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逸般人たちが勇者召喚に巻き込まれたようですよ  作者: satori
第一章 逸般人が異世界からきたようですよ
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000プロローグ


この世界が今の形になる前は、空と地の概念も無く漆黒の空間が広がっているだけでした。


しかし、そこには何もなかった訳ではありませんでした。


唯一の最高神デウスが一人で空間を管理していました。


だが、最高神といえ悠久の孤独に耐えることができなかったようでした。

その為、最高神デウスは身体の先から、自らの身体を斬り離し自分以外の存在を作ろうとしました。

そして精霊、下級神と呼ばれる存在が多数生まれました。

それらの存在は後に天地の元となりました。


しかし、精霊や下級神たちは最高神デウスとは比べるまでもない程の、ごく微量な魔力しか持っていなく、彼とはあまりにも格が違った為、かかわることも言葉を交わすこともできませんでした。


かかわりを持つことができないことに最高神デウスは悲しみましたが、自分の身体から他者を作る事が出来る事を知った彼は続けてさらに身体を削りました。

それは最初の時の様な末端を削る程度のものではなく、心臓、脊髄、脳の除いたすべてを削りました。

そしてさまざまな概念を持つ神が生まれました。


しかし、それでも精霊、下級神が生まれた時と同じでした。


それでも下級神と比べれば大きな力を持っていた、それらは後に中級神と呼ばれました。


そして最高神デウスは自身に残った最後の心臓、脊髄、脳から三柱の後に上級神を生み出しました。

最高神デウスは最後まで身体を削った為、そこで命を落としてしまいますが意思が消えるまでは多少の時間がありました。

そして消えるまで生み出された上位神たちと話をすることができました。

最高神デウスは満足しながら消えていったと上位神たちは口をそろえていったそうです。


そして三柱の神々は最後にそれぞれが二つの神格ディーヴスと名を授かりました。


心臓から生まれた小さな少女の姿をした神には、調和と図画という神格ディーヴスとルディという名を授けました。


脊髄から生まれた妙齢の美女の姿をした神には、勝利と規律という神格ディーヴスとリオナという名を授けました。


脳から生まれた幼いわらべの姿をした神には、自由と道楽という神格ディーヴスとクノという名を授けました。


それら三柱の高位神たちがこの世界パラディトピアの人々から多くの信仰を受け支配者として君臨することになりました。


〈聖国禁書館特級禁書〈最高神の存在と高位神の誕生〉序章より〉





この世界パラディトピアには四つの大陸がある。

四大陸のうち最大の大きさを誇るといわれている大陸には勝利と規律の神リオナを主神とする神律教を崇めている国が多い。

この大陸には三つの大国と九の中小国がある。

その内の大国の名をあげる神律教の総本山とされている聖国グローリー、特に勝利の神格ディーヴスを強く崇めている帝国ウィクトリア、帝国とは反対に規律の神格ディーヴスを強く崇める様になった皇国アルビオン。

それらの大国同士は多少の小競り合い程度は存在するが、お互いを最後までつぶし合うような争いは基本的に起こっていない。

神律教会は人族ヒューマン至上主義で亜人たちは主にこの大陸においては、迫害の対象およびそのものとして扱われる


そして二番目に大きな大陸はいまだほぼすべての土地が未開の地であり最奥には最強種の一種である龍種が多く存在しているとか、魔人のルーツであるという学説もあるがいまだ全貌は明らかになっていない。

なお、各地に巨大な魔の源泉があるといわれており、人族ヒューマンの研究者はほとんど近づくこともできないことも未開の地である一つの要因であるとされる。


三番目の大陸には、調和と図画の神を主神とする聖調教を崇めすべての国は、その総本山が存在する調停国インタヴェンが中心となり、絶対不可侵かつ絶対友好の関係を築いている。

そのような関係にある為、それぞれの国は高い割合で貿易をしており、いい方を変えるとお互いがお互いの生命線を持っている状態といってもいいが、それはお互いの信頼関係の表れだろう。

そのようにお互いが信頼しあって尊敬しあっている関係であることもあり、国同士が各分野に特化した技術を独自に開発しあう、完成した技術は多少の間は他の国は使えないような仕組みになっているが、一定の時間がたつとそれらの技術は基本的に共有され合いさらに高いものへと変貌する。

聖調教会は自分たちにとって明確な敵以外は基本的に受け入れる為、人族ヒューマン・亜人の割合いは半々くらいだ。


四番目の大陸は自由と遊楽の神であるクノを信仰している亜人たちが多く暮らしている。

かの高位神は謎が多い神だ。

他の二柱には従属神という中級以下の神がいるのだが、自由と遊楽の神クノにはそれが確認させていない。

高位神は三柱しかいない為、他の二柱にはいるからといって従属神がいることが普通であると考えるのは統計的に早急であると思われる。

大陸の話に戻るとこの大陸には、少数しかいない亜人たちの集落があり、そして魔人たちも多く暮らしている。

そして二番目の大陸と同じくらいの魔の源泉が存在している為、強力な魔物モンスターが多く生息しており、なおかつそこで生き残っている亜人たち、魔人たちも同様であり、神律教会による侵攻も例外を除いて完全勝利をおさめている。


〈聖調連合共通地政学書四大大陸まとめより〉





勇者それは兵器である。

これはおそらく神律教会でさえの認識だろう。


時空神を従属神としている勝利と規律の神リオナを主神とする神律教会が行う【勇者召喚】の義によって異世界から召喚される。

彼らは、異世界の知恵と共に時空神と勝利と規律の神より格別の加護グラシアを与えられてこの世界に現れる。

やつらは神律教会より地位と名誉、美食に美酒、さらには極上の美姫・貴公子を与えられ神律教会の言いなり、異教徒や亜人を殺す先兵となる。

彼らの加護グラシアは精霊王、大精霊といった一部の以外に精霊に対して絶対的な命令権を持っている為、魔法の発動に遅滞が存在しない。

それはつまりどんな大魔法であっても瞬間的に使うことが出来ると言うことだ。

【勇者】の前に兵士や家臣、民を置く訳にはいかない。

彼らはその大火力をもってどんな者たちがいるのかを確認する事なく焼き払っていく。

あれを兵器や悪魔という以外何と言う言葉で言い表せばいいか私は分からない。


そして【勇者】は一回の召喚につき一人だが、【勇者召喚】は【勇者候補】の周囲にいるものも巻き込むらしい。

それらの者たちは【召喚者】と呼ばれる

【召喚者】と【勇者】は時空を超えるという神格ディーヴスを持っている存在しかできない格別の経験をする為、向こうの世界でどんな凡人だろうと潜在能力が魔人級となるといわれている。

そして彼らは【魔王】である私を殺す事によって元の世界に帰れるといわれているらしい。

ハッキリいうとなんとも馬鹿らしい。

私程度では時空に干渉できるわけがないのだが。

まあ、彼らにとってはこの世界に連れて来られたという恨みはあっても、その上から極上の快楽を経験してしまうから冷静な判断能力を忘れてしまうのだろう。


さてそろそろ時間だ。

側近の予報者の話では今日ここに【勇者】がくるらしい。

彼女は優秀な予報者であるからこれに間違いはないだろう。


さて、これを読んでいる者よ。

おそらく私は死ぬだろう。


【魔王】とはいえかの【勇者】は【真の勇者】までおそらく至っている。

さらに【召喚者】と共に来るのだというのだから、私が死力を尽くしたとしても勝ち目は二割といった程度だ。

ゆえに【勇者】とかかわる時には以上のことを心にとめて気をつけて欲しい。


〈名もなき【魔王】のメモより〉





蝋燭の火と開け放たれた襖から入る月明かりが、物々しい表情をした百人にとどきそうな程の男たちの表情を闇の中からうっすらと浮かび上がらせている。

上座に坐している白髪しらがを後ろに撫でつけていた巌のような壮年の男性からは、向き合っているだけで大瀑布のような威圧感を受ける。

集められた男たちはその雰囲気に飲み込まれ、背中には氷を入れられた様な寒さを感じている。


本家うちから鬼童が分家の黛から神童が生まれた」


男は固く閉ざされていた瞼を持ち上げるとより寒さはましたが、直後に告げられた言葉によって寒さは吹き飛び表情は恐怖で青くなってはいたが、さらに悪く蒼白となった。


「な!?この時代になぜ?」


「巫女はどう言っている!?」


「凶兆はなかったと言っていたぞ!?」


「大戦の時でさえ神童と鬼童が同時に生まれることなぞなかったというのにいったい何があるというのだ!?」


それぞれが思いついた言葉を止めることなく跳び出させ続けた。


「しずまれぇ!!!」


それに見かねた壮年の男が怒鳴った。

魔獣の咆哮のごとき轟音は、百人に近い人数がいてなお余裕のある部屋の空気を震わせ、等間隔におかれた蝋燭の火を全て吹き飛ばし、畳・襖さえも揺らした。

広間は、火が吹き飛ばされた蝋燭の灰となった綿糸の先端が崩れていく音だけが聞こえた。

騒いでいた男たちがおそるおそるという様子で、上座の方向に顔を向ければ鬼神のような羅刹のような表情をした顔を見ることとなった。


「巫女による宣託がないとしてもこの数十年の間は何があっても対応ができるように準備をしておけ」


その後、数十分にわたり二人の童の扱いについて周知させその日の集まりは解散となった。




月も落ち星の光だけが襖の隙間から入り込む、二畳ほどの茶室で茶碗につがれた茶を茶杓でたてている顔に大きな傷のある実年齢よりも相当若く見える線の細い男と白髪しらがの髪を撫でつけた巌のような壮年の男性が、茶をたてる軽い音を聞きながら向かい合っている。


「どうぞ榊兄上」


線の細い男が壮年の男に茶を出し、壮年の男性は作法通りに飲み終えた。


「………黛。下らんと思うか?」


「そうですね…………可能性としては分かっていたつもりですが、自分の子がそうなるまで人ごとでしたね」


黛は苦笑を浮かべながらそう言った。


「ふぬぅ……童が生まれた場合はその血を持った親は童を拒絶しなければならない。自らがそうなるまで思いもしなかったが、苦痛だな」


榊も先程までのように百近い人間を委縮させ、震え上がらせるような覇気はなかった。


「私は外から嫁を貰ったのでまさかと思いましたし、私と結婚して苦労を掛けているというのに………真白にはこれからさらに苦労を掛けることになってしまいますね」


「まだいいだろう。桜花は一族の中からだゆえに子育てをすることもできん、しかも娘だぞこっちは………」


「息子だとしても放っておいていいと言う訳ではないでしょう……」


二人共軽口を叩こうとしているのだろうが、ともに精彩に欠ける。


「実は真白にこれ以上負担をかけるくらいなら離婚しないかと聞いたんです」


「…………どうなったのだ?」


「殴られましたね。心窩を抉るような掌打で………そしてその程度のことで別れるくらいなら初めから結婚などしないと」


鳩尾の辺りに手を当てながらそう言った。


「惚気るな阿呆が………」


榊はため息をつきながら忌々しそうに返した。

だが、お互いが感情を隠さずに見せることができるのは、信頼があってなのであろう次の話題に移る時には綺麗に消えている。


「問題はこれからの幼年時だろう」


「………そうですね。親の拒絶と何より周囲から虐げられる可能性が高い………」


「特にお前の子は周囲から浮く。明らかに周囲と違う外見をしているから、さらに可能性が上がってしまう。これがもし逆であればどうにかできる可能性もあったのだが……」


子供というのはある種残酷なところも多い。

純粋さから取り返しのつかないような行いをする。

二人の我が子を思う内心を吐き出し続けた密談は、東の空より光明が襖から差し込むまで続いいた。

しかし、会話の中ではそのような光を見つけることはできなかった。


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