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ローブをまとった姿で闇市場の一角を歩く。

顔を見せないようにと目深にフードをかぶっている。

ここに来るのは2度目だけれど何度来てもここの雰囲気にはなれない。

周囲に座り込んだ人たちから私たちに向けられる視線には以前来た時とかわらずに

ぎらぎらとした生気が宿っている。

護衛として隣を歩いているエゼキエルを見上げる。

周囲に目を配りながら歩く彼はこの場の雰囲気に飲まれている様子はない。


「ん?どうした?」


目が合うと安心させるように微笑み返してくれる。

その姿にはどこか余裕があるように見える。

やはり魔法使いともなれば闇市場の雰囲気も怖くないのだろうか。


「いえ。なんでもありません。」


そう言って再び前を向いた。

やがて目的地へとたどり着いた。

小屋のようにも見えるさびれた家。

未来で宝飾品を盗んだ子供が売りに出すために訪れていた場所だ。


「ここです。この店の主人です。」


「・・・・。」


エゼキエルは目を細めて店を見上げている。

やはり人が住んでいないような店構えに驚いたのだろうか。

彼は黙ったままだった。


「中に入りましょう。」


そう言って扉に手をかけると中から出てきた人にぶつかった。

その拍子にフードが外れてしまう。


「いってぇな。・・おいおいこんなところに若い女がいるじゃねぇか。」


知らない男の声にぞっとした。

この品定めするような視線には覚えがある。

身体が危機を察知してその男から離れようとするが相手の方が早かった。


(嫌だ!)


思わず目をつむる。


「危ないよ。俺から離れないように気を付けて。」


気づけばエゼキエルの腕に抱き寄せられていた。耳元で優しく注意される。


「なんだ男連れかよ。おい、その女を寄こせ。従わないと痛い目見るぜ。」


下卑た笑みでこちらを見つめる目が気持ち悪い。

エゼキエルが余裕の態度を崩すことは無かった。


「悪いね。この子は俺の大事な子なんだ。渡すわけにはいかない。」


そう言ったエゼキエルは私を抱き寄せている手とは反対の手に炎をともした。

以前に私が見せてもらったようなろうそくのような火ではない。

燃やし尽くされてしまいそうな豪炎だ。


「お前、魔法使いか。ちっ。」


エゼキエルが魔法使いだとわかるやいなや不利な状況を悟った男は舌打ちをして逃げ出した。

危機的な状況を脱してほっとする。


「おいおい。勘弁してくれ。人の家まで燃やす気か?魔法使いさんよ。」


そう声をかけて来たのは店の奥にいたガリオスだ。

彼は軽口を叩いているがその視線には強い警戒の意志が見て取れる。

エゼキエルは抱き寄せていた手を離すと握りこむようにして炎を消した。

顔を隠すようにして覆っていたフードを外す。


「お前・・・。」


それを見てガリオスは驚いたように目を見開いた。


「やぁ久しぶり。悪徳店主。」


いたずらが成功した子供のような顔でエゼキエルは微笑んだ。


読んでいただきありがとうございます。

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