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魔法?

 チャイムが鳴り終わって1分もしない内に数学教師が入って来た。まだ一年だというのに、騒がしい生徒なんて一人もいない。

 後ろを振り返れば葉原も珍しくノートを凝視して首を傾げている。


(これが頭のいい高校の雰囲気か……)


 俺はもっと、高校は勉強とは離れて、馬鹿みたいに騒いで過ごすと思っていた。

 はっきり言って暇だ。

 周りの雰囲気に圧倒されながらも、勉強する気は起きない。

 葉原で遊んでやろうと思ったが、もう一度振り返るとなんかノート見てニヤニヤしてるし。

 仕方がない、と思って俺はいつもの魔法学園物の漫画を取り出した。

 漫画を読んでいる時は本当に時間を忘れられるから好きだ。自分の世界に入れるって感じだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ここは俺に任せろ! ここで食い止める!」

「そんなッ! あなたを置いてなんて行けない!」

「俺も強くなったんだ! 一人前の魔法使いとして、必ずおm」

「綾斗! ちょっと見ろ!」


 ぐぁッ! 世界観ぶち壊された!すげーいいとこだったのに!


「邪魔すんな! いまいいとこなんだぞ!」

「ん? また魔法ファンタジー読んでるのか。本っ当飽きねえなー」

「うるさい! これがいいんだよ」


 実際その通りで、俺は魔法に凄く憧れている。念力とか瞬間移動とかの妄想はもう何千回もした。いや、マジで。

 ーー生徒全員がテストの問題に集中する中、ただならない侵入者の気配を俺は感じ取っていた。

 静寂に包まれた教室に異変はないが、確かに近づいて来るのが手に取るように分かる。

 だが俺に焦燥感はない。わざわざ俺の学校にまで乗り込んでくるとは存外だったが丁度いい。


「すいません、ちょっとトイレに」


 適当な理由を作って俺は教室を出た。そして、敵の鮮明な位置を探ろうとしたその時。

 刹那、銃弾が俺の鼻梁を(かす)めた。乾いた銃声と弾けるような薬莢(やっきょう)の音が廊下に響く。

「……まさか不意打ちで避けられるとは思いませんでしたね」

「いや、ちゃんと掠ったさ。次は掠りもしないと思うがな」


 それも否。撃たせすらしねえよ。俺は魔法の力で紅蓮の炎を作り出し……。




「綾斗? 綾斗? 聞いてるかー?」

「ん? ああ、ごめん、ちょっと俺の命を狙うテロリスト殺して来た」

「妄想はもういいよ……」

「何か不満か? あ、主人公的に殺すのではなく逃がしたほうがいいって事か! なるほど、盲点だった!」

「ちょっと黙れ。いいか、これは大事な事だ」


 急に葉原が真剣な表情になった。仕方ない、おふざけモードは一旦終わりか。いや全然ふざけてるつもりはなかったけど。

 まあ、葉原が言うんだから大した事ないと思うが。


「魔法が使えるようになったんだ!」


 ほら対した事なかった。せめて手品でもしてくれたらいいんだが。……期待出来ないな。


「なんだ、その自分の妹が俺の知らない間に彼氏を連れ込んでいてたまたま居合わせたみたいながっかりした目は」

「なにその超限られた目」

「いや、俺の体験談。マジヘコんだわ……」


 うわ、本気でヘコんでるし。引くわ……。

「まさかシスコンだったとは」

「シスコンじゃねえ、ただ可愛いだけで」

「わー本物だった」

「とにかくそんな事はいいんだよ、このノート見とけよ」


 ん、そのノートはさっき葉原が見てニヤニヤしてたノートじゃないか。


「ニヤニヤはしてない」

「心を読まれた」

「口に出てるっつの」


 まずいな。葉原のヤツ、何を始めるか知らんがまた長くなりそうだぞ……。逃げなければ。


「あーもうチャイムがなるぞ? 授業終わるんじゃないか? というわけでまた後で」

「おい、授業終わってんのに気付かないぐらい漫画に集中してたヤツは誰だ」

「随分騒がしいと思ったらもう授業終わってたのか」


 確かに教卓にいる教師の顔は変わっていた。本当に気付かなかった。


「次の授業終わったら昼休みだし、それから見せろよ、お前の魔法とやらを」

「おう! 期待しとけよ」


 あれ?俺なんか期待してないか?いやいやあいつは俺が魔法に憧れてる事知っててからかってるだけだろ。

 さすがに俺も妄想と現実ぐらいは……。


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