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第十七話 尊いんですねわかります


ユウとサオリは何もない空間で目を覚ました。しかし、どこかふわふわとした感覚がすることから、二人は何となく夢だと判断した。

「あれ、サオリ……?」

「……ユウ。夢で会うなんて奇遇」

二人は自らの存在を確認すると、次第に怪訝な顔となっていく。当然だ、こんな状況は体験したことがない。二人が困惑していると、

≪貴様ら……我の空間に入って来るとは。よほど命知らずと見える≫

目の前に異形の者が現れた。この世のものとは思えないその姿に、二人は恐怖で顔を青くする。

「ゆ、ユユユユウ……!」

「だ、大丈夫だよ、サオリ。これは夢なんだ、だからそんなに心配しないで……」

≪ふむ、夢か。確かにその通りだ。我のこの術は夢を利用したものだからな。だが、危害を加えんとは言っていないぞ≫

二人は失神しそうになった。異形の者はそれに対して面白そうに笑い声をあげる。その笑いはより不気味だった。

≪ふはは……よく見たら貴様ら、我の依り代を持つものに似ているな。ちょうどいい。やつの代わりに恐怖に陥れれば少しはスッキリとするだろうなぁ≫

そう言って異形の者は手にした杖を構える。ユウは恐怖に呑まれそうになりながらも異形の者を睨み、サオリはユウに抱き着いて震えていた。

「さ、サオリには手を出させない。僕が守る」

「……ユウ」

≪ふむ、その意気やよし。ならば貴様から……ぐあっ≫

異形の者はいきなり体を押さえ苦しみ出す。ユウとサオリはキョトンとした。

≪くっ、何故だ。何故体が痛む?……まさか貴様ら……!≫

異形の者は杖をしまい、二人に向き直る。そして二人をじっと見つめる。やがて、何かに気付いたかのように肩を落とす。

≪……なるほど、そういうことか。…………おい、貴様ら、黒髮黒目の平凡な男のことを知っているか?≫

二人は首を傾げる。そんな人物は何処にでもいるから、誰のことを指しているのかわからないのだ。

≪ええい、小賢しい。単刀直入に聞こう。貴様らには兄がいるな?≫

「「!?」」

突然の爆弾発言に、二人は目を丸くする。何故知っているのか、兄の知り合いなのかというような顔だと異形の者は感じた。

「に、兄さんを知ってるの……?」

「……私、お兄ちゃんにこんな知り合いがいるなんて知らない」

二人の言葉に、異形の者は冷静に告げる。

≪当然であろう。我は奴が死んだあとに邂逅を遂げたのだからな≫

「死んだ、あと……?」

≪そうだ。貴様らの兄は死んだあと、とある世界に転生した。姿形もそのままでな≫

「「……!」」

二人は驚きより、喜びの感情を強く感じた。大切な兄が生きていた。それに勝る喜びはない。

「お兄ちゃんが生きてる……お兄ちゃんには会えないの?」

≪さあな。我はまだ()()()()()()()。だが、それは貴様らがわかっているのではないか?≫

異形の者の言葉に二人は再び首を傾げる。すると、二人の体に何かが覚めるような感覚が現れる。体が起きようとしているのだ。

≪これは……そろそろ限界か≫

その言葉と同時に、二人の意識が朧げになっていく。何とかそれを阻止しようと抵抗するが、止められる気配はない。

≪さらばだ。また近いうちに会うこともあるだろう≫

それだけ聞くと、二人の意識は暗闇に包まれた。


目が覚めると、目の前にフラムがいた。……あ、そういえばここフラムの部屋だっけ。結局一緒のベッドで寝たってことか……いや、何もしてないけどね?俺は体を起こしてベッドから降り、軽く身支度をする。ベッドの下に置いていた剣をとると、フラムの肩を揺らす。

「起きろー朝だぞー」

「ううん……もう少し……」

なんてはっきりした寝言だ。こいつもしかして起きてない?……考えすぎか。

「…………」

……眠い。最近何かと忙しかったので、あんまり休めていないのだ。……お金に余裕もあるし、今日は休もうかな。そう思った俺は剣を持ったまま再びベッドに潜る。隣にフラムがいるが、弟や妹と一緒に寝ていたことがある俺にとってはなんの苦でもない。疲れていたのか、俺は意外とあっさり眠りについた。


「ううん……」

フラムの寝言が聞こえる。……まぁまぁ寝ていたようだ。何だか体がスッキリしている。

「さて、そろそろ起き……おや?」

体が動かない。というより、動けない。と、そこで、何か柔らかい感触があるのを感じた。ちょっと横を見てみると……フラムが俺を抱きしめていた。えっ。

「ちょっ、フラム!離せ……って力強っ」

身動きがとれん。まぁ、締め付けられる感じではないのがせめてもの救いか。なんならこのままでも……

「いや駄目だろ」

こんなところを人に見られたら誤解される。鍵はかけているものの、またあの姉弟が来たりしたら扉ぶち破られてしまう。それはいけない。

「でもどうしよう……くすぐるか?いや、変態とか言われそうだし……」

そこで俺は閃いた。俺の手元には剣がある。それを使ってこいつに煙をかければ……

「≪ランダムスチーム≫」

すると、フラムの力が弱まり、俺はベッドから出ることが出来た。ラッキー、なんとか開放されたわ。

「……ちっ、甘かったわね……」

安心してる俺の後ろから、何か声が聞こえた気がしたが、俺は気のせいだろうと思ってスルーした。


「……おはよう」

部屋の椅子に座って剣の手入れをしていると、不機嫌そうな顔をしたフラムが声を掛けてきた。若干下がっている瞼を見るに、フラムは朝に弱いらしい。だって凄い形相で俺を見てるもん。

「おはよう。朝飯でも食べに行くか?」

「…………」

なんでより不機嫌そうになるんだよ。そんな目で見られると心臓に悪いんだけど。

「……行くわ」

「お、おお、そうか」

俺は気まずい雰囲気を払うように、「じゃあ先に行っとくな」と言って先に出た。


「このパスタ美味いな。お前のそれは何?」

「もちろんパンケーキに決まってるじゃない」

もちろんじゃねえよ。こいつ何日パンケーキ食ってるんだよ。一昨日も昨日もずっとパンケーキだったぞ?

「……もっと他のものとか食べないのか?体に悪いだろ」

「いいえ、よくみてみなさい。今日はサラダと骨付きチキンがついているわ」

「どんな献立だよ」

どう考えてもパンケーキはいらないだろ。

「まあいいじゃない。それより、今日の予定を立てましょうよ」

「そうじゃな。儂はそろそろ大物に挑みたいぞ。このところ腕がなまってきたからな」

「「!?」」

何だ今の声。聞き覚えのある声の方に顔を向けると、そこには紫髪の少女の姿が。少女は自分の料理を持ってフラムの隣に座る。

「シオン、急に話しかけるなよ。びっくりするだろ」

「それより聞いたぞ。ユウの部屋の扉が吹っ飛んだとな。それで今フラムの部屋にいると」

話が広まるのが速い。シオンは少し拗ねたような顔で俺を見る。

「ずるいではないか。儂もフラムと一緒に過ごしたいぞ!」

…………。

「む、何故黙るんじゃ。儂は何かおかしなことを言ったかの?」

「ちょっ、シオン!周りに人がいるから!そんなに大きい声で言わないで!」

何だこれ。まさかの展開すぎるんだけど。ならもう俺いらないから、この二人でいろよ。所謂てぇてぇってやつだろ?え、違う?

「まあ、それなら俺じゃなくてシオンと相部屋になれば良いんじゃないか?」

「!?」

「いいのか!?どうじゃフラム。儂とがーるずとーくなるものをしようぞ!」

「え、ええと……」

攻めに転じたシオンと、タジタジな様子のフラム。…………いや、何だこれ。








 


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