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第三十五話 友達は多種多様


翌日。今日もアカギさんの手伝いに来た俺は、順調に接客業をしていた。と言っても、注文を聞いて料理を運ぶだけなのだが。

「店員さん、パンケーキ一つ!」

「はい、ただいま!」

アカギさんが一瞬で作ったパンケーキを運ぶ。最近知ったのはここの厨房の早さが尋常でないスピードであること。アカギさんもアオイさんも料理を作るスピードが凄く早い。俺だけだと絶対追いつかない。

「……ふう」

「お疲れ様です、ユウさん。だいぶ仕事にも慣れたみたいですね」

一段落ついたので休んでいると、アオイさんが声を掛けてくれた。

「アオイさん……そうですね、二人のおかげでだんだん慣れてきました」

主に運ぶスピードが上がった。レベルが高い人の真似をするというのは異世界でも効果があるらしい。

「お客さんも減ってきましたし、そろそろあがっても大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて」

「はい。給料、期待しておいてください」

アオイさんは手を振って店の奥に去っていった。


お店の手伝いのお陰でお金が貯まったので、何か買い物でもしようと町を歩いていると、後ろから声を掛けられた。

「あれ、ユーさん?」

振り返ると、そこには小原がいた。彼女も買い物をしたのか、多く荷物の入った紙袋を持っている。

「奇遇だな。じゃあ俺はこれで」

「え、待って待って!?どうしていきなり去ろうとするの?」

何でって、出掛けてる時に知り合いにあったからだけど。なんか気まずいんだよな、ああいうの。小原は逃がすまいと俺の肩を掴んだ。

「?どうした小原。俺に何か用でも?」

「いや、特にないけど!友達に鉢合わせしてそれはないんじゃない!?」

「すまんな、出掛けた先で友達とかに出会ったら逃げたくなるんだ」

「どういうことなの!?」

どうやら小原には無縁の話だったようだ。……まぁ、会ってさっさと逃げるのも失礼か。観念して小原の隣を歩く。

「……小原のその紙袋には何が入ってるんだ?」

「えっと、明日のご飯だけど……」

「俺も買い物に行くとこなんだよ。いい店とか知らないか?」

俺がそう言うと、小原はうーん、と悩みだした。よく考えたら、俺より後にここに来たからあまりわからないかもしれない。そんな風に考えていると、

「あ!この先の市場とかどうかな!私もそこで買い物したし!」

なるほど、市場か。よく考えたら、俺はこの世界に来てから買い物とかあまりしなかったんだよな。いつも食堂で飯を食べて、クエストに行ってるだけだし。

「ありがとな。早速行ってみるよ」

「うん。気をつけてね」

小原と簡単に別れを済ませると、俺は早速市場に駆け出した。思い立ったが吉日。行動は早い方がいい。

「……ユーさんに何かあったら、私が守らないと」

その後に小原が呟いたことは耳に入らなかった。


「…………」

「フラム?何を見ているんじゃ?」

「ひゃっ!?」

何やら路地裏でこそこそしていたフラムに声を掛けると、物凄く驚かれた。そんなに驚かなくとも……と少しショックを受けながらフラムの方を見る。フラムにしては珍しく、かなり動揺しておるようじゃった。

「し、しししシオン!奇遇ね!私は何も見てなんかいないけれど!?」

わかりやすいの。……フラムは割と素直じゃからな。まぁそこが可愛くもあるのじゃが。儂はわざとからかうように言ってみる。

「高レベル冒険者のフラムとあろうものが、誰かを覗き見しとるとはのー」

「ち、違っ!」

わかりやすく動揺するフラム。フラムが覗いていた方を見てみると、ユウとエイカの姿があった。何やら楽しそうに話をしているようじゃな。

「なるほど、フラムはあれを見……」

「み、見てないけど!?二人が仲良さそうに話してる所とか全然見ていないけれど!?」

食い気味に否定をしてきた。ほぼ答えを言ってるようなものじゃが、指摘すると嫌われそうなのでやめておく。フラムとは仲良くしたいからの。そんな事を思いながら、儂はなんとなく二人の方を見てみる。

「お、ユウが一人で何処か行ったぞ」

「え!?」

フラムが二人の方を見ると、そこにはエイカしかいない。ユウは走って何処かに行ってしまったのだ。

「……どうやら市場の方に向かったようじゃな」

「市場?何でそんな所に……」

その場で考え出すフラム。確かに、ユウはなかなかそんな所に行かぬからな。普段はせいぜい飯を食べているか、クエストに行っているかのどちらかである。……ふむ、少し気になるな。

「……儂も市場に行ってみるとしようかの」

「えっ?シオンも?」

「フラムも一緒に行かぬか?二人で買い物でもしていたら、ユウにも会うかもしれんぞ」

「い、いいと思うけど……私は別にユウなんか……」

「よし、なら早速行くのじゃ」

「え、ま、待って!」

フラムの声を背に、儂はさっさと歩き出した。


市場に来た俺は、適当にその辺を歩いていた。しっかりした格式高そうなお店があったり、食べ物の屋台なんかもあったりする。お、あれはアクセサリーかな?普段買い物とか行かないので、この光景が珍しい物に感じる。もっと外に出よう……

「……それにしても賑やかだな」

市場は屋台の呼び込み声でいっぱいで、活気づいている。通行人も思わず足を止めて、屋台の品物を楽しそうに見ている。

「お、何だこれ」

それにならって俺も屋台の前で止まってみると、気になる物を見つけた。四角い箱のようなもので、一つの面にレンズが付いている。これは何なのか訪ねてみると、店員さんが説明をしてくれた。

「それは≪写機≫というものです。レンズの向きを合わせてそこのボタンを押すと、景色をそのまま切り取ったかのように写せるんですよ」

なるほど。つまりこの世界のカメラか。

「ちなみに、どれくらいするんですか?」

「そうですね……軽くこれくらいはするかと」

店員さんに値段を聞くと、俺の持ってる金より倍高かった。いつもの食堂で一ヶ月飯が食えるくらいだったんだけど。とりあえずカメラは諦め、別の所に寄ってみる。

「どこも高いな……」

俺の持ってる金で買えるのはせいぜい食材や料理だった。まぁ、そんなに稼いでるわけでもないしな。この世界に来たときにギルドの人に聞いたのは、冒険者の報酬は高いクエストで一ヶ月過ごせる程度、安いクエストで一週間過ごせる程度らしい。俺はいつも食堂で飯を済ませて、宿屋の部屋代を払ってるから貯金残高もあまり無い。冒険者は自由とはいえ、ちょっと世知辛い。はぁ……

「何故ため息を付いてるんじゃ?」

「うおっ!?シオン!?」

びっくりした……心臓止まるかと思ったわ。何で後ろから急に声掛けて来るんだよ!せめて姿を見せてから声掛けろや!……いや、それでもびっくりするな。

「お前、何でこんな所に……」

「ユウが珍しく市場に行くのが見えたからの。気になって付いて来たんじゃ」

マジか。てことは尾行されてた?全く気づかなかったわ。見ると、シオンも買い物を終えたところなのか、紙袋をいくつか抱えていた。

「すごい荷物だな。何買ったんだ?」

「よくぞ聞いてくれた!こっちに入ってるのは魔物の素材で、これは薬の材料にもなる野菜じゃ!」

おお、熱量が上がった。そういえばこいつは研究者でもあるとか言ってたっけ。……ていうかその野菜ほんとに野菜なのか?顔みたいな模様付いてるんだけど。

「それ、人体に影響無いよな」

「あー……魔物が好んで食う野菜じゃからな……」

俺は野菜を持つシオンから距離を取った。そのままの距離を保ちながら辺りを見渡す。

「そういや、フラムはどうしたんだ?」

「?儂と一緒に歩いとったはずじゃが……」

シオンも辺りを見渡し始めた。しばらくすると、屋台の前で目を輝かせているフラムを見つけた。

「凄い……こんな業物の槍がこの値段……!?こっちはあの名工が打った武具……!」

「「…………」」

「あっ、二人共!見てちょうだい!凄い武具があるの!」

フラムは武器を手にしながらにこにこしている。……まぁ、熱中出来るものがあるのはいいことだよな。脳筋なのは別として。

「……フラム……さっきまでの素振りは何だったんじゃ……」

シオンは何故か頭を抱えている。一体どうしたんだろう。いつもフラム大好きなこいつがこんな顔を向けるなんて珍しい。

「これは≪炎槍ハルバード≫という槍で、攻撃する時に炎を纏って相手を突き刺せて――」

「待て待て!槍の先をこっちに向けて寄ってくるのはやめろ!」

死ぬから、マジで。



 

















 

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