1イケメン
僕は一命を取り留めた。鏡を見ると、Cクラスのイケメンになっていた。
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イケメンのことなんてなんにも知らなかった。なにしろ僕はどこにでもいるフツメンで、毒にも薬にもならないような男だったからだ。
しかし僕はひょんなことからイケメンの仲間入りを果たした。そしてそれが壮絶な戦いの始まりだとは、夢にも思わなかった。
事の発端はこうだ。高校生になった僕はお洒落に興味をもった。それは至極当然なことであり、女の子にもてるために清潔感が欠かせないことは聞き及んでいた。
とはいえセンスのある方ではない僕はお洒落の仕方がわからない。そこでとにかくお洒落な服屋に行けばいいと単純に考えた。
初めての原宿にはとても緊張した。何しろ周りには地元にはいないような奇抜な格好をした同い年くらいの若者や、びっくりするくらいきれいなお姉さんなどがいるのだ。
僕はひどく場違いな気がした。とにかくうろうろしているよりは店に入らなくてはならない。僕はあせっていた。
周りを見渡すと、どうやら僕にも入れそうな敷居の低い感じの服屋を見つけた。あれしかない、僕はとっさに駆け出した。それがいけなかった。
店まであと5メートルというところで、僕は周りが見えなくなっていたのだろう、横から来ていたお兄さんに激突してしまった。
瞬間、僕の体はものすごい勢いで吹っ飛んだ。
宙を舞いながら、僕はそのお兄さんのすごいイケメンなのを見た。そして直感した。
これは死ぬ。