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逸般人たちが勇者召喚に巻き込まれたようですよ  作者: satori
第一章 逸般人が異世界からきたようですよ
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009

外へ飛び出したガウルさんは、まともな道を通っていく気がないらしい。

解体所を出た瞬間に地面を蹴り家の屋根の上を走っていく。


ついていけると思っているのか、それとも頭にないのかは知らないが、人に家の屋根を走るのはどうかと思う。


まあ、おいていかれるのは困るので俺もそれに続く。


ガウルさんの走りはとても軽やかで、屋根の上を音もなく走っていく。

確実に俺の倍近い体重があると思える身体をしているのに、そんな走りができるというのは参考になるので〈思考加速〉を使用し、動きを観察しながら追いかける。


ふむ、高い身体能力を制御する技能はやっぱりこっちの世界に生きる人の方が上手いな。


あっという間にガウルの家に到着したようで下へ下りる。

ガウルさんは扉を突き破る勢いで家の中に入っていった。


まあ、勝手に入るのは不味いだろうから俺はここで待つことにした。


本音は完全に無駄な心配になるだろうし、その中に入りたくないというのが本音だ。

少しするとリリちゃんがガウルさんの入った家から出てきた。


「あ、ハヤテさん来てくれたんですか?」


「ああ、お邪魔するよ。そういえばさっきお父さんが入っていったけど、お母さんの怪我は大丈夫だったの?」


「はい。大丈夫です。それとお父さんとお母さんは今台所でイチャイチャしてます」


「そ、そう」


あまりにもはっきりいうので返す言葉に詰まる。


「早く入ってください。お母さんに頼んでご馳走を作ってもらいました」


俺はリリちゃんに手をひかれて家の中に入る。

家の中は解体場と同じ魔法具で照らされていて、元の世界の家の中と同じくらい明るかった。

ダイニングのような場所に入ると食欲を刺激する匂いがしてきた。


リリちゃんによく似た凹凸のしっかりとした長身の女性がいた。


「あ………」


ガウルさんが俺を見て、まるで忘れていたと、いわんばかりの反応をする。


やっぱり忘れていたか………


それなのに何でリリちゃんは、俺がいたことに気付いたのだろうか?


まあ、いいか。


「がふっ」


俺がいいかなと思ったその時、リリちゃんのお母さんがガウルさんの頭部を容赦なく殴った。


「こんばんはハヤテさん。私はリリの母のティアといいます。よろしくお願いしますね」


「ハヤテです。よろしくお願いします」


俺は苦笑いを浮かべながら、リリちゃんにお母さんティアさんが手を差し出してきたので、同じく出し握手をした。


「ところで、あなた?お客様を連れてきているのならちゃんと家の中に入れてくださいね」


笑っているのにものすごく怖い。

俺はあまりの恐怖にリリちゃんがこっち、こっちと手招きをして来ているのでそこへいった。


「ああ、すまん、すまん。というかお前ついて来れたのか?」


「ええ、なん「あなた?」とか………」


俺は何でもないといおうとしたが、ティアさんが言葉にかぶせて遮った。


「なんだ?」


ガウルさんは、何でもないふうに返しているが顔が引きつっている。


「どういうことでしょう?」


「いや……俺は………お前のことが……」


さらにニコニコとした表情でガウルに問い詰める。

あまりの迫力にガウルはもはや震えているような気もする。


「嬉しいですけど、お客さんがいてそのお客さんがリリの恩人なのですよ?」


「いあ、でも……」


「ガウルさん………」


「すいません」


ガウルは謝っているようだが、ティアさんに部屋の奥に連れていかれた。

奥に入っていく時、リリちゃんの方へアイコンタクトのようなことをしていった。


「ハヤテさん冷めてしまいますから先に食べましょう」


「え?いいの?」


「大丈夫です。ああなると1、2時間は出て来ません」


リリちゃんは手早く器を用意して俺の分の食事をよそっていく。

匂いから判断すると結構な量の香辛料を使われているようだ。

肉と魚、野菜の漬物など様々な料理が並べられた。


「いつもこういうふうに作るの?」


俺は二重の意味で聞いた。

いつもこの品目でつくるのか?いつもこのように香辛料をふんだんに使うのか?


「いつもならお肉とお魚は同時には出ませんよ」


リリは顔の前で手を振りながら答えた。


その反応からは、料理自体が特別であることは、そこまでおもっていない感じだ。

俺は一応、村の周りの森で探索していた時に草も見てもたが、香辛料に使えそうな物は無かった。

ハッキリといえば、まったく見たことがないようなものも多くあったけど、匂いを嗅いだ時に料理に使えそうなものはなかった。


肉と魚に使われているものは、お互いに違うものが使われている。

そのことから、使う素材によって使い分ける選択肢があるほどに料理文化が高いことと、移動商店のようなものから当然のようにそれらのものが買えるということが分かる。


俺にとってこれは結構嬉しいことだろう。

これなら食事について、苦労することがないかもしれない。


リリちゃんに料理の説明を受けつつ料理を食べ終えた。

その時になるまで、ガウルさんとティアさんは出て来なかった。


「あら、もう食べ終わってしまっていましたか。

すいません。ほったらかしにしてしまって」


「いえ、リリちゃんと楽しく話していたので」


「そうですか。ガウルさん。ハヤテさんを客人用の家の方へ案内して差し上げて下さい」


「え?俺まだメシ食ってないんだが……」


「いいからいってきてください」


「はい………」


弱いよ、ガウルさん……まあ、しょうがないか……だって怖いもん。


俺はガウルに村長の家の横にあるティアさんのいう客人用の小屋に案内された。

中は綺麗で椅子に机、ベッドが置かれていてビジネスホテルみたいだと思った。

俺が預けた学生服もベッドの上に置いてあった。


「身体を拭くのならこれを使ってくれ」


ガウルさんはそういって大き目の桶と小さ目の桶、タオルを渡してきた。

多分、水は川のものをもってきて使えということなのだろう。


「ありがとうございます」


「着替えは机の上に置いてあるあれだ。それじゃあ、また明日」


ガウルさんはそういって小屋から出ていった。

俺は桶をもって川へ向かい水を入れて小屋へ戻った。


今きている服を洗おうと服を脱ぐ。

そして机の上に置いてある着替えを取った。


「え………」


俺はジャケットは借りていたから、上着等はかなり高いレベルでつくれても、下着はそこまででもないだろうと思っていたのだが、予想に反しでかなりいい。


つい声が出てしまった。


ゴムはなくてひもを縛って固定するものだが、肌触りは向こうの世界で高級品といわれても信じると思えるものだ。

これは本当にうれしい誤算かも知れない。


まあ、小説とかで描写されていたものと違うというだけか。

この世界の住人も便利にしようとするのは当然なのだし、よく考えれば天然繊維の服や下着くらい向こうの世界でも昔からあったと思うから、こっちであっても不思議ではないか。


俺は今きている服を洗ってしっかりと水を切りハンガーを使って壁にかける。


身体を拭く水をどうにかして、温かいものにできないだろうか………


俺は目の前の小さい方の桶に入っている水をにらんだ。


水行のようなものはしたことはあるし、寒いところは得意だけどこういうのはどうにかできないものか……


もちろん、何もできないことが分かっていれば諦めるのだが、今は異世界にいてまだ分からないことの方が多いが魔力というものが使える。

それを使いどうにかできないものかと考えてしまう。


そう魔法が使えないかと思ったからだ。


ステータスカードに〈思考詠唱〉なんてものがあり、職業に【魔導士】なんてあるのだからもしかすればと思うには充分だろう。

だが、逆に〈思考詠唱〉が詠唱が必要だということ教えてくる。

しかし、魔力らしきものを使い身体の動きを加速させることができた。


これができたのは〈魔力操作〉だろう。


どちらかといえば、身体能力が上がっているというよりも、魔力のおかげで神経の伝達速度が上がり、その上で筋肉等の生み出す力を増加させているような感じだった。


魔力が何かはこの際おいておくとして、加速ができればこの水を温めることはできるのではないかと思う。


熱は分子の運動と習ったことがある。

念じた時に魔力が実際にある勢いをそのまま増加させるという性質、というよりも魔力自体が運動エネルギーに転換できるそんな性質があるとすれば、温度はあげられるだろう。


俺は桶に手を入れできるだけ分子の存在をイメージして魔力を流そうと考えた。


「……………………っ!?アツっ!?」


俺は集中していたせいで、水温が上がっているのに気付かなかった。

その所為で身体が熱さを感じるような温度まで上がっているのに、入れっぱなしにしていた。


(スキル・魔法〈理法(加速)〉を入手しました)

(スキル・魔法〈理法(加熱)〉を入手しました)


………あれ?魔法………理法?


考えては分かりそうになかったので、ステータスカードを取り出し、スキルの魔法項目〈理法〉の説明を読もうとした。


…理法…


魔力によって理の操作し、逸脱する魔法。

使用には高度な魔力操作と知識が必要になる為、使用できる者が殆どいない。

世界の理の一端に到達した【魔導士】が使うことができる。


SP


いやぁ………これは召喚者、転生者が【魔導士】になればほとんど使えるのだけど早過ぎない?

後、魔力に関する仮定は当たっているけど足りてないよ。



「ふむ………」


知識といってもこれくらいのものでもいいのか?

完全に俄か知識なのだか?


足りないか……


俺はそういわれるのなら逆ができるのではないかと安直に想像した。

水面に触れるか触れないかのギリギリのところに手を置いて、今度は運動に対し魔力が相殺するようにイメージした。


水面から上がる湯気が少なくなり、なくなった。


成功かな?


〈スキル・魔法〈理法(減速)〉を入手しました〉

〈スキル・魔法〈理法(冷却)〉を入手しました〉



よし。


あまりにも予想通りになった気もするが……まあ、これくらいは大丈夫だろう……多分。


その後、俺は今度はその加熱を使うようにイメージして水を温め、身体を拭いた後、布団に入った。

とても長い一日だったと思いながら、直ぐに意識はまどろみの中に消えていった。






俺は真っ白な部屋にいた。


「ここって……」


つい今朝にここに連れて来られたな。


ここにいるはずのクノと名乗った神を探した。


「やあ、今朝ぶり」


シルバーアクセサリをいくつも付けたヴィジュアル系歌手のような格好をしている子供がいた。


冷静になってみるとかなり整った顔をしているよね、やっぱり神だからかな?


そう思っていると同時に急に放り出されたことと、ステータスカードの神経を逆なでするような表記を思い出した。


「あれ?」


「ふぐっ………」


身体が勝手に動きクノの顔面を殴打していた。

クノの身体は妙に軽く、まるでギャグ漫画のように吹き飛び「ふぎゃ、へぶ、おう、いた」とバウンドするたびに気の抜ける本当にギャグ漫画のような声を上げて止まった。


「あれー………」


俺はクノを殴打した自分の手を見ながら首をかしげた。


「あ、たた………酷いじゃないか………」


むくりと起き上り俺の方へ戻ってきた。

背筋がヒヤリとした。

身体が勝手に動いたとはいえ、不味いことをした。

超越者というのも生温い存在に、怒りでも買ったらどうなるか予想もつかない………


「ああ、気にしてないよ。今、君は魂というか意識だけできてるからね。その状態でのことをいちいち文句をいったりはしないよ」


「あ、そうなの?」


道理で身体が勝手に動いたわけだ。


「あはは、君の場合。勝手に思考が速くなるから、反射みたいなものしたことないんでしょう?

まあ、仕方ないね~」


クノはあっけらかんと笑った

そうだな、危険なことがあると勝手にそうなるなと、俺は頷きながら思った。


「ところで何か用なの?」


「ああ、そうだった、そうだった。伝え忘れたことがあったからね」


クノはそういうが、じゃあなんであんな急に放り出したのだと思う。


「まあ、まあ。あの時は、君らを呼んだところの神の手下みたいな神が君を取り戻そうとしてきたから、干渉されないように送っちゃうのが手っ取り早かったんだよ」


「へぇ……」


そんなことがあったのか、まあ、でも証明のしようがないから話半分に聞いて置こう。


「ひどいね~、僕が嘘をつくともうのかい?」


「………」


息をするようにつきそうだが………


「むむぅ……」


何だろう、本当に威厳が無いというか……別にぞんざいに扱っても大丈夫な気がする。

まあ、これも、ある種の信頼だろうきっと。


「きって、取ってつけたにようだけど、まあいいや」


「それで、伝えることって何?」


「召喚されたものたちのことさ」


俺はそれ聞いた瞬間、目を鋭くさせる。


「うん、勇者たちは基本的に一か月間は、基本的な技術を徹底的に教え込まれる」


「一か月……」


「そう、大体それくらいで、戦闘術のスキルがあれば、戦えるレベルになる」


何だかそれって、むこうで必死で訓練をしてきた俺にとっては、いらだちさえ覚えるな。


「いやいや、それくらいじゃ、君らのレベルにいくのは無理だよ。

そもそも、君らはこっちに来る時が最低値となるから、最終地点が明らかに高くなるよ。

というか、君たちは、召喚者たちでも最終的に得られるものをもう持っているんだよ?」


へぇ、紫苑姉や澪先生と佐藤はそれくらいのものを得ているのか。


「君は……」


「何だ?」


「まあ、いいよ」


クノは疲れたようにため息を吐いた。


「それで基礎が終わると、迷宮ダンジョンいう魔物モンスター溜まりにもぐって、能力値の方を上げる。大体それは半年くらいかな」


「ふぅん」


「まあ、それくらいは安全ってことだよ」


「何でそれを態々?」


「だって、君絶対に呼んだ国にカチコミでもしにいきそうなんだもん」


否定はしない。

というか、俺が気にしているのは、そんなことじゃないし。


「え?じゃあ。何を気にしてるの?」


本当に分からないという顔をしている。

何でもわかるという訳ではなさそうだね。


「戦闘とかは、ハッキリいうと全く気にしてない。

俺でさえ、あれくらい身体能力が上がっているんだ。

俺よりも強い紫苑姉に心配はない」


「ええと、じゃあ何を?」


「この世界には奴隷とかあるんだよね」


「え、うん。魔法で縛るとかがあるね」


「俺の中では、王とか貴族とか変なイメージしかないのだけど、その辺は?」


「ええと、召喚された場所ではそういうのは、多いかな?」


俺は息を吐いた。


「そんな、所に置いておけるわけないだろう?」


俺は拳を握りしめる。


「待った、待った。奴隷にする魔法は召喚者にはかからないし、変な貴族はいても召喚者たちの気を悪くしないから、君が危惧しているようなことは起こらないよ」


クノは否定した。


「本当か?」


「隷属魔法は元々がこの世界の人間の為に作られたから効かないし、そういう扱いをしようとした国が滅んだっていう過去があるから大丈夫だよ」


扱いに関しては納得できなくもない、奴隷にするっていう隷属魔法は安心しきれない。


「まあ………そうだね………君が納得できるような説明はできる気がしないね………」


考える人のような表情でいった。

何というか、そんな表情でも人目を引きそうだな。


「まあ………お前がいいたいのは、無茶するなでいいのか?」


「そうだね、勇者程じゃないけど、強い人はいるからね。今の君じゃあ瞬殺だね」


「マジ?」


「うん、マジマジ」


………そんなんがいるのなら、呼ばなくていいだろうに………もし俺が物語の魔王のような力を得たら、召喚をする魔法を知っているヤツ、それに使う設備等を破壊し尽してやるか………


「あはは、魔王っぽい、魔王っぽい。その黒い笑顔いいね~」


俺のちょっと危ない思考は、クノにはお気にめしたようだ。

今、クノがいっている魔王っぽいっていうのは、俺が思った物語の方だろう。


「まあ、いいや。取り敢えず、今日はこんなもんかな。じゃあね~」


「ああ」


俺はその後、多少お遊び的な話をしてから、眠りに落ちるように意識が消えていった。


(称号〈魔神の友人〉を入手しました)


ク「はいはい、こんにちはクノで~す」


ハ「ハヤテです……で、いったいこれは何だ?」


ク「僕はもう当分出番がないからさ、こういう所で遊ぼうかなって」


ハ「何するんだよ?」


ク「そうだね~、面白おかしく君以外の人のスキルと称号を説明しようかな~」


ハ「へぇ」


ク「では、記念すべき一回目で説明するのは………〈異世界人〉です」


ハ「〈異世界人〉そのままだろ、説明することなんであるのか?」


ク「あるんだよね~」


ハ「少し、気になる」


ク「まあ、普通に異世界から来た人が全員もらえる」


ハ「名前の通りだな」


ク「能力値の成長促進があるんだよ」


ハ「それはいいな」


ク「もう一つ、これが何より重要な効果なんだよ………」


ハ「それは?」


ク「それは、いいこともわるいこともドンドン引き寄せる。トラブルメーカー体質化の効果さ」


ハ「いらなっ!?」


ク「だって、それがないと、面白くないじゃん」


ハ「お前の都合じゃねえか!!」


ク「いやいや、きっとみんなそう思ってるよ」


ハ「誰だよ!?」


ク「さてと、ここの話は忘れて貰おうか?」


ハ「いきなり何…」


ガツン。


ク「ふぅ、こうしないと気を付けちゃうからね。それにこうできないと、裏のこととか話せないもんね。では、今日のところはここまで、次話は2/5 12:00だよ。これは不定期だけど、できる限りやるからね。じゃあね~」


扱ってほしい称号、スキル等がありましたら感想で書いていただければやります。

ありがとうございました。では、次の投稿でお会いしましょう。


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