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第十九話 休日は強者と一緒


今日はクエストがないので、俺はいつものようにガルムさんと会うことになった。クエストを受けない日は意外とやることがないため、ガルムさんの冒険譚を聞いている。そして俺はその対価にアカギさんとアオイさんの近況報告をしているのだ。ちなみに、今日の待ち合わせ場所は近くのカフェだ。馬鹿みたいに遠いところより近くの方がバレにくいというガルムさんの謎理論で選ばれた。

「お待たせしました、ガルムさん」

「ん?おお、ユウか……」

どうしたんだこの人。明らかに不審者みたいな格好でキョロキョロと辺りを見渡している。

「なんかやらかしたんですか」

「ちげぇよ。姉ちゃんが来てないか確認してるんだよ。この格好でわかるだろ」

何だそんなことか。まあアオイさんは今勤務時間だろうから大丈夫だと思う。多分。

「あれ、今日は一人じゃないんですね?」

「ああ。俺のパーティーのリーダーをやってるやつを連れてきた」

「こんにちは、イズモといいます」

ガルムさんの背後から、俺の一回りくらい小さい白髪の子が出て来た。…………女の子?

「一応言っておきますが僕は男です」

「あ、そうなんですか」

速い。きっと今までに同じようなことを思われているのだろう。……ていうか心読まれた?

「イズモさん……でいいですか?」

「はい。敬語は無くてもいいですよ」

「あ、そう?」

「お前順応速えな」

それが取り柄ですから。

「立ち話も何ですから、店内に入りましょうか」

俺とガルムさんはイズモさんとカフェに入った。


「すみません、パフェをお一つ」

「俺はパスタ一つで」

「俺は……この激辛ステーキで頼む」

激辛ステーキ?何そのこの場に合わないメニュー。この店そんなの取り扱ってんの?

「ん?どうした。変な顔して」

「いや、何でも……」

「ガルム、どれだけ辛いものが好きなんですか。まだ甘いのが苦手なんですか?」

「はぁ?いいだろ別に。そこに辛い料理があったら頼むだろ?」

何その登山家みたいな理論。同意しづらいんだけど。

「あの、喧嘩は止めましょうよ」

「いや、喧嘩じゃねえ」

「そうです。こんなのじゃれているようなものです」

あ、そうなんだ……ここは話題を変えよう。

「……イズモさんは、どれぐらいのレベルなんだ?」

「そうですね、58くらいですかね」

たっか。

「ユウさんもレベルはそこそこでは?ガルムの話では、冒険者になって一ヶ月くらいと聞いていますし」

「俺は19だな」

「…………まぁ、それくらいが妥当でしょうね」

おい、なんで目をそらした。まさか低いとかじゃないだろうな。

「まぁ気にすんな。それくらいが普通だから。こいつがおかしいんだよ」

「ええ……」

レベル49の人におかしいとか言われるなんて、やばすぎないだろうか。俺って一応チート持ちの転生者なんだよな……?周りに格上しかいないんだけど。

「あ、そうだ。ガルムさん、アオイさんが会いたいって言ってましたよ」

「…………」

「ガルム……お姉さんとまだ会ってないんですか」

ガルムさんが黙る。話題転換は失敗したようだ。だって顔が真っ青だもん。

「いや、姉ちゃんに会いたくない訳じゃないんだ……ただ、その……」

体が震えている。アオイさんは一体この人に何をしているんだろうか。取りあえず聞かない方が良いということはわかった。

「あー……わかります。僕にもアオイさんのような姉がいるので」

「ああ、アカネのことか。あれとはちょっと違うだろ」

突如始まる身内話。こういう時に凄く疎外感を感じるのは俺だけではないはずだ。

「イズモさんって姉さんがいるんだな」

「はい。少し心配症が過ぎますが、大切な家族です」

イズモさんはそう言って笑みを浮かべる。それだけでどれだけその人を想っているかがわかる。

「ちなみに、どのくらい年が離れてるんだ?」

「四歳は離れてますね。僕は今十五なので……そろそろ二十歳になると思います」

マジか、この人年下だったんか。それにしても、年の離れた姉か……俺長男だったからそういう人が欲しいとたまに思ってたわ。羨ましい。

「ユウさんも姉を持ったらわかりますよ。どれぐらい面倒くさいかが」

ビクッとした。この人、勘が良すぎではないだろうか。見透かされてるみたいで怖いんですけど。

「おいおいイズモ。ユウが怖がってるからその顔はやめろ」

顔じゃないです。ガルムさんの気遣いはありがたいんですけどそっちじゃないんです。

「おや、すみません。怖がらせてしまいましたか」

なんでそんなに大人な反応するんだよ。ほんとにこの人年下なのか?所作がいちいち大人びてるんだよな……

「ユウには確か、弟と妹がいるんだってな」

「そうなんですか?」

イズモさんが興味深そうにこちらを見る。目がキラキラしてるな……

「いるよ。今はちょっと諸事情で会えないけど、二人共凄いやつなんだ」

「いいですね。僕は弟や妹がいないので羨ましいです」

「まぁ可愛いもんだよ。俺の自慢のきょうだいだな」

これだけははっきりと言える。二人は俺の救世主だ。それは異世界に来ても変わらない。

「ユウは相変わらずだな。俺もお前と同じようなきょうだいを持ちたかったよ」

「いやいや、アカギさんもアオイさんもいい人じゃないですか」

アオイさんのブラコンは置いといて。

「そうだな。……俺、また今度イズモと一緒に兄ちゃんと姉ちゃんに会いに行くぜ」

「イズモさん同伴なんすか……?」

やっぱりアオイさんが怖いのか。


その後、カフェから出た俺達は並んで町を歩いていた。

「ガルム、その服装どうにかして下さい。不審者に見られてしまいますよ」

「しょうがねぇだろ。いつ見つかるかわからないからな」

「さっきの覚悟はなんだったんですか……」

確かにイズモさんの言う通りである。アオイさんと遭遇するんだったら、イズモさんがいる今でも別に変わらないと思うのだが……

「うるせえ、お前は姉ちゃんが何してくるか知らないからそんなこと言えるんだよ」

「アオイさんは一体何をしてるんですか?」

俺を見ないでくれ。知らないし知りたくない。と、こんな感じでいろいろ話していると……

「見つけたぞ……」

声のした方を見ると、そこには見覚えのありすぎるポニーテール女性の姿が。そういえばこいつ釈放されてたんだっけ。

「?ユウさん、あの人は?」

「俺の持ってる剣を狙ってるやばい奴」

俺は凄く簡単に説明した。それを聞くとイズモさんは少し表情を固くする。そんな変化を見ると同時に、なんか怒ってるリエが仕掛けてきた。

「今度こそ!その剣を奪わせてもらうぞ!」

そう言って凄いスピードで俺の方に走ってくるリエ。どうしよう、これ避けれないよな!?と、俺が焦っていると………

「≪カースバインド≫」

イズモさんが魔法を使って、リエを拘束した。……今凄いスピードで縛られてたんだけど?

「な!?何だこれは!?」

「軽い拘束魔法です」

その言葉通り、紫に光る鎖のようなものがリエを縛っている。拘束が解けないのを見るに、とても強力な魔法なのだろう。それだけでイズモさんがとんでもない実力者ということが分かった。

「さて、闇魔法の実験台にしてあげましょうか?」

「ヒッ」

怖い。十五とは思えない気迫だ。リエめっちゃビビってるし。

「それが嫌でしたら、この場はお引き取りぐださい。大切な友人との時間があるので」

イズモさんが指を鳴らすと、リエの姿が消えた。なんだよこの人。やばすぎるだろ。

「あの―……あいつはどこに……?」

「運がよければ近くの草原に着いてますよ」

おっと、深く探らない方が良さそうだ。

「いいか、ユウ。イズモを怒らせたらああなるんだぞ」

ガルムさんがまだ気の抜けてる俺にそんなことを言う。その言葉にイズモさんは反論する。

「失礼な。僕は戦うのが嫌なだけですよ」

「嘘つけ。この前お前のローブをボロボロにした魔物を同じようにしたろ」

なるほど、これが高レベル冒険者の会話か。次元が違いすぎる。

「ユウさん、困った事があれば言ってくださいね。僕もできる限り力を貸します」

「え?あ、おお……」

イズモさんの純粋な笑みに、俺は戸惑いながら頷いた。

 





















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