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第十三話 天使の推薦者


「なぁシオン、魔族ってどういう奴らなんだ?」

「なんじゃいきなり……もしや儂の気を引いて時間稼ぎする気か?」

翌日。特にやることもない俺は、昨日と同じようにカードゲームをしていた。今度はトランプではなく、いわゆるTCGというやつである。この世界には俺以外にも日本から来たやつがいるらしいので、その中の誰かが広めたんだと思う。いや、知らないルールだったし、この世界のオリジナルかもしれないが。

「このゲーム、1ターンにやること多くて暇なんだよ。だから雑談でもしようと思ってな」

「ふむ。確かにこのヒロインズ・サーガは所要時間が長いと有名じゃが……」

そんな名前だったのか。やけに女の子の絵柄が多いと思ったら、そういうことだったんだな。一体誰が広めたんだろうか。

「……ちなみに、あとどれくらいでターン終わる?」

「二十分かの」

長えよ。TCGの1ターンにかかっていい時間じゃないだろ。大会があったら一日かかりそうだ。シオンも退屈なのか、俺の質問にぽつりぽつりと答えてくれた。

「……魔族とは、魔物と人間の血が流れている者の総称じゃ。所謂、はーふというやつじゃな」

「へぇ、そうなのか。……お前の≪戦女神≫を破壊」

「むむむ……破壊されたか……魔族は生まれつき角と異能と呼ばれるものを持っており、魔力が高い。……ほれ、後は召喚石カードを貯めるのじゃ。はようせい」

「まだあるのかよ!?俺もうそっちの話の方が気になるんだけど!」

集中出来ないって。これならトランプの方が良かったかもしれん。……でもゲームが進まないので、仕方なく、俺は指示通りカードを置く。

「よし、儂のターンじゃな。≪時の守護者≫と≪栄光の証≫で追加ターンじゃ。そしてお主の≪雷帝≫を破壊する!」

「うわっ、負けた……」

よくわからないゲームでよくわからない負け方をしてしまった。うん、このゲームはしばらく止めておこう。疲れる。

「それで……どこまで話したかの?」

「魔族の特徵っていうところまで」

「そうじゃそうじゃ。それで、魔族の集落というのはじゃな……」

互いに疲れた俺達は、魔族について話をするのだった……


「……見つけたぞ」

そう呟くのは、長い黒髪を後ろに結んだ女性。凛とした整った顔立ちで、背中に弓を背負っている。

「ホントだねぇ〜まさか同郷の人を見つけるとは思わなかったよ~」

女性の声に同意するのは、眼鏡をかけた小柄な桃髪の少年。彼の近くには本が浮いており、その瞳は無邪気な光を宿していた。

「……にしても、何だあいつは。なんの力も感じない。この世界の人間のように、無力だ」

「ふふふ〜ホントだ〜弱っちいの〜」

二人の男女は、彼らの視線の先にいるユウを見て笑う。彼らは今、ギルドの建物の屋根の上からユウを見ていた。

「でもでも~あの人の持ってる剣、強そうだよ~捕まえたらいい戦力になりそう〜」

「そうだな、しかしあの剣だけだ。持ち主は力のない雑魚のようだな」

女性と少年は、ユウの方を見てじっくりと吟味する。彼らの目は、ギラギラとした、欲に塗れた目をしていた。女性の名は川崎リエ。少年の名前は川崎ナギ。彼らは、この世界に転生した、高レベル冒険者の日本人だ。

「なら、奪っちゃう~?」

「そうだな。私達を強くするいい機会だ」

二人は嘲笑うような笑みを浮かべていた。


「……なんだあいつら」

なんかひそひそ声が聞こえると思ったら、黒髪黒目の二人が、建物の屋根に立ってこっちを見ているのが見えた。もしかして、あれでバレてないとか思ってるのか?いや、流石にそれはないか。だとしたら馬鹿すぎる。というかあいつら……

「もしかして、川崎姉弟か……?」

日本にいた頃に聞いたことがある。プロ顔負けの運動神経を持つ姉、川崎リエと、天才的頭脳を持つ弟、川崎ナギ。確かテレビに出るほどの有名人で、事故かなんかで亡くなったとか。……いや、流石にないか。

「カワサキ……?誰じゃそいつは」

シオンが怪訝な顔でこっちを見る。俺は何でもないと言って誤魔化した。別に関わる必要はないと思ったから。

「そういや、俺みたいに天使に推薦された冒険者っているのか?」

「ん?儂は世の中の事情に疎いからの。そういうのは噂くらいしか聞いたことがない」

「そうか……」

じゃあ、今度フラムにでも聞いてみるか……とか思っていると、ふと、俺の近くに人の影が現れた。……それと同時に、ズシッと着地する音が聞こえた。なんだ……?

「…………」

「……なんじゃ?空から何か降ってきたのか?」

シオンは首を傾げる。俺も今何が起こってるのかわからない。俺の目の前には……長い黒髪をポニーテールにした女性が立っていた。その後ろにちょこんという擬音が合うようにこちらを除いている眼鏡の少年の姿がある。…………こいつら、屋根から飛んできたのか?

「……何だよお前ら。俺に何か用か?」

恐る恐る声をかける。すると、ポニーテールの女性はこちらに無感情な様子で、

「お前に用はない。お前の持っているその剣に用があるのだ」

「え~い」

少年の方が俺に向かって何かを投げてくる。俺はとりあえず避けた。すると、先程俺のいた所が爆発した。…………えっ。

「え~避けないでよ~当たらないじゃ〜ん」

「いやいやいや」

何考えてんだこいつ。街中で爆弾使うとか頭おかしいんじゃないか?

「ナギ。何を遊んでいる。早く仕留めろ」

「え~リエがやってよ~僕の爆弾あと一個しかないんだよ~」

ナギ、リエ……やっぱりこいつら、あの川崎姉弟だ。テレビで見たときと顔そっくりだし、空から飛んできたのもこいつらみたいだし。リエは背中の弓を構えると、空に向かって矢を放った。……やばい、これ空から降ってくるパターンだ。

「シオン、逃げるぞ!」

「ええ!?ちょっ、ちょっと待つのじゃ!……お主、逃げ足が早すぎないか!?」

一目散に逃げ出した俺の後ろにシオンが必死についてくる。その顔は俺と同じように青い顔をしていた。……お前も体力ないのかよ!と、俺が思っていると、俺の近くに何故か風が吹いた。目の前には先程のポニーテールが。

「遅い。私から逃げられると思ったか」

嘘だろ。こいつ周りに風吹くくらい足速いのかよ。そりゃテレビにも出れるわな!

「≪ウィンドショット≫」

「うおっ!?」

間一髪の所で矢を避ける。危な……もうちょいで当たるところだった。……にしても、矢が通り過ぎた時に凄い風が来たんだけど。あれ当たったら死ぬよね?

「はあ……はあ……なんじゃこいつは……ユウ!いつものアレはどうしたんじゃ!」

「あ、そうか!≪ランダムスチーム≫!」

剣忘れてた。最初からこれ使えば良かったじゃん。煙がリエを包み込むが、リエは弓を振るってかき消した。デジャヴ。やがて、ナギの方も追いつき、俺達は完全に囲まれた。相手は二人なのに。

「……さあ、その剣を渡せ。さもなければ殺す」

「逃さないよ~僕の発明品の実験台にしてあげる〜」

どうしてこうなった。なんで俺はこんなやばい奴らに目をつけられてるんだ。カードゲームしてただけですよね?

「この剣が欲しいのか?」

「そうだ。私達をより強化するため、弱っちいお前より私達が使うほうがいいと判断した」

「もしかしたら、僕も使えるかもしれないしね~」

弱っちい……いや、そこじゃない。こいつら、この剣を狙ってるってことか。じゃあ…………

「ちゃんと取れよ!おらああああ!」

俺は剣を思いっきり向こうに投げた。あまり重くなくてホントに良かったと思う。俺は二人に背を向け、シオンの手を取って走り出す。リエは慌てた様子で、

「何!?ナギ!剣を取れ!」

「ええ〜!?リエがとってよぉ~」

どうやら気を引くのは成功したようだ。俺は全力で宿まで走る。

「よし、これでこの剣は……ん?お、おい!待て!もしやこの剣は……!」

リエが何か言っていたが、俺は気にせずに全力で走っていた。


「ふう……ふう……ここまでくれば大丈夫だろ。大丈夫か?シオン」

「ああ、儂はなんともないが……良かったのか?アレはお主の大切なものなんじゃろ?」

シオンが心配そうに聞いてくるが、俺はニヤリと笑ってみせる。だって、ねぇ?

「あれ偽物だし。俺が見様見真似で作ったものだし」

「はぁ!?本当なのか!?本物と見分けがつかんかったぞ!?」

いやいや、それは言い過ぎだろ。適当な木の枝彫って作った奴だぞ。歪んでたし、軽いし。

「いやー備えあれば憂いなしとはよく言ったもんだよなー」

「……ん?では何故お主は偽物を持っていたのじゃ?本物はどうしたんじゃ」

「本物は宿の部屋の棚に入れてて、せっかく作ったから身につけてみようって思ってな」

「…………天才魔族な儂じゃが、お主の言ってることがよくわからん」

何でだよ。質問に答えただけだろ。

「……しばらくは俺あの偽物で行くから。あいつらの狙いは俺じゃないっぽいし、普通にクエスト行こうぜ」

「まあ、お主がそう言うなら……」

シオンは呆れたような表情をしていた。












 


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