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第27話

『はい!お掃除センターヤッチャッタ!でございます!本日はどのようなお掃除をご希望で?』


 電話口には明るく元気ハツラツな若い女性の声が一の耳に届いた。


「掃除を頼みたくて電話をしたんだが今来れそうか?」

「はい!弊社は年中無休で営業しておりますので今すぐにでも向かえますよ!掃除のみでしたら『とりあえずヤッチャッタパック』、おうちの修復のみでしたら『ヤッチャッタ!でもまぁこれでいいよパック!』両方をお望みでしたら『ヤッチャッタ!全部どーにかしてデラックスパック』がございますがいかがいたしますか?」

「あー、少し家が汚れと傷が付いてしまったから清掃と家の修復を頼みたいんだが」

『はい!『ヤッチャッタ!全部どーにかしてデラックスパック』をご希望ですか?』

「ああ、それで頼む」

『…?申し訳ございませんお客様。どのパックをお望みか、お客様自身の言葉で仰って頂けますか?』

「……『ヤッチャッタ!全部どーにかしてデラックスパック』でお願いします」


 一は抑揚のない死んだような声で電話越しで呟く。愛海は怪訝な顔で、牧村は「誰と話してるんだ?」と首を傾げて見ていた。


『ご依頼いただきありがとうございます!ただいまお客様のおうちにお伺いいたしますので少々お待ちください!』


 電話口の清掃サービスの人間はそう言い、一は「どーも」と言って電話を切った。


「ねぇねぇ、『ヤッチャッタ!全部どーにかしてデラックスパック』ってナニ?」


 愛海はニヤニヤしながら一に問いかける。


「殺し屋専門清掃サービス、お掃除センターヤッチャッタ。ふざけた名前だがクオリティは他の掃除屋の中でも指折りのプロ集団だ。お前も業者やってんなら知ってるだろ」

「うん。でもけっこうお金取られるからあんま頼んだことないけどね。私に依頼する人いつも派手にーとか見せつけるようにやってーって言うし」


その後数十分が経過し、一の家のインターホンにピンポンと子気味の良い音が鳴り響く。


「はい」

「どうも!お掃除センターヤッチャッタ!から来ました!比山と申します!フェイスレス様でいらっしゃいますか?」


 一の家にやって来たのは一人の背の大きい身長170センチメートルの明るい茶色の髪をゴムで束ねた女性と、その後ろで待機している四人の男女であった。


「ああ」

「本日は『ヤッチャッタ!全部どーにかしてパック』をご依頼くださり誠にありがとうございます!早速お掃除をしてもよろしいでしょうか?」


 一は早くしてくれ……と心の中で思いながら「お願いします」と言い、その言葉を聞いた比山は「ありがとうございます!」と快活な声で応える。


「それでは失礼いたします!皆!お掃除始めるよ!」


 比山が快活な声で言うと、彼女の背後にいた四人の男女の清掃人達はニコニコとした顔で


「サンキュー!クリーニングイズマイデューティー!」

「ちょ、近所に迷惑だから声落とせよ」

「ソーリー!」

「だからうるせぇって」


 家の外にも聞こえるような声量で発し、各々がそれぞれ掃除道具を用いて一の家の清掃を行い始めた。

 ヤッチャッタ!の清掃人達は、スムーズに的確に死体の除去と血痕、弾痕、割れたガラスの回収、破壊された壁や窓などの補修と改修を行っていた。


「アイツ等が家の掃除をしている間に、デイヴィスに話を聞きに行くか」

「えっ?今から行ったら行き違いになるんじゃない?そもそもソイツの家知ってるの?」

「安心しろ、アイツは時間に非常にルーズで酒が入ると更に行動が遅くなるし、更に今夜は奴の好きなサッカーチームの試合がやっているからそれが終わるまでは絶対に来ない。仕事以外の事だと極端に適当になるからな。それと場所についてだが、一度酒の飲み過ぎで俺を奴の家まで送るよう言われてな、その時に住所を知ったから場所は分かる」

「なんで兄ちゃんそんな奴と仕事してんの?」


 愛海は死んだ魚のような目で一を見つめて聞くが、彼は「なんでだろーな」と彼女の言葉には答えずはぐらかす。

 しかし「しいて言うなら」と一は言葉を零す。


「俺達の業界には信用できる奴は少ねぇ。アイツはその中でも裏切らなかったから今まで関係を保っていたが、いよいよ潮時かもな」

「可哀想な兄ちゃん……だったら兄ちゃんの代わりに私がそのデブスとかいうおっさん殺してあげる!腐れ縁とは言っても友達を殺すのはそれなりに辛いからね……」


 愛海の哀れみの含まれた言葉に一はげんなりしながらも、デイヴィスに事の真相を確かめるため、彼の家へと二人は足を運んだ。



⭐︎



「ヨシ!イケ!決めろ!」


 デイヴィスは丸い氷とスコッチが入ったグラスを片手に、白熱しながら88インチの大型テレビ画面にのめり込むように観戦していた。

 画面の中のサッカー選手は器用な足運びでボールを操り、ゴールキーパーに右側にボールを蹴ると見せかけてゴールポストの左側にボールを蹴り入れる。


「Yeah! That’s my boy!(そうこなくっちゃなぁ!)


 デイヴィスは歓喜の叫びを上げると同時に、彼の家のインターホンが鳴った。


「……」


 デイヴィスは不機嫌そうな顔になりながらも逡巡し、玄関に行くのをやめてテレビ画面に顔を向ける。

 しかし、二回目のインターホンの音が鳴った。

 彼はこれも無視をしてテレビにくぎ付けになる。


『ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!』


 しかしそんなデイヴィスの事なぞカス程も気にせんと言わんばかりにインターホンの音は連続して鳴り続けた。


「うるせぇ!今はタイミングが悪ィんだ!後にしろ!」


 デイヴィスが怒鳴ったと同時に、玄関の扉が激しい音を立てて破壊される。


「えっ!?」


 デイヴィスはぎょっとした表情で玄関に顔を向ける。

 彼の家には二人の男女が侵入した。

 そのうちの一人は見知った顔であるフェイスレスこと腕間一、そしてもう一人はデイヴィスからすれば覚えのない少女、腕間愛海だ。


「よお~デイヴィス!サッカー観戦はどうだ!お前の好きなチームは勝ってるか?」


 一は気さくな声色で彼に話しかける。口調だけは朗らかではあるものの、目だけは全く笑っていなかった。

「フェイスレス…いや一か!?なんでお前ここに……そもそもなんで俺ん家のドア壊してんだよ!?」

「なんでだと思う?正解を言えたらハワイ行きのチケットをあげるよ」


 愛海はホワイトノイズのマスクを被った状態でリビングに置いてあったフルーツの盛り合わせをつまみ食いをしながら言い放つ。


「いや、お前は誰だよ?」

「コイツは俺の妹の愛海だ。少し話そうぜ?とりあえず座ろうか、な?」


 そう言って一はリビングにある肘掛け椅子を移動させ、デイヴィスに座るよう促す。


「オイ一。こりゃどういう事だよ?いきなりドア壊して、しかもこんな脅迫まがいな事して?お前様子がおかしいぞ?それでホワイトノイズの殺しの件はどうなった?」

「おいこらハゲデブ野郎。今兄ちゃんが話したことが聞こえなかったのか?座れって言っているんだよ?それ以上無駄口叩くならその限界集落みたいな髪の毛毟り取るよ?」

「なんだこのガキ口悪すぎだろ!?……くそ、座りゃあいいんだろ!?」


 デイヴィスはそう言って渋々、仕方がないといぅたような不服そうな様子で肘掛け椅子に座った。


「よし、それじゃあ準備も出来たことだし早速始めるか。まず一つ目の質問だ。お前なんで来いって言ったのに来なかった?」


肘掛け椅子に座ったデイヴィスを見下ろしながら一は質問をした。

 返答次第ではどうなるかは分かるよな?そんな含みのある言い方をデイヴィスは混乱しながらも受け入れつつあった。


「いや、行こうとは思ってたぜ?ちゃんとシャワーも浴びて服も着てガムも食べて、準備は万端だったけどよ、今日はたまたま俺の応援してるサッカーの日本代表チームが出てたんだから仕方がなかったんだよ分かるだろ?」

「分かるかよボケ。テメェ髪ボサボサだし寝巻きだし酒臭ぇしでくつろぐ気満々じゃねぇかよ!誤魔化すつもりすらねぇだろ!」

「兄ちゃんコイツ殺してイイ?」

「うるせぇ!サッカー観戦くらいさせろや!人殺しの仕事の斡旋なんかして俺の心は荒みに荒み切ってんだ、こういう癒しくらい享受させてくれたって良いだろ!?」

「人が他の同業者に集団で襲われて殺されかけたってのによくそんな事言えるよなオイ!?テメェも俺と同じように死ぬ寸前まで追い詰められたらお互いの気持ちが理解できるかもなぁ!?」

「兄ちゃんコイツ殺してイイ?」


一はデイヴィスに拳銃の銃口をグリグリと押し付ける。デイヴィスは「やめろ!」と言って険しい顔つきで顔を顰める。


「なんだよそれ?他の業者に襲われたって、一体全体何の話だよ!?」

「兄ちゃんコイツ殺してイイ?」

「それでコイツはなんなんだ!?怖ぇから俺に近づけさせんなよ!」


 愛海の猟奇的な表情にデイヴィスは冷や汗を流しながら目を逸らしていると、や愛海が「あのさぁ」と彼に問いかける。


「兄ちゃんがアンタに電話した後にさ、私達集団の殺し屋に家を襲撃されたんだよね。おかしいと思わない?アンタはその時家に来るって言ったのに来なかったし、代わりに私達を殺そうとする殺し屋達がやって来た。弁明出来る事があるなら言っても良いけど疑わしい動きがミリ単位でもあったらお前を誰も考えた事がない画期的な方法で殺してやるから。ダーウィン賞も総舐めなくらいのね」

「ハァ?お前殺し屋か?でも見た事ねぇな。お前誰だ?」

「これ被ったら分かるかな~」


 そう言って愛海はヘルメット型のマスクを装着する。

 特徴的な砂嵐が映るそのマスクは、殺し屋なら誰もが知っている畏怖の象徴。

 ホワイトノイズのそれだった。

 そして、愛海の身体ミシミシと音を立てて小さく華奢な身体から高身長でゴツゴツとした筋肉質な身体へと変形する。


「お前……!?ホワイトノイズ…か!?」


デイヴィスは眼球が飛び出る勢いで目を見開き、口もあんぐりと大きく開けた。


「な、な、ななんだ!?どういうことだ!?どうして、つか、なんだその姿はよ!?ホワイトノイズっつったら筋骨隆々のデカ男だろ!?なんであんなちっこい女が、つか身体が……!」

「目に見える物が真実とは限らないものだよワトソンくん」

「うるせぇよ!シャーロックホームズそんな台詞言わねぇだろ!」

「これは私の台詞だよ」


 愛海の言葉にデイヴィスは「知らねぇよ」と吐き捨てるように言い、一の方へと顔を向ける。


「オイ、マジでどういうことだ。お前の妹が、ホワイトノイズ?しかも見た感じ姿形を変えられる化け物ときた。一体全体どうなってんだ説明しろ!」

「おおいいぜ説明してやるよ。お前がちゃんと俺の質問に答えてくれたらな」


 一はそう言ってスマートフォンの画面を見せる。


「あ?なんだこれ」

「俺の家に同業者が俺と愛海を殺しにやって来た。全員殺したが俺は誰にも自分の家の住所を漏らした覚えはねぇ。お前以外にはな」


 一がデイヴィスに見せた画面では今現在も清掃中の彼の家の様子が映っていた。

 ちょうど清掃業者が死体をブルーシートに包んで改修していた所で、デイヴィスはその画面を見て目を細める。


「オイ待て、まさかおれが情報漏らしてお前らを売ったと思ってんのか?」

「ここまで言えばそれくらい分かるだろハゲデブ。兄ちゃんをバカにしてるのか?」


 愛海はそう言ってマスク越しからデイヴィスを睨みつける。

 砂嵐のノイズ音と映像がデイヴィスの眼前まで迫り、彼の腹の中を探るように迫った。


「見くびるなよガキ。いいさ、この際俺がハゲデブだってことは認めてやる。だがな、俺は端した金で数十年来の相方売る程落ちぶれちゃいねぇぞ」


 しかし愛海の脅しにも顔色は変えず、鋭い目つきで睨み返すデイヴィスの言葉に一は顔色を変えないよう平静を装いつつ、僅かに皺になっていた眉をほんの少し緩めた。

 デイヴィスは「それにな」と言って言葉を続ける。


「もし俺がお前やあの伝説のホワイトノイズを本気で殺すなら、直ぐお前らに殺されるような雑魚を使うなんて手は絶対使わねぇ。使うならお前らと同等のレベルのプロを選ぶぜ」

「ほぉ~ん?なんだ、分かってんじゃぇか」

「兄ちゃん騙されてるよ!絆されてるよ!乗せられてるよ!?目を覚まして!」


 愛海は一が少し褒められただけで調子に乗っている事を咎め、デイヴィスは左眉を吊り上げながら呆れた表情をしていた。


「二度も言わせないで欲しいんだが、俺はお前を売ってねぇ。どこからか情報が漏れたかは知らねぇが他の奴等がこっそり俺達の会話を聞いてたんじゃねぇのか?」

「馬鹿言うな。わざわざ特別な個室まで通されたんだぞ。近くにはボディガードもいたし、盗み聞きするなんて不可能だ。それに最近は活かし屋共がうろちょろしているからな」


 一の言葉にデイヴィスは唸る。

 確かに彼等が依頼の話を聞いていた場所は要人や格の高い業者のみが入ることを許される。

 電話やメールなどを使うとハッキング技術を持つ業者が情報を掴んで仕事を横取りしたり、また殺し屋とは異なる、暗殺などから依頼人を守る業態の仕事人、通称『活かし屋』がなどが盗聴をしている可能性もあるからだ。

 侵入者を排斥するため、監視カメラ、屈強なボディガードを配置させ、情報の漏洩を徹底させている。


「にも関わらずお前の家にホワイトノイズを匿ってるってバレたわけだろ?じゃあ内部の裏切りの可能性もあるだろ」

「まさか武礼渡さんが裏で糸引いてる、なんて言うつもりじゃないだろうな?あの人は殺し屋の中でも義を重んじる御方だ。そんな人が今までの生き方を否定するような下衆な事をするわけがない」

「分かってるさ、あくまでもしかするとって話をしただけだ。俺だってあの人がそんな事するとは思えない。そこの妹ちゃんを助けたいってんなら、依頼はキャンセルしてホワイトノイズの存在を消して雲隠れするしかないな」


 その時愛海が「ダメだよそんな事」と言って首を横に振って反対した。


「絶対ダメだし嫌。兄ちゃんは才能あるんだから絶対伝説の殺し屋になるべきだよ。そのためにはさ、そんなに悩んでないでさ、殺せばいいじゃん」


 愛海の言葉に一は理解できず一とデイヴィスはどういうことだと怪訝な顔で彼女を見る。


「愛海、殺すって誰をだ?」

「私だよ私」


 愛海の言葉に一は「ハア!?」と大声を出して驚愕した。


「元々私を殺すように言われて来たんでしょ?でしかも私を殺さなかったら兄ちゃんはもう夢だったダイアモンドクラスには昇級できない。兄ちゃんの夢に私が邪魔をしていたのなら、私は死んだ方が良いよ」

「何言ってんだ愛海。お前ジョークにしちゃ笑えねぇぞ。そもそも、俺はお前をどうにかするためにリリアンに相談して、デイヴィスの家まで行って……!」

「だって嫌だよ、兄ちゃんの人生の邪魔をしちゃうの。これ以上兄ちゃんに迷惑かけるくらいなら私……!」


 愛海はあれだけ軽い事を言っておきながらも相当一に負い目を感じていたのか涙を目に浮かべながら一を見ていた。


「私はただの趣味と小遣い稼ぎでやってたけど、兄ちゃんにとっては毎日が人生をかけた大勝負だったのに、私は兄ちゃんの大事な人生を奪った。しかも私兄ちゃんにヒドイ事一杯言ったし、私兄ちゃんの隣に居る資格無いよ……!」


 愛海は遂に大粒の涙を零しながら言った。

 愛海の涙に溢れた目を見て、一はため息を吐きながら彼女の頭にそっと手を置く。


「なぁ愛海、確かに俺は伝説の殺し屋になりたい。名前を聞けば震え上がるような、路地裏や布団の中、影の中を覗くだけで俺のマスクを思い浮かべるような、そんな凄い殺し屋になりたいさ」

「じゃあ──」


 愛海の言葉に一は被せるように「けどな」と付け加えるように言う。


「俺が殺し屋として必死に仕事を請けてたのはそれだけじゃない。お前のためでもある」

「私?」

「ああ。伝説の殺し屋になれば使いきれない程の金を稼げる。金があればお前を東大だろうがハーバードだろうがオックスフォードだろうがマサチューセッツだろうが、どこでも好きな大学に通わせてやれる。お前が俺なんか一瞬で追い抜いて、凄い人間になれるって信じてるからな」


 一は彼が思いつく頭のいい大学名を言いながら愛海の目を真っ直ぐ何の疑いよう御なく見る。

 そんな一の言葉に愛海は驚きながらも彼女の頭に乗っている彼の手を握りながら「でも」と反論する。


「私、殺し屋だし快楽殺人鬼だし、その様子を動画撮影してヒ●キンとか桐●栄二とかはじ●しゃちょーみたいな編集を加えてダークウェブにアップロードするような、そんなサイコ女なんだよ!?そんな私を、それでも殺さないでいてくれるの?」

「今の発言を聞いて若干殺したくなってきたが、それでもお前は俺の妹だ。自分の手柄の為に妹殺すほど俺はそんなに冷酷でもない。それに何より、お前の事が大事なんだ。世界で一番な」


 そう言って一は鼻で笑う。


「だから俺は決めたぜ。俺はお前を殺さない。仕事はキャンセルだ。そんでもって俺のキャリアも終わりだ」

「そんなのダメだよ!兄ちゃんの夢なんでしょ!?私の為に諦めないでよ!」

「漢に二言はない。殺し屋なら別だが。武礼渡さんの本、『心を斬る』にもそう書かれている。それに俺はもう殺し屋と名乗るには覚悟が足りなかった。武礼渡さんに報告してくるよ。仕事は失敗しましたってな」

「お前殺し屋の自己啓発本なんか読んでんのかよ。マジでどうかしてんだろ」


 デイヴィスははじめの言葉に呆れてものも言えないような視線を向けるが、一は何も感じていない。


「じゃ、じゃあ私が代わりにホワイトノイズの偽の死体を用意するよ!証拠も全部ソイツの腹の中に詰めて依頼主に渡せば──……!」


 愛海の必死の言葉に、一は一言「愛海」と低い言葉で警告するように名前を呼ぶ。


「これ以上俺を困らせるな」


 一の言葉と真剣な表情に、愛海は口元を噛み締めながら悔しそうに一を見た。


「デイヴィス、明日の昼に武礼渡さんにフランチェスカで待ってくれるよう伝えてくれ。と、いうわけで今日はもう帰るわ。邪魔したな」

「ああ本当に邪魔してくれたな。おかげでサッカーの試合を見損ねた上に敵チームが勝っちまった。ぜってぇ許さねぇぞこの野郎。あっそうだこれ外せよ!」


 デイヴィスの言葉に一は両耳に指で栓をして聞こえないふりをした。


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