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第六十二話 混沌とした奴ら


翌日。いつも通り町に帰ってきた俺は、クエストを受けるべくギルドに来ていた。今は金に困ってないけど、なんかしてないと落ち着かないんだよな。他にやることなんて食べることしかないし。

「えっと、どれにしようかな……」

今日はフラムもシオンも都合が合わないらしいので、俺一人で受けれるクエストを探すことに。最近はクエストも少なくなってきており、高難度のものが多いが、レベルが上がってきた俺なら行けるかも知れないと前向きに考えている。……それでもまだレベル20台なんだけどな……

「やっぱゴブリンかな……」

「あら、そうなんですか?ユウ様ならもっと高難度のものでも良いのでは?」

「いや流石に……ん?」

急に後ろから声が聞こえてきたので振り返ってみると……見覚えのある金髪少女の姿があった。

「……レーヴィ?」

「そうです。あなたのレーヴィですよ」

「違うよ?」

そこにいたのはレーヴィだった。前に会ったときより元気で明るい雰囲気を纏っており、服もドレスから動きやすそうな軽装になっている。……いや、何でここにいるんだ?

「何でレーヴィが?」

「ユウ様のため、と言えたら良かったのですが……実はわたし、冒険者になったんです」

「そうなのか。……ん?でも、レーヴィってまだ十歳だろ?危なくないか?」

「ご心配なく。冒険者になることに年齢規定はございませんわ。それにわたし、十一歳になりましたから」

「へぇ……」

冒険者って年齢規定なかったのか。確かに、危険じゃないクエストとかもあるしな。わざわざ高難度のクエストに行って自ら死にに行くような馬鹿もいないだろう。……それに幼い子供が行こうとしたら両親が止めるよな……ん?十一歳は良いのか?

「ユウ様のお役に立ちたいと思い、お父様の訓練を受けて、身体を鍛えたんです。身を守るために、回復魔法も覚えたんですよ」

「おお、凄いな」

ほんとに、出会った時とは思えないほどの成長ぶりである。……それにしても変わり過ぎじゃないか?もっと口調に棘のあるキャラじゃなかったっけ。

「それで、冒険者になったばかりなので、クエストを受けようと思いまして。良ければ、ユウ様とご一緒しても?」

「別にいいけど……でも、俺はそんな高レベルじゃないから、普通のクエストしか出来ないぞ?」

「大丈夫です。私もレベルはまだ15程なので」

……ははーん、読めてきたぞ。これ、レベルの割にとんでもなく強いパターンだな?今までに強者と会ってきた俺の勘が言っている。

「……じゃあ、ゴブリン討伐で行くか」

「はい!」


「ええ……」

いつもの草原にきた俺は、目の前の光景に思わず声を上げた。今俺の目の前では、ゴブリン達が悲鳴を上げて逃げ回っている。

「≪ボルトスラッシュ≫!」

「グギャアアア!?」

その元凶になっているのは、レーヴィである。彼女は自分の身体の倍はある戦斧を振り回し、ゴブリン達を切り刻んでいた。やがてゴブリンが最後の一匹になると、レーヴィはさらに動きを速くする。

「≪ボルトブレイカー≫!」

「グギャア!?」

雷を纏った斧の一撃は、ゴブリンを一瞬で灰にした。いや、強すぎない?俺ほぼ出番が無かったんだけど。

「やりました、ユウ様!」

「うん、お疲れー……」

お疲れ、ではない。笑顔で手を振ってくるレーヴィの顔が見られないんだけど。やっぱもう俺いらないよね?

「凄いな。レーヴィってあんなでかい斧振り回せるのか」

「ありがとうございます。この斧は、お父様に頂いたんです。訓練を無事やり遂げた報酬として。お母様は泣きながら褒めてくださいました」

やっぱこいつフラムの妹だわ。フィジカルが人と違いすぎるだろ。どんな訓練したらあんな斧使えるようになるんだよ。凄すぎて閃光が走ってたんだけど。

「あ、ユウ様。お怪我はございませんか?」

「大丈夫。大丈夫だからそんなキラキラした目で見てこないでくれ……」

なんだろう。なんかめっちゃ情けないんだけど。十一歳の子供に守られてる上に気を遣わせるとか、プライドないんか?

「??」

レーヴィは頭を抱えている俺を見て、首を傾げていた。


無事クエストを終えた俺達は、ギルドに帰ってきた。そこで報酬を受け取ると、レーヴィと俺で配分する。

「あら?わたしの方が報酬が多いような……」

「レーヴィの方がゴブリンを倒してたからな。その分増やしてる」

「そのように謙遜なさらなくても。ユウ様もちゃんとゴブリンを倒していたではないですか。だからわたしの分を増やす必要はありませんわ」

「…………」

もう止めて……!心が痛いよ!年下の少女にこんな敬われているのに、なんか罪悪感があるんですけど!?

「いや、受け取ってくれ。俺はそんなに金に困ってないから。助けてもらったお礼だと思って」

「そうですか……では、ありがたく頂きます」

レーヴィは素直に報酬が入った袋を受け取り、懐にしまった。良かった、受け取ってくれて。俺が罪悪感で死ぬところだった。

「じゃあ、今日はこれくらいで解散――」

「…………」

解散、と言ったら悲しそうな目で見上げられた。さっきの今で、解散するとは言いにくいな……

「……飯でも行くか?」

「良いのですか?是非ご一緒させてください」

食い気味に言われた。……少し早まったかもしれない。


というわけで、やって来たのはいつもの食堂である。そういえば、この食堂って名前あったりすんのかな……レーヴィは食堂が珍しいのか、キラキラした表情で辺りを見渡していた。

「いらっしゃいませー……あ、ユウさんじゃないですか。クエスト終わりですか?」

「そうですね。……なんか、今日人多くないですか?」

「そうなんですよ。最近、非正規雇用として人を雇ったんですけど……その人がとても優秀でして」

「へぇ……あ、座れる席あります?」

「ありますよ、案内しますね……あれ、後ろの人はどちら様ですか?」

「レーヴィ・ランスです。以後お見知り置きを」

「レーヴィちゃんですね。ん?レーヴィ・ランス……?何処かで聞いたことあるような……」

アオイさんは何かぶつぶつと言っていたが、俺達をしっかり席に案内してくれた。

「注文決まったら、私かもう一人の店員を呼んでください」

アオイさんはそう言って去っていった。俺は机の上にあるメニューを取ると、レーヴィにも見えるように開いた。

「これが、庶民の方のお店なんですね。見たこともない料理がいっぱいです」

「レーヴィはこういう所、来たことないのか?」

「ええ。病弱だった頃は部屋から出れませんでしたし、食事も質素でしたから」

「…………」

いかん、地雷を踏んだかもしれない。……話題を変えよう。

「それにしても、冒険者になるなんて、よくグレイドさんが許してくれたな」

「わたしが元気になったからか、たいていの事は許してくれるようになりました。姉さまもそれくらいから冒険者をやっていたみたいですし、お父様も良い成長の機会だと」

「……良かったな」

「ええ。おかげでユウ様とまた出会えました」

……今更だけど、なんでこの子は俺を慕ってくれるのだろう。もう最初の頃の原型が無くなってるよ?なんでそんな真っ直ぐに持ち上げてくれるの?普通に照れるんですけど。

「……じゃあ、店員さん呼ぶか」

「ちょっと待ってください……はい、わたしも注文を決めました」

「よし。店員さーん。注文したいんですけどー」

アオイさんが近くにいなかったので、近くを歩いている店員さんらしき人に声をかけた。ここで働く時にエプロン着せられたから店員さんの服装は分かる。店員さんらしき人は俺の声に気づくと、足早にこちらに近づいてきた。……あれ、なんか見覚えがあるような……

「それでは、注文お伺いしま…………」

「…………」

俺とその店員は、互いに顔を見合わせて固まった。何故なら、その店員は俺の顔見知りだったからだ。特徴的な長い黒髪を後ろに結んだ、全体的に強そうなオーラを纏っているこいつは……

「……川崎姉?」

「なぁっ!?なんで、お前がここに!?」

そう、そいつは何時ぞやの川崎姉弟の姉……川崎リエだった。







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