73
土煙と轟音と共に最初に姿を現したのはユーインだった。
そのあとにエゼキエル、ヒースクリフと続けてなだれ込んでくるようにして現れる。
それを合図にしてマティアスがトリスタンにかけていた拘束の魔法を解除した。
「ヒースクリフ様!」
トリスタンの呼びかけで私たちの存在に気づいたヒースクリフは目を見張った。
動けるようになったトリスタンはヒースクリフのもとへと走るとその背を守るようにして剣を構えた。
「嵌められたな。相手は誰だ。」
「魔法使いです。・・・しかし私たちの命が狙いというわけではないようです。」
「だろうな。はじめから殺すことが目的なら俺たちを合流させるなんてヘマはしない。」
合流した2人を囲むようにしてエゼキエルやユーインが位置につく。
それに対して背中合わせになった2人が警戒を強めたのがわかった。
一触即発の空気に私は一歩前に出る。
「初めまして。私の名前はアリス・ルードベルトと申します。
私たちはあなた方に危害を加えるつもりはありません。」
貴族としての礼をして敵意がないことを示す。
しかし私の様子を見ても2人は剣を下ろさず警戒を緩めることはない。
「魔法使いを3人も連れてきて危害を加えるつもりはないだなんて笑わせるな。
なぜこんな手の込んだことをする?」
鋭い青色の瞳が私を睨んでいる。
そこにいる彼にかつての穏やかな面影はない。
私たちが彼らを追い詰めたはずなのに
張り詰めた雰囲気に少しでもたじろいでしまえば牙を剥かれそうだ。
「あなた方に尋ねたいことがあります。
呪いを扱うことのできる魔法使いについてご存知ですか?」
私の問いかけに対してヒースクリフは怪訝そうな顔をする。
「どういうことだ。あいつの差し金じゃないのか?」
「私たちは呪いを扱う魔法使いを捜しているのです。
彼は私に協力してくれている魔塔主です。」
「初めまして。俺はエゼキエル・ウィンフリード。魔塔の主をしています。
先ほどは手荒な挨拶を失礼しました。」
「魔塔主だと?そんな奴が何の用だ。」
魔塔主の登場に面食らうヒースクリフにエゼキエルは
「公にされることはありませんでしたが18年前魔塔では呪いにより
多くの魔法使いが殺害され、ほぼ壊滅状態となった事件がありました。
その首謀者は前魔塔主とされていますが彼は濡れ衣です。
呪いを駆使できる魔法使いにより嵌められたのです。
俺たちはその人物を見つけ出し復讐をしたい。」
「何?」
エゼキエルの言葉にヒースクリフが怪訝そうな顔をしたまま背後のトリスタンを見やる。
それに対してトリスタンは険しい顔をしたまま無言で頷いた。
「・・・復讐、か。お前の言い分はわかった。だがその女には何の理由がある?
お前たちの中でそこの女だけが魔法使いではない、貴族だろう?」
「!」
問われてとっさに答えることができなかった。
「わ、私は・・・・。」
ここで真実を告げることははばかられた。
信じられるわけがない。今は名前しか知らない私たちが思い合っていたこと。
あなたが私を救うためにすべてをかけて、そして処刑されたこと。
あなたが呪いに蝕まれて命を落としたことも。
良い淀んだ私をヒースクリフは無表情のまま見下ろした。
「ここで言えないのならお前に用はない。
だが俺たちのことを知られたからには生きて返すわけにいかない。」
「え?」
言われた言葉に顔をあげた。
冷たい瞳をしたヒースクリフが剣を振り下ろした。
読んでいただきありがとうございます。




