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022

「おらあああああ、日頃の恨みいいい!!」

「うるさい腐れゾンビ! さっさと成仏しろおおお!」


 物騒な叫びが飛び交う。単なるこの場のノリのロールプレイであって、日頃鬱積したモノが噴出した結果で無いと良いんですけどね……他人事ながら。


 フィールドの属性が戦場モードへと切り替わったためだろう、戦況図が表示されるようになったマップを開き、状況をチェックする。

 ゾンビ陣営に回った人達は3割程度のようだ。人数差的に考えれば普通に当たれば勝てそうなものだが、そうにも行かない要素がある。


炎の矢(フレイムショット)!!」


 夜天に映える赤い軌跡を描いて、ネージュの攻撃が道を塞いだゾンビを撃ち倒す。大体のゲームよろしく弱点である火属性攻撃を叩き込まれて、うめき声を上げながらアンデッドはぐずぐずと燃え崩れる。


 敵はプレイヤーだけではない。どこからともなく湧き出すゾンビやらスケルトンの群れが俺達の行く手を遮っていた。


「ほんと、キリが無いね」

「雑魚とは言え数が多いと困りものだ」

「足を止められたら厳しいって時にね」

 

 敵性を示す赤はわらわらと増え、味方のプレイヤーを示す青いアイコンは、まるで海の中に孤立した小島のようだった。


 目的地の入り江をみやり、それから周囲の地形に目を走らせる。


「……ここで、食い止めよう」

「普通の平野みたいだけど? 川も全然、歩けるぐらいに浅いし」

「疎らだけど、木と川で本当に何も無い平野が狭められてる。実際には簡単に突破できる障害物でも、なんとはなしに避けるよう人は動くものだよ。心理的隘路とでも言うべきかな」

「ふうん……」


 まじまじと見つめてきたのは剣の巫女(ソードダンサー)。因縁の相手とはいえ、どこか神秘的な雰囲気の美少女だ。そんなに見られてはちょっとどぎまぎしてしまう。


「ま、私はそういうのわからないから。レオハンが良いと思うなら良いんじゃ無いかな」

「随分と買いかぶられたものだ。だが、私もそこが良いと思う」

「レオハンさん、声出しお願いしてもいいですか? きっと信頼度とか、私なんかよりずっとだと思うので」

「それはどうかな……だが、心得た」


 苦笑いを浮かべて、だけどすんなりと受け入れる怪しいヒゲの海パン紳士。指揮官として長らくやってきた人は、流石に違うなと思う。

 自分も昔は、ああだったっけ。


『このままばらばらに行動してもやられるだけだ! みな、E6地点を目指してそこで敵を食い止めよう』


 豊かなバリトンの声は、その言葉をとりあえず信頼してみようという気にさせられる。

 全員が従うわけではない。ただ、それでも流れができはじめる。


「私たちも急ごう」

「あそこで迎え撃つとして、何か策はあるのかね?」

「策というか、みんなが纏まれさえすれば、後は敵を食い止めつつしっかり撤退ですよ。定石通りやるだけ。弱くて数の多い敵を相手にするときは呑まれないことがとにかく大事だから」

「その通りだな」

「私が、切り開くよ」


 こちらを一瞥して、ガランサスが先頭に立った。

 普段だったら競って俺も前に出たかもしれないけれど、今は戦術を練ることの方が優先だ。


 宝石のような青髪をたなびかせて、クロバールの双剣使いは走る。


「――っ!!」


 その剣技が巻き起こすエフェクトに紛れて、スキルコールの声は聞こえなかった。ただ、嵐を纏ったかのように、アンデッド共はそこに居ない者のように、切り刻まれ、巻き上げられ、海が割れたかのような道が俺達の前に拓ける。


「あいもかわらず、凄まじい……」

「兄様、ほんとにあの人に勝てるの?」

「……うるさいな、それは、イベント終わったら考えるよ」

 

 ほんと、ガランサスへの勝ち方に、カンナの亡命に、アグノシアの勝利に。色々俺に負担かかりすぎじゃないですかね。全部自分で背負い込んだことと言ってしまえばそれまでなのだけど。



1回の字数が短くなっていて申し訳ないですが、更新です。


そして『ネットゲームで対戦相手を煽ったら、何故か同級生の女の子に踏みつけられている 』ですが発売されております。


七原先生の美麗で可愛いユキちゃん、カンナさんを見たい方。手入れをしてより読みやすくなったお話を

読みたい方は是非!

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