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 状況を簡単に整理しようと思う。


 幽霊船に襲われて、流れ着いた先の島で俺達クエストの参加者は、ゾンビに襲われた。

 俺とカンナが最初に見たのは、俺達の乗っていた船の普通の船員がゾンビへと変異する姿。

 それに、ゾンビパウダーと思しきクエストアイテム。


 同じようなシチュエーションは島中に転がっていたらしい。俺達と、ネージュ、それに、ガランサスとレオハンのクロバール2人組はなんとか状況を脱したが、レティシアとジークはゾンビパウダーの罠にかかってしまった模様。

 クエストに参加した他の連中も同じような感じなのだろう。

 たき火の爆ぜる音の向こうから、かすかに喧噪の気配が流れてくる。

 

 これはクエストの(ふるい)なのか?

 答えはNo。それはレティシア達が未だクエストから脱落していないことを見ても明らかだ。


 可能性としてありうるのは、この島のどこかにいるボス、あるいは中ボスのようなモンスターを倒せば、ゾンビ化の呪いは解けるというもの。


「そんなのゾンビパウダー踏んじゃった人がつまらないだろうし、批判受けそうだけどね」


 たき火から少し距離をとって岩に腰を預けるガランサス。その呟きに俺はあごに手をやった。

 世のゲームにクソイベントと名高いものは数知れず。これがそうではないと誰が言い切れようか。

 だが、決めてかかるのは危ない。銀剣の運営は今まで数多くの良質のグローバルクエストを開催しており、プレイヤーの信頼は高い。可能性は低く見積もっておいた方がいい気がする。


「ゾンビになって噛みつくも自由、ゾンビになった人の頭を吹き飛ばすのも自由、ゾンビ映画体験イベントとか?」

「君はたまに怖いこと言うね、ネージュさん」

「戦争でやってることと変わりないじゃない」

「表現に大分差があると思いますが……」


 お互い力を尽くして技をぶつけた結果と、あーうーしか言えない連中の頭を弾けさせるのでは絵面的にも大分違いがある。


「ゾンビになることに何か意味があるとしたら何なのだろうね」


 顎髭をなでつけながら俯き気味にレオハンが言うと、フランスの哲学者が言っているかのような趣がある。ゾンビになること、その意味と時代性。無いよそんなもの。


『私はこのフレーバーテキストがちょっと気になるんだよねー』


 リモート参加のゾンビ1号ことレティシアの言葉に、俺は小首を傾げた。


「どれだろう?」

『脳裏に響く言葉に抗うことができない、って奴。単にゾンビになっちゃったってだけじゃなくて、操られてる感じがするの、何だろうなーって』

「確かに気になるね……どこかに黒幕が居るってこと?」

「そりゃ居るだろうけれど……」


 ゾンビパウダーが自然に発生することはあるまい。どこかの研究所のうっかりさんがミスって島中ゾンビにみたいなのは良くある話ですけど。

 黒幕と戦う時に、ゾンビ化した人達は敵に回るってことなんだろうか。ゾンビ側が勝っちゃったらどうするんだろう、ゾンビに対して人類が生き残りをかけて戦うゲームに趣旨変えかな。カンナさんと一緒に遊べなくなっちゃうな……。


 その時、ぽん、と突然インフォメーションウィンドウが警告音を立てた。


「ひうぅっ!?」


 しゃっくりみたいな普通にやったら声帯からはとても出なさそうな悲鳴が上がって、一同の視線が隅の岩陰を向く。そこで自分の上げた声自体に呆然としていたのは、言うまでも無くカンナさん。


「う……うぅ……すみません……」


 単なるシステム音に過剰な反応を示してしまった自分を恥じているのだろう。か細い声でうずくまってしまったカンナに、流石のガランサスも尽くす手無しといったため息を漏らした。


「ま、まぁカンナのことは良いとして……なんだ?」

 

 ポップアップが上がったのは全員のようだった。イベントの進行を示す金色のアイコン。イベント専用の拡大地図を開くと、無人島のど真ん中をくるくると回転するアイコンが指し示している。


「……ま、行くしか無いってところかな」


 黒幕、あるいは運営の手招きだ。

 

短めとなりますが、仕事の合間でなんとか更新していきたい……! ご容赦ください。

書籍化の方ですが、書影画像を貼らせていただきました!

発売まで二週間を切り、ドキドキがとまらない状況です。

文章には手を入れて、読みやすさを増しているとお見ますので、お手にとっていただければ幸いです!

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