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「おかえりなさいませ、お嬢様。旦那様と奥様が
ダイニングにてお待ちです。」
公爵家のお茶会から帰宅して早々に
両親から呼び出しを受ける。
いくら帰宅したばかりだといっても彼らには
そんなこと関係ないのだ。
「身支度を整えてから伺いますと
伝えてちょうだい。」
「かしこまりました。」
表面上は笑顔のままつげると
使用人は頭を下げてその場を後にする。
(私も急いで支度をしないと)
少し疲れて休みたいと思う自分を叱咤して
自室へと足をすすめた。
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「お待たせしてしまい申し訳ありません。」
身支度を終えてダイニングへと着く。
すでに2人は夕食を終えているようで
食後酒を楽しんでいるところだった。
私も2人に向き合うようにしてテーブルにつく。
「馬車が立ち往生したそうだな。
今日は公爵家の茶会だっただろう。
こちらの不手際で参加できなければ侯爵家の
権威に傷がつきかねない。
御者は別の者に変えたほうが良さそうだな。」
すでに帰りのことは耳に入っているようだ。
(私のことは何も心配してくださらないのね。)
娘の心配をしないことなんていつものことで
期待なんてしていないはずだったのに
少し胸が痛んだ。
「公爵家の茶会はどうだった?
あのご令嬢にお茶会の主催なんて
まだ早かったのではないか?」
少しバカにしたような様子で私に尋ねる。
「今回招待された方々は皆婚約者候補とされている
方々でした。やはり公爵家として候補者を
見定めるために招かれたのだと思われます。」
両親が聞きたいのは公爵家の、ひいては
公爵令嬢であるヘレン嬢の弱点となるものだろう。
「お茶会の途中で身の程をわきまえない伯爵令嬢が
聖女の話題を出しました。彼女の様子から察すると
メルクーリ嬢は王子の次のお相手のようです。」
「メルクーリ家か。まぁ家格も大したことない。
我々の障害になる娘ではないさ。
王子の火遊びにも困ったものだ。」
口ではそういうがまったく困っていないような
余裕の表情でグラスに入ったワインを眺めている。
「騒ぎ立てようとした伯爵令嬢に公爵令嬢が
お茶をかけて追い出すことでその場を収めました。」
「まぁっ!彼女の気質は相変わらずのようね。
公爵家令嬢にあるまじき振る舞いだわ。」
そう言って批判する母は楽しそうに笑っている。
「それで?公爵令嬢とはお近づきになれたかしら?
あなたのことですから言わなくても
わかると思うけれど、少しでも公爵家の弱点を
引き出すのよ。」
「・・・今回は伯爵令嬢の騒動もあり公爵令嬢と
個人的に接触することはかないませんでした。」
自分の言葉に少しだけ嘘を混ぜる。
今はまだヘレン嬢の言葉にも、両親の言葉にも
出せる答えが見つかっていない。
「そう、少し残念ね。でも次は期待していますよ。
これも全てあなたの幸せのためですからね。」
その言葉はまるで冷気のように私の心を
凍りつかせていく。
ヘレン嬢の言動によってざわついていた心が
急速に凪いでいくのを感じた。
「えぇ。もちろんわかっております。
お父様、お母様。これからも努力いたします。」
私は侯爵令嬢としてお手本のように微笑んだ。
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