小学生2
小学校時代、女子の間で流行っていたものがあった。
名前は…プロフィール帳だったか…多分。
名前、住所、生年月日、趣味などの様々な個人情報をかわいいキャラクターが
描かれている紙に書いていくものだった。
クラスの女子のほぼ全員から、このプロフィール帳を渡され、
しかも1枚1枚結構な情報を書かなくてはいけなかったのは、非常にめんどくさかった。
男子の何人かは、めんどうだから嫌だと言って、突き返しているやつもいた。
俺も非常にめんどくさかった。だが、持ち前の真面目さできちんと書いていた。
そしてそのプロフィール帳のお決まりの質問の1つに、将来の夢ってものがあった。
ああ、勿論俺は困った。けれど、他の質問にきちんと答えているのに、ここだけ空欄は嫌だった。
けれど、作文で書くような嘘の夢を書きたくなかった。それにふざけて何を書いても、笑われるだけで、大したことはないと思った。
結局、俺は「大人」と書いていた。
なにせ十数枚ものプロフィール帳に書き込んだから、この記憶ははっきりと残っている。
みんながなるものなんだから、夢かどうかは置いといても、将来の夢の欄に書くのはそれほど変だとは思わなかった。
(ちなみに今でも変だとは思っていない。)
俺のこの、将来の夢に対するもやもやは、時間が経つにつれ、もっともっと大きくなっていった。
小学校6年生だった。
仲が良かった友達に、絵を描くのがすごくうまいやつがいた。そいつは休み時間にノートに漫画を描いていた。
俺は漫画が好きだったし、絵が本当にうまかったから、そいつの漫画を見せてもらっていた。
で、そいつはあるとき、俺に漫画専用の色ペン(コピックというらしい)を
ごっそり学校に持ってきて俺に見せた。
漫画道具なんて全く無知だったが、専用の道具ということで、きっと高いんだろう、そう思った。
実際、そいつはこれ高いんだからためしに使うとか無理、って言われた。
ちょっと使いたかった俺はがっかり。
そのとき、トーンっていう漫画専用のシールも見せてくれた。
びっくりしたのを覚えている。
そいつはペンの使い方、トーンの貼り方、種類について俺に生き生きとした顔で語った。
その後も漫画道具を見せてくれたし、一緒に道具が売ってる店に行った。
今考えると、小学生の小遣いでそんな道具を買うのは結構きつかったと思う。
俺はついては行ったが、買ったことはなかった。おそらく、高い、無理って思ったはず。
そいつは今は漫画家になっていないが、漫画家になりたかったんだと思う。
俺はそいつの話を聞くたびに、すげーすげーってオウムのように繰り返してた。
他に言葉も思いつかなかったし、そいつの絵が本当にすごかったってのもある。
それにその言葉には、お前は夢があるんだ!すげーって意味も含んでた。
自分の小遣いをすべてささげられるほど物は、俺には本当になかったんだよ。