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逸般人たちが勇者召喚に巻き込まれたようですよ  作者: satori
第一章 逸般人が異世界からきたようですよ
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014

本日三話目です

白亜街の純白の城。

その一室で剣を構えた少女と手甲、脚甲、短刀を持った少年が睨み合っている。


それを見ている部屋のすみで女性。


少年が地面を蹴った。

その瞬間、少年が消えた。


正確には消えたように見えた。


地面、壁、天井を蹴り縦横無尽に部屋中を動き回る。

何故それが分かるかというと、部屋中からそれらを蹴る音が聞こえるからだ。


少女はそんな中でも全く動じず、剣を正眼に構え続ける。


少年が背後から攻撃を仕掛ける。


音を鳴らしているのは、ブラフだったようだ。

攻撃の瞬間、足音が鳴らず無音になった。


ここにもし他の誰かがいて、少年の動きを見ることができていたら、全員が決まったと思ったことだろう。


しかし、少女は振り向くことなく剣を背後に振るった。


振られた剣は正確無比。


それは手首を狙っており、数瞬後には手首が切断されるだろう。


無論、あのような動きのできる少年がそうなる訳はなかった。


手首を返し、甲で受け弾かせ逆の手で手刀を放つ。

少女はその手刀を剣の柄で弾き落す。


少年は刺突、掌打、蹴りを息つく間もなく放ち続ける。

しかし、それを全て剣で弾かれた。


「っ!?」


明らかに少年は、少女よりも多くの攻撃を放っているはずだが、それらは全て剣だけで落とされた。

少女に完全に動きを先読みをされているということが、少年には否応なしに思い知らされる。


「はっ」


少女が初めて攻撃の為に剣を振るった。

少年は完全にいつきと呼ばれるタイミングをつかれた。

普通は動けなくなり剣を受けるだろう。


しかし、少年は動いた。


少年の身体が瞬間的に光り、その光が足元で爆発した。

その場から飛び退く、速さを持て余しているのか、止まるまで数メートル程地面をすべる。


それに少年は舌打ちをする。


不動の如く構えていた少女が動く。


少年は少女の剣気にあてられ、熱い身体とは正反対に冷たい汗が噴き出る。


気付くと、少女が少年の視界いっぱいに入っていた。


袈裟切りの一閃。


反応が遅れた少年は後方へ飛び退いてかわす。


少女が剣を振るう、勢いをそのままに一回転。

回転をしながら体勢を低くし、下段より切り上げ、さらに勢いを利用し身体をねじり、横薙ぎに繋げた。


「く………」


着地をした瞬間をつかれた少年は、切り上げと横薙ぎを短刀と手甲で受けるが、衝撃を受け手を痺れさせる。


少年は再び、部屋中を飛び回り、少女のスキを狙う。


「うおぉぉ………




………くそっ」


少年が倒れ込み、荒い息を吐いている。


少年の動きを見ていると、身体能力を使いこなせていないと、そういう印象を受ける。


少年は一つの攻撃をするにしても、幾重のフェイントを仕掛けるが、悉くしのがれた。

攻撃を極限まで、引き付けているからだ、それで間に合う神経の伝達。


いや、少女は無想の領域にいたっているので、そもそも考えていない。

故に、後出しのような行動のタイミングでも、十分に間に合ってしまう。


「くそっ………俺の負けだ」


少年は悔しそうに顔をしかめながら告げた。

それを聞いた少女は無言で剣を下した。


「一つ思うんだが、あんたと互角だったハヤテっていうのは、どれくらい強かっただよ」


忌々しそうに少年……佐藤牙龍はいった。


「私と勝ったり負けたり。多分私の方が勝ってた」


少女……榊紫苑は返す。


「あんたの方がつよかったっていうことか?」


「………彼の方が強かったと思う。

私が考えるよりも早く身体を動かせるようになったのはハヤテのおかげ。

ハヤテは相手のいろんなものを使ってまるで、予知しているみたいに動き読んでくるから、だから考えるよりも速く最善解を出さないといけなかった」


「…………」


ある意味、それはイタチごっこのようなものだっただろう。


先読みを反応し、また先を読んで、それを反応で外す。


永久にそれの繰り返し。


さらに、こちらに来て上がった身体能力もこちらへ来る前に、技を業にまで昇華させ、神経に焼き付けているといっても過言ではないので、完全に制御しきってる。


牙龍は苦虫を噛み潰したような表情をする。

似たような表情をすみで見ている女性……三輪澪もしている。


牙龍と澪二人の内心、お前ら二人共おかしいだろ、で一致していた。


分からなくもない。

彼らは中学に入る前にそれを完成させていたということになるからだ。


「「はぁ……」」


二人はため息を吐きながら、家具を元に戻している紫苑を手伝いに加わった。

なお、彼を擁護すれば彼の戦い方は、本来なら飛び道具等も使う。

完全に相手を殺すことが目的となっている技が、大半なのでこのような場では本来の実力を出せないとしておく。


昨日、他のクラスメイトがもう一人いるはずだが、と巫女さんにいったものがいた。

その後、巫女さんが調べた結果確かにも一人こちらの世界に、来ている者がいると聞いた。

それを聞いた時、彼女はようやく反応を見せた。


その後、彼の捜索隊を出すということになったが、ハヤテは髪の色が白で瞳が赤という確かに珍しいが、黒髪黒目よりはこの世界では溶け込みやすい外見をしてるので、捜索は難しいだろうといっていた。


それを聞いて、心理的に本調子とはいかないが、いち早くここから出て、自分で探す為に訓練はやるといったので牙龍を呼んだ。

さらに彼も部屋で型をしていたので、澪が呼びにいき訓練のことをいうと喜んでついてきた。


なお彼女らは、紫苑がパニックを起こしていて離れるわけにはいなかいということにして、王や重鎮と会わせられることは回避した。

二人そろって絶対に面倒なことになること間違いなしと思ったからで、ハヤテがこちらに来ていることがもう少し、早く彼女に伝わったら使えなかったなと二人とも思った。


「つうか澪。あんたは、こいつらのことを見てたんだから、どれくらい強いか分かってただろ」


「分からないさ。お前らみたいに真正面から戦うのは最終手段だ。だから戦闘能力高くない」


「くそっ。向こうで戦えばよかった」


おそらくハヤテに対していっているのだろう。

言葉から読み取るに彼はあったことはあるが、戦ったことはないのだろう。

彼は自分を高めようとするのにはかなり貪欲なようだ。


「………やめた方がいい」


「あ?何で?」


「ハヤテも表面上は隠していたが、そういう面では相当容赦ないし」


「へぇ……面白そうだな」


牙龍は凶悪な笑みを浮かべた。

それを見て紫苑は、ハヤテもたまに同じようを顔して、その表情を浮かべていた時はろくなことがなかったなと思っていた。


-------------------------------


俺は全身の力を抜いて理法を使う。


今までの理法の使い方は、身体の全てを一つの物体として加速をさせていたが、〈並立思考〉で身体全体、腕、足、と部分部分で別の方向へ運動を生み出せるようにした。


攻撃の時にしか使っていなかったので少し違うだろうが、グエンさんも同じようなことをしていた。


俺はそれを常時行えるようにする


何故かは分からないが間違いなくそれはできる。


そう確信している。


明らかに今までよりも同時に考えることが多くなっている。

しかし、神経伝達物質がまるで魔力に置き換わり、物理的な縛りから解放された気がして、思考能力が格段に向上している。


その為、それらを処理しきることは可能だ。


俺が今までやってきたのは身体の全てを自らの意思で動かすというものだった。

今からやろうとしているのは………魔力、理法を使い全て思考で動かすともいえるそれは、始めからそうであるべきだとそういえるくらい相性がいい。


そう、なんらこれまでと何も変わらない………


今までと同じように各部位で理法を使い勢いを生み出す。

それらを今までと同じように進行方向へ向かって統合する。


踵を上げた瞬間、俺の身体は弾かれるように飛び出した。


「ふん!!」


突撃する俺を迎え撃つのは大剣の横薙ぎ。


「はっ!!」


俺は槍へ有らんばかりの魔力を注ぎ込み、それを理法で速度へ変換、槍をさらに加速させた。


槍の先と大剣が、今日初めて真っ向からぶつかった。


拮抗は一瞬。


残念だが弾かれたのは俺の槍だった。

しかし、俺は石突で受けた時のように槍を回転させ、即座に石突で振り下ろしを放つ。

グエンさんは振り切っていた剣をすぐさま戻し、剣の腹で石突を受け止める。


それと同時に俺は槍と剣を支点に身体を持ち上げ、槍で剣を抑えてグエンさんの頭部へ向かって足を振り下ろす。

驚いたことに剣で受けることは即座に無理と判断し、俺の蹴りに向かって頭突きをした。


「くっ……」


「ぬぅ……」


ほぼ互角、俺の身体は一瞬空中に止まった。


グエンさんはそこへ剣を振り上げる。

俺はもう片方の足で、グエンさんの身体を蹴り後方へ跳び剣を回避する。


直ぐに追ってくるが、蹴りを受けた所為か多少遅い。


減速。


理法を使い下方への勢いを殺し。

足元へ魔力をおくり空気が固まるイメージをする。


加速。


固めた空中を蹴り、前方へ跳んだ。


(スキル・魔法〈理法(重力操作)〉を入手しました)

(スキル・魔法〈理法(集硬)〉を入手しました)

(スキル・特殊〈空歩〉を入手しました)


俺はスキル習得の声を聴いた。


俺はさっそく〈空歩〉を使うイメージをして、脇を抜けるように動き、首を狙って突きを放った。

突きはグエンさんは体勢を倒して回避するが、手首を捻って軌道を変える。


「なっ!?」


加速は魔力を使っているが、軌道の変換は一切魔力を使っていない純粋な技術だ。

完全に魔力を利用した状態で動いていたので、予想ができてなかったのだろう、大きく身体をそらしてかわした。


おそらくその状態からでは攻撃を出せないだろう。


俺は考え、そのままの勢いでグエンさんの背後に回る。

地面へむかう勢いを増加させ地面に足をつけ、前方への勢いを殺し背後からひざ裏へ蹴りを入れ、体勢を崩すことに成功する。


「ふっ」


息を吐いて、大上段から石突で頭部を狙い振り下ろした。

グエンさんの身体が意図した以上にとんだ。


手ごたえが……


先程までは、このような衝撃の逃がし方はしていなかった。


まさか……盗まれた?


「かぁ、ホントにやるなお前」


グエンさんは頭を抑えながら起き上った。


「ありがとうございます」


何だろうすごく嫌な予感がする。


一応、傷をつけたから怒っているわけではない。

だが、さらに純粋な闘気とも言うべき威圧感がます。

グエンさん魔力が活性化し身体を覆っていく。


頭から手を離した。

すると、そこからだんだんと血が流れてくる。

グエンさんの笑い顔が血化粧のせいで恐怖感さえ覚える。


…………やばいな……今のグエンさんと比較すると、今直ぐあの熊に特攻して来いっていわれる方がましだな……


「少しだけ………本気を見せてやろう」


その言葉から一呼吸置くと、さらの魔力が高まっていって爆発した。


次に瞬間、大剣が頭のスレスレにあった。

この戦いの中でグエンさんの癖をほぼ把握できていた。

予想外の受け方をできるのは驚いたが、攻撃に関しては十分だ。

故にどこに攻撃が来るのかは分かっていた。


一撃目はかわした。


文字通り息つく間もなく、次撃が飛んでくる。


後方へ跳ぶ。


さらに次撃。

一振りごとに剣速を上げてくる。


左右から同時にくるように錯覚して見える程、速い攻撃がきた。

先の攻撃はかわし、次撃は槍で弾く。


ぐっ……


衝撃で手がしびれる。

これ以上は不味い。


苦しいが攻撃にうつろうとする。

この速さだと先に攻撃するのは得策ではないな。


俺は〈柳体〉を使った即座の反撃をする方針を選んだ。


グエンさんの手元が掻き消えた。


目では追えないが、それ以外のものが予想通りの軌道で迫ることを教えてくれる。

斬撃が当たる瞬間、身体を僅かに動かし体面で滑らせた。

同瞬、攻撃を繰り出す。


俺は決まったと思った。


っ!?


刃先を指で挟んで止められた。


マジか………がっ!?


目を見開いて驚いていると、鳩尾にグエンさんの膝が突き刺さった。

口元に鉄臭いものが広がり、意識が飛びかけた。


く……


俺は意識を魔力を使い戻した。


グエンさんが今までと印象の違う笑みを浮かべた。


おそらく、これで締めにするのだろう。


………しのぎ切る。


それらは目で追うことのできないような速度だった。

〈思考加速〉〈並立思考〉を意識的に発動させた。

視覚以外の感覚、聴覚、嗅覚、触覚、魔力を感じ取り、今まで集めた情報と合わせ、不可視の攻撃を予想する。


グエンさんが地を蹴る。

今の俺にとってそれはまさに神速。


ここからは機械のように………得た情報からの予想した攻撃への行動命令を直接身体を送る。


回避、回避、弾く、回避、柳体、弾く、弾く、柳体、弾く、弾く、柳体、柳体………


俺は全方位より飛んでくる攻撃を対処していく。


しかし、十二回目攻撃、柳体を使って流そうとした時、それができず頭に衝撃を受けた。


何故………そう思ったが、直ぐに分かった。


剣の腹だ。


斬撃ではなく殴られたようだ。

斬撃を流す為の動きで殴打を流すには動きが足りなすぎる。


まあ、三回連続でやろうとすれば、先に思い付く手っ取り早い対処クライするか………


俺は何故か優しい笑顔を浮かべたグエンさんの顔を見て意識を手放した。


(スキル・特殊〈心眼〉を入手しました)


次話投稿は本日21:00です

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