その手
その手をそっと持ち上げると、綺麗な指に唇を寄せる。
白くて、さらさらしていて、ひんやりと冷たいその指先はまるで雪のようで。
私の体温で溶けてしまうんじゃないか、なんて不安を抱いてしまう。
試しにかりりと甘噛みしてみる。
肉質的な歯触りを感じ、安堵の息が零れ落ちた。
ねぇ、早く起きて。いつもみたいに、優しく包み込んでよ。
私はその手を力強く握り締めて額に当てると、再び雪の中へと戻した。
溶けてしまわないように。
失ってしまわないように。
深々と雪が降り積もる。
全てを優しく包み込むように。
全てを白く染め上げるように。
最近、友人が生死を彷徨う重病に罹りました。
モノクロームという様式がありますが、人間も最後は骨(白)と灰(黒)になるわけでして、モノクロームとは究極の表現なのかもしれないと頭に思い浮かびました。