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逸般人たちが勇者召喚に巻き込まれたようですよ  作者: satori
第一章 逸般人が異世界からきたようですよ
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013

本日二話目です

俺は武器を出して、グエンさんが待つ方へ歩いていく。

一歩一歩近づいていくごとに、相手から発せられる圧力にあてられ、俺の意識も戦う時のそれに移行していく。

俺のそれを見てグエンさんの口元が大きく裂けていく。


何だ?グエンさんの実力からすれば、俺なんて格下だろうに。


「全力でこいよ」


「胸をお借りします」


重心を落し槍を低め構える。

グエンさんは大上段に構えた。


お互いの距離は目測で五メートル程。


「いくぞっ!!」


その声と同時にグエンさんは地面を蹴った。

爆発的な勢いで、瞬間的に間合いが詰まる。


二メートルを超える巨体が視野いっぱいに入ってくる。


あまりの迫力に一歩下がってしまいそうになる。

振り下ろされる大剣は、まるで巨竜のあぎとが閉じるような幻影が見える程の圧力を放っている。


だが、ここは踏み込む。


「はっ!!」


声を張り上げ、グエンさんの圧力を振り払い、地面を蹴った。


グエンさんは、俺のその選択に満足そうに、さらに笑みを深くした。


足元からの腕への力の流れを読み、太刀筋を見切る。

俺は剣を躱し、さらに身体を間合いの内側へねじり込み、槍を短く短剣のように持ち胸部へ突きを放つ。


なっ!?


グエンさんが俺の突きに合わせて遠ざかっていく。


ありえない動きだな………いや、魔力を使えばできるのか。


「ふっ!!」


グエンさんの大剣が地面に接触する寸前、跳ねるように軌道を変化し、剣を振り上げた。

俺は減速の理法を使い前方へ運動を消し、同時に加速の理法で横へ跳んでかわした。


まあ、後ろへいった時に膝に力をためていたので、来ることは予想ができた。


即座に上段から袈裟切りを放つ。

軌道上へ槍を置きさらに加速の理法を使い、大剣の攻撃を受け流しつつの進行方向へ跳び、距離を取る。


剣の間合いから離れた瞬間、減速の理法を使い徐々に速度を落とす。

しかし、グエンさんは剣から伝わる感覚から衝撃を逃したことを読み取っていたようで、剣を振り切った瞬間に地面を蹴ったことを見た。


少しは待ってくれてもいいじゃないか。


空中で地面に足をつけた瞬間に動けるように体勢を整える。


地に足をつけた瞬間、地を這うように体勢を倒して地面を蹴る。

重心の変化と下半身の関節の駆動、〈魔力操作〉のスキルを使っての魔力、加速の理法を使い一気に加速。


俺が地面に着地すると同時に振るってきた大剣を体勢を低くすることで回避し、グエンさんの横を抜け槍を振って後頭部を狙う。


グエンさんは、俺の攻撃を頭を下げることで避け、剣を振った勢いをそのまま利用し、後ろ回し蹴りと放つ。

しかも、その蹴りは正確に俺のこめかみを狙ってきている。


さすがっ………


後頭部への攻撃を回避したこと、さらに正確な攻撃を返したこと、どちらも俺の見ていない気配だけで察知し狙いを定めたことに、内心で称賛した。

しかし、それくらいはできると思っていた。


俺は朝の訓練を見ていた。

その時にどんな動きが出来るかは分かっていた。。

そして相手にも同じように訓練を見せている。

だから、今のような動きをできることは、向こうも分かっていただろう。


俺はグエンさんの踵の方へ顔を向け、額から回し蹴りを受ける。

衝撃を受けると同時に脊髄付近の筋肉を一斉に駆動させ、相手の威力を利用しつつ全身をその場で縦に回転し、槍を躱す為に下げた頭部を蹴りあげる。


かたっ………


俺は鉄の塊を蹴ったような感触を足から感じた。


「はあ!!」


俺は声を上げ体幹付近の筋肉を一気に動かし、魔力と加速の理法も使い足を振り切った。


「ぐうぅ」


グエンさんの巨体が俺の蹴りを受け吹き飛ぶ。


減速の理法を使い地面に着地する。

それでも減速しきれなかったので、全身の関節で勢いを吸収する。

利用した蹴りの勢いが、どれだけ強かったかが分かる。


周りで見ている村人たちも、予想外の光景に歓声を上げている。

昨日見た戦士たちからは、絶句している雰囲気を感じる。


まあ、それも分からなくもない。

俺とグエンさんの能力差は、今の交差で分かった事だが、圧倒的な差だろう。

受け流したはずだが、首に相当な衝撃を受けた。


少しタイミングがずれたら首が飛んでたかもな。


俺は首を抑えて動かす。


まあ、これくらいならまだ大丈夫か。


起き上がったグエンさんは、さらに口元を楽しそうな笑顔を浮かべ、俺を見てくる。

戦意は、全く衰えていないよだ。


「今のがガウルがいっていた良く分からん技か?」


「そうですね。ガウルさんに使ったものとは、少し違いますかけど」


「そうか、まだあるのか?」


「どうでしょう?」


俺はいい終わってから、一呼吸おき地面を蹴る。

一瞬遅れながらも、グエンさんも蹴った。


間合いに入った瞬間、先程よりもさらに速く閃光のような速度で、大剣が容赦なく急所へ飛んでくる。

俺は前へ前へと動き、攻撃をかいくぐりグエンさん脇へ抜けて、回避と同時に槍を払う。

俺の槍を躱し、グエンさんもさらに踏み込み攻撃を放つ。


俺たちは、お互いに攻撃を自分の武器で受けるということはせず、足を動かし続け回避し、攻撃をする。


しかし、俺が攻撃をする回数よりも、グエンさんの攻撃回数の方が多い。


それは俺が攻撃を一回でも貰ったらまずいからで、慎重になってるというのもあるが、それ以上にグエンさんに攻撃するスキがない。

一度蹴りを返してからはやってこなくなった。


そろそろ流れを変えるか。


俺は、今までとは違う感じの反撃をしようと、さらにグエンさんの武器に集中した。


俺は頭の位置が、膝よりも低くなるくらいに体勢を低くし、より速く動くように魔力や理法を使った。


「む!!」


一瞬にして間合いの内側に入る。


しかも、急激な上下の運動により、一瞬姿を見失っていると思う。

グエンさんは、先程とは比べ物にならない俺の加速に、さらに警戒心を高めたようだ。


のってくれるかな?


これは全力の加速なので、減速や方向転換ができないくらいのものだ。

グエンさんは剣を腰だめにし、抜刀術のような動きで剣を振った。


のってきた。


それに俺は、槍の石突で剣の側面を打ち攻撃の軌道をそらし、さらに弾かれた勢いで円を描くように回転させる。

遠心力をもって加速させた穂先で頭部を狙う。

俺が攻撃に対し、武器を使って攻撃を逸らすのは初めてのだ。

反応が遅れるだろうと思ったが、驚異的な反応速度を見せ、その攻撃を大剣の長い柄で受け止めた。


ちっ………


俺は内診で舌打ちしながら、それならと手首を狙って柄を滑らせた。

しかし、グエンさんはさらに踏み込み、鍔迫り合いのような体勢になった。


ヤバいっ!?


俺とグエンさんの腕力の差は圧倒的。

押しつぶされるのは、分かり切っている。

避けようと身を引いた。


「がっ!?」


だが、それこそグエンさんは狙っていたようで、俺が引いた分よりもさらに深く踏み込だ。


そして俺の腕の間を滑り込ませ、腹部へ拳を叩き込まれた。


全体重を余すことなく乗せた、見事としかいいようのない拳だった。


俺は一瞬遅れで身体にめり込んでいく拳の勢いを〈柳体〉で逸らし、その上で加速の理法を発動させ全力で後方へ跳ぶ。


しかし、その遅れがかなり効いた。

痛みのせいで、地面に着くまでに減速の理法を使うことができず、地面をころがった。

流石にこの状態では、追撃をして来ないようだ。


俺は、転がっている途中で手をつき、身体跳ねさせ起こす。

勢いで地面をすべるが、減速の理法をようやく発動させることができ止まった。

脇腹を触った感じから骨は折れていないようだが、口の中に熱く不快な味がする液体が胃から上って来た。


俺は口に中に広がる苦いそれを飲み込み息を吐く。


くそっ……


完全に今の選択は、間違いだったようだ。


彼はどうやら、武器を合わせてからの攻防は、むしろ得意だったようだ。

グエンさんは、武器を合わせようとしなかった。


だからいけると思ったのだが、そう思わせることとそが、まさに誘導されていたことに遅れながら気付く。


「ふむ……」


グエンさんは俺の腹部に入れた拳を開いて、閉じてを繰り返した。


「今ので決まったと思ったのだが………」


「そうですね……さっきのは、危なかったですよ」


そう、本当に危なかった。


もし、もう少し反応が遅れたら、腹部を貫通されたのではとすら思わせる。


だが、攻撃を受けた瞬間、思考がさらに速くなった気がする。


身体は追いついてないようだったが、魔力と理法によって筋肉が身体を動かす前に身体を動かせた。


魔力、理法はサポートとしていたがこれは逆にすることによって、こっちに来て上がった身体能力よりもさらに思考速度が上がったが、それらを使えばまだ速くなるということが分かった。


「まだ、やれますよ」


「そうだろうな」


グエンさんは、また笑い大剣を構える。


何故だろうグエンさんの顔を見ていると、良く分からないがむかむかしてくる。


俺はそう思いながら魔力に身体を纏うように命令し、いつでも理法を発動できる手前の状態にする。





グエンの蹴りがハヤテの頭に当たると周りで見ている全員が思った瞬間、蹴りの勢いを超える速度でハヤテの身体が宙に舞った。

勢いもそのままに頭を下げていたグエンの頭部を蹴りあげ吹き飛ばした。


「………すごい」


「ホントだね………」


そう呟いたのはシュカとリリ。

だが、正確にいうと見ているものが違う。

シュカはハヤテの使っている理法の切り替えの速さに、リリは自分が知っている中で最も強いと思っていたお爺さんと互角に戦っているということだ。


しかし、二人はあまり実力が高いといえないので戦いの細かいところは分かっていない為、それが分かっているだろう人たちの方を見た。


「今のはどうやったの?」


「………何故あんなに早く理法が使える?」


二人は気になったことをリリはガウルに、シュカはカミラとマルタに聞いた。


「すまん……あれは俺にも分からない」


リリに聞かれたガウルは顔をしかめながらいった。


「カミラあれって魔法か?」


「話してもいいのだろうかね……まあ、いだろう。あいつが使ってるのは理法という奴だ。まあ、魔力を使ってるから魔法というのはあってるだろうね。

シュカの質問だが多分、〈思考加速〉と〈並立思考〉があるからだろう。

戦闘については分からんよ」


「すまんが理法って何だ?精霊魔法や紋章魔法とは違うのか?」


「よく分かってないものだね」


「どういうことだ?」


「使えるものが少ないからさ。【魔導士】しか使えないし、【魔導士】の中でもさらに一部さ。証拠にシュカも【魔導士】を持っているが使えないしね」


「あ~、つまりどういうことだ?」


「技術的なことはお前もさっぱりなんだろう?ハッキリいって分かるのは、アイツは体術と理法の高いレベルの併用ができているということだけだ」


リリとシュカは思ったようなことが聞けなかったが颯が凄いということはさらに深く思ったようだ。

どちらかといえば、彼が召喚者であることを知っていて、本来の召喚者というものを知っているカミラとマルタの二人は、今回の召喚では彼のようなものたちがゴロゴロのいるのではと危惧を覚えていた。

今までは偶々魔法のようなものがない世界から来ていたが、今回は魔法がある世界から召喚者たちは現れたのではないかと………


二人の危惧をよそに戦いはまだ始まったばかりで数秒もたっていないが、見ているものたちはハヤテの実力を認めたようで皆表情が変わった。


二人はいくつか言葉を交わし同時に地面を蹴った。


お互いにほぼ同時に武器を振るうがそれはお互いに紙一重で回避し止まることなく武器を振り続ける。

それはまるで綿密な打ち合わせがあり、お互いに次の行動を知っているかのようだ。


演舞のような戦いに見ているものたちは引き込まれていき、飲み物や食べ物へ手をやることはなくなっていた。

さらに戦っているものが自分たちが尊敬している村長に対して、応援をしているというものや娯楽の為というものではなく。


ただ二人の武人の戦いを見るそれだけに集中していた。






「がっ!?」


ハヤテは鍔迫り合いの状態から拳を受け吹き飛ばされ地面をころがった。


見ているものたちが思ったのは終わってしまうのかという思いだった。


互角に戦える技量をもっていたとしても、ハヤテは人族ヒューマンだ。

故に身体の耐久力は確実に劣っている。

そんな彼が筋力的には圧倒的なグエンから拳を受けこのまま戦えるとは思えない。


転がっている最中に跳び跳ねるようにして身体を起こした。


どうやらまだやるようだが見ているものたちはもう先程のようには戦えないだろうと思った。



………………………ぞくっ。



背筋に悪寒が見ているものたちに一斉に走った。


ハヤテの身体から膨大な魔力が溢れだした。

特別なスキルをもってなくとも目に映る程の膨大な魔力だ。


だが、それ以上に彼の表情に悪寒を走らせる理由があった。


笑み。


それはグエンが戦闘中に浮べているものと同じ笑みだ。


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