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第36話

 ケースの中は新品の状態のライフル、ショットガン、ハンドガン、その他様々な銃が収納されており、それが複数個もあってまさに選びたい放題だった。

 一達はそれぞれ銃の状態を確認しながらどれを買うか吟味していた。


「おお凄い!コンバットマスターのTTIサンドヴァイパーじゃん!これすっごい高くてレアな奴だ!お目に掛かれて光栄だよ~!」

「相談数は脅威の21発。コンペンセイタ―を搭載し、スライドに直接ドットサイトが取り付けられてて視認性が高い。しかも銃身の左右に大型の安全装置が付いている。こんなにずるい銃はまぁそう簡単にはお目に掛かれないよ」


 愛海は瞳を輝かせながらケースの中から取り上げて手触りを確かめる。

 それだけでなく銃に鼻を近づけて匂いを嗅いでいた。

 鏡の如く磨き上げられた銅色の銃身、そして滑り止めの為に加工されたグリップ、そしてスライドには照準を合わせた際に狙いやすい光学サイト、これもまた近接戦闘特化のハンドガンだった。

 愛海は「これもーらい」と言ってスライドを2、3度引き、マガジンを装填して前に銃口を向けて構える。

 しかし少し首を傾げると、何を思ったのか持っていたカランビットナイフを左手で持つと、その刃をサンドヴァイパーの左グリップに当てて削り始めた。


「えっ!?ちょっ!?ちょっと、何してんの……?」

 AR-15を手に取っていた良子は愛海の突然の奇行に目を疑って叫んだ。

 しかし愛海は全く気にする事無く削る。


「私って銃もナイフもちょー得意だからさ、同時に持ちたいじゃん?だったらグリップの部分削って両手で持てば弾が尽きてもすぐナイフで敵を斬り裂ける。詳しい事は私のチャンネルで解説してるから見てね」

「さりげないステマ、流石ユーチューバ―」

「いや明らかにダイマじゃね?」


 綾の言葉に良子はすかさずツッコミを入れた。


「気にすんな。アイツただの映画とゲームが好きなだけだから。最近リメイク出ただろ?それで影響受けたからやってるだけだ」


 一はそう言いながら銃を触るわけでもなく、ショーケースに入れられたものを見るかのように並べられた銃をただジッと見つめていた。


「やまもっちゃん良いセンスしてるでしょ?全身毛が無い不気味な見た目だけど銃の取り扱いだけは一流なんだよ~」

「良ちゃん、褒めるならちゃんと褒めてくれよ~。全身脱毛は結構金掛かって大変なんだよ?」

「しらねーよ」


 綾は聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟きながら自分が使う銃を選んでいた。


「兄ちゃんにはこれなんてどうだい?」


 そう言ってやまもっやんが渡してきたのはTTIピットヴァイパーだ。

 しかし愛海が選んだ物とは見た目が少し違っていた。赤銅色のような銃身に黒いグリップ、そしてダットサイトが取り付けられており、視認性が高い物となっていた。


「これ、愛海がさっき手に取っていたのと似ているな」

「ああそりゃそうさ。詳しい性能はあらかた殺気説明したから省くよ。なんてったってコイツはサンドヴァイパーの姉妹モデルだからだ、性能は特にサンドヴァイパーと変わらないが、アンタ等兄妹なんだろ?だったら同じ銃使ったっていいんじゃないか?二つとも値段に恥じない使い心地だしなぁ」


 やまもっちゃんに言われ、一はスライドを引いて銃のグリップを握り、構える。


「おう兄ちゃん。特にめぼしい物がないなら他にもいくつか俺がいくつか見繕ってもいいよ?」

「いや、俺は……ん?」


 自分で決める、と言いかけたその時、一は展示されてる中でも一際大きい箱を発見する。

 その箱は他の銃が入っているアタッシュケースと違い、白い木製の箱で梱包されていた。


「なぁ、これは何が入ってるんだ?」


 一がそう言うと、やまもっちゃんはニヤリと口元を歪めながら箱の中身を開けた。

 開けて中身を見た瞬間、一は息を呑んだ。


「これは……!?ここ日本だぞ?こんなもんどうやって……」

「兄ちゃん、アンタお目が高いね。これはちょっとばかり値が張るし、じゃじゃ馬だけど無敵の力を誇る。一対多数でも絶対負けないよ」

「……これをもらおう。今の俺にぴったりな銃だ」

「毎度!兄ちゃん、この銃に取り憑かれて正気を失うなよ!」

「ああ、そのつもりだ。あと兄ちゃん呼びはやめてくれないか。なんか背筋がゾワリとするから」


 一は顔を引きつらせながらも木箱の中身を購入した。


「あっハジメン銃決めたん?」


 良子が縦長のガンケースにAR-15を収納し、車に詰め込み、彼女の妹の綾はKel-Tec KSGを選び、同じく車の後ろに詰め込んだ。

 一もまた選んだ武器を車に運ぶが、良子と綾は困惑の表情でその様子を見つめる。


「ハジメンそれマジ?本当にその銃でいいの?普通の殺し屋ってそんなの使わないよ?」

「派手過ぎ、デカすぎ、目立ちすぎ」

「これでいいんだよ。今の俺のこの鬱蒼とした気持ちを変えてくれるのはこれしかない。それに俺には使い慣れた銃もある。これでいい、いや…これがいいんだ」

「兄ちゃんが良いって言ってるなら良いんだよ」


 二人の反対にも近い言葉に愛海はすかさずフォローを入れ、本人達が頑なに意見を変えない事から良子達もそれ以上は深く追及しなかった。


「それじゃあそろそろ行こうか」


 愛海の言葉に全員がお互いの顔を見合わせ、そして全員が首を縦に振って肯定した。

 全員車に乗り、良子が車を走らせた。灰色のアスファルトに黒いタイヤの轍が作られる。


「……」

「……」


車内で沈黙が続き、雰囲気は緊張を含んだものになっていた。

 これから向かう場所にいるのは雑魚とそこそこ腕が立つ者、そして同格かそれ以上のボディガードか殺し屋が潜んでいる魔境。

 そんな者達に囲まれている得物を狩るため精神を研ぎ澄ませていた一と愛海だったが、良子と綾はそれを良しとせずカーナビを操作して爆音でロック系音楽を流し始めた。

 車の中で流れているのはヒューイルイス&ザニュースのHip to Be Squareだ。


「うるさ!なに!?なんなの!?」

「心臓に悪いからいきなり音楽を垂れ流すのはやめろ!」

「集中するのはいいけど、それで思い詰めちゃうのは体に毒だよ。気楽に行こうよ気楽に。音楽聞きながら皆で歌って、人生は一分一秒も無駄に出来ない!」

「エンジョイ安堵エキサイティング、だね」

「流石綾!上手い事言う!」


 そう言って良子と綾は首を上下に揺らしながら音楽に乗っていた。

 一と愛海は最初こそ困惑していたものの、彼女達の言葉にも一理あると思ったのか二人は顔を見合わせて頷くと


「私はサバイバーのThe Moment of Truthが聞きたいなぁ」

「俺はハノイロックスの11th Street Kidsがいい」


 各々の好きな曲を語り、大音量で音楽を垂れ流しながら戸坂の待つ邸宅へと向かった。彼等の反逆は始まったばかりだ。


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