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第二十一話 再会


とある火山にて。そこには、辺りの溶岩のように腹を煮えたぎらせているものがいた。

「我らが神……!ああ、我らが神よ!何故姿をお見せにならないのだ!」

男とも女ともとれない中性的な声でそう叫ぶ。顔をローブで覆っており、その表情はうかがえないものの、怒りに満ちていることだけがわかる。謎の者の周りは、瓦礫があり、目の前には歪な形の像が佇んでいた。

「私はこんなにも祈りを捧げているというのに!何故だ!生贄が足りないというのか!」

謎の者は怒りが収まらないのか、頭を掻き毟り、地団駄を踏む。しかし、ふと、謎の者は動きを止めた。

「……む?感じる。感じるぞ!?神の波動を!」

謎の者はとある方向を向くと、再び叫びだす。完全に情緒がいかれている。謎の者はフードの下でニヤリと笑うと、近くに置いてある杖を手に取る。

「顕現せよ!≪虚無竜の影≫!」

≪グアアアアアアア!≫

謎の者が持つ杖が妖しく光り輝くと、灰色の竜が突如現れる。それは謎の者を背に乗せると、一つの方向に向かって進み始めた。

「待っていて下さい!我が神よ!」

謎の者は目を光らせて、高らかにそう叫んだ。そうして、一つの災厄は動き出す。ユウ達のいる、イチの町に向かって。


「よし……あと一組だな……」

昼下がり。なんとなく暇になった俺は、食堂の机でトランプタワーを作っていた。

「?ユウ、何をしておるのじゃ?」

トランプタワーとにらめっこをしていると、料理を持ったシオンに話しかけられた。……今日の日替わりランチはサンドイッチか。あとで頼もう。

「トランプでタワー作ってるんだ。崩したりするなよ。これ作るのに一時間かかってるんだ」

「……何故食堂でそんなことをしてるんじゃ。アオイに怒られるぞ」

シオンは目の席に腰掛けながら、そう言う。

「大丈夫。アオイさんは今出掛けてるから。ガルムさんを探しに行くんだと」

「ほう、そうなのか?」

「ああ。「ガルムの位置がようやくわかりそうなんです!」って言って嬉しそうにしてたぞ」

もっとも、どうやって特定しようとしているかは知らないが。いや、知りたくないが。

「ふむ。きょうだいというのはそういうものなのか?儂は一人っ子じゃからわからんのじゃ」

「うーん……大体は仲悪いって聞くけど、俺とアオイさんはそうでもないな」

俺の言葉に、シオンは興味深そうに頷く。そこまで珍しいものでもないだろうに。一人っ子なんてざらにいるだろうしな。

「なるほど。今度、フラムにも聞いてみようかの……」

「私に何を聞くつもりかしら?」

ビクッとした。声のした方を見ると、そこにはフラムがいた。シオンといいこいつといい、どうして急に現れるんだ。びっくりするからやめて欲しい。

「……フラムか。シオンがきょうだいに興味があるんだと」

「そうじゃ!フラムには確か妹がいるんじゃろ?きょうだいというのはどういうものか少し気になっての」

「どうって……別に普通よ。私はあまり仲がいい方ではないし」

そうなのか。まぁ、きょうだいは仲が悪いのが普通とも聞くし。俺やアオイさんがおかしいという見方もできる。

「そうか。ちなみに、どれくらい年が離れてるんだ?」

「七つは離れているわね」

ふーん。十歳くらいか。それくらいなら五月蝿くなっても仕方ないかもしれない。サオリはそれくらいから冷たくなったし。……ぐすん。

「なんで泣いているの……?」

「泣いてない」

「そ、そう?あっ、それより、貴方に会いたいって人がいたから連れてきたのだけど……」

「え?」

俺に?なんで?少なくとも俺に会いたいと思う人なんていないはずだ。交友関係狭いし。イズモさんやガルムさんならあり得るけど、最近忙しいって言ってたし……と、俺が思考を巡らせていると……次に目に入った光景で、その思考は消し飛んだ。フラムの手が指した先にいる、二人組。一人は黒髪の少女と間違える程の美貌を持つ美少年。もう一人は長い黒髪の美少女。

「ユウ、サオリ……?」

「兄さん……」

「お兄ちゃん!」

聞き覚えのある声が、俺の耳に響いた。


謎の者が竜を呼び出したとき、誰もが予想できない事が起きていた。異次元とこの世界を繋ぐその術は、時折異世界から何かを呼び寄せる。

「あれ、ここは……?」

「暑い……ユウ、エアコン……」

「サオリ。エアコンはないみたいだよ」

火山の暑さなどものともしないような二人。偶然にも、呼び寄せられたのはユウとサオリだった。

「あれ、ここどこ?」

「どうやら火山みたいだね。僕、暑いの苦手なのに……って!そうじゃなくて!」

最初は冷静だったが、今の状況を理解したユウが慌てだす。あまりにも浮き世離れし過ぎて脳が理解を拒んでいたのだ。

「……ユウ、何かおかしい」

「な、何が?」

「辺りが歪んで見える。変なの」

「そ、そんなコト言ってる場合じゃ――」

次の瞬間、二人の回りの景色が切り替わった。火山ではなく、建物の並ぶ場所に二人はいた。

「す、凄い……!これは本で読んだ、空間を転移する現象……!?」

「いや、冷静?流石に驚かない?」

冷静なサオリに対して、少し戸惑った様子のユウ。そこに、ふらっと通り掛かったものがいた。

「……?あなた達、みない顔ね」

長い金髪碧眼の美少女。フラムである。異世界人をいきなり前にした二人は少し戸惑う。

「あ、えーと……」

「……ユウ、ちょっと来て」

「え?うわっ、引っ張らないで」

サオリはユウの体を寄せると、フラムに背を向ける。サオリは金髪の少女に背を向け、真剣な顔をして話を始めた。

「……あの人、お兄ちゃんの匂いがする」

「え……それって……」

「うん、お兄ちゃんはここにいる」

「え、ええ……!?……いやちょっと待って。僕、そんな匂いとか感じなかったんだけど……」

「?これくらい普通でしょ?」

普通ではない。普通の人はほんの少しの香りで人を判別出来たりはしない。とユウは思った。サオリはフラムに向き直ると、懐からある写真を取り出した。

「あの、私達人を探しているんです。この人をどこかで見たことがありませんか?」

「……いつから人探ししてたの、僕達」

ユウが突っ込むが、サオリはスルーした。どうやら兄を探すつもりらしい。サオリが兄の写った写真を見せていると、フラムは怪訝な顔となった。

「その人なら、私の知り合いだけど……」

「「えっ!?」」

二人は驚く。探すのは難しいと思っていた分驚きも倍である。

「あ、案内して下さい!お願いします!」

「サオリ、そんな流暢に喋れたっけ……?……僕からもお願いします」

「い、いいわよ。付いてきて」

こうして、三人は件の人物のもとへ向かった。


異世界転生したら、弟と妹がついてきた。状況報告をしたらラノベのタイトルみたいになったが今の状況がまさにそれなのだから仕方ない。

(なんで二人がここに?死んだわけでも無さそうだし……いや、ほんとに何でだ?)

「お兄ちゃん……!」

「ちょっ、サオリ。人が見てるから……」

「…………」

俺に抱きつく妹のサオリと、それを注意する弟のユウ。何が何やら。誰か説明してくれよ、この状況。

「えっと、ユウ。その子達は誰なの?」

「……弟と妹だよ。前に会えなくなったって言ったやつ」

「ほほう。まさかきょうだいの話をしてるときに本物に出会えるとはの。数奇な巡り合わせじゃな」

シオンが呑気にそんなことを言っているが、それどころではない。まさか、二人に再会するなんて……

「……ユウ?何で兄さんが僕の名前で呼ばれてるの?」

ほらめんどくさい事になった。

「あー……それはだな……それよりお前ら、どうしてここに来たんだ?まさか死んだわけじゃないよな?」

もっと動揺したいところだが、聞くべきことは聞いて置かなければならない。もし死んでたらショックである。気になるその答えは……

「えっと、死んではないよ。ただ、気付いたらここにいたというか……」

「お兄ちゃん……お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん……!」

気付いたら……ここにいた?どういうことだ?ひょっとして今度は異世界召喚ものというやつか?あとさっきからサオリがほっぺすりすりしてくるのは何?俺、嫌われてなかったっけ。

「あの、サオリ……動けないから退いてくれん?」

「やだ」

二文字の否定が入った。そこは冷たいのか…………

「なるほど、これが仲のいいきょうだいというものじゃな!」

「……多分違うんじゃないかしら」

「……そうですね」

楽しそうにこちらを見るシオンと、サオリに若干引いた様子のフラムとユウ。そしてサオリに抱きつかれている俺。このカオスな状況は、サオリが落ち着くまで続いた。






 











 















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