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第二十二話 生じたノイズ


本来感動の再会のはずが、ちっともそうじゃなくなったその日の昼。何とかサオリのハグから抜け出した俺は、食堂で昼飯を食べていた。

「はぁ……」

どうしたものか。もう会うことはないと思っていた二人に会えたのは嬉しい。嬉しいのだが……

「どんな顔して会えばいいんだよ……」

なんというか、久しぶりに会うと少し気まずい感じになるんだよな。仲が良くても、久しぶりとなると……という感じ(経験談)。

「?どうしたんですかユウさん。そんな悩みのありそうな顔をして」

顔を上げると、そこにはアオイさんがいた。疑問符を浮かべているような顔でこっちを見ている。

「いや、なんでもないです」

「何かある人はみんなそう言うんですよ。私で良ければ話を聞きましょうか?」

おっと、ぐいぐいきますね。……まぁ別に話して困るわけでもないし、いっか。

「……久しぶりに弟と妹に会ったんですよ」

「いいことじゃないですか。私は3ヶ月もガルムに会えてないというのに……」

「いや、知りませんよ。……そこで、ちょっと気まずくなってしまってですね……」

「何故ですか」

アオイさん、目が笑ってないんですけど。俺は尋問を受けているのだろうか。相談してたよね?

「いや、久しぶりすぎて、何話せばわからないっていうか……どう接したらいいのかって思って……」

「そんなの簡単ですよ。普段通りでいいんです。そして抱きついて○○○とかしたら良いんですよ」

……アオイさん、ガルムさんにそんなことしてるの?ちょっとドン引きなんですけど。放送禁止用語が出て来たじゃん。

「冗談ですよ。だからそんな目で見ないで下さい……」

何だ冗談か。びっくりした……流石に実の弟にそんなことはしないよな!うん、よく考えたらそんな事あるわけがない!

「……半分は」

「ちょっと待って下さい。半分って何ですか」

どれかは事実ってこと?めちゃくちゃに触れづらいんだけど。……アオイさんはそれ以上何も言わなかったので、俺はモヤモヤしたまま食堂を出た。


「……うわ」

「お兄ちゃん、妹にうわとか言っちゃダメ」

食堂を出たら、件の人物達の片方に出会った。二人は朝遅いからわざわざ早朝に来たのに……!いかん、平静に行こう。

「……ユウはいないのか?」

「私だけ。それよりお兄ちゃん、何で私達を避けるの?」

ド直球だな。脈絡というものを教えてやりたい。

「別に避けてないぞ」

「嘘。お兄ちゃんは嘘をつく時そっぽ向く」

マジで?そんな癖知らなかったんだけど。ていうか何でサオリがそんなこと知ってんの?さっきから思ってたけど、もしかしてサオリは俺の事嫌いじゃない?

「……悪かったよ。久しぶりだから、どんな顔して会えばいいのかわからなかったんだ。まして、俺は一回死んだからな」

「そんなこと気にしなくていい。遠慮なく抱きついて○○○したらいい」

「おい」

お前もなの?何それ、最近流行ってんのか?十五歳の娘がそんなこと言っちゃ駄目でしょ?俺が呆れたような顔をすると、サオリはクスッと笑った。

「……やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃん。こうして話せるのがとても嬉しい」

「……お前は、俺が嫌いなんじゃないのか?」

「まさか。私はお兄ちゃん大好き」

「お、おう」

面と向かって言われ、ちょっと照れた。サオリは笑顔のまま抱きついてくる。

「お兄ちゃんが死んだとき、とても悲しかった。だけど、今はここにいる」

「……サオリ」

「ユウとも話してあげてね、お兄ちゃん」

俺は抱きついているサオリの頭を、そっと撫でた。 


というわけで、可愛い妹の望みを叶えるため、俺は宿に来ていた。二人には俺の隣の部屋で暮らすように言っているので、ここにユウがいるはずだ。俺はノックしてドアを開ける。

「ユウ、入るぞ……」

「お兄ちゃん、もっとガッとやらないと。ユウの注目を引けないでしょ」

ガッとやったらびっくりするだろ。ていうか、ガッとって何だ。俺は部屋を見渡し、こちらをきょとんとしながら見ているユウと目が合う。可愛い。

「に、兄さん……?」

「よう。サオリもいるぞ」

「はろー」

「どうしたの?何か用……?」

「いや、久しぶりだから話でもしようと思ってな」

「そ、そう……」

……何この距離感感じる会話。会ってない間にそんなに溝あいちゃった?少しショックだ。

「ユウは元気してたか?」

親戚のおじさんかな?気まずいから何か話そうと思ったけど口に出たのは親戚のおじさんの挨拶のそれだった。ユウはこっちをチラチラと見ながら、

「げ、元気だよ」

ほら!反応に困ってるじゃん!より気まずい雰囲気になったじゃん!俺の阿保!

「……あー……えーと……」

「ユウは何かお兄ちゃんに話したい事ないの?」

「あ、あるよ!兄さん、本当に久しぶり!会えて嬉しいよ!」

…………。

「……ごめん、部屋に帰るわ」

何だかユウが無理をしているように見えたので、俺は潔く引き下がった。


「さて、ここが神の気配があったところだな……」

「ヴェルトン様、本当にこんな地味な街に魔神様がいらっしゃるのですか……?」

「何を言っている、いるに決まっとろうが!私の勘は神の使徒の中で一番なのだぞ!」

「は、はい!申し訳ありません!」

「わかったらもっと部下を連れてこい!このヴェルトンの元に!」

「はい!」

そう言って部下が姿を消すと、ヴェルトンと呼ばれた者はフードを外す。雪のような白髪、少年とも少女ともとれるような美貌。実際、ヴェルトンの配下も性別がどちらかわかっていない。そもそも、ヴェルトンにはそんなものはないのだ。

「おお、神よ!今すぐこのヴェルトンが貴方様を救って見せましょう……!」

彼または彼女にあるのは、狂気的な信仰心のみ。火山の熱にも負けず、ただ祈りを捧げるのみである。

「ヴェルトン様!第一部隊、準備完了いたしました!」

部下からの報告を得て、ヴェルトンは邪悪な笑みを浮かべる。ヴェルトンは部下に向かって叫ぶ。

「神の遊具たちよ!我らが神はこの街におられる!皆、目を光らせて捜索を始めるのだ!」

「「「はっ!」」」

ヴェルトンの指くらいのサイズの異形の者達が、ヴェルトンの元から離れていく。ヴェルトンは再びフードを被ると、ぼそっと呟いた。

「待っていてください、我が神よ……!」

ヴェルトンは身を翻すと、路地の裏に消えていった。








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