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第四十話 最高の友達 私のヒーロー



小原がフラムに参戦し、カラドボルグに殴りかかっていく。俺はその隙に手足の鎖を外し、シオンに水を飲ませ、寝かせた。

「よし、後は剣を使って……」

俺が懐から剣を取り出すと同時に、目の前に何か飛んできた。思わず身を引かせて、飛んできたものを凝視する。――それはカラドボルグの首だった。

「うおおおお!?」

「あっ、ごめんユーさん!そっちに飛んじゃった!」

未だ動き続けているカラドボルグと戦う小原が謝ってくる。いや、そんなボールそっちに飛んじゃったみたいに言われても。

「こいつ、何でまだ動けるのよ……!」

「フラムさん!次は身体を狙いましょう!手当たり次第に殴り飛ばせば、いつか倒せるはずです!」

脳筋二人がそんな事を言いながらカラドボルグの周りを飛び回る。俺は二人の戦いぶりを見て、思った。

……これ、俺いらなくね?

「ユウ!そこで立ってる暇があったら参戦しなさい!」

「ユーさんはシオンさんの看病をしといて!こいつは私達が止めるから!」

全く逆の事を同時に命じられた俺は一体何をすればいいのだろう。うん、とりあえずシオンの看病が先か。

「って、シオンは……?」

「何しとるんじゃユウ!早く儂らも参戦するぞ!」

いつの間にか復活してたシオンが、一目散にカラドボルグに走っていく。俺はなんとも言えない気持ちになりながら、剣を構えてカラドボルグの元に向かった。


「――――!」

「≪サンダー≫!」

早速参戦した俺が放った魔法は、あっさりと消されてしまった。機械だから効くかもと使った雷魔法だが、どうやら俺の魔法は弱すぎるらしい。

「≪オニキスパンチ≫!」

小原がそう叫ぶと同時に、凄まじい勢いで拳が放たれ、カラドボルグの身体に風穴が開く。えぇ……何今の。いつぞやの川崎姉を思い出すんだけど。あそこまで行くと恐怖通り越して呆れてくる。俺もあんな力欲しいなぁ……と思いながら魔法を放つ。

「≪サンダー≫!」

しかし効果は無かった。まぁ初級の魔法だしこんなもんだよな。と軽く溜め息をつく。すると、またカラドボルグの右腕が――

「ふんっ!」

――俺に届く前に、フラムが槍で右腕を押し返した。

「さすがフラム!腕力半端ねぇな!」

「殴り飛ばすわよ。……いつもの調子はどうしたのよ。さっきからしょうもない魔法ばっかり使ってるし……」

「しょうがないだろ?こんな状況で煙なんて放ったらお前らが状態異常になるぞ」

「……下がってとは言わないけど、攻めて何か補助をしなさいな」

何だよその目は。俺だって精いっぱいやってるんだぞ。効果のない魔法放ったり、煙打てるタイミング伺ったり。……はい役立たずですごめんなさい。

「あの右腕、先に切り倒したほうがよいのではないか?」

軽くへこむ俺を尻目に、シオンがそんな事を言う。確かに、右腕もなくなればあいつの攻撃手段は無くなるはずだ。しかし、フラムは首を横に振った。

「私もそう考えたけど、どういうわけかあいつは右腕だけ異様に硬いの」

「マジか。じゃあどうしようもないな」

「諦めるのが早すぎるでしょ!」

いや、フラムが切れないんだったら俺も無理だし。あの剣の謎パワーを引き出したらいいかもしれないけど、それでも無理そうだよな。

「なら、儂とユウが隙を作ろう。その隙にエイカとフラムが集中攻撃するんじゃ」

「シオン、あのデカブツにそんな事出来るのか?」

「儂は天才魔族じゃからな!隙を作ることなんて朝飯前じゃ!」

いつもの自信たっぷりな様子でシオンは頷く。それを見た俺達は早速行動を始めた。

「≪メガスポーン≫!」

「≪発射≫!」

大型の魔物と細い矢がカラドボルグに襲いかかる。小原に気を取られていたカラドボルグは身体をゆっくりとこちらに向ける。どうしよう、思わずシオンに続いて矢を撃ったけど、ここから何するかは考えていない。そんな事を考えていると、シオンがどんどん魔物を出していく。

「ガアア!」

「ケルルルルル!」

「――――!?」

カラドボルグは突然現れた敵に驚いたのか、少し跳んでそれを避ける。機械だからか首を失っても敵の位置が分かるらしい。

「≪フレイムブレイク≫!」

「≪オニキスパンチ≫!」

隙を見せたカラドボルグが、小原とフラムに穴を開けられていく。カラドボルグは苦しむように動きを鈍らせ、少し下がろうとするが。

「≪オニキスキック≫!」

小原が追撃し、カラドボルグは更に動きを鈍らせる。機械の身体にヒビが入っていき、カラドボルグが咆哮する。

「――――」

「よし、これで……!」

小原がそう言うと、カラドボルグは最後の抵抗を見せるように、小原に向かって未だ無事な右腕を振るおうとする。

「小原!」

俺は思わず剣を持ったまま駆け出し、剣の呪文を唱えた。

「≪混沌剣カースフェイス≫!」

瞬間、剣が強い光を放ち、俺の身体に何かが満たされる感覚が現れる。俺は剣を振りかぶり、右腕に思いっきり剣を叩きつけた。

「ユーさん!?一体何を……」

「だああらっしゃあ!」

怯んだカラドボルグの右腕にもう一撃。剣技もクソもない一撃だが、カラドボルグはなんとか動きを止めた。俺は唖然としている小原に叫ぶ。

「今だ!小原!」

「う、うん!」

そして同じく唖然としているフラムにも声掛けをする。

「フラム!」

「わ、分かったわ!」

フラムと小原は同時に駆け出し、カラドボルグに向かって最後の一撃を叩き込む。

「≪フレイムブレイク≫!」

「≪オニキスフィニッシュ≫!」

強力な一撃を同時に受けたカラドボルグは、糸が切れたように動かなくなった。そして、灰のようになり姿を消した。


「……なんだこれ」

俺は思わずそう呟いた。俺の目の前にあるのは、カラドボルグの右腕。あんなに攻撃を受けていたのに、右腕には傷一つない。とんでもない硬さを持っていたのか、カラドボルグが消えても右腕だけは残っていたのだ。

「まさか、魔物の身体が残るとは……興味深い現象じゃな!」

目を輝かせて右腕に触れるシオン。そういえばゴブリンとかも死体残らないもんな。こいつは普段どうやって魔物を研究しているのだろう。

「おお……見たこともない形状じゃ!全体が剣のようになっておるが、ちゃんと腕としての形を保っており、傷の一つもない。……流石は伝承の魔物といったところか……!」

ブツブツと何か呟いているシオンは置いておき、俺は先程から怖い笑みを浮かべている小原の方を見る。

「ねぇ、ユーさん?何であんな危ない真似したの?」

「あー……」

小原は光の籠もってない目でこっちを見ている。人ってそんなに怖い笑顔出来るんですね。俺知らなかったよ……

「と、咄嗟に身体が動いたというか……」

「そんなことあるわけないよね?ユーさんだったら私があれを避けれるのもわかってるはずだよ?」

「確かに」

何で俺あんな事したんだろ。小原だったらフラムみたいにカラドボルグの攻撃を殴り飛ばせるだろうに。もしかしたら冷静さを欠いていたかもしれない。

「ユウはこんな感じよ。後先考えずに動いて、自分でピンチを招いているだけ」

ぼーっと考えていると、フラムがそんな事を言った。お前俺の事そんなふうに思ってたん?でも心当たりがあるから反論できない!

「……確かに」

……フラムの言葉に、小原も納得したような表情になる。ちょっと小原さん?それだと俺が無鉄砲野郎みたいになるんですが。

「……そっか。そういえば、ユーさんは私なんかより強かったよね」

小原は何やら小声で呟くと、光を取り戻した瞳で俺の方を見る。どうやらフラムの言葉がなんとかしてくれたらしい。非常に複雑なんだけど。

「ごめんね、ユーさん。私間違ってたよ。ユーさんを監禁なんてする必要なかったんだね」

フラムがぎょっとしたように俺を見る。もちろん俺もぎょっとする。いや事実なんだけど、今ここで言う必要あった?……小原は申し訳無さそうに頭を下げ、いつもの表情に戻る。そして、はっきりと俺の方を見て。

「さっきは助けてくれてありがとう。やっぱりユーさんは私のヒーローだよ」

そんな恥ずかしい事を、笑顔で言った。

――――

その際の帰り道。

「ねぇ、監禁されたってどういうこと?」

「あー……」

案の定、フラムにがっつり質問攻めにされた。





 

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