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第42話

「これが、俺達に起こった事の顛末ってワケ」

 一はようやく話し終え、大きくため息を口から吐きながら語り終える。その様子を、集団セラピーに来ていた患者達は唖然とした表情で見つめていた。


「君が……あの伝説の殺し屋、武礼渡を殺したあのフェイスレスなのか!?」

「ああ」

「そして貴方の妹が、あの伝説のホワイトノイズなの!?」

「ああ」

「そんな壮絶な体験、僕達は後にも先にもしないだろう。君達は、それでやっていけるのか?」


 ある一人の患者が一に問いかける。その質問に一は一瞬口を開き、そして閉じるが、もう一度口を開けると、


「確かに、百億は山分けって形で半分こにされたし、銃を大量に購入したことで俺の財布はすっからかんだ。おまけに俺の妹は思ってたよりも頭のネジが外れてる。最悪ったらありゃしない」

「でも人生の危機ってほどでもないし、私達の関係はそんなに特別なものでもないよ」


 患者達の背後に愛海は最初から居たかのように姿を現した。

 患者達は驚きつつも全員拳銃を取り出し、愛海に向けて構える。


「私達は…というか家族って、時にすれ違って喧嘩して一度は修復不能な関係にまで陥る時もあるの。でもそんな時は徹底的に戦わなくちゃいけない。最初から見て見ぬ振りをしても、何も解決しない。血を流してでも、骨を折ってでも戦うの。そうすれば、今よりはマシな人生がある。多分そんな気がするんだ」


 そう言って愛海は一の元まで行き、「さ、行こ」と言って彼の手を握って引き上げる。

「ああ」と一は言って立ち上がり、セラピー会場から抜け出した。


「良いスピーチだったな。査読でもしてもらったか?」


 一の軽口に「からかわないでよ」と言って愛海は兄の二の腕をつねる。


「いてて。悪い悪い。良い言葉だったよ。お兄ちゃん感動しちゃった」

「ホント!?」

「ウソ」

「なんだとこの野郎!?」


 兄妹共に仲良しこよしで歩いている所に、二人の携帯から同時に着信音が鳴る。


「依頼が入ったぞ愛海。デイヴィスの野郎からだ」

「あのハゲちゃびんから?ロクな依頼じゃなさそー」

「そう言うなよ。もしヤバかったら、良子と綾も呼んで、皆でやろう」

「いいね、終わったら皆で飲み会だー!」

「お前は未成年だからジュースだけな」

「なんでぇ!?」


 楽しそうに仕事終わりの話をする彼等の携帯の待ち受け画面には、ジョッキを片手にピースサインを浮かべる四人男女の姿が映っていた。


 時に家族はぶつかり合うし、時に家族は離れて行く。


 でもそれはいずれ戻ってくるために必要な事。

 それは例え兄と妹が殺し屋でも変わらない事実だ。そしてもし、そのような光景を見た者はこう口にする者もいるかもしれない。


 兄妹共に仲良し殺し、と。


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