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逸般人たちが勇者召喚に巻き込まれたようですよ  作者: satori
第二章 逸般人にテンプレ?が降り注ぐようですよ
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036

街の中を歩いていると、醜悪鬼ゴブリンの群れにより緊急依頼の騒ぎもかなり収束してきている。

道行く人たちの会話を拾うと、醜悪鬼たちの数も減ってきて、ボスも倒したので危機は去ったというような雰囲気となっていた。


「いや~、今回のはかなりの儲けになりましたね~」


食べ物の屋台が立ち並ぶ通りには、等間隔に休憩用のテーブルが置いてある。

正方形の小さなテーブルの対面に座っているエマが、屋台で購入したサンドイッチを食べながらそう言った。

テーブルの上には、サンドイッチ以外に揚げパンや串物、揚げ物にアンリさんからもらったお弁当とデザートが置いてあり、山のように積み上げられている。


落ち着いた場所で食べ始めた瞬間につきぬ食欲がわいた。俺とシュカも迷宮の疲れを取るためにゆっくりと味わいながら、しかしそれでいて手を止めることなく食べ続けているため、かなりの速度で山は掘削されていく。


「そうだな」


俺はエマの言葉に頷く。ルカからの報酬はまだだが、はっきり言って俺はそれを初めから期待していない。

一応言っておくが、これはルカがケチるとか払う能力がないと思っていると言う意味ではない。

最初に報酬を決めなかったのは、迷宮内の働きでルカに俺にどれだけ払うかそれで分かり易く評価と期待を知ることができるからだ。

まあ。転移門のことを知った状態では、俺の方から近寄っていくべきなのだろうが、それでは安く見られる。

ラージ・スライムに過剰とも言える攻撃をしたのは、そういう理由でもある。聞いたあとにやったから、それくらいのことは見透かされているような気もするが……


「それでエマはこれからどうするんだ?」


「何がです?」


「俺はルカたちから頼まれれば、また仕事は受けるつもりだがどうする?」


俺の言葉を聞いて本当に僅かな間を置いて「別に構わないですよ。迷宮には個人でもないっていく気なんで、強い人と行動できるのは楽でいいですからね~」

と言った。


迷宮内で見せた表情は一切出さない。


エマの内心は分からないが、俺はエマとルカのことを何も知らないので特に何も言わない。


ちらりとシュカの方を見ると、目の前にあった山がすっかり消えている。

一体どこへ消えたのだと思うような食べっぷりだ。まあ、俺も人のことは言えないくらいには食べているが。

その後、同じ山を二個平らげ、ようやく底の無しの沼のような食欲が落ち着いた。


食事を終えた俺たちはアンリさんの店へ戻った。

俺はエマを先に入れると、以前と同じようなことを言ってはいると思ったので先に入る。

食事を終えてから、気を抜けばその場に倒れてしまいそうなほどの眠気を感じていたので、そんなことをして時間を取られるわけには行かない。

シュカも同じようにかなり眠そうで足元がおぼつかない。一方、エマはまだまだ元気そうで、眠気など感じてもいなさそうだ。


「ん、予想よりも早く帰ったな」


中へ入ると、釣り目の深紅の瞳に一切の癖のない烏羽の髪を肩で切りそろえ、スレンダーな肢体に白いシャツに黒いベスト、パンツを着た氷の麗人、アンリさんがそう言って出迎えた。


「冒険者ギルドの方へ行ったら、銀翼のディートリッヒ、ロドス、リュエが付けられたので、それで早く終わりました」


「そうか、あいつらか。若いがなかなか実力を持っている奴らだな」


「ええ、頼りになりました」


俺がそう言うと苦笑された。そして俺とシュカを見て「まあ、疲れているのだろう。少し寝たらどうだ」と言ってきた。


「すいません。さっきからどうも眠気が」


「まあ、しかたあるまい。身体能力の低さを魔力を使って補う魔闘士は、肉体よりも精神を疲弊させる。迷宮のように強化し続けるものや、同じく魔力を使って疲労を誤魔化す後衛も同じだ」


俺が分かっていない自分の状態をアンリさんが説明してくれる。俺はそういうものなのかと思った。


「迷宮の入るのが少ない者はそうなり易い。

迷宮は常に危険が溢れている。慣れていないものは休憩中も自分で周囲を警戒しそうとするから、しっかりと休めない。

慣れたものなら、ある程度はそれを他の者にまかせられる。まあ、お前程の感知能力があればしてしまうのは仕方ないのかもしれないか」


それは信頼している者同士ならそうなのかもしれない。だが冒険者ギルドから、しかもギルド長から送られてきたやつを信頼し切るのは、かなり難しいからそっちを警戒していたのだけどね………


まあ、むこうも無駄な危険を犯してまでそんなことはしてこない。と思ったがそれでも警戒は解けなかった。


「と、長話をしてしまったな」


「いえ。あ、そう言えば、五時ほどにこちらにルカたちがこちらに来るそうです。それでオルガとベアーテがアンリさんのお菓子を気に入ったので、多めに作っておいて欲しいと言っていました」


「そうか。それなら買い出しにでも行ってくるか。

エマ、店番を頼む」


俺の言葉にアンリさんは嬉しそうな顔になった。


「了解です」


アンリさんの言葉に絵馬が頷く。平気そうにしている。エマの体力が少々うらやましい。


そろそろ立っているのも限界になってきていたシュカを背負って階段を登る。

シュカの部屋に入る。できることなら着替えをさせたほうがいいのだろうが、シュカも限界そうで俺がしてやるわけにもいかないが、靴下を脱がせて腰帯を緩めるくらいはしたほうがいいと思いそれはした。

シュカを布団に入れて「おやすみ」と声をかけて掛け布団をかけて部屋を出て自分の部屋に向かう。


コート、シャツ、ズボンを脱ぎ下着姿になって布団に入る。

即座に意識が遠ざかっていき眠りに落ちた。


・・・*・・・*・・・*・・・


街の中央のあるとある屋敷の一室。

純白のテーブルクロスの上に数多くの料理が並べられ、食欲をそそる匂いを部屋に放っている。

焼き立てのパンに青々とした葉物野菜に赤いトマト、チーズにオリーブ色のオイルのかけられたサラダ、玉蜀黍とクリームの淡黄色のスープ。塩胡椒、大蒜、赤ワイン付にした分厚い牛のステーキ、腹部に何種類もの香草を入れ表面に蜂蜜を塗られた鳥、ミンチの肉に玉葱、トマトを混ぜたソースの平打のパスタ、ふっくらとした生地の上にトマトとベーコン、チーズ、香草をのせた焼いたピザ。赤ワインとトマトに根菜と牛肉、高層を入れて煮込んだビーフシチュー。

どちらかといえば、質よりも量を優先したとも言える料理。


テーブルについているのは、ルカにオルガ、ベアーテにこの屋敷の主であり街長のルイーズ・サヴォワ。


ちなみにこの街サヴォワは人口二十五万人。

街の名前となる名字を持つ街長と四人の副街長、住人から選挙で選ばれた五人の街議。ちなみに選挙は制限選挙。


完全な民主選挙をやった国はあった。


そう、あった。


元は初代勇者【閃光】が広めようとしたものだ。


はっきり言えば、元の世界よりも一人一人の能力の差が大きい世界において適していない。

しかし【閃光】の持つ名声により多くの国が、【勇者】が言うのならいいものではないかと導入した。


まあ、分かりきってるが結果は散々だった。


投票箱を巡って殺し合いがおき、できもしない大言壮語言う者、単純に造形のいい人気者、敵対勢力から賄賂をもらった者、体外強行を唱えた者が上に立った。


こられはその者が住んでいた世界で全て起こったことだ。

自分の生きている場所で普通にできたいたので、どこでもそれができると思った愚か者だろう。

その結果、すべての国や地域で内戦が起こり、弱体化したところを外敵に攻められて滅びた。

そして原因の【閃光】も寝首をかかれて暗殺された。


それらの教訓から完全に政治は貴族がやるか、ある一定の能力を持ったものに選挙権を与えるのが普通になった。

聖調教同盟では、後者をとっている方が多い。なお、村や町、都市を点々とする性質を持つ冒険者が真っ先にそれから外されることは、導入前に満場一致で決定された。


ちなみに、ハヤテがこれを聞いた時に心の中で。

うちの国で出来たことを根拠に民主選挙をやろうといして、導入する前に失敗した国がもし導入したらこうなったのだろうと、動機は多分違うと思うけどほかの国に民主主義をやらせて、結果紛争を起こした心理学者にキ印と言われた大統領を混ぜたような奴だな。

と思った。


ルカは、ルイーズ・サヴォワ街長にギルド長に話した内容よりもさらに詳しく迷宮内部のことを話した。

ベアーテが迷宮の中で書いた地図は、情報の量を一段階以上下げたもので階層の形だけでなく、魔物モンスターが出てくるような場所まで完全に分かる。

それを全て書いた地図をルイーズ・サヴォワ街長に渡した。


「ところで本当に一度お戻りになるのですか」


ルイーズ・サヴォワ街長がルカに話しかける。

彼の前には料理は置かれていなくワインを飲んでいるだけだ。


「ええ、伝書鳥を送っただけでは、向こうの行動が遅れてしまう可能性がありますから」


ルカはフォークとナイフを置いて返す。


「しかし、高位迷宮となれば事の重大さはそれだけでも通じるでしょう」


「初動の早さが重要です。私の方が伝書鳥よりも早い上、向こうを動かす速度も速い。

それはもう話したでしょう。外の高位冒険者が入ってきて兵力比が変わってしまって不安なのはわかりますが」


街のもつ兵力は立地条件もあるが、それ以上に冒険者ギルドに登録しているものの人数と質で増やす。総じて冒険者は、問題を起こすものが多くそれは治安に直結する。

さらに高位冒険者になるとより癖が強くなるのでルイーズ・サヴォワ街長の言っていることも理解できる。


「それに彼女たちは残しておくので必要になれば彼女たちを使ってください」


「むむ……」


ルカの言葉にルイーズ・サヴォワ街長は唸る。彼もこう言えばこのような反応をするのは、分かっていたようで苦笑している。

彼女たちは聖調教同盟国内の身分の制限なしに高い潜在能力を持つ者と認められた者を集める学園で、同年代の中で最上位の力と才能を思っていることで有名だ。しかし、それと同時に使いづらい人物としても有名だ。

ちなみにルカも彼女たちと同様で、同年代で誰が最初に到達者級になるかという話の中で五指に入る。


「彼女たちを使うのは難しいでしょうが、使いやすそうな人物ならいましたよ」


「誰かね?君の弟のエマも使いづらいだろうし、アンリやバレッタもより使いづらいだろう」


ルイーズ・サヴォワ街長はこの街にいる冒険者側でないと思われる人物をあげる。エマのことをあげた時、ほんのわずかだが眉が動いてことを見てしてやったりという顔をした。


「おそらく、この街に来たばかり。つい数日前にギルドに登録した二人です」


ルカは気にすることなく話す。


「二人は迷宮に連れていきましたが実力は高いですね」


「ほう?よくそんなものを連れて行く気になったな」


ルイーズ・サヴォワ街長の言うことは最もだろう。


「オルガが二人のうち片方の魔槍士のことを聞き。その日のうちに戦いに行った」


ルカが話題に出すと顔を上げて表情で「何だ?」と表した。

それを見てため息をついて話を続ける。


「お互いに街の中であったことから抑えながら戦っていた。

と言うよりも、彼は襲いかかってきたものから距離を取ってまこうとしていた」


ルイーズ・サヴォワ街長は「そう言えば、巡回兵から屋根の上で戦っていると言うものがいると聞きましたね」と合図地を打つ。


「屋根から屋根へと移動しながら戦い。周囲の建物よりも大きな建物に移り彼はそこでオルガと戦いました。

彼も使用魔力量を上げ、オルガも魔法を使い始める。初伝のものでは対応しきれず、中伝のものを使おうとしたところ彼もようやく戦う気になりました」


ルカは一度言葉を切り、ちらりと視線を向ける。オルガは目をそらし料理を口に運ぶ速度を上げる。


「精密に制御されきった膨大な魔力を体に纏い、周囲に底冷えするような殺気を放ち始めました。

これ以上やらせたら周囲に被害が出るだろうと思ったので止めに入りました」


「最初から見ていてそこで止めたのかい」


ルイーズ・サヴォワ街長は呆れたように言う。

おそらくハヤテもこれを聞けば同じことを言うだろう。


「そうですね。止めても止まらないと思うのでちょうどいいかと。

その結果は想像よりもはるかに強かったと言うことでしたね。迷宮内で最後に見せたものから彼は到達者級でしょう」


「何と………」


ルカの言葉に絶句する。

それはつまり自分たちよりも強いということだからだ。

オルガはそれを聞いてまた目をそらす。ベアーテは我関せずで出されたデザートをリスのように頬を膨らませて食べ続ける。


「彼には何かしらの目的があるようなのです。その為、私たちの方には協力的です。

しっかりと報酬を出せば味方につけられると思いますので便宜をはかってください」


「分かった」


話がひと段落したのでルカも料理に手をつけ始めた。


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