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第九話 俺の生きる意味


俺の名前は――――。かわいい弟と妹がいる三兄妹の長男だ。いきなりだが、俺の弟達は俺と違って天才だ。弟のユウは芸術面に関しての才能が凄くて、凄い作品を作ってはいつもみんなに褒められていた。妹のサオリは歩く辞典と呼ばれる程の知識をもち、頭もいい。対して俺は、なんの才能もない平凡な人間だった。親はいつも二人を可愛がるし、皆も俺のことなんか興味も持たなかった。俺は別に不満もなく、ただただ可愛い弟と妹を可愛がっていた。

「兄さん、これなんだけど……」

「ん?おお、絵のコンテストがあるのか。お前も出すのか?」

「うん、展覧会もあるから来てほしいなって……」

「いいよ。予定も無いし、サオリも連れてこうぜ」

「私その日忙しい。二人で行って」

「えっ、行こうよサオリちゃーん」

「キモい」

「ガチの罵倒は止めて?」

こんな感じで、俺達は仲良く過ごしていた。引っ込み思案のユウとクールな性格のサオリ。しかも美男美女と来た。いやー前世の行いが良かったねこれは。

「兄さん、僕頑張るから、楽しみにしててね」

「もちろんだ」


――展覧会に行った翌日、両親が離婚した。サオリは母に引き取られ、俺とユウは父に引き取られた。俺をどちらが引き取るかという問題で2日悩まれたが、俺は気にして……

「ハハッ」

「?どうしたの、兄さん……」

買い出しの途中。俺はユウとともに夜道を歩いていた。急に笑った俺を怪訝に思ったのか、ユウは不安そうに俺を見る。

「なんでもねぇよ。……サオリどうしてるだろうな」

「そうだね。サオリのことだからそんなに気にしてないかもね」

「そうだな……」

いかん。しんみりした空気になってしまった。話題を変えよう。

「そう言えば、展覧会の絵、凄かったな。お前金賞取ったもんな」

「ええ?いや、それほどでも……」

何これ可愛い。男なのに可愛いとか反則だろ。確かにユウは美少女と言われても違和感ないけど。

「あの絵、ちょっと手を抜いちゃったけどね。兄さんが綺麗って思ってくれたなら嬉しいよ」

「ユウ……」

……こいつはいつも優しいな。普通に考えて、数十年前に勝手に来た男なんて信用されないと思ってたが……サオリとユウだけは、俺に構ってくれたよな。

「ありがとな。元気出てきたよ。正直ちょっと落ち込んでたんだ」

「兄さんが?ちょっと意外かも」

「何を言う。俺だって悩んだりするさ」

俺はそんなメンタル強くない。いつも、気付かれないところで泣いてたもんな。

「兄さん……僕さ……」

ユウが何か言おうとした、その時。運転手が寝ているのか、フラフラと走る車が車道の方にきた。

「っ、危ない!!」

俺はユウを後ろに突き飛ばす。ユウと入れ替わるように、俺は車に吹き飛ばされた。

車はそのまま近くの塀に突っ込んだ。……良かった、ユウはなんとかなったようだ。ゴホッ。

「兄さん!?兄さん!血が……」

「ゲボっ、ゴホッ……ユウ、良かっ……た……」

「兄さん!き、救急車、呼ばないと……!」

「無理だ……手遅れだよ」

全身が痛い。腕も変なとこで曲がっているし、足も凄いことになっている。こんな状態で助かるとは思えない。

「ユウ、強く生きろよ……サオリも、相談に、乗ってくれる……からな……」

「兄さん?兄さんー!」

弟の声が響く。俺は、脳内にそれを記憶しながら、意識を失った。そうして、俺は一度目の人生を終えた。


「がはっ……ゲホッゲホッ」

……なんとか意識が戻ったようだ。しかし、嫌な夢見たな……

(そうだ……俺は野望があった。でも諦めた。それが最善だったから)

「さて、最後だユウ君。選ばせてあげるよ、僕に従うか、死ぬか」

「…………」

俺は剣を杖にして、なんとか立ち上がる。

(俺はあいつらのために生きていた。全部失ってた俺に、二人は生きる意味をくれた)

でもそれも全部失った。俺が死んだから。この世界にこれると知ったとき、チャンスだと思った。もう一度、生きる意味を見つけられる。そう思ったから。

(だから俺は名前を捨てた。弟の名前を語って、自由に生きることで、役目を果たしている気分になれた)

それで俺が生きる意味を持てるなら。俺は何でもするつもりだった。――チートを選ぶとき、俺はこの剣に惹かれた。何故か俺に被って見えた。ずっと、孤独だった俺に。

「おや、まだ立てるのかい?なら、この聖剣で貫いてあげようか、死なない程度に」

俺は生まれた頃から両親がいなかった。3歳の頃、俺はユウとサオリの両親に引き取られた。しかし、あまり歓迎はされなかった。新しい両親はただ偽善者になりたいだけだったのだ。

(でも、ユウとサオリと出会えた。それが最初の幸運で最後の幸運だ)

「お前には負けねえよ、俺はまだ死ねないからな」

カブラギの剣をじっくりと見据えて、ふらつく体で剣を構える。そうだ、俺はこんなやつに殺されたくも、従いたくもない。何故なら俺は――まだあの幸運を終わらせたくないから。俺を救ったあいつらに報わないといけないから。

「お前みたいなクソ野郎、こっちは何度も見てきたんだよ、面倒ごとには慣れっこだ」

「はっ、よく言うよ。君は僕よりも弱いくせに」

「弱いやつを舐めんな。気が変わった……俺が、お前に吠え面かかせてやらぁ!」

俺は決意を込めてそう言うと、いきなり剣が光る。何事かと思って見てみると、そこには、≪剣の名をのべよ≫という文字があった。下には今まで知らなかった剣の名前がある。俺は力の限りそれを叫んだ。

「≪混沌剣カースフェイス≫!」

すると、剣は紫色に光りだし、その形を変えていく。桜の枝みたいだった剣の形状は、禍々しい殺気だった形になった。しかし剣としての形を保ち、重量が格段に変わった。

「凄いな……≪これこそが我が力≫ん?口が勝手に……≪低俗な者共に救済を与えてやろう≫……おかしいな、なんで俺はこんなことを……」

よくわからないことになってるが、これならいける気がする。いっちょやってやりますか!

「≪ランダムスチーム≫!」

「無駄だよ、状態異常は……ぐっ、剣が重い……!?馬鹿な!何故状態異常を受けている!?」

「≪その程度の俗物で、我の力を防げるとでも?≫……まさか効いてる?よっしゃ!どんどん行くぞ!」

なんか厨二病みたいな台詞を言ってしまうが、こっちが優勢なのは明らかだった。

「≪発射≫!そして、≪フレイム≫!」

呪文を唱えると、火のついた矢がカブラギの方に飛ぶ。カブラギは剣でそれを弾き落とし、斬り掛かってくる。

「ふざけるなあ!」

「≪混沌式・十六剣術……「虚無」≫……あれっ体が勝手に……」

何故か勝手に動いた体から繰り出された剣撃はカブラギの身体を切り刻む。カブラギの鎧に傷がついた。

「ぐっ、僕が押されるなんて……!」

「≪終わりだ。混沌式・十六剣術……「夢幻」≫」

俺の剣がひときわ輝くと、カブラギにそれが降りかかる。カブラギは間一髪のところで剣で防いだ。しかし勢いは消えず、カブラギの剣にヒビが入っていく。カブラギの顔が青くなる。

「け、剣が……やめろ!やめてくれ!」

「言ったろ。吠え面かかせてやるって。≪我の力に呑まれ、糧となるがいい≫」

また声が……まあいいか。これで勝てるんだから!……しばらくすると、カブラギの剣が音をたてて砕ける。カブラギは膝から崩れ落ちた。

「あ、ああ……天使から与えられた武器が……こんなことをして……許されると思っているのか……!」

「許されるだろ。お前みたいなやつを無力化するんだからな」

武器だって人を選ぶと聞く。あんなやつに使われるなんて剣も嫌だろう。砕いちゃったけど。天使の方も許してくれるだろう。砕いちゃったけど。

「さて、お前をギルドに……?あれ、剣が……」

俺の手にあった混沌剣が、ふよふよとカブラギの方へいく。やがて、剣が動きを止めるとそこから声が聞こえてきた。

≪この聖剣は頂いていく。ああ、あと……貴様のもう一つの力も糧にしてやろう≫

聖剣の破片は姿を消し、混沌剣がカブラギの首元の鎧を器用に砕く。そこには桃色のペンダントのようなものがあった。

「やめっ……やめろ!」

≪吸収≫

カブラギは抵抗するが、ペンダントは剣に吸い込まれるように消えた。カブラギはよほどショックだったの気を失う。混沌剣は役目を終えたかのように光をおさめ、俺の手に戻ってきた。もうさっきのような力は感じない。

「何だったんだ……?ていうかこの剣、一体……?」

「うーん……ん?どこじゃここは?」

剣を眺めていると、背後から声が聞こえた。この声、さっきの少女か。振り返ると、紫髪の少女が、不安そうに辺りを見渡していた。やがて、俺を見ると明らかに不審者を見る目になった。あの、傷つくんでやめてくれ。

「誰じゃお主は!?ばあやはおるか!?助けてー!」

「おい、その反応はやめろ。そんな演技しても無駄だぞ。お前ごと兵士の人に付き出すからな」

「何故じゃ!?儂は天才なのに!何でこんな扱いを受けねばならん!」

あれ、この反応は……?ほんとに知らんって顔してるな。

「お前そこのカブラギに加担して、魔物創ってたんだぞ。そんで俺を襲ったんだぞ」

「はあ?カブラギとは誰じゃ?儂はそんなやつ……いや、数日前に儂の住処にきた男がいたの。うむ、腹立つイケメンじゃ。こいつに間違いない」

どういうことだろう。こいつはもしかしてシロなのだろうか。それなら変な言動に納得がいくが……

「……分からん。後は兵士さんに任せるか」

「結局そうなるのか!?ちょっ、待って欲しいのじゃー!」

俺は少女とカブラギを縛って、兵士さんのところまで連れて行った。



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