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逸般人たちが勇者召喚に巻き込まれたようですよ  作者: satori
第一章 逸般人が異世界からきたようですよ
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001

どたどたと廊下を走る音が聞こえる。


「紫苑お嬢様~、紫苑お嬢様~」


「早く準備しないと間に合いませんよ」


父と母に私の面倒を見る様に言われているらしい小間使いの人たちが私を探して呼んでくる声だ。

私は彼女たちに見つから無い様に気配を殺して隠れる。

私の世話をしに来ている人たちは、他の小間使いの人たちに比べるとかなり若い。

多分、年上の人で世話されてストレスを感じさせない様にしているのだと思う。


でも、そんな気遣いをしてくれるくらいならちゃんと会って話をしてほしいのに……

表情が鏡を見るまでもなく歪んでいるのだろうと自分でもわかる。

私は、両親には嫌われていないと思う。

それだからこそ余計に、近づいていくと同じ分だけ遠ざかっていくのは、私の心にいつもまるで裂かれるような痛みを走らせる。

そしてそれを感じるごとに私は嫌われているいのではないかと、本当は私はいらない子なのではないのかと考えさせる。

でもそれと同時に、良く分からなのだけど気付かいをされていると感じることもある所為で両親のことを心の底から憎むこともできない。

それはただたんに私がそうあってほしいのだと思っているだけかもしれないが、このような直感は外れたことがないので信じるにはあたいすると思う。

もの心つく時からやらされている刀術の訓練の実践修練の時には、何時もこれに助けられているからこれを信じられると思う。


「ご自身のお誕生日なのですから、紫苑お嬢様がいないと始められません。ですので出てきてください」


別に私の誕生日だとしても父も母も出て来ないのに私が行く必要は無いだろう。

何時もそうだ。

こういった行事は盛大にやるくせに自分たちは出て来ない何時もどこかにいるらしいけどどこかは分からない。


「だったら今日は見つけて文句言ってやるんだから」


そう呟いて私は隠れている部屋の襖を慎重に音がたたないように開けて、私は寒さに身を震わせ白い息を吐きながら縁側を歩き出した。



数時間、家の中を探してみたけど全然見つからない。

そもそも普段私は、本館と刀術道場くらいしか行ったことがないので、どこに何があるかほとんど知らなかった。


しかも、私を探しに来る小間使いの人たちも数が増えてきて働いているのが長い人も入って来た。

私よりも邸の構造を熟知しているので、どこへいくかある程度あたりを付けて、回り込まれるようになって来た。


その為、父と母を探すどころではなくなっていた。

別に見つかったとしても、お小言を言われて誕生日会の会場に引っ張って行かれるだけだろうけど、目的にしたことも達成できずに面白くもないただ息が詰まるようなところには行きたくなかった。

私も意地になって小間使いの人たちから逃げた。


しかし、そうなると小間使いの人たちから逃げるには、家の中にいる時間よりも家と家の間に作られた庭から庭へ林から林へと移動した。

見覚えのある様なものは一切なくただ自分を追いかけて来る小間使いの人たちの気配がするごとに直感に従ってただ移動した。


「どこだろうここ………」


私は自分が今、家のどこにいるかが分からなくなっていた。

それでも足を止める事なく歩き続けているのは何故だろう?

木の切れ目を見つけいったん林から出ようと歩を進める。


そこを抜けると観賞用に作られたのだと分かる池が見えた。

それと同時に足が自らの意思に反して歩を進める。

私はそれを余程、疲れていたのかとまるで他人事の様に思った。

辺りを見渡すと池のほとりに白い子を見つけた。

紺色の着流しを着ていることから男の子だとは予想できる。


「どうしてこんな所にいるんだろう?」


私は誰にいうでもなくつぶやいた。

和装をしていることからうちの関係者であることは分かるけどそれなら私の誕生日のお祝いに来たはずでこんな所にいる訳ないだろうし……

あ、でも、もしかしたらいつまでたっても始まらないから退屈になって抜けて来たってことなのかな?

私は自分の行動で実際に迷惑してる人がいると、思うと急に申し訳なくなった。

もしそうだったら謝ろう。

普通に声を出して聞こえると思う距離まで近づいて私は白い髪をした少年に話し掛けた。


「ねぇ、なにしてるの?」


声をかけられて少年が私の方にふりかえった。

私はその少年を見てつい見入ってしまった。

少年は見た事もないような綺麗な顔をしていたり、まるで初雪の様な白い肌をしていたというのも理由にあげられると思うがそれ以上に少年の瞳だったと思う。

今まで見た事が無い赤い眼をしていたが、理由はそこではない見たことがないほど、澄んだ瞳をしていたからだ。


「………誰?」


呆然としてかたまっていると逆にそう聞かれてしまった。

あれ?私のこと知らないの?聞かれて思ったことはそれだった。

それは私にとって珍しいことだった。

私の家ははいくつもある家の本家に当たるらしくて、ここで会う相手は基本的に私のことを知っていた。


「私の名前は榊紫苑」


「榊………紫苑……」


少年はそれを聞き、多少反応した様な気もするけど別段驚いた様な反応ではなかった。

いや、もっとはっきりいうなら興味のないという反応だった。


「あなたの名前は?」


私のその声は少し苛立ちを含んでいたと思う。

さすがに偉ぶる気はないと思うけど、名前をいった時に聞いておいて興味の無さを隠さない顔をされたら、誰でも同じ気持ちになると思う。


黛颯まゆずみはやて


「黛颯ね」


私はそれを聞いて苗字のほうには聞き覚えがあった。

確か、本家に近い部類の分家の中にそんな名前の家があったと思う。

でも、それだと私を知らないことに大きな疑問がわいてきた。

あるとしたら本当に本家から遠い分家の子だと思っていたのだけど違うらしい。


「それでこんな所で何してるの?」


「水面を見てる」


「楽しいの?」


「別にここにいれば一人になれるから」


「よく来るの?」


「………週に何度か」


「何で?」


「………ところで今日は、君の誕生日をやるとかそんな事を聞いた覚えがあるんだけど大丈夫なの」


私の質問に苛立っているのだろうか、颯くんは池の方に身体を向けなおして、今いわれると痛いことを容赦なく聞いて来る。

でも、私の顔は知らなくてもそういうことは知っているんだ。

私は、ふともしかして身体が弱いから滅多に人前に出ないのではないのかという考えた。

でもそれは、今ここにいることと矛盾してしまいそうだけどそう浮かんだ。

それはただたんに、彼の持つ白という色からそういう印象を受けたのと、目の前にいるにもかかわらず目をはなすと消えてしまいそうな気配の薄さからだと思う。


「そうだけど抜け出してきたの」


「なぜ」


ある意味思われて当然なことを聞いてきた。

でも、この事って今まで誰にも話した事がなかったっけ、でも彼なら誰かに話してしまうということも考えられないと思った。

というよりも私に対して無償に興味を持たせたいという思いがわいてた。


「父と母が来ないから」


「なんで?君は本家のお嬢様でしょ?」


聞き返してくれたことに私は内心で喜びながら答える。


「分かんない物心ついたころから関わった覚えがないの」


「ふぅん。僕もお父様とはそういう覚えないね」


「え?」


私は驚いたもしかしたら自分と同じ思いをしているのかも知れないと。


「ねぇ、颯くん友達にならない?」


背を向けていた颯くんの正面に回り込んで目を合わせながらそういった。


「………お母様は普通に接してくれるけどお父様は拒否するかのように会おうとしないし、君の誕生日会のことも話している人がいて聞いたから知っているだけで教えてもくれなかった。

この色がいけないと思うけど、僕はここからいなくなるべきなんだと思う。

本家にいる君が僕なんかとかかわらない方がいいんじゃないのかな?」


颯くんは自分の髪と瞳のことをいっているのだと思う。

確かに珍しい色だと思うけど悪い感じは受けないけど……


「そう?綺麗だと思うけど」


「!?」


私の言葉はそう意識もせずに出たものだった。

そんな言葉に颯くんは目を丸くして驚いている。

羞恥なのか、身をよじって身体を私から離れようとしていくが、私はそれと同じだけ近づけていく。


それにしても……見れば見る程綺麗な髪だよね。


私は、そう思いながら手を伸ばして颯くんの髪を触ろうとした。

颯くんはさらに驚いたような表情をして離れようとする。

その動作からは、恐怖の感情もまじっているように感じる。

かわいそうだけど私の直感がそのまま近づけといって来るので容赦なく近づいていく。

とうとう私に追いつかれた。

手を伸ばして髪にというよりも頭にさわろうとした時、颯くんはおびえの為か目を固くつぶった。


「大丈夫だよ」


私は自然とその言葉が出た。

何となくだけど颯くんにとって一番言われたいことはこれだと思ったからだ。

私はできるだけ優しく髪をすいていく。

颯くんの身体の硬直はだんだんと和らいでいき固く閉じられたまぶたが少しづつひらいていった。

しかし、まるで絹みたいなさわり心地………私は多少嫉妬しながらさわって行く。

警戒が解かれたことを感じ取った私は、頭を抱えるように抱きしめた。


「………」


だんだんと身体から力が抜けていき私に寄りかかって来た。

何これ!?可愛い!!

つれない対応されてたから私は激しくそう思った。

この時、私はこれまで感じたことのないような感情をいだいていた。

私はそれが一体どういうものか分からなかった。


「お母様みたい……」


私にとってその言われ方は自分の母親にあまり良い感情を持っていなからだろう。


「そうじゃなくてお姉ちゃんじゃダメ?」


「………お姉ちゃん?」


「っ!?」


「うぎゅぅ………」


自分の胸の中から上目づかいで見上げてくる可愛い生き物を思いっ切り抱きしめた。

唸り声が聞こえた気がするがこの時私は一切考慮できなかったそれ程に破壊力のあるものだった。


「………ん」


「どうしたの?」


十数分間颯くんを撫でてさわり心地を楽しんでいて、颯くんの方も安心した様子でわたしに身を任せてくれていたけど急に起き上がって私が歩いてきた方を見た。


「お姉ちゃんを探しにきたみたい」


「え………」


私はそれを聞いて逃げる準備を始める。


「戻った方がいいと思うよ」


「むぅ……」


「お姉ちゃんが気に入らないことだと思うけど、ここに来た人たちはお姉ちゃんをお祝いしに来たんだらか行かなきゃダメだよ」


「むむぅ………」


私が気付くと私の腕から抜け出していた。


「またね……」


そういって颯くんは歩いていった。

十数分して小間使いの人たちが私のところにきた。


「はぁ……はぁ………紫苑お嬢様ようやく見つけましたよ。もう本当に時間がないので早くきて下さい」


「………分かりました」


これ以降もこの場所で、私と颯くんは何度も会うことになった。


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