間幕 天使の話し合い
数日前、何者かの手によって俺達の管理している世界と異なる世界が繋がったらしい。しかも、原因は俺と同じ神の使徒。名をヴェルトンというらしい。聞いたことがないな……とにかく、そいつがやらかしてくれたせいで俺の部下達はてんてこ舞い。時空の歪みを元に戻したり、諸々の手続きを行い、ようやく安定してきた。本当に良かった……
「安定率が元に戻ってきたな。ちょっと部下の様子でも見に行くか……」
俺は近くの機械を弄って現状を確認すると、部下である天使の働いている場所に瞬間移動する。うん、よくやってくれているようだな。俺は身近な天使に声をかける。
「調子はどうだ?」
「あ!スレイプニール様!時空の歪みがようやく収まったところです!」
嬉しそうな表情で伝えてくる部下。ここ数日は本当に大変だったからな。また休暇を出してやろう。
「被害者のあの二人は無事に送れたそうだな」
「はい。元の世界で何事もなく生活を送れていると担当者が」
「そうか。それにしても、今回はどういう経緯でこんなことが起こったんだ?俺は同じ神の使徒が原因と聞いているが……」
「そうですね、詳しくは天使長様からお聞きなさった方が良いかと……」
「わかった。じゃあな、身体に気をつけろよ」
俺は何故か黄色い悲鳴を聞きながらその場を後にした。
「……事故の原因、ですか?」
「ああ。どうも気になってな。一介のデーモンごときが空間を歪められる訳がない。例えどれほど高位のものでもな」
先程の天使の言葉通り、俺は天使長と呼ばれる者に事情を聞きに来た。彼は下界の全てを記録しているため、事情聴取には丁度いいということだ。
「……確かにあの事故はデーモンに起こされたものではありません。きっかけはあくまでも奴ですが、奴は力が強くなっていただけなのです」
「ほう、なるほどな」
デーモンは確かに強いが、それは人間にとっての評価だ。しかし、それが強力になると天使でも手を焼くほどになる。
「あのデーモンはどうやら、一時的に我らに匹敵するほどの力を得ていたそうなのです。元々の力もありましたが、あるものによって微々たる強化を得ました」
「そのあるものとは?」
天使長は少し間を開けて、真剣な表情でそのあるものの名前を述べた。
「天界にずっと刺さっていた剣。≪混沌剣カースフェイス≫です」
はっと息を呑んだ。混沌剣カースフェイス。それは我が神の一番の配下が使っていた武器。あの方によって封印され、そして存在も消えたはずの剣。どういうわけか、それはいつの間にかここ……天界に刺さっていた。
「なるほど……その剣は何処に?」
「とある異世界人によって抜かれ、今は下界に」
俺は天使長にもう一つ問う。
「その異世界人の名前を教えてくれ」
天使長は何故か躊躇うような素振りを見せたが、素直に話してくれた。
「……――――。あの世界では、ユウと名乗っています」
「…………ふむ」
俺は聞いた名前を頭の中で反芻する。今まで俺達が抜くことが出来なかった剣を抜いた者。明らかに不自然だ。それこそ、我が神の力でもなければ……
「……っ!」
そうか、そういうことか……!
「あの……スレイプニール様?いかがなさいましたか?」
「ん、ああすまない。少し思考を巡らせていた。話を聞かせてくれて感謝する」
俺は軽く礼を言うと、その場を後にする。頭の中には先程聞いた異世界人の話があった。
「――――か。面白いものが見られそうだな」
俺はこれから起こることを予想し、顔に笑みを浮かべた。




