表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/84

第四話 秘策


翌日、アオイさんの言う通り、フラムが俺の元へ来た。その端正な顔は今は怒りで染まっており、俺に対する憎しみが感じられる。感情豊かな人っていいよね。

「やっと見つけた……私を三度もコケにした罪、償わせてあげる……!」

「≪ランダムスチーム≫」

「ぬるいっ!」

フラムは背負った槍を振るい、煙を吹き飛ばした。何て奴だ。俺より力強いじゃん。

「ふふっ……二度も同じ手を食らうとでも……?」

怖っ。というかここ町中だよな。誰も止めないん?……路地裏だし当たり前か。

「くっ、卑怯な奴!俺を路地裏に追い込んで始末しようなんて!」

「ええっ!?あなたが路地裏にいたからでしょ!?それは私知らない!」

あ、そうだった。俺が路地裏にいたんじゃん。

「俺の負けか……でも俺は決して悪には屈しない!煮るなり焼くなり好きにしろ!」

「だ、誰が悪よ!……ふふっ、観念しなさい。あなたを私の下僕にしてあげる……!」

「≪発射≫」

「ひっ!?」

近付いて来たフラムに、俺は剣に仕込んである矢を放った。それはフラムの顔すれすれで通り過ぎる。チッ。

「い、今どこから矢を……」

「≪ランダムスチーム≫」

「し、しまっ……あれ?なんとも……」

フラムは体を見渡すが、変わった所はない。……外見は。

「舐められたものね。私の槍でそのふざけた剣を壊……って重!?」

フラムは槍を持ったまま、バランスを崩して倒れる。俺の剣の柄にある文字は……≪弱体化≫。筋力や魔力を低くするものらしい。まぁ、二時間しかもたないけど。なんとかこれを引けて良かった……


俺はフラムから槍を取り上げ、あらかじめ持ってたロープで縛った。身を守るためなので誰かに見られても大丈夫だろう。俺が不審者に見えなければ。さて、話だけでも聞いてやるか。

「……何でこんなことするんだよ。別に、俺なんてほっときゃいいだろ。それで格下に見てた相手に拘束されるって……ぷっ」

いかんいかん。思わず笑ってしまった。フラムは一瞬こっちを睨んだが、やがてポツポツと喋りだした。

「……私は高貴な家の出身なの。私は家の方針で強くあらなければならない。だから、天使に推薦されたあなたを出し抜かなきゃって思ったの」

……何だそれ。やはりこいつはとことん俺の嫌いなタイプのようだ。見るだけで昔の俺を思い出す。というか、天使がいるのって周知の事実なのか……やっぱり天使に会えたりするのだろうか。

「窮屈な生き方してんな。もっと自由に生きればいいのに。良いところの出なんだろ?」

「そんな訳にはいかないわ。私は家の栄光を背負っているのよ。それを捨てるなんて……」

「捨てるとか言ってないだろ。ちょっとハメを外すだけだ」

俺の言葉に、フラムは顔を俯かせる。ふう、なんかスッキリした。よし。ここまでは計画通りだ。俺は昨日の会話を思い出す。

≪秘密兵器……ですか?≫

≪兄ちゃん、何か策があるのか?≫

≪この剣と……後は、会話ですね≫

≪会話?≫

≪はい。ああいうやつは話を聞いてやればだいたい満足するもんですよ≫

≪≪へえー≫≫

二人が俺の言葉に納得していたのが気持ち良かった。肯定を得られるのっていいよね。……さて、とどめといくか。

「いいか?お前は別に俺を越える必要はない。堂々と胸張って生きてりゃいいだろ。家の栄光とか気にせずにさ」

後、十分に俺より強いだろ。新人いびりする必要ないだろ。口には出さないけど。フラムはバッと顔を上げるとまたもや俺を睨みつける。

「……あなたに何が分かるのよ」

「ん?何も分からんけど。他人の思考を完全に理解できる訳ないじゃん。馬鹿なの?」

フラムはポカンとしたような顔をしている。大方、俺がさらに責める言葉を言うとでも思ったのだろう。残念だけど俺の役目は終わりである。

「じゃっ、俺は食堂いくから。今日限定メニューがあるんだよね」

そう言って去る俺の背中を、フラムはただ見続けていた。


「ふむ……次の目標はっと……」

俺は限定メニューの携帯スイーツを頬張りながら、クエストの標的を探す。今日のクエストはスライム退治だ。スライムとて侮るなかれ、奴らはまぁまぁ強い。そもそもスライム=弱いというのは人間のイメージである。奴らは物理攻撃の効果も薄く、今のところ魔法で凍らせて何度も割るくらいしか倒す手段がない。さすがの俺も魔法はまだ使えない。というわけで、助っ人に来てもらった。

「まさか、スライム退治で呼ばれるとは思いませんでした」

「そんなこと言われても、魔法使える知り合いはアオイさんしかいなかったんですよ」

アオイさんは昔高名な冒険者だったらしく、アカギさんと一緒に冒険していたそうな。魔法が得意とのことなので、今回一緒に来てもらうことになった。

「それで?スライムはどこですか?私には暗い何もない洞窟に見えるんですけど」

「ここに住んでるスライムが時々人里を襲ってるらしいんですけど……おかしい、な……」

そこまで言って、俺は自然と上を見上げていた。すると、何やら青く光るものがたくさん……

「うわああああ!?アオイさん、あれ!あれ!」

「えっ、どうしたんですかそんなに慌てて……きゃああああ!?」

俺達の見上げる天井には、無数のスライムがひしめいていた。キモっ!!怖っ!!こんなの夢に出るって!

「おおおお落ち着いて下さいユウさん。あんなの氷魔法で一発……」

ベトッ。スライムの内1体が目の前に落ちて来た。ちょっ、怖いって!

「≪ギガブリザード≫!」

「えっ!?アオイさん!?」

この人何やってんの!?そんなやばそうな魔法こんなとこで撃ったら……!

「あああ、寒い寒い!風邪引きますって!」

「ゆ、ユウさん!でもスライムは全部凍りましたよ!」

「あ!そ、そうですね!うおりゃ!」

俺は天井に向かって、ギルドで買った爆発系の魔法が込められた石(要するに爆弾)をぶん投げた。見事に爆発し、スライム達が砕ける。落ちて来たやつは剣で砕いた。

「ふ、ふう、なんとかなった……」

「さささすがですねユウさん。あなたは絶対強くなりますよよよ」

「アオイさん!?顔真っ青ですよ!?」

アオイさんは寒さに弱いのか、青い顔でガタガタ震えている。やがて、ちょっとふわふわした目になりながら、

「ふふっ、ガルムの姿が見えます……安心して、お姉ちゃんが行きますからね……」

「行っちゃ駄目ですよ!ああもう!」

俺は目がやばくなってるアオイさんを担いで、すぐにその場をあとにした。  


「あの……すみません。まさかあんなにスライムがいるなんて知らなくて……」

「い、いえ……私も誤って特級魔法を使ってしまったので……お互い様ですよ」

あの後、命からがら逃げた俺達はギルドから報酬を受け取り、食堂で反省会をしていた。ちなみに今日はアオイさんは休みである。俺は注文したサイダーみたいなやつを飲みながら、もらった報酬を山分けしていく。

「これがアオイさんの分です。これでガルムさんに何か買ってあげて下さい」

「えっ、こんなにいいんですか?クエストを受けたのはユウさんなのに……」

「いや、今回は俺の不注意で迷惑かけたんで、迷惑料だと思って下さい」

そう言うと、アオイさんは渋々受け取ってくれた。そして笑顔で、「今度おまけしてあげますからね」と言ってくれた。それはありがたい。頼みたいメニューがあったのでちょうどいい。

「ありがとうございます。またガルムさんにアオイさんのいいとこ吹き込んどきますね」

「はい!よろしくお願いします!」

さっきとテンション変わり過ぎだろ。ガルムさんとは最近知り合ったのだが、この前アオイさんに頼まれて彼女のいい所を吹き込んだら微妙な顔をされた。「姉ちゃんはいつになったら弟離れするんだ……」と言っていたが、絶対無理だと思う。

「お前ら、ガルムに一体何してるんだよ……」

アカギさんは呆れた声でそう言った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ