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間幕 平凡じゃなくて夢になりたい


二歳のとき、俺は両親を亡くした。あっという間の出来事だった。あまりにも突然過ぎたため、俺は涙の一つも流さなかった。そのせいか、親戚にも気味悪がられ、俺は施設か何かに送られた……らしい。そこでは俺と同じような境遇にある子供達が集まっていた。俺は彼らと特段仲が良いというわけではないが、虐められることもなく過ごしていた。そんなある時、俺は二人と出会った。

「ねぇねぇ、何してるの?」

「してるの?」

「…………?」

顔つきのよく似た二人の子供。当時四歳だった俺は年下かどうかも判断できず、ただ虚ろな目で二人を見ていた。思えば、人とまともに会話したのはこれが初めてだった気がする。

「……砂遊び」

当時の俺はよく施設の外の公園で遊んでいた。飯以外何もないところだったが外出することだけはできたのだ。目の前の男、女……?……子供が話しかけて来る。

「そうなの?ボクも砂遊びすきなんだ」

「……そうか」

「ユウ、このこ、はんのうがつまんない」

「サオリ、だめでしょそんなこといったら。おかーさんにおこられるよ」

「……ごめんなさい」

「……きにしてないけど」

二人――ユウとサオリと会話したのはそんな程度の内容だった。俺は何となく砂遊びを続ける。

「ねぇみてみて。すごいでしょこれ」

ユウが見せてきたのは泥団子。所詮子供が作ったものだ。あまり出来の良いものではない。しかし、何故か俺にはとても綺麗に見えた。

「……すごいな」

「むっ、こんなのよりわたしのほうがすごい」

そう言って見せてきた泥団子は、さっきのよりボロボロだった。俺ははっきりと意見を伸びる。

「さっきのほうがきれい」

「……!?」

サオリは心底以外そうな顔をする。本気で綺麗だと思っていたのだろう。

「……ぷっ」

「!!?」

その顔が面白くて。気付けば俺は吹き出していた。サオリが少し涙目になる。

「ううっ……ユウ……」

「あはは……じゃあボクのかちだね」

「ずるい。ユウがどろたんごしょうぶしたいなんていうからこうなった。くつじょく」

「…………むずかしいことばしってるな」

俺の言葉に二人はこっちに向き直る。俺は少しビクッとした。やがて、俺に手を伸ばす。

「ボクはユウ。こっちはいもうとのサオリ。きみのなまえは?」

「――――だ」

「そうなんだ。ねぇ、――――くん。ボクたちといっしょにあそぼうよ。このこうえんよくくるんだけど、そろそろサオリとあそぶのににあきてきちゃって」

「……ふーん」

「あきたとはしつれいな。そもそもわたしはいえであそびたいっていった」

それから二人は言い合いを始める。俺はあまりそういうのが好きではなかったので、それを断ち切るかのように答える。

「……おれでよかったら、べつにいいよ」

そのことばにユウは嬉しそうな顔をし、サオリは嫌そうな顔をしている。そんなこんなで、おれは二人の遊び相手になった。鬼ごっこをしたり、遊具で遊んだり。俺の生きてきた中で一番楽しかった時期だろう。ユウが男ということに驚いたり、サオリの高い知能に

少し引いたこともあった。でもそれでもそのときは、俺達は仲の良い三人だった。――――そこから一年のことだった。俺が、二人の兄となったのは。

「今日からこの家で住むことになった――――だ。二人の一つ上だから二人の兄だな。二人共、仲良くしてやってくれ」

俺はユウの両親に引き取られた。施設から出れることに喜ぶ気持ちと、新しい暮らしへの不安が混ざり……端的に言うと、緊張していた。しかし、そんな俺を二人は温かく迎えてくれた。

「よろしく!――――くん。あ、にいさんのほうがいいかな……」

「……よろしく」

「う、うん……」

なまじ知り合いだっただけに少し気まずい。まぁでも、二人と暮らせるなら楽しい生活になるだろう。――俺は、そう信じて疑わなかった。その期待は粉々に砕かれることも知らずに。


兄さんと暮らし始めたとき、僕とサオリは子供なりに喜んでいた。サオリはあまり素直じゃなかったものの、兄が出来ることに反対はしなかった。いや、それどころかめちゃめちゃ懐いていた。

「……………………」

そんな兄さん大好きなサオリは今、まるで溶けたかのようにぐてっとしていた。理由は言わずもがな、この前の夢(?)だろう。兄さんがどこかで生きているのだ。そのどこかかどこなのかはわからないけど。とにかく、それが関わっているに違いない。

「……サオリ。どうかしたの?」

僕はうつ伏せで倒れているサオリに話しかける。するとサオリは首だけをこちらに向けた。何だかゾンビみたいだ。

「ユウ……フヘッ、フヘヘへ……」

「さ、サオリ?」

サオリは急に笑い出した。ちょっと怖いが、顔がにやけていることから落ち込んでいる訳ではないことがわかる。

「はっ。……な、何でもない」

「そ、そう?」

「それより。ユウも≪あの夢≫……見たでしょ?」

あの夢というのは、この前の怪物が出て来たあの夢のことだろう。兄さんの知り合いらしいけど……ホントかどうかはわからない。

「うん。それがどうかしたの?」

「……ユウ、冷静過ぎ。お兄ちゃんが生きてるかもしれない。これは神が与えてくれた奇跡」

語気が強い。奇跡か……確かに兄さんが生きてるんだったら奇跡だよね。

「そうだけど、確実ではないんでしょ?しかも、どこにいるかもわからないし……」

「関係ない。可能性があるなら突っ込むべき」

……これは本気の目だ。サオリは兄さんのことになると、性格も少し変わる。サオリは真剣な瞳になると、僕に向かってこう言った。

「兄さんはこことは違う世界にいるはず。兄さんのラノベにもあった、所謂異世界転生をしている可能性が高い」

「へぇ……」

異世界転生。あまりラノベを読まない僕でも知っている。この世界の人間が、突然異世界に生まれ変わるという感じだったっけ。

「それに倣って私達も死んでみるという方法で生まれ変わる可能性がある。でも、これは一回しか試せないから没。変わりに案を用意した」

早口でよく聞き取れなかったけど、取りあえずサオリが暴走しそうなのはわかった。僕の意志はないんだね……

「あの怪物は、私達にこう言った。兄に会う方法は私達が一番良く知っているのではないか、ということを」

確かに言っていた。あのあと少し考えてみたけど、検討もつかない。普通の人ならそんなデタラメなことできるわけがない。……まさか、サオリはわかったのだろうか。期待を込めてサオリの方を見る。サオリは起き上がり、胸を張ってこう言った。

「というわけで、その方法を考える。ユウも手伝って欲しい」

「…………」

僕はサオリに背を向けて、自分の部屋に戻った。


「……どうしたんだろう」

先程、私が協力を求めたとき、ユウは微妙そうな顔をして部屋に戻ってしまった。あれは長い付き合いだからわかる。あまり触れないでおこうという顔だ。解せない。

「……私はお兄ちゃんに会いたいだけなのに」

お兄ちゃんに会えるかもしれないと思ったらこれだ。相変わらず、運命というのは意地悪らしい。だが、少しでもお兄ちゃんに会える可能性があるなら、私は諦めない。死ぬのは嫌だが。

「……あっ、ミツキさんからだ」

鳴ったスマホを見ると、ミツキさんからメールがあった。メールの内容はユウに関係すること。最近はよくミツキさんとユウの話をしている。というか、ミツキさんがユウについて聞いてきているのだが。こういうのを尊い関係と言うのだろうか。私はお兄ちゃんが好きだが、もちろんユウだって大切な兄だ。できるなら幸せになって欲しい。ミツキさんなら私のお墨付きをあげる。…………おっと、そうではない。お兄ちゃんについて考えなければ。

「…………」

何も思い浮かばなかった。仕方ない、今はミツキさんの相談を受けようか…………











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