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二章 浮遊戦艦 04

 ディートハルトはシャツを脱ぎ捨てた。

 むき出しになった上半身は、細身なのに鍛え上げられた筋肉がついていて、まるで彫刻みたいだ。有紗は思わず目を奪われた。


「そんなに見られるとちょっと恥ずかしいな」


 からかうように話しかけられ、有紗は慌てて目を逸らした。すると、クスリと笑う気配があり、彼がこちらに覆い被さって来る。


「アリサの体も見せて」


 ディートハルトは低い声で囁くと、こちらの着衣に手を掛けてきた。

 一枚一枚、ゆっくりと服が剥ぎ取られていく。

 今が何時かはわからないが、窓から差し込む光のせいで室内は明るいから恥ずかしい。


「へえ……。テラの服は縫製が綺麗だね」


 有紗を下着姿にすると、ディートハルトは指先を胸の膨らみのレースの部分に滑らせた。

 数合わせとはいえ合コンに出席するために、万一の可能性を考えて人に見られても恥ずかしくないものを着けていて良かったとは思う。何しろ有紗の普段使いの下着は、着心地優先で色気なんてないシンプルなブラトップとショーツだ。


「形もこちらのものより淫らで娼婦の衣装みたいだ。そちらの世界の女の子は、皆こんないやらしい下着を身に着けるの?」

「違います! ここに来る前は、特別だったから……」

「特別って?」

「えっと、男の人と会ってたんです。食事をするために……」


 合コンなんて言っても異世界の王子様には意味がわからないと思ったから、有紗はどう言えば通じるのか考えながら答えた。


「恋人と過ごしてたのに、こっちに来ちゃったの?」


 ディートハルトは目を見張った。


「ち、違います! そうなるかもって可能性があったってだけで……。そもそも一対一じゃなくて、複数人で会う、お見合いみたいな感じ……?」

「いい相手はいた?」

「いえ、行ってみたけど、ノリが合わなくって疲れただけでした」

「……アリサは馬鹿だね。嘘でも『好きな相手とヤる寸前でした』って言えば、俺の同情が買えたかもしれないのに」


 小馬鹿にしたように言われて、有紗はハッと気が付いた。


「ま、アリサが馬鹿正直で、いやらしい子だってわかったよ」

「いやらしい⁉」

「だってそうだよね? 恋人ではない男とそうなる事を想定して、こんな淫らな下着を特別に着けたんだよね」

「!!」


 反論できなくて有紗は黙り込んだ。

 最低だ。彼の言う通り、嘘でも恋人がいると言えばよかった。

 ディートハルトは有紗に向かって微笑みかけると、唇を重ねてきた。

 不意討ちのように唇を奪われて、有紗は大きく目を見開く。


「んっ……」


 二回目のキスは最初から深かった。

 有紗は濡れた気持ち悪い肉塊の侵入に、涙を浮かべる。

 ディートハルトは有紗の唇を貪りながら、今度は体に手を這わせてきた。


「できるだけ優しくするから。痛いとは思うけど」

「避妊、は……?」

「しないよ。たぶん出来ないからね。テラ・レイスとこちらの人間は種が違うみたいなんだ」

 有紗は目を見張った。

「種が違う……?」

「うん。テラ・レイスとこちらの人間との間に子が産まれた記録はないんだ。だから、犬と猫が交配しないように、種が違うのではないかと言われてる」

「記録がないだけでは確実とは言えませんよね?」

「できたらそれはそれで大歓迎だから安心するといい。魔力が高いと授かりにくいんだ」


 ディートハルトはにっこりと微笑んだ。


「もし子供ができたら、奴隷身分から解放されるよ。この国の法律ではそうなってる。子供の魔力がもし高ければ君の地位は更に上がる」


 だから大丈夫。

 囁きと共に、彼の体が有紗に覆い被さってきた。




   ◆ ◆ ◆




 事が終わると、ディートハルトは体を起こして有紗の体に手を翳した。


「勿体ないけど綺麗にするね」


 そう発言した直後、手の平から魔法陣が出現して有紗の全身を包み込んだ。


「何……?」


 警戒心をあらわに尋ねると、ディートハルトは苦笑いを浮かべた。


「浄化の魔術だよ。あちこちドロドロにしちゃったから」


 その言葉に、有紗は自分の体を確認する。

 全身がすっきりしており、下半身の気持ち悪さも消えていた。

 ディートハルトはベッドの周囲に散らばった服をかき集めると、それにも、自分の体にも、同じように魔術をかけた。


「服もこの魔法で綺麗にできるんですか……?」

「魔法じゃなくて魔術ね。魔法は神の御業。人の使うものは魔術と呼ぶ」


 一応区別があるらしい。


「浄化の魔術は何でも綺麗にできるよ。魔術がない世界では、水で洗うのかな?」

「はい。あ、でも、奴隷商人の所には、お風呂があったんですが……」

「商品として磨くためかな? こちらでも特別な時は湯浴みをする」

「へえ……」


 さすが異世界だ。常識が違う。

 感心する有紗をよそに、ディートハルトはシャツを羽織った。

 そして、てきぱきと服を着込んでいき、初めて会った時と同じ軍服姿になった。

 顔だけでなくスタイルもいいから、腹立たしいくらいに似合っている。

 着替えを終えたディートハルトは、ベッドの上の有紗に近付くと、頬にキスを落とした。


「アリサの身体、良かったよ。正式に俺のものにしてあげる」

「……!」


 気障な仕草と発言に、有紗は頬を染めた。すると、彼はクスリと笑って身を離す。


「首輪の登録を変えるためにバルツァーを呼んでくるから、それまでに服を着ておいて。あいつに裸を見られたくないだろ?」


 そう告げると、彼は部屋を出て行った。

完全版から濡れ場の描写を省くのに手間取っておりました。

R15に収まっているとは思うのですが、問題がありそうな場合はさらに描写を削るつもりです。

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