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第一話 転生

俺は先程、交通事故で死んだ。車が歩道に突っ込み、それに巻き込まれたのだ。まだ16なのに道半ばで倒れるとは……己の不運を呪うばかりである。そして、なぜ俺が意識があるかというと……

「ようこそ、迷える人間よ……あなたの人生は先ほど、終わりを迎えたのです」

「知ってるけど」

俺は今、死後の世界というところにいるらしい。ラノベで転生ものをよく読んだから何となく分かる。

「うわっ、五体満足じゃん。死後の世界ってほんとにあったんだな」

妙に落ち着いた俺の様子に、目の前の頭に輪っかがある女の人が少し引いた様子で見ている。死んだやつに向ける目じゃなくね?

「あの……なぜそんなに元気そうなんですか?あなたは先ほど死んだのですよ?もっと落ち込むとかしないんですか?」

「しないよ?」

何を言ってるんだこの人。別に未練もないし。気がかりなことは残した弟と妹が大丈夫かなというくらい。俺の言葉に女の人は引いたような顔をする。だからなんでそんな顔するの?

「はぁ……まぁいいです。……さて、若くして人生を終えたあなたに、2つ選択肢を与えましょう。一つは天界に行き亡者として永遠のときを過ごす。もう一つは別の生物に生まれ変わる。どちらか選んで下さい」

「どっちも嫌だ」

何その選択肢。俺はさすがに人間は捨てたくない。女の人は満足そうに笑うと、俺にこう言った。

「そうでしょう。どちらも嫌ですよね?だから、あなたには特別にもう一つ選択肢を与えます。それは、あなたのいた世界とは別の世界に、そのまま転生するというものです」

「おお!いいなそれ!それがいい!」

ようやく俺も転生モノの主人公ということか!いや、主人公ではないか。俺そんなすごくないし。

「わかりました。それでは転生するに当たって、あなたに一つ特別な力かものを与えます。こちらに一覧表があるので、こちらからお選び下さい」

そう言われて、渡された表を見る。≪聖剣ハルバード≫、≪風弓ホーク≫……やっぱりチートみたいな名前してるな。おっ、≪膨大な魔力≫とかもあるのか。……ん?右下になんか小さいのがあるな。

「≪混沌剣≫……?何だこりゃ」

「あっ、それはおすすめしないですよ。それは天界に刺さって100年抜けていないものなんです。強力ではあるのですが、手に入れるのは難しいかと……」

何それかっこいい。俺は少し食い気味に、

「それ見てみたい。なんならそれにしたい」

「え?……そうですか。わかりました。ではこちらにどうぞ」

女の人に案内されたところに行くと、木の枝のような形をしたものが、深々と地面に刺さっていた。いいなこれ。バランスが悪いが玄関とかに飾りたい。俺はそんなことを思いながら剣に手をかける。そして力を込めて抜こうとするが、剣が動く様子はない。

「ほら、言ったじゃないですか。これを抜くのはもっと力が……」

女の人はそう言うが、諦めたくない。そう思っていると、俺の右腕が少し紫色に光り出した。何これ。……すると、先ほどの刺さり具合が嘘のように剣がスルリと抜けた。

「えっ?」

「お~、やった。何だ簡単じゃん」

「ええ!?嘘!?こんなに簡単に剣が抜けるなんて……」

驚く女の人を尻目に、俺は抜いた剣をまじまじと見る。……何というか、変わった形のものだ。桜の枝のような……と、それより。

「お姉さん。これ、もらってもいいですか?」

「えっ、ま、まあ大丈夫ですけど……それが特典で、本当にいいんですか?強力ではありますけど、かなり使いづらいですよ?」

「いいんですいいんです。さっさと転生させちゃってください」

俺の態度に、女の人は少し困惑しながら、

「わ、わかりました……では、魔法陣を作るので、そこに立って下さい。転生はすぐに完了するので、どうぞお気をつけて……」

女の人は最後まで呆気に取られた顔をしていた。


「お~きたきた」

初の異世界。日本じゃ見ないような草原に建物。ちらほら見かけるファンタジー生物。外国の可能性も免除。良かった。

「さて、町に行けばいいんだったな」

あのお姉さんによると、町に行けば冒険者として登録できるとのこと。費用は天界持ち。割と世知辛い。

「異世界生活の第一歩か……頑張ろ」

こうして、俺は変わった剣を持って町へと向かった。


「すいません。冒険者登録したいんですけど」

「あっ、天使様が言っていた方ですね。ようこそ、イチの町ギルド支部へ。失礼ですが、名前をお伺いしても?」

「ユウって言います」

「ユウさんですね。お待ちしていました。それでは早速、こちらの書類に個人情報を記入してください」

ギルドのお姉さんの言う通りに紙みたいなやつに書き込んでいく。というか、天使ってこの世界で知られてるの?というか会えるの?

「終わりました」

「はい。ありがとうございます。それでは冒険者カードを発行するので、また明日ここに来てください」

「わかりました」

そうしてギルドをあとにする。さて、宿に行くか。天使の人がそれも手配してくれたらしいし。宿に向かって歩いていると、気になる集団を見つけた。

「……っ、やめてください……」

「姉ちゃん、そんなこと言うなよ。飲みに行こうぜ!」

うわー、典型的な絡み方……見ると、女の人が男の人二人に絡まれていた。

「兄貴、力強くで連れていきましょうよ。誰も見てないし、いけますって」

「そうだな。ひひっ……」

「い、いや……!」

「…………」

……何これ、さっきから女の人がちらちら見てくるんだけど。助けてってこと?でも助けたら絡まれるしなあ……よし。見なかったことにしよう。そう考えた俺は、別の道から宿に向かうことにした。

「えっ、ちょっ……」

なんか聞こえてきたので、俺は歩くのをやめてダッシュした。


しばらくして、宿に到着。宿で出た食事が割と前の世界と似てたことに驚きながらも美味しく頂いた俺は、部屋でもらった剣の性能を見ていた。……天使の人から口頭で説明されたが、よくわからなかったので説明書を書いてもらったのはここだけの話だ。

「毒、状態異常の煙、即死効果……遠距離攻撃……」

なんだか暗殺者の使うような効果である。でも、身体能力が高くない俺にとってはありがたい。対戦ゲームしてる時でも、そんな戦い方ばっかりしてたし。かっこいいという理由で選んだが、割と俺に会うのかもしれない。そんなことを考えていると、ドアの向こうからドタドタという音が聞こえてきた。そして、俺の部屋のドアが激しく叩かれる。

「出てきなさい!ユウってやつがここにいることは知っているのよ!」

なになに怖い……この声、もしかしてさっきスルーした女の人?自力で逃げたのか?なんだやっぱり俺いらなかったじゃん。

「くっ、鍵が掛かってる……!早く出てきなさい!あなたに地獄の苦しみを味わってもらうから!」

怖っ……あっ、この剣使えるかも。俺はドアに開いている穴を覗く。やっぱりさっきの人だ。俺は剣を構えると、呪文を唱える。初魔法だ……!

「≪ランダムスチーム≫」

「ひっ、何これ!?」

 女の人は戸惑った声を出す。剣の柄を見てみると、幻覚、という文字があった。これは相手に幻覚を見せ、恐怖で気絶させるというものらしい。何を見てるかはその人次第なのでわからないが、俺だったらそんなの絶対くらいたくない。やがて、女の人の声がしなくなった。死んでないよな……?


あのあと、気絶した人を警備の人に突き出し、休養を取った俺は、ギルドにカードを受け取りに来た。受付に行くと、昨日のお姉さんがこちらに来て、

「お待ちしていました。こちらユウ様の冒険者カードです。簡単な説明をしておきますと、カードの裏にスキルとスキル習得画面があります。それらはレベルをあげると習得できるので、こまめに確認することをおすすめします」

ふむふむ。習得不可能スキルはないと。やけに親切設計だな。え、すごくない?レベルあげるだけで強くなれるじゃん。

「クエストはギルドの掲示板の紙を受付に提出すれば受けることができます。その際はレベルや条件によって受けることが出来ない場合があるのでご理解ください。それでは、よい冒険者生活を!」

俺はお姉さんからカードを受け取ると、表の個人情報の記載されているところを見る。……名前の欄に、ユウと書かれていた。

(……ここでは俺は≪ユウ≫か。徐々に慣れていかないとな)

俺はカードを眺めると、大事に懐にしまった。

 



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