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間幕 歴史と異界の狭間


≪兄に合わせて、か。よかろう。貴様の願い、我が叶えてやる≫

私の願いを聞いた神は、壁に映し出された状態でそんな事を言った。もっと難しいことだと思っていたのだが、神にとってはそうではなかったようだ。

≪しかし、そのためには異世界への扉を開く必要がある。我だけの力では、それは不可能だ≫

「えっ……?じゃあ、どうすれば……」

≪簡単だ。貴様にも協力してもらえばいい≫

神がそう言うと、お守りの放つ光が弱まり、目の前にあった影が消える。私は首を傾げたまま、お守りを見つめる。

≪ほう……どうやらここには、異世界に繋がった()()があるようだ≫

「ヒビ……?」

≪うむ。ヒビというのは、無理やり()()()()()を繋げた跡のことだ。それは時間と共に消滅するが、その前にヒビに傷をいれると、その傷は一時的に広がり……そして異界に繋がる扉となる≫

「なんで、そんなものがここに?」

≪わからん。強大な力を持つ存在がここにいたのか……それとも異世界と繋がりやすい場所なのか…………まぁ何にせよ、貴様はそのヒビに傷を入れればいいというわけだ≫

「私が、ヒビを……」

……いきなりそんな事を言われても、どうすれば良いのか分からない。ヒビと言っても見えなければ傷はつけられないし、私にそんな超常的な力があるとは思えない。

≪いや、貴様ではない。我だ。我をそのヒビに近づけろ。ヒビを無理やりこじ開けてやる≫

神はそう言った。正直半信半疑だったが、他に方法もない。だから、私は神の言葉に従うことにした。お兄ちゃんに会うためなら、私は何でもする。

「……ヒビは、何処?」

≪しばし待て……ふむ、すぐ近くのようだな。貴様のそのお守りとやらを近づけ、光が強くなる場所を探すのだ≫

「わかった」

私はお守りを手に持って、辺りをうろついた。すると、部屋のとある一カ所で、お守りの光が一際強くなった。

「……っ、ここが……!」

≪よし、それでよい。あとは我が……≫

神の言葉と同時に、お守りから禍々しい爪を持つ腕が現れる。腕がそのまま爪を一振りすると――()()()()()()()()()()

「えっ……」

≪……成功だ≫

音のした方を見ると、そこには一つの()()()があった。裂け目は淡い光を放っており、人一人程なら通れそうな程の大きさだった。

≪ならば、そこを通れ。そうすれば、貴様の望む景色が見えるであろう≫

「え、こう……?」

言われるがままに、私は裂け目に向かって歩き出した。すると、辺りの風景が変化した。

「あ……」

≪そのまま歩き続けるのだ。後ろを振り返ってはならぬ。もちろん走ることも許されん≫

神はそんな事を言った。私はお守りを握りしめたまま、謎の空間を一人歩く。歩く旅に風景は変わり、聞こえる音も変わっていく。しかしそれは綺麗で耳触りの良いものではなく、寂れていて、何処か恐ろしい感じがした。

「ここは一体、どんな所なの?」

≪……ここは、二つの世界を繫ぐ()のような場所だ。ちなみに、目に映ったものに触ってはならぬぞ。貴様も、あの風景の一部になってしまうからな≫

私は前を向いて歩くことにした。景色に好奇心を惹かれて何か触ってしまったら死ぬかもしれない。怖い。

「あれは、何?」

≪あれは、世界の歴史……生きとし生けるものの記憶そのものだ。戦乱の記憶、祝い事の記憶、何処かの誰かを構成する記憶……それらは世界を繫ぐ橋の()()となる。今貴様が歩いているのはそういう場所だ≫

「……なるほど」

取り敢えず、ファンタジーめいたものだということは理解した。私が理解出来たのはそれだけだ。ここは明らかに、人間の知りうる範疇を超えている。

「…………?」

ふと、何か見覚えのあるものが目に入った。それは小さな黒髪の少年だった。どこか見覚えのある顔つきをしていたその少年は、暗い瞳で下を見つめていた。

「あれは……」

≪さて、そろそろ目的の場所だ。後ろを向け。そうすれば、()()()()()()()

少年について考える前に、そんな事を言われた。私は慌てて後ろを振り向き、少年から目を離した。すると、辺りにあるものが消滅し、()が消えていく。そして、世界がそこに構築された。それは前に一度見た……()()()()()()()()()()()()()だった。

「!これは……」

≪無事についたようだな。()()時は、もう一度ここに戻って来ればよい。我がまたヒビを開けてやろう≫

「わ、分かった」

こうして、私の二回目の異世界探訪が始まったのだった。


「んん……」

「ん、どした?ユウ」

「い、いや、何でもないよ。目にゴミが入っただけ」

「大丈夫か?」

カイトがきょとんとした顔でこちらを見る。僕は咄嗟に大丈夫だと言って誤魔化し、カイトから目を逸らす。僕はそのまま、宙に浮いている()()に目を向けた。

(なんなんだろう、あれ。皆には見えてないみたいだし、幻覚でも見てるのかな?)

その何かは不思議な形をしていた。それは黒い光を放ち、全てを引き込むような、禍々しい雰囲気を放っていた。

「次、移動教室だぞ。早く行こうぜ」

「う、うん」

僕は手早く準備を済ませ、カイトと一緒に教室を出た。













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