011
リリちゃんが家主の名前を読んでドアを開けた。
俺はいえの奥へむかうリリちゃんについていき、奥の部屋にいくと中には四人の女性がいた。
正確にいえばお婆さん一人と女性一人、幼女が二人。
その幼女の内の一人………この村で初めて見た狐の亜人の女の子は俺を見た瞬間にビクッとして、女性の後ろに隠れてしまった。
俺はそれを見て、作ってもらったものの感謝を述べたら回れ右で帰りたくなった。
正直にいうとかなり居心地が良くない。
「おや、どうかしたの?」
「昨日頼んだ服について、彼がハヤテさんがお礼を言いたいといったので連れて来ました」
「あらあら、別にお礼なんていいのですけどね」
俺はリリちゃんの前に出てカミラさんと正面にいった。
「ハヤテといいます。素晴らしい服を用意してくれてありがとうございます。
変えの服がなかったのでとても助かりました」
「ご丁寧にどうもカミラです。満足してもらえたようでよかったです。そちらがマルタ、パティ、シュカです」
周りと比較して小さい猫耳で切れ目のスレンダーな女性がマルタ、ダックスフントみたいなたれ耳で大きな目をした女の子がパティ、俺と同じ白髪赤目で将来綺麗とも可愛いともいわれそうな顔立ちの狐の女の子がシュカだ。
シュカには、同じ髪色と目の色をしていたので、何となく親近感を覚えたので、怯えられるのがよりショックだ。
「……………その」
「何でしょう?」
「彼女は、何故あんなに脅えているのでしょうか?」
「………シュカですか?良く分からないのです。
昨日夕方からずっとあの調子で怯えているのです」
昨日の夕方………俺が帰って来た時間だな。
俺はシュカを集中して見た。
正確には魔力を見ようとした。
これは…………
彼女の魔力は相当強い。
昨日の熊と同じくらいの光を放っていた。
それで合点が行った。
俺が魔力を見ることができるように、彼女も魔力を感じることができるみたいだ。
あの熊も気配を殺して、樹を目隠しにしていたのだがどう逃げようとしても、見失うことなく追いかけて来れたのはそういうことだろう。
ということは、魔力とやらを隠す方法も、早めに得ないといけないな。
ステータスカードの表記が正しければ、俺の魔力はかなり高いのだろう。
それを得ないと、魔力を感じ取ることができるものには、隠れていても簡単に見つかりそうだ。
「彼女この中で一番魔力が高そうですけど、だから俺の魔力に怯えているのではないでしょうか?」
「なんですって?」
カミラさんは俺をじっと見てくる。
「そんなことはないと思いますよ。あなたからはそんな魔力は感じられません」
あれそうなの?
ということはS+ってそんな高くないのか?
それとも何らかの隠匿法をすでに持っているのか………考えられるのは〈魔力操作〉がそれをしているのかな?
「………その人魔力を隠匿してる」
マルタさんの後ろに隠れたシュカがいった。
「隠匿?」
彼女がそういうのだったらという感じでカミラさんが俺にさわってきた。
おそらくさわることで隠匿している、していないに関わらず分かるのだろう。
「っ!?」
意識を集中させたように目を瞑った後、数秒たつと驚いたように身を引いた。
「これは驚きました………あなたは見ためは人族ですが、そうではないのですか?」
「いえ、人族ですよ。ステータスカードにも書いてありますし」
「そうですか?
その魔力量に加えて、その魔力操作能力からすると、【魔人】ではないかと思ったのですが……」
「【魔人】?【魔人】って何ですか?」
相手から出してきたのは幸運だな。
自分は知らないというふうに聞くことができる思った。
そのことが分かれば、〈魔王化〉についても少しは分かるかも知れない。
「【魔人】というのは、魔物や人が大量の魔力をもった時、元の種族から逸脱し変貌したものたちのことです」
「種族からの逸脱?」
「そう。魔物は人の形へと変貌します。
形は人でも、能力値は魔物出会った時のものを引き継ぐのでとでも厄介です。
さらに、人も〈魔人化〉というスキルを手に入れることで、人は一時的に【魔人】になることができます」
「〈魔人化〉!?」
俺はそこに反応した。
〈魔王化〉の【魔人】版ということは分かる。
版というか下位交換だろう。
「どうかしたのか?」
「それあります」
俺はステータスカードを出した。
クノのいった下位への置き換えをして〈魔王化〉を〈魔人化〉に変わるように念じた。
よし、変った。
念じることで色々なことができたのでこれも同じなのではないかと思ったが、上手くいった。
それと多分、異世界から来たものが持つと思われる〈異世界人〉〈時空庫〉〈言語翻訳〉を消して、見られたら不味そうな【魔王】、〈魔王〉〈魔神継承者〉〈魔人の友人〉を消した。
後、自己紹介の時に省いた苗字も消す。
俺のステータスについての反応を見る為にはいい機会だろうと思ったので変えない。
「待ちなさい」
「はい」
「見えていいのですか?
本来それは、滅多なことでもないかぎり他人に見せるものじゃありません」
「……俺は気付いたらここの森にいて、ステータスカードも良く分から無いものが増えたのです。
もしよかったら、それらについて意見を聞きたいのです」
正確にいうと全部わからないのだけどね………
俺はステータスカードのステータスを表示させて渡した。
名前 : ハヤテ
職業 : 【魔導士】【魔槍士】
種族 : 人族
体力 :E
筋力 :E+
敏捷 :C-
器用 :A-
魔力 :S+
称号
スキル
・戦闘
〈槍術〉〈柔術〉〈脚術〉
・魔法
〈理法(加速・減速・加熱・冷却)〈思考詠唱〉
・生産
〈解体〉
・特殊
〈思考加速〉〈並立思考〉〈魔力操作〉〈柳体〉〈魔人化〉
どんな反応をされるだろうか?
後、敏捷がE-からC+に上がってるな。
「これは………」
カミラさんは先程の同じように驚いた。
「どうしたんですか?………っ!?」
俺のステータスカードを覗いてマルタさんも驚愕の表情を浮かべる。
「実をいうと、今までこれは、誰にも見せたことがないのですが、おかしいのでしょうか?」
俺は不安がっているような雰囲気を出して聞いた。
「そうですね………【魔導士】これは才能のある中のほんの一握りがなれるものですし、【魔槍士】これは槍術を相当なレベルで修め、さらに魔力を体術と併用することができないと得ることができないものです」
「さらに【魔導士】でさえも一部しか得ることができないという〈理法〉を持っていることも………」
「〈魔力操作〉これもですが、これは器用がA-もあれば持っていても不思議ではないでしょう。魔力がS-……………これは災害級の魔物と同じくらいの保有量です…………」
「精霊魔法の適性が何も無いのも珍しいですね………」
カミラさんとマルタさんは二人で俺のステータスについていいあっていて俺の問いに答えてくれない。
だが、話している内容を聞くに俺のステータスはやはりかなり高いようだ。
これは俺の目的を果たす為にはかなり頼もしい情報だ。
「あなたは、他人のステータスも見たことがないのでしょうか?」
「見たことないですね」
見たことがあれば比較がしやすいのだが、クノはこの世界にいるものの平均くらい教えて欲しかった。
「まあ、それはそうでしょうね。普通こんなものを安々と人には見せません」
「え?人に自分のステータスカードを見せないということでしょうか?」
「それもありますが、違いますよ。
あなたの数値は普通の人から見れば恐怖の対象にしかなりません」
カミラさんではなくマルタさんが答えた。
俺が思っていたよりも俺の数値はヤバいようだ。
「ハヤテさん。あなた〈異世界人〉でしょう?」
「な………」
しまった…………この反応は肯定しているようなものだ。
俺は予想だにしていない指摘に絶句してしまった。
どこからばれた!?
「やはりそうですか………誰にも見せたことがないことや誰もの見たことはない。
親くらいのものは見たことがあるでしょうし、そうでなくとも近しい人のものくらいは見るでしょう。
この世界では常識である能力値のこと。
とはいえ、一番は昨日ここへ持って来られたあなたの服がそう思った一番の原因です」
マルタさんはよどみなくいった。
俺はハッとした。
俺はぐぅの音も出ない程の指摘だった。
考えてみれば、服は本当にはむこうの文字やこちらにはない化学繊維が使われている。
今、俺の着ている服は彼女たちが作った。
そういうことをしていれば、俺は良く分からない差も、もしかすれば分かるのだろう。
さて、この世界では異世界人は珍しい存在ではないのか、それとも召喚された異世界人が、あまりにも大きなことをしたのか。
まだまだ、情報が足りない。
なら、聞けることは聞いた方がいいだろう。
「そうです…………俺は〈異世界人〉です」
俺は質問に答えた。
称号に書いてあるので、この名称でいいだろう。
「認めてくれて、ありがとうございます」
「いえ、嘘をついていたのですから………すいません」
「別に秘密をいわなかっただけですから、嘘をついているというのは、違うでしょう」
俺が表情を暗くして謝ると、マルタさんは慰めてくる。
「迷い人でしょうか?」
「迷い人とは?」
「自然現象に巻き込まれ、こちらへ来るもののことです」
「そうなんですか、でも違います。俺は召喚者です」
「召喚者?でも、貴方はここの森に急に来たのでしょう?
呼び出したものが未熟で、召喚魔法を失敗したのが原因で森にきたとするのは分からなくもないですが、それは貴方には分からないでしょう?」
「実は………………………
俺は召喚されて途中でクノという魔神に途中からさらわれてここに跳ばされたこともいった。
「しかし、そういうことでも何故お前だけなんだ?他に三十人近くいたのだろう?」
俺がクノという名前を出した時に全員が驚愕していたがそのことではなく、何故俺一人がそのような対応をしたのかといいたげだ。
俺はステータスカードの隠匿をといて再び見せた。
名前 : 黛 颯
職業 : 【魔王】【魔導士】【魔槍士】
種族 : 人族
体力 :E
筋力 :E+
敏捷 :C-
器用 :A-
魔力 :S+
称号
〈魔王〉〈魔神継承者〉〈異世界人〉〈魔人の友人〉
スキル
・戦闘
〈槍術〉〈柔術〉〈脚術〉
・魔法
〈理法(加速・減速・加熱・冷却)〈思考詠唱〉
・生産
〈解体〉
・特殊
〈思考加速〉〈並立思考〉〈魔力操作〉〈柳体〉〈魔王化〉〈時空庫〉〈言語翻訳〉
「「「「!!??」」」」
先程よりも大きく驚いているようだ。
まあ、明らかに不味いものがあるから当然だろう。
正直、反応によっては今すぐ逃げなければならないだろう。
「ああ、確かにこれならそうするかもしれないね………」
カミラさんは特に恐れているような感じはない。
他の人たちも驚いているが恐れをいだいているような感じもない。
さっきまで俺を恐れていたシュカちゃんも恐れをいだいているような雰囲気がなくなっている。
何で!?
俺は【魔王】=普通の人にとっては、物語通り恐怖の対象と思っていたのだが、そうでないのだろうか?
「お前さんは【魔王】が悪とでも思っていたのかい?」
別にそうではないが……
「え?これが原因でクノという名の神に、別の場所に送られたのでしょう?」
「それは、貴方たちを召喚した国の宗教が【魔王】を悪としている場所だからです。
この世界で【魔王】というのは王………職業や称号で出るものは【王格】というのですが、それの一つに過ぎませんし、シュカの母親は【魔王】の一人です」
「…………」
俺は驚きのあまり口を開けて驚いてしまった。
だってそうだろう、こんなところに………こういうのは、あれだろうが辺境の地?に【魔王】の娘がいるのだろうか?
それに【魔王】の娘なんて普通もっとこうお城の中にいるようなイメージがあるのだが……
「まあ、その反応が正しいのだろう。シュカ、お前のステータスカードを見せておやり」
「………(コク)」
シュカちゃんはうなずいて俺にステータスカードをわたした。
名前 : シュカ
職業 : 【魔導士】【付加術士】
種族 : 白狐族(魔人)
体力 :F
筋力 :F-
敏捷 :E
器用 :C-
魔力 :A+
称号
〈魔王の娘〉〈職人見習い〉
スキル
・戦闘
〈短刀術(一刺)〉
・魔法
〈付加魔法(風・炎・雷・重・軽・硬)〉〈固有(狐火・幻影)〉
・生産
〈調理〉〈製糸〉〈被服〉〈研磨〉
・特殊
〈隠形〉〈魔力感知〉〈魔人化〉
驚いた本当だったのだ。
というか、能力値の偏りが何だか俺に似てるな。
後、魔法の付加と固有も気になるね。
いや、そんなことはどうでもいいだろう。
「ええと、これを見せて俺にどうしろというのでしょうか?」
「別に何かあると言う訳ではありません」
カミラさんはそういうが、何かある気しかしない。
それはもう俺の中で確信レベルだ。
まあ、別に今はいいだろう。
何というか、お礼をしに来たはずなのに余計なことをしてしまった気がする………
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