憶ははっきりと残っている。

みんながなるものなんだから、夢かどうかは置いといても、将来の夢の欄に書くのはそれほど変だとは思わなかった。

(ちなみに今でも変だとは思っていない。)


俺のこの、将来の夢に対するもやもやは、時間が経つにつれ、もっともっと大きくなっていった。


小学校6年生だった。

仲が良かった友達に、絵を描くのがすごくうまいやつがいた。そいつは休み時間にノートに漫画を描いていた。

俺は漫画が好きだったし、絵が本当にうまかったから、そいつの漫画を見せてもらっていた。

で、そいつはあるとき、俺に漫画専用の色ペン(コピックというらしい)を

ごっそり学校に持ってきて俺に見せた。

漫画道具なんて全く無知だったが、専用の道具ということで、きっと高いんだろう、そう思った。

実際、そいつはこれ高いんだからためしに使うとか無理、って言われた。

ちょっと使いたかった俺はがっかり。

そのとき、トーンっていう漫画専用のシールも見せてくれた。

びっくりしたのを覚えている。

そいつはペンの使い方、トーンの貼り方、種類について俺に生き生きとした顔で語った。

その後も漫画道具を見せてくれたし、一緒に道具が売ってる店に行った。

今考えると、小学生の小遣いでそんな道具を買うのは結構きつかったと思う。

俺はついては行ったが、買ったことはなかった。おそらく、高い、無理って思ったはず。

そいつは今は漫画家になっていないが、漫画家になりたかったんだと思う。

俺はそいつの話を聞くたびに、すげーすげーってオウムのように繰り返してた。

他に言葉も思いつかなかったし、そいつの絵が本当にすごかったってのもある。

それにその言葉には、お前は夢があるんだ!すげーって意味も含んでた。



自分の小遣いをすべてささげられるほど物は、俺には本当になかったんだよ。

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