授業前
葉原海汰とは中学時代3年間同じクラスだったというだけの仲だ。
しかし、初めて話したのは中学もあと3ヶ月で終わろうという受験シーズンにほんの少しつるんだだけだった。
そして無事に適当な高校へ進学すれば、葉原と同じ高校で仲良くなったという偶然でしかない。
「なんだ、綾斗そんな浅い考えで新星選んだのか」
「ん、まあな。遠いとこ行くのもめんどいし」
新星第二高等学校。俺の家から徒歩5分という驚異の近さで即決した。
偏差値なんてものは知らないが(というか興味がなかったので調べていない)そこそこ頭はいいらしい。
「じゃあ、葉原はどうなんだ。なんで新星にしたんだ?」
「家が近いから」
「お前もじゃねえかよ!」
中学時代、登下校によく遭遇するなと思ったら、そういうだったのか。
でもまあ、俺だってそこそこの勉強はしたつもりだ。勉強しないで入れるような高校でもないし、生まれながらの天才というわけでもない。ーーこいつと違って。
その割に自由奔放な生き方してるから、馬鹿っぽく見えるのも仕方ないが。
「それにしても、また綾斗とはクラス同じかー。しかも俺の真ん前だし」
「俺達の友情は偶然だけで出来ているのかもな」
「なんて寂しい事を!」
「いや、半分ぐらいは冗談だぜ?」
「残りの半分は本気なのかよ……」
いつもの他愛ない会話をだらだらしていると授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。
この時間は果たして有意義と言えるのか、なんて考えたらおしまいだ。
授業の合間にある数分の休憩時間は適当な会話をして過ごす。いつも通りの風景だ。
高校に入学してから早一ヶ月が経つが、中学の時と何一つ変わらない。