第二話 初クエスト
異世界転生したら、やることは一つ。そう、クエストである。というわけで俺は早速簡単なクエストを受注した。内容はゴブリン討伐。比較的難易度が低く、初心者は必ず受けると言われているらしい。俺は戦いの経験なんてないので初心者かどうかも危ういが。
「やってみないことには始まらないよな。さて、ゴブリンはどこかなー」
辺りを見渡しても、芝生みたいな草が広がるだけ。群れらしきものもなく、俺は肩を落とす。
「はぁ……そんな簡単にはいかないか。……ん?何か音がするような……」
聞き覚えのある声がする。なんだろ。……前の世界では空耳も多かったし、きっと聞き間違いだろう。俺はそう思ってスルーし、再びゴブリンを探す。しばらくすると、緑色の人みたいな形の子鬼を見つけた。なるほど、あれがゴブリンか……俺はすぐには近付かず、ゴブリン達の様子を見る。そう、複数なのだ。下手に出ていったらもやしの俺がボコられる。俺は剣を構えると、ゴブリン達に向けて煙を放つ。ちゃんと風上にいるので、うまい具合に霧がかかった。ゴブリン達が慌てだしたり、動かなくなったりする。まだ動いているやつは剣についてる遠距離攻撃機能を使う。剣の先に魔力が集中し、相手を矢のように射抜くシステムらしい。……それはボウガンではないだろうか。いや、気にしないでおこう。混乱する。……俺が矢を放っている間にゴブリン達を全て倒せたようだ。カードの裏の討伐欄に倒した数が記載される。クエスト完了だ。
「よし。初クエスト達成、っと。うまく言って良かった……」
どっと疲れが出てくる。こんなに頭と体を使ったのは久しぶりだ。普段引きこもりがちだったもんな……俺は重い体を引きずりながら帰路についた。
ギルドに帰った俺は、結果を報告してすぐに報酬を受け取る事ができた。これが自分で稼いたお金か……重みが違うな。大事にしよう。あまり多いほうではないが、人間の心理的にお金が貰えるというのは嬉しいものである。今日は食堂でちょっと贅沢でもしようかと考えていると、ギルドのドアがバンッと開かれた。何事かと見てみると、またもや見覚えのある人の姿があった。昨日俺に助けを求めたあの人である。よく見るとあの人、金髪碧眼なんだな。リアルで直接会ったことないから少し新鮮である。
「どこにいるのあの男……!私を助けなかったこと、後悔させてあげる……!」
何があの人をそこまで駆り立てるんだろう。プライド?確かに美人だしプライドが高いというのはあるかもしれない。あくまでも個人の意見だが。まわりの人の声を聞くと、「あれはフラムさんじゃないか?」「高レベルの冒険者がなんでこんなところに……」という声が聞こえる。マジか、あの人強キャラポジ?有名なの?じゃあなんで助けて欲しかったの?そんなことを考えていると、彼女はこっちを見て、
「いたー!ちょっとそこのあなた!こっちに来てもら……」
俺は最後まで聞かず、裏口から逃げ出した。
「はぁ……はぁ……」
「…………」
結局、俺は捕まった。何この人、足めっちゃ早いんですけど。逃げるときめっちゃ怖かったんですけど。……仕方ない。話を聞くしかないか……
「あの、なんか用ですか?俺は早く食堂行きたいんですけど……」
「そんなのはあと。私の用件が最優先よ」
なんだこいつ。身勝手すぎるだろ。
「私の名はフラム。この町の高レベル冒険者よ」
「そうっすか、じゃ」
「待ちなさい」
肩を掴まれた。って、力強っ……猫みたいに掴まれた俺は大人しく話を聞くことにした。
「あなた、昨日私が絡まれていたのに無視していったわよね。あれはどういうこと?」
「関わったら面倒臭いと思ったので全力で無視しようと思いました」
「……っ、そ、そう……じゃあその後走って逃げたのも……」
「声かけられたら無視できないじゃないですか」
俺の答えに、女の人は体を震わせる。これあれだ、怒らせてるやつだ。だってラノベでよく見るもん。
「くっ、強そうな雰囲気をしていたから、私のパーティーに入れようと思ったのに……まさかあれを無視するなんて……」
「え?今なんて言った?」
パーティーに入れる……?そんなイベント起きようとしてたの?無視して良かった。ん?それって……
「もしかして、あれ自作自演ってこと?」
「ギクッ」
本当にそう言うやつ始めてみたわ。何のためにそんなことを……と俺が怪訝な顔をしていると、フラムは汗をだらだらと流しながら慌てて言った。
「いや、パーティーに入れるなら真面目で勇気がある人がいいなーって思って……ああいう状況で助けてくれる人なら大丈夫かと……」
詐欺まがいのことをしてまで俺を誘おうとしたのか。俺そこまで強そうでもないよ?変な形の剣持ってるだけだよ?
「いいと思うけど、逆にそういう場面で聖人みたいな反応されても真面目って言うわけじゃないんじゃ……」
「何を言ってるの?人助けするくらいいい人ってことでしょ」
……微妙に伝わってないな。そんな方法だと逆手にとられると思うのだが……この人は割と素直なのかもしれない。
「今、馬鹿にされたような気がするのだけど……」
「気のせいだろ。それより、俺食堂に行きたいからこの辺で……」
「待ちなさい」
「≪ランダムスチーム≫」
いつまで立っても逃してくれないフラムに、こちらも強行手段に出ることにする。煙がフラムに当たると、数秒くらいで眠りについた。その隙に俺は食堂へと走り出した。




