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逸般人たちが勇者召喚に巻き込まれたようですよ  作者: satori
第一章 逸般人が異世界からきたようですよ
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007

俺はこちらに来て上昇した身体能力の把握はかなりできた。

何故かというと、オオカミたちの動きを見て魔力の存在を感じ取った時、それが俺の身体能力の上昇もそれが原因であることを直感した。


俺のステータスカードには〈魔力操作〉と記載されている。

多分あたっているだから、俺が魔力と予想しているものを操作するのは、そのおかげか容易だった。


身体を動かすのと同時に、それに先行するように魔力が動くようにするイメージ。

これは一瞬先を予測しながら動かなければいけない。

しかし、数瞬先を予想しながら動くのはいつものことであったし、いくつものことを同時に思考することに慣れている。

さらにこちらに来てそれがさらに速く、多くを行えるようになった俺にとってそれは比較的に作業だった。


なお、ここまで容易にできたことは全くの予想外だった。


といっても、いきなり異世界に連れて来られて、さらには神を名乗るものと会って、さらに何の脈絡もなく変な場所に放り出されたりと、ハッキリいえば常識が完全に破壊されて、いい意味で開き直れたのだろう。


………多分。


名前が違うだけで向こうの世界でも、こういうのはあって知らないだけだったのではないかと思えた。


だって、明らかに世界記録なんて普通に更新できそうな連中はいっぱいいたし………


まあ、こちらに来て魔力というものを知り、向こうで自分よりも強かったものたちに対し、その所為で負けていたと。

そう思いたいだけなのかもしれないけど………


俺は自嘲気味に笑った。


足元で巨大な重機が建物を粉砕したような耳を痺れさせるほどの轟音が聞こえた。

それに現実逃避気味に没頭していた思考から、強制的に現実に戻された。


「ちっ」


足場にしていた樹がどんどんと斜めになっていく。

樹の幹を蹴りつけて他の木の枝に飛び移った。

しかし、そこもすぐさま先程の木と同じ運命をたどった。


「ああ、しつこい」


俺は足下を睨む。

そこには森の奥から現在までしつこく追い続けてきた巨大な熊。


コイツに会うまではかなり順調だった。

コイツほどでもないが大物も倒した。

なのに……タイミングが悪すぎるだろ。


この熊の大きさは全長が八メートルにも及び、俺の中で短足なイメージがあったがコイツの足の長さは俺の身長よりもある。


さらにこの森の樹は中心に近づく程太くなっていっていた。

今、この熊によって粉砕された樹の幹の太さの半径は十メートル以上……コイツの持つ破壊力はそれで分かるだろう。


さてどうしよう?


あんな巨大な重さを支えて、あれだけの破壊力を生む筋肉の鎧に覆われている生物をどうやって殺せばいいのだろうか?

その下にある骨もあり得ない程、間違いなく、絶望的に硬いのだろう。

それ以前に全身を覆っている鈍い光を放っている、金属のようにさえ見える鉄色の毛さえも斬れる気がしない。


しかも、狼が纏っていた魔力の光も圧倒的に強い。

それは鎧のように覆われた筋肉よりもはるかに危険だと直感した。


熊の腕に膨大な魔力が集まっていく。

そして足から腹部、肩に生み出された勢いを乗せて腕を振るう。


再び轟音が森に響く。


この巨木を破壊しても振り始めから、振り終わりまで腕の速度は全く衰えない。


本当に有り得ない威力だな………


顔を青くしてその光景を見た。

立ち向かう気持ちをこの巨大熊の一挙一動で粉砕されていくような気さえする。


それと同時に魔力の効果についてもある仮説が思い浮かんだ。

だが、それを考えるのは後だとし、思い浮かんだものや思考の隅に追いやる。


それにしてもこの世界の熊は体術を修めているのだろうか?

あの攻撃はしっかりと全身の関節を連動して攻撃をしていた。

あの力の流し方は十数年以上、普通のものが修練を積んだものみたいだ。


………いや、この敵だらけの環境で生き残っているのなら、身体の使い方が上手いのは当然か。


俺は樹から飛び降りた。


莫大な重量を支えているからそんなに速度を出せないはずだが、魔力という要素が加わってなのか中々の速度を生み出している。


相手の腕がとどかない位置に立って安全に逃げようとしていたが、それだと相手の速度と同じくらいしか出せないし、しょっちゅう足場を壊されてしまうので、それなら全力で逃げられるようにしようと思った。


「ぐおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!」


すると熊が天を仰ぐような体勢になり、樹を粉砕した時よりもはるかに大きな声を出した。

あまりの大音量に直接脳が揺さぶられるような感覚を受ける。


「ぐぅ」


俺は耳を抑えて立ち止まってしまった。


完全な悪手だった。

無理にでも逃げるべきだった。


仰ぐような体勢から、全体重と目が眩むような膨大な光を纏わせた腕を振り下ろし地面をたたいた。

そこを中心としてまるで隕石が落ちたような振動と共に地面が吹き飛んだ。

衝撃と同時にその光も広がっていく。


捲れ上がり飛翔する土砂は、先端を尖らせるように固まって、大小さまざまな弾丸となって周囲に襲い掛かる。

先程まで立っていた地面も衝撃が伝わり吹き飛ばされ、衝撃によって俺は宙に投げ出された。


俺は自分へ飛んでくる巨大な石弾に目を付けた。

右手で頭部を覆い、剛槍を持つ左手を構えた。


その他の小さいものはあたる瞬間、身体を僅かにそらし抉られたり衝撃を完全に受けることは回避し、身体の表面を滑らせるようにいなす。


「つっ………」


当然であるが飛んで来るものの数は膨大で、完全にいなすことができたわけではなかった。

衝撃を身体に受けたが、どうにか肉を抉られることは防いだ。


(スキル・特殊(柳体)を入手しました)


頭に何か声が流れたような気がした。

気になるが今は気にしている暇はない。


そして狙いをつけている石弾が近づいてくる。


俺は槍を石弾に突き刺し、それを支点にして直撃を避けるように体勢を変えた。

それに足をつけ、今出せる最高の威力になるように魔力に命令を出し、巨石に蹴りを入れた。


この槍でも数センチしか刺せなかった巨石は、その蹴りの衝撃で弾け飛んだ。

さらに、今までどんな乗りものよりも圧倒的な加速を感じ、俺の身体は空へ向かってとんだ。


幸運に俺がとんだ軌道上に木の幹はなかった。

あったらきっとザクロのように弾けて中身が散らばったことだろう。


そんなことに肝を冷やしながら考えているうちに、枝に引っかかりながらもそれらを折って無事にぬけ、樹よりも高い位置へ出た。


数秒間跳んでいると先ほどまでいた場所は、砂埃が巻き上げられ樹の高さの数倍に達する程まで巻き上げられていた。


しばらく、そこを見ていると樹がどんどんと倒れていく。

多分、あの石弾が樹を抉っているからだろう。


本当によくもまあ、しのげたものだ………


さらに十数秒跳んでいるともう土埃も段々と小さくなった。

もう追いつかれないだろう思うと場所まで跳んだ。

多分、ここに来るまで勢いがほとんど衰えず上へあがっていく。

飛んで行けなんて思いながら蹴りを入れたからなのだろう。

少しずつだが、この良く分からない魔力というものの性質が分かってきた気がする。


俺は魔力へだんだんと勢いが減衰していくよう念じた。

元の世界でこれができると思ったら、おそらく変人扱いされるだろうがこの世界なら大丈夫だろう。


これで勢いをなくしているのは実際に見た。

まあ、それをやったのは、あの巨大生物だったけど。


アイツらは攻撃をする時、明らかに不自然に加速した後、不自然な減速が起こっていた。

あのように魔力をもって生み出した勢いなら、同じく魔力をもって相殺できるのだろう。


そう念じていると段々と前方へいく勢いの減速が始まりまった。


樹のスレスレならこのまま枝に着地できたかもね。


そして高度が下がり始めた。

一定以上の速さにならないように念じながら地面に着地した。


「はぁ……………」


大きくため息をついて全身の力を抜いて地面に寝ころんだ。


数分間そのままでいた。


「助かった…………」


起き上がりながらいう。


あんな深部まで潜ったのは、完全にいけなかったな……部屋一面になる大きさほどの絨毯になるくらいの巨大生物がいるってことは、知っていたじゃないか…………


「浮かれていたな…………」


言葉にしてみて、そうだろうなと思い苦笑した。


いつも以上に速くなった思考速度、それにも付いて来られる身体の高速化。

元の世界では思考が速くなればなるほど感じた、全身が鉛になっていくように重圧感を感じた

向こうでは、普通に走っている時でも、勝手に思考が速くなった。

そこでいかに、楽に動けるかを模索すればするほど、思考が加速しさらに体は重くなった。

それから解放された開放感、さらに他のものが付いて来られない速度で動けて圧倒できると全能感までも、あの熊に会うまでは感じていた。


「………………………良い様に考えよう」


そう、これがなかったらきっとそのことに、気付くのにもっと時間がかかった。

その時が遅れていたら状況によっては、本当に死んだかもしれない。

今回それが分かったのは、きっといいことだ。


俺はそう思うことにした……今も十分死にそうな目にあったかも知れないが気にしない。


それにあの常識をぶち壊してくれるものを見れたのもきっと幸運だ。

まだ見たことはないが、スキルの欄にある魔法もきっといつか使う時に役に立つだろう。


そういうことにしておく。


俺はふと、ステータスカードが自分を見ろといって来ているように感じた。


本当に元の世界でこんなこといった奴がいたら、幻聴でも聞こえてるんじゃないか、といわれるだろうな………


苦笑しながら取り敢えず、取り出して見てみた。



名前 : 黛 颯

職業 : 【魔王】【魔導士】【魔槍士】

種族 : 人族ヒューマン


体力 :E  up

筋力 :E+

敏捷 :E+

器用 :A- up

魔力 :S+


称号

〈魔王〉〈魔神継承者〉〈異世界人〉

スキル

・戦闘

〈槍術〉〈柔術〉〈脚術〉

・魔法

〈思考詠唱〉

・生産


・特殊

〈思考加速〉〈並立思考〉〈魔力操作〉〈柳体〉new〈魔王化〉〈時空庫アイテムボックス〉〈言語翻訳〉



体力と器用が上がっている。

よくは分からないけど、上がるのはいいことだろう。

後、スキルの特殊項目にある〈柳体〉っていうのが増えたね。

多分さっきの石弾を避けたヤツが理由で増えたのかな?


あれは、紫苑姉が俺の攻撃を受け流すのにたまにやっていた。

でも、今までこれをやったことはなかった。

試そうにも紫苑姉含め、訓練をする時の相手の攻撃が鋭すぎて、試す気にもなれなかった。


死ぬ寸前だったからね……きっと、そのおかげだろう。


それにしても、その動きがスキルになったっていうことは、俺の予想があっていれば、さっきの動きがいつでもできるようになるっていうことか?

これはかなり嬉しいな。


それにしても〈柳体〉の横ついているnewの文字が何だか押せといっている気がする。


「…………」


さっきも思ったけど………


考えるだけ無駄だとし、試してみればいいかとステータスカードの〈柳体〉を押してみた。

スマホでページが変わるように、ステータスカードの表示が変わり〈柳体〉についての説明が表示された。


…柳体…


〈柔術〉のある種の極み。

武器や飛翔物を見切り、適切な角度適切な力を加えて受けることで、それらを身体の表面で滑らせる。


PS


いや~、やっと使ってくれたね~

まあ、説明不足で放り出しちゃったのが、原因だからかもしれないけどね~


それにしても、こっちに来て初日からすごいものと戦っているね~(笑)

あれとあったら普通は死ぬんだよ?

君がどんな感じで生きて来たかは、知ってたから大丈夫だとは思ってたけどね~


それじゃあまあ、今日はこのへんにしておくよ。


じゃあね~




………ふぅ。


「こいつは俺を逆撫でしたいのだろうか?」


ステータスカード全力でを握り締めていった。


説明不足というのなら説明しろといいたいが、いったところで向こうに伝わるか分からない………伝わらないよね?………と思うのでどうしようもないだろう。


まあ、いいや説明が見れるなら〈魔王化〉について説明を見よう。

他は多分見ても予想通りのものしか見れないだろう。

とはいえ、〈魔王化〉も同じな気しかしないけど……



…魔王化…


魔力を使い自身を【魔人】の高位存在【魔王】へと変化する。



「分かんね………」


変化する?身体が作り変るってこと………怖っ…………

それに【魔人】って何?

こっちの知識がないかまったく分からん。


使ってみれば分かる気もするけど………魔力についてもまだ分かってないことが多すぎるから、使ってみるというのもどうやればいいか分からないし………


よし、取り敢えず、今日は村に戻ろうか。


今日はもういいとした。

魔力についてもこっちで情報をもっと集めてから、試しでみるということにした。


一応、とんでいる時に方角は確認しておいたので、迷うことはないだろう。

そう考えて、俺は村へ向かって歩きだした。


次話は2/3 12:00に投稿します。

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